司馬遼太郎のレビュー一覧
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「ながい歳月、ご苦労さまに存じあげ奉りまする」
「言うな」
「申しあげる言葉もございませぬ」
「おれの生涯はむだであった」
元親は、あおむけざまにころんだ。なんのための二十年であったであろう。
「死者二万」
すさまじい数である。この岡豊から身をおこして以来、元親のために死んだ者は二万前後というおびただしい数にのぼっている。かれらの骨は四国の山野でむなしく枯れ朽ちてゆくだろう。
「おれが酒に痴れ、女に痴れるようなただそれだけの男にうまれておれば」と、元親はつぶやいた。
「土佐のものは幸いだったろう。人は死なず、それほどの苦労もせずにすんだ。いささかの志を持ったがために、かれらの死屍はるいるいと野 -
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土佐の長宗我部元親を主人公にして、四国制覇から京への中央進出を狙って戦いに明け暮れた生涯を描いた小説。
ただ武力と知略のみを元手にして、天下への野望を持つというのは、戦国時代の大名らしい生き様だけれども、それがどのような形で表れるかというのは、その大名の性格によってだいぶ変わってくる。
長宗我部元親については、ただ、四国で名を馳せた戦国大名というぐらいのことしか知らなかったけれど、この人物も、だいぶ個性的な性格だったことがよくわかる。
勇猛よりも謀略を好んで、慎重すぎるぐらいに神経質で臆病。しかし、土佐の田舎からのし上がっていくという野望だけは、人一倍苛烈なものを持っている。
この小説のす -
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起承転結でいえば転にあたる三巻目。いよいよ面白くなってきました。「新史太閤記」で敵に囚われて散々な目にあったのは半兵衛なのか官兵衛なのか記憶が曖昧になっていたけど、なるほどこういう背景があったんですね。智謀の人としてこれまで小寺家を切り回してきた官兵衛が、こんな形で主に裏切られて罠にはめられてしまうとはなんとも皮肉。エコノミー症候群でも起こしそうな狭くて日も当たらない牢屋に長期間監禁されてしまうことになった官兵衛。牢屋の窓からある日奇跡のように藤のつるが伸び花を咲かせるくだりは感動的。平静な官兵衛も思わず「いのちよ」と心の叫びを発してしまいます。部下の栗山が苦労の末、官兵衛のもとに忍んできて、
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信長・秀吉との出会いから荒木村重の謀反まで。今一盛り上がってこないですねえ。天下統一に大きな影響を及ぼす戦局とはいえ、やはり一地方の一人物に偏った目線で描くとどうしてもミクロに入り込んでしまうのでしょうか。官兵衛も物語の中で秀吉が嫉妬するほどの才能と評されているけど、実際には播州の調略さえろくにできずに右往左往しているようにしか見えません。それも播州が地元で良く知ってるから官兵衛に任せたという事情があって、秀吉も任せてうまくいかなくてちょっと後悔してるし。
以前読んだ「新史 太閤記」でも、官兵衛に対する司馬遼太郎の思い入れは伝わってきたけど、どうも影が薄くてどんな実績を上げた人なのか思い出せな -
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<本の紹介>
日清戦争から十年―じりじりと南下する巨大な軍事国家ロシアの脅威に、日本は恐れおののいた。「戦争はありえない。なぜならば私が欲しないから」とロシア皇帝ニコライ二世はいった。しかし、両国の激突はもはや避けえない。病の床で数々の偉業をなしとげた正岡子規は戦争の足音を聞きつつ燃えつきるようにして、逝った。
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この本で一番「なるほど」と思ったのがこの一節でした。
「敵に対しては見つけしだい、攻撃すべきである。この場合、彼我の兵力を考慮すべきではない。」
確かに、その通りかもしれない。先手必勝、兵力が同程度であれば先に攻撃をしかけた方が良いに決まってる。サッカーだって先取点を取る -
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タイトルを見て、これは珍しい、シバリョ先生の伝奇物?…と買ったのですが。
“文豪の怪談”がけっこう好きなんです。
B級ホラー的なものは映像向きだと思うので、読むのはちょっとレトロで雰囲気があるものが好き。
さて、この作品はすごく古い。
最初のナルキッソスの話などは、別にこの人が書かなくてもいいじゃない、な感じだったのですが、10編の短編のうち、先に進むにつれてどんどん、歴史にまつわる豊富な話題や知識が披露されて『らしく』なってきます。
そもそも、この短編集は最初に発表されたときは「司馬遼太郎」のペンネームを使っていなかったそうなので、作者的にも何か思うところが会ったのではないでしょうか。
す