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Posted by ブクログ
本作品は昭和57年6月から翌58年12月まで『読売新聞』に連載された。司馬の歴史小説としては、最後期の作品になる。北条早雲の生涯は、特に前半生について良く分かっていないことが多く、諸説が認められるようだが、本作では当時の研究を反映させた"新説北条早雲"といった趣がある。ただあとがきで作者が付記しているように、想像で補っている部分も多々あるし、史実を曲げない範囲で、独創的な解釈も試みている。史実を追うだけでは小説にならないから、そこに歴史作家としての力量が問われるのだろう。その点、本作はNHK大河ドラマの候補に挙げたいほどの面白さがある。
中巻からいよいよ早雲が駿河に下る。かの地で孤立する"妹"北川殿とその子、竜王丸の危急を救わんがためである。従者をひとりも持たない早雲は、かねてよりの盟友・田原郷の荒木兵庫と山中小次郎に駿河への下向の供を求める。のちに大道寺太郎、更に伊勢で勇士三人が加わった計六人と早雲は、伊勢で神水を酌み交わし、同士の誓いをする。三国志の桃園の誓いもさもありなん。いよいよ早雲の一代事業が始まる。
Posted by ブクログ
未だ箱根にたどりつかず、舞台は駿府と丸子。
義忠の子どもはまだ幼く、遠縁の今川新五郎範満が駿府城に居座って実質的に駿河の支配者となっている。
彼の後見は関東公方の扇谷上杉家。
今川の嫡子であり、伊勢家の血を引く竜王丸を守るため、早雲は駿河に行く…のだが、これが11年間も守備一辺倒なわけです。
竜王丸の命が奪われないよう、丸子の館に住まわせ警護する。
自分は江戸や鎌倉からの兵を駿河に入れないよう沼津の城に住み、関東各地の情報収集に余念がない。
生まれの良さだけで土地を治めることができない世の中になりつつある。
早雲はそれを見極め、急速に力をつけ始めた国人、地侍、そして農民を大切にするように竜王丸を教育する。
のはいいけれど、やはり対外的にはもっとパフォーマンスを見せた方がよいのではないかとじりじりする。
この時代の礼法を仕切る名家、今川家と伊勢家の血を引いた子なのだから、いくら弱体化しているとはいえ、正統性を強く訴えたら天皇のお墨付きくらいはもらえたのではないだろうか。
ましてやその後、早雲は小笠原家の娘を妻にするのである。
この三家が後ろ盾になれば、結構勝ち目はあったと思うんだけどなあ。
史実だからしょうがないか。
早雲の弓で敵の大将を斃し、無事竜王丸が守護として立つところでこの巻は了。
箱根は遠いなあ。
というか、今のところ早雲は竜王丸改め氏親を立てることに腐心して、自分が前面に出ることが考えていない。
でも後北条家はその後今川家と並ぶ戦国大名になるんだよね。
どこでどう道が分かれたのか。それとも繋がったままだったのか。
次が気になる。気になる。
この巻で気に入っているのは、太田道灌と早雲の交流。
互いを認め合いながら、敵味方でいる。
敵味方なのに礼を尽くして清廉な付き合いをしていた二人だが、私心のない道灌の器の大きさを恐れた主家が道灌を弑する。
正直なだけでは生き残れないのだよね。
そう意味で早雲はしたたか。
Posted by ブクログ
中巻では早雲が京を離れ駿河に下り、今川義忠の嫡子・竜王丸を後見し、とうとう今川新五郎を討つ。討伐の舞台設定も興味深い。
当時の加賀藩の政情の考察は、当時の権力構造の一端を知ることにもなり、早雲の治世のヒントを窺うことができる。
最終巻が楽しみだ。
以下引用~
・それまでの城といえば山城で、山塞というようなものにすぎなかったが、江戸城は平地に設けられたという点で画期的であり、かつ自然の地形と人工の堀を掘り、土居を築き、さらには複数の郭を組み合わせることによって、防御力の点で従来の居館とはまったく異なる土木を独創した。
道灌の名声の何割かは、かれが設計した斬新な構造をもつ江戸城が負っている。
・この無用なさわぎを可能にしているのは、貧しかった前時代~鎌倉の世~とは異なり、国々に蓄積された富というものであったろう。その富は守護の富ではなく、本来、前時代では侍の階級ではなかった国人の富であった。さらには地侍、大百姓の富で、それらの家々、一族がたがいに相続争いをするとき、すさまじいエネルギーになってあらわれてくる。
早雲は、この時代の本質をよく見抜いた数すくない人間のひとりだった。
・室町幕府を興した足利尊氏は、公家の権威と銭の力で立っている南朝に対し、農村に基礎を置いていた。おりから諸国の農村は、農具の進歩と普及、品質の改良などによって空前の活況を呈していた。諸国の武家はここに根をおろし、尊氏を推戴し、過去のばけもののような公家や社寺に対抗した。
・室町の後期のこの時代ともなれば、百姓が数十戸あつまって一向宗の寺をたて、僧とその家族を養うまでに、農民の経済力がたかまったのである。蓮如は、そこに目をつけた。越前もさることながら、加賀は圧倒的に門徒の国になった。とくに、一弐世紀前に開拓された加賀平野の農民は富裕で、よろこんで村々に寺をたて、僧をまねいた。
・早雲にとって、加賀平野でおこっていることは、局地的な異変とはおもえない。
Posted by ブクログ
全巻通読後のレビューです。
代表的な下克上の大名である、北条早雲が主人公。
室町時代(応仁の乱以降)の様子が、政治的状況以外のこともよく書かれていて、非常に参考になる。
それに和歌も登場して、日本史や古典文学に興味のある人には、なかなか楽しめる作品になっている。
早雲の前半生は史料がないため、筆者の創作となっているが、これもなかなか楽しめる。
また、当時にあって、早雲の思想の新しさも、この作品を一際輝かせているし、早雲が駿河に入って以降の合戦の様子も生き生きと描かれており、いかにもその状況が目に浮かんでくるようであった。
小田原北条氏五代の礎を築いた早雲の領国統治の方針は、現代にも通ずるものがあるのではないか、と思った。
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