昨年、司馬遼太郎の「坂の上の雲 全8巻」を読みました。
坂の上の雲の中ですごく気になったのは、司馬遼太郎が描く薩摩藩型のリーダーシップ。
ネット上での解説を少し転載します。
明治時代も終わりに近づいた頃、ある座談会で、明治の人物論が出た。
ある人が「人間が大きいという点では大山巌が最大だろう」と言ったところ
「いや、同じ薩摩人だが西郷従道の方が5倍は大きかった」と反論する人があり
誰もその意見には反対しなかったという。
ところが、その座で、西郷隆盛を実際に知っている人がいて
「その従道も、兄の隆盛に較べると月の前の星だった」と言ったので、
その場の人々は西郷隆盛という人物の巨大さを想像するのに、気が遠くなる思いがしたという。
西郷従道(つぐみち)は「ウドサァ」である。薩摩藩(鹿児島)の典型的なリーダーの呼ばれ方である。
本来の語意は「大きい人」とでもいうようなものだ。
従って、西郷隆盛などは、肉体的にも雄大で、精神的にも巨人であるという点で、
まさに「ウドサァ」を体現した男であると言えよう。
薩摩藩型リーダー「ウドサァ」の手法は二つある。まずは最も有能な部下を見つけ
その者に一切の業務を任せてしまう。
次に、自分自身が賢者であろうと、それを隠して愚者のおおらかさを演出する。阿呆になりきるのだ。
そして、業務を任せた有能な部下を信頼し、自分は部下が仕事をしやすいように場を平らげるだけで、後は黙っている。
万が一部下が失敗するときはさっさと腹を切る覚悟を決める。これがウドサァである。
日本人はこのリーダーシップのスタイルに対してあまり違和感を持っていないと思う。
日本の組織のトップはリーダーというよりは殿様なのだ。殿様は知識やスキルではなく人徳で勝負。
細かいところまで口を出す殿様は
家老に 「殿!ご乱心を!」とたしなめられてしまう。
でも、このリーダーシップのスタイルは世界のスタンダードではないと思う。
世界の卓越したリーダー達で「ウドサァ」みたいなスタイルだった人を私は知らない。
スキピオ、ジュリアスシーザー、アレキサンダー大王
ナポレオン、リンカーン ・・・ ビルゲイツもジョブズも孫正義も
部下に仕事を任せはするが、後は黙っているなんて事は絶対にない。
古代中国の劉邦と劉備は「ウドサァ」かもしれない。(だから日本で人気がある?)
私も大きな組織で働いているが
トップに非常に細かいことまで指示される事を想像すると辟易してしまう。
そのくせ、「トップの方針が明確でない」みたいなことを言ってみたりもする。 どないやねん!
1年以上かけて、ようやく全10巻を読破しました。
いや〜〜長かった。
面白かったけど、やっぱり長いよ司馬さん。
「翔ぶが如く」本線のストーリーは、征韓論から西南戦争に至るまでの話なんですが、水滸伝のように、周辺の人物の描写や逸話に入りこんでしまって、本線のストーリーが遅々として進まない。。
新聞小説の連載だからなのかもしれないが、ふだんノンフィクションの実用書ばかり読んでる身としては、かなりじれったかった。
本線のストーリーだけ書けば、半分ぐらいの頁数で済むのでは?
と思ってしまいました。
[読んで思ったこと1]
本書を読み「薩摩藩型のリーダーシップ」について理解するという当初の目的は果たせませんでした。
著者にとっても、西郷隆盛という人物は、スケールが大き過ぎて掴みどころのない存在のようでした。特に征韓論以降の西郷隆盛は、現在の我々からは訳がなかなか理解し辛い事が多いです。
しかし、リーダーシップとは何かという事について、いろいろと考える事ができました。昨年一年間かけて考えた、私なりのリーダーシップ論は、後日別のエントリで纏めようと思います。
[読んで思ったこと2]
西南戦争は、西郷隆盛を担いだ薩摩藩の壮士と、山縣有朋が徴兵して編制した政府軍との戦いでした。
当時の薩摩藩は古代のスパルタのような軍事教育国家であったため、壮士達は世界最強の兵士とも言える存在でした。
しかし兵站という考え方がほぼ皆無に近かった。
一方で政府軍の鎮台兵は百姓出身者が大半であり、本当に弱く、戦闘となるとすぐに壊乱してしまう有様でした。
しかし、山縣有朋の綿密な軍政準備により、予備兵・食糧・弾薬などの後方支援が途切れる事は無かった。
両者が激突するとどうなるのか。
短期的には薩摩藩が圧倒的に有利なのですが、戦いが長期的になつてくるとジワリジワリと政府軍が有利になってくる・・・
古代ローマ帝国とカルタゴのハンニバルの戦いを見るようでした。
いや、普段の仕事についても同じ事かなと思いまして。
仕事でも、短期的に物事をガーと進められる人に注目が集まりますけど、さまざまな兵站をキッチリ意識して、長期的に組織的に物事を動かせる人の方が最終的な結果に結びつくのかなと。
この間、絶好調のアップルの決算発表がありましたが、今のアップルの収益性を支えるサプライチェーンとロジスティクスの仕組みを確立したのは、現アップルCEOのティム・クック氏だとの事。