司馬遼太郎のレビュー一覧
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政府軍の進撃を早からしめた理由のひとつは、各地で降伏した薩軍の小部隊が、降伏するとともに政府軍の道案内をつとめ、薩軍の配置などを教えたからであった。べつに政府軍が強制したわけでもなく、「降伏したからには、官兵として働きたい」と、かれらが積極的に望んだからであり、その口上はさらに情緒的で「万死を冒して前罪を償いたい」というものであり、一種、奇妙というほかない。このことは日本古来の合戦の慣習であったであろう。降伏部隊は鉾を逆にして敵軍の一翼になるというものであり、駒を奪ればその駒を使うという日本将棋のルールに酷似している。ついでながらこの古来の慣習はその後の明治陸軍の弱点として意識されつづけ、日露
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幕末の医者たちの話。主人公たちはみんな医者だし、基本的に物語は彼らの行動に沿って展開されるんやけど、結局のところ人物は点景として一枚絵に添えられているだけ、という印象を受ける。たぶんそれで間違いない。もちろんその「一枚絵」は「明治維新」という時代なんだけど、言葉としてはこれよりも「幕末」のほうが正しい。主人公たちが幕府に寄っていたから、というわけでなく、司馬が作品で意図したのは新時代の幕開けではなくて、旧秩序の崩壊であったに違いないから。
作中で語られるこの時代の医者、特に蘭医というのをふたつの側面から切ると、まず身分制度の埒外にいる。それから、蘭学を通していちはやく西洋思想に触れている -
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本当は「国盗り物語」は全4巻だけど、歴史に疎い私は斉藤道三という人をよく知らないので、知っている織田信長の方だけを読んだ。
そうかそうか、斉藤道三は信長の舅だったのか。
私は歴史上の人物の中では、今まで織田信長が一番好きだった。
なんかこう、潔いというか、パキッとしてるというか、決断力も早そうで、戦に出るときはいつも一人で馬に乗って飛び出して、途中途中で馬を止めて部下が到着するのを待っていたとか、今までの武士とは違う考え方だったとか、そういうエピソードがすごく「かっこいい!」と思っていたから。
この本を読んでもやっぱり「信長はすごい」という考えは変わらなかったけど、でももし信長のような人が社長 -
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明治維新後の日本の話しで、幕末に活躍した人達のその後の生き方を知れるということが面白い。続「竜馬がゆく」を読んでいるような感覚だ。作者の個人的感情がだいぶ入っているが、伊藤博文や大隈重信や板垣退助など、エラいことをやったと思われている人達の欠点を欠点としてはっきりと書いていて、彼らもその他と大差ない人間だということが感じられるというのは新鮮な感覚だ。教科書はその人間が行った実績や事実は書くけれども、その人はどういう人間であったかということまでは書かない。どこまでが真実でどこまでが司馬遼太郎の私見なのかはわからないけれども、明治の、今に名が残っている人々の生き方を知ることが出きるというのは面白い
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中身の話ではなくて、酷い話
池波さんの表紙で、路上でタバコ咥えている写真が載っているのがあります。
紙版の司馬さんの小説でも見たことがある。確か裏表紙。
携帯灰皿なんてない時代だから、ほぼ間違いなく、吸殻は道路にポイ。
この本の表紙も、電車の中で新聞広げてる写真が出てます。
電車の中で新聞広げる行為も、いっとき随分叩かれた行為です。
邪魔ですよね、特に混んでる時は。故に、今日ほとんど見ることはない。
作家さん本人にとって、出版側からの指示とはいえ、
こうした今日ではルールに反する写真を掲載するのは、あんまりな話です。
作者さんは故人だからどうしようもない。
タイトルもすごいですね。
のちの書籍のタイトルが概してスッキリし -
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賛否両論があるかもしれない
腹蔵なく具申させていただけば本作品は毀誉褒貶が激しいかもしれない。歴史観の乖離は誰にもある故、必ずしも司馬史観と一致しないことがかんがえられるゆえに。されど司馬作品には享楽できるような述懐が必ずあるようなので読んで後悔するとも限らないと思われる。
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大隈重信の描写に難あり
司馬氏が早大出身者に私怨でもあるのだろうか。必要以上に大隈重信のことをあしざまにけなしている点が見苦しかった。司馬ファンであるだけに実に残念だった・・・。