あらすじ
「歴史はときに、血を欲した。このましくないが、暗殺者も、その兇手に斃れた死骸も、ともにわれわれの歴史的遺産である。そういう眼で、幕末におこった暗殺事件を見なおしてみた」(「あとがき」より)。春の雪を血で染めた大老・井伊直弼襲撃から始まった幕末狂瀾の時代を、清河八郎、吉田東洋など十二の暗殺事件で描く連作小説。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
【司馬遼太郎幕末短編再読①】
2000年に購入してから幾度目かの再読。
幕末に起きた12の暗殺短編集。
あとがき『時代が血を欲した』
酷いけれど、きっとそれが事実であり、大きく歴史を動かしたその躍動感が印象に残る作品。
司馬遼太郎の題目の付け方は絶妙。
Posted by ブクログ
あとがきで著者は「暗殺だけは、きらいだ」と語る。そんな著者が幕末に起こった暗殺事件を記した連作短編集。
普通に考えれば、暗殺なんてものに政治力や体制変革を期待するもんじゃない。むしろ、暗殺によって変わってしまうような社会や組織は遅かれ早かれ、変わってしまうものだし、ろくなものじゃなかったのだろう。
が、幕末はそんな暗殺が評価された時代であり、志士たちは世直しになると信じて暗殺を企画し、実行し、死んでいった。
本作品に登場する暗殺の当事者の多くはバッドエンディングを迎えている。政治判断もないし、自身の将来も考えず、暗殺に没頭する彼らに対して爽快感や死への同情も起こらない。司馬作品にしては、ちょっと異色の味わい。
結局、亡くなった彼らと今知られている幕末の英雄たちとの違いは運良く生き残ったかどうかだけ。伊藤博文や桂小五郎、田中顕助など教科書に載るような有名人の扱いは本書では冷たい。
Posted by ブクログ
幕末に起こった暗殺事件を題材にした短編小説集。
ワザワザ小説集と言うような書き方をするのは、事件自体は本当に起こった出来事であり、歴史的検証や登場人物の後日談等も丹念に綴られている為うっかりすると史実かと思ってしまう程臨場感タップリのお話ばかりである。
もっとも幕末の諸藩の立場や個々の事件に関しての予備知識が無いと読んでいてもつらいかもしれないマニアックな事件が多い。
筆者自らあとがきで「歴史書ではないから、数説ある事柄は、筆者が、この方が真実を語りやすいと思う説をとり、それによって書いた。だから、小説である。」とあるので史実とは多少違うところも有るだろうし、登場人物の人間関係や心の動きなどはかなりの部分筆者の推測が入っているだろう。
恥ずかしながら、司馬遼太郎さんの作品は初めて読みました。
やはり日本を代表する作家の文章は上手い。物語にぐいぐい引き込まれます。
個人的には短編集の前半の方が好きかな。登場人物もどこかしら凛としたところが感じられます。
後半の主人公達(特に幕末を乗り切って明治まで生き延びた人達)には今ひとつ感情移入が出来ませんでした。
なにはともあれ面白い本でした。
Posted by ブクログ
幕末から明治にかけてその変遷に関わった武士と暗殺を描いている。
著者は暗殺に対して非容認の態度で臨んでいる。
あとがきでも
「暗殺者という者が歴史に寄与したかどうかを考えてみた。
ない。」
としているが、
「このましくないが、暗殺者も、その兇手に斃れた死骸も、ともにわれわれの歴史的遺産である。」
とも書いてある。
そしてそんな暗殺事件の中で「桜田門外ノ変」のみは
「暗殺という政治行為は、史上前進的な結局を生んだことは絶無といっていいが、この変だけは、例外といえる。」と述べ、この事件の明治維新への大きな役割を認めている。
ならばきっかけを作ったといえる井伊直弼も日本の変革の立役者のひとりといえるのかもしれない。
Posted by ブクログ
あとがきにあるが初期の作品であり、想像するにまだアシスタントは少なかったろう。しかし、自力で歴史を調べたのであろうがその濃密さは後の作品同様で細やかなエピソードでも取り上げ暗殺者達の生き様とその時の状況を浮き彫りにしている。それぞれが短編でありながらも有名無名を併せ数多くの人物を登場させ読み応えがある。
田中顕助のみ3編に登場しているが、作者がよほど気に入ったか、あるいは自叙伝やインタビューなど多くの資料が残っており書きやすかったからか。最後の攘夷志士がとても程よい笑いもあり悲壮感ありで殊更味わい深い。
Posted by ブクログ
生きているものが勝ち組。死んだらそこで終わりなんだと思った。無駄死にはしたくないなぁと思ったら自分の人生目的なく生きていることに恥ずかしさを感じた。人を殺した人が総理大臣なんて、今じゃありえん話だな。
Posted by ブクログ
幕末を舞台に暗殺者たちが主人公の物語を集めた短編集。
もちろん小説ではあるのだが、こんなにも暗殺者のエピソードがあるのは驚き。
井伊しかり、龍馬しかり、大久保しかり、幕末の動乱の側には必ず暗殺者が付いて回ることを実感させられる。
筆者は暗殺が人のかざかみにもおけぬほど嫌いと言っているが、だからこそ暗殺者たちのことを良く理解し明らめ描いたのだろうか。
倒幕派、佐幕派、どちらにもそれぞれの言い分、正義がありそれを信じて動いた結果が暗殺という形に現れた訳で仕方のない必要悪とも言えるのかもしれない。
大河のような表舞台の歴史エンターテインメントだけでなく、このような歴史の裏の顔もまた面白いものだ。
Posted by ブクログ
古い本。
暗殺短編集。
幕末それなりに知っているつもりだったが知らない話ばかりであった。
後世に名を残した人も意外と遅咲きだったり苦労してたりといったエピソードが印象的であった。
そして、乱世はチャンスも多いが、生きるか死ぬかの世界でそれを分けるのは運であることも強く感じた。
生き残ることの大切さ。
Posted by ブクログ
〔龍馬がゆく〕が維新史の陽の部分なら、この作品はまさにその陰の部分を描いた作品。描き出されるのは龍馬の華麗なる幕末ではなく、血にまみれた暗殺の幕末‥。
ほぼ同時期に書かれたというこの2作品‥司馬さんが幕末を書くことがこの2作品に集約されている気がする。
Posted by ブクログ
幕末がいかに乱世だったかということがよくわかった。特に京都でいかに暗殺が行われたがよくわかった。特に桜田門外の変は歴史の教科書には絶対に出てこない話でなかなか面白かった。土佐藩田中顕助や吉田東洋、岩崎弥太郎が出てきたり、長州藩の桂小五郎、伊藤利助、井上聞多が出てきた。
Posted by ブクログ
幕末の暗殺に関する短編。書の中で一番印象だった言葉は(一流の人間は死んで残ったのは三流の人間だった。)くだり。多くの歴史小説を読んだか本当にそうだとうなづけた。司馬遼太郎はきちんと取材してあるので話に重みがある。
Posted by ブクログ
春の雪を血で染めた大老井伊直弼襲撃から始まる幕末狂瀾の時代を、十二の暗殺事件で描く連作小説。
歴史はときに血を欲す。
暗殺者も凶刃に倒れた死骸も、共に我々の歴史的遺産である。
これも何度も読んでます。ww
Posted by ブクログ
ときどき、無性に歴史小説が読みたくなる。今回は大好きな司馬遼太郎作品のなかから、たまには短篇をと思い本作をチョイス。表題どおり幕末を舞台にしたこの短篇集は、暗殺にスポットライトを当てた作品ばかり12篇を収録している。内容は、桜田門外の変のような有名な事件や、桂小五郎(木戸孝允)や井上聞多(馨)のような有名な人物を主題にしたものもあるが、いっぽうではじめて耳にする事件や人物も描かれており、それ自体が歴史好きとしてはまず面白かった。また、井上や桂などのエピソードも、知っているものもあったがやはり筆力が一流なので、面白く感じずにはいられない。暗殺が主題ということだが、そこには血なまぐささよりはむしろそれぞれの熱い想いがこめられており、たんなるエンターテインメントを超えた面白さがあった。それと同時に、深く考えさせられる部分もある。歴史の教科書では、桜田門外の変すらほんの数行の記述に終わり、取り扱われてさえいない幕末の志士たちも多いけれど、暗殺ひとつとってみても、そこには多くの人物のさまざまな想いが詰まっていて、複雑な権謀術数を踏まえた結果として暗殺があるのであり、そういう背景は、教科書ではけっして知ることができないので、そこまで知ったうえで「幕末」というものをあらためて考えてみると、簡単には言い表せない複雑な気持にもなる。やっぱり人間ドラマの部分が、歴史小説の最大の魅力だと思う。本作もその要素がたっぷりと含まれているという点で、文句なしの傑作である。
Posted by ブクログ
幕末の時代にピュアに筋を通す生き方をしたか、したたかに時代の潮流にのり、カメレオン化したか、後者の方が明治まで存命し位までついているように思う。
蛤御門ノ変の後、逃げ隠れする桂小五郎(のちの木戸孝允)を描いた「逃げの子五郎」。明治元年に英国公使の列に切りつけた朱雀操と三枝シゲル(草冠に翁)は、その罪として平民に落ちさらし首となった「最後の攘夷志士」、三ヶ月前では烈士と称えるられたはずで、司馬さんも「節を守り、節に殉ずる」生き方として心よせている。
婚礼資金の借りと「刀どおしが兄弟」と言われ坂本竜馬の仇討に加担するお桂と後家鞘(後の土居道夫大阪府県知事)。その個人的な気持ちの繋がりが暗殺する理由なのがさらに竜馬の魅了を増しているようで、好きな作品「花屋町の襲撃」
Posted by ブクログ
幕末とひとくちに言っても生き残って栄達を手にした人については
美談が山のようにあっていかにも偉人伝のように語られ
歴史の教科書にすら名前が残っている。
ただ、「そんないい話ばっかりなわけないじゃん」とナナメから観てしまう人間にとっては
この本に描かれた景色こそ幕末だったんだと思えてしまう。
ひとかけらの運やタイミングのズレ以外に彼らの明暗が分かれた理由がなさそうなところがまた、何とも言えない遣る瀬なさ。
Posted by ブクログ
血なまぐさい幕末を暗殺というテーマでまとめた短編集。司馬遼太郎さんがあとがきで暗殺はきらいと書かれていたように暗殺が行われたことにより歴史は動いたのだろうか?
Posted by ブクログ
桜田門外の変から始まり、幕末の暗殺事件の連作になっている。歴史小説は要所に若かりし頃の偉人が出てくるから面白いが、本作はあまり知られていない人間が多く描かれている。
「土佐の夜雨」「逃げの小五郎」「死んでも死なぬ」の3編がなかなか面白かった。「死んでも死なぬ」には、小心者の伊藤俊輔(博文)が登場する。
「最後の攘夷志士」では、志士たちが倒幕のために攘夷思想を利用された末路で、少し切ない。
幕末小説を読んでいて面白いのは、のちの子爵だの男爵だのとカッコ付で書いてあったり、剣の腕はなんたら流の目録だのと紹介されるのがちんぷんかんぷんで、果たして凄いかどうかなかなか汲みきれないところ(笑)
Posted by ブクログ
幕末の動乱期に数多く起こった暗殺事件を取り扱うことで,その時代の雰囲気や人々の思いといったものに迫っている.あとがきの中で,司馬遼太郎氏本人は暗殺のことを否定的にとらえていると語っているが,同時に,時代の大きなエネルギーが噴出した場でもある暗殺を描くことによって時代の雰囲気を語ることができるとも語っている.私もこの解釈に賛成で,今まで流れをつかみ損ねていた感がぬぐえない幕末という時代を,この本を読むことで少しだけつかむことができたように感じる.
Posted by ブクログ
1963(昭和38)年刊。
幕末の頃の、攘夷運動などが盛んになりしきりと「暗殺」が流行した時勢を題材とした歴史小説集。司馬遼太郎さん自身は「暗殺は嫌いだ」と思いながらこの連作を書いたそうだ。
文体とか書法に独特な癖があるが、流麗に話が進行していく。そんなに読みやすい方ではないと思うが、世には熱烈な司馬ファンが相当数いるらしいから、人を夢中にさせる魅力があるのだろう。
かなり史実に基づいて書いているようだが、もちろん、人物に命を吹き込みしゃべらせたり独白させたりするにあたってかなりのフィクション化が施されている。当然そこも作者の歴史観によってコントロールされており、全体として世界が統一されている。
読んでみて、面白かった。読むのはそんなにスピーディーにはいかず、ワクワク感も強くなかったが、これで長編であれば、もっと夢中になって読んだかもしれない。しかし司馬遼太郎の長編は何巻にもわたる「大長編」が何タイトルもあるのだから、なかなか手を出しにくい。
Posted by ブクログ
坂本竜馬や高杉晋作、大久保利通、西郷隆盛などなどメジャー以外にも多くの人々が幕末から明治にかけて、激動の事態を生きていたことを改めて思い起こしてもらった。
Posted by ブクログ
本書は再読だ。
というのも以前読んだことがあるはずであるのに、ほとんど記憶に残っていなかったので、「も一度読みだしたら思い出すだろうか」という気持ちで再度手に取った。
司馬遼太郎の短編、全12編。あとがきを読んでわかったことだが、これは幕末の「暗殺」をテーマとしたショート小説集だ。たぶん、前回はあとがきを読まなかったのかもしれない。
その中で司馬遼太郎氏はこう語っている。「書き終わって、暗殺者という者が歴史に寄与したがどうかを考えてみた。」・・・「ない」と。
その中で著者が、これだけは例外という、歴史を躍進させた暗殺事件「桜田門外の変」から本書は始まる。そして新政府が誕生するまでの時代にあった暗殺事件を描いている。
本当に幕末史の好きな読者なら、ある意味史実の確認という意味でマニアックに面白いのかもしれないが、自分のようなサワリで満足するタイプの読者には、正直2度目も、それほど面白いとは感じませんでした。
やはり胸の底に信念を抱き、時代をぐいぐい変えていく人物にスポットが当てられた小説には、自身もぐいぐい引き込まれるが、「斬って時代を変えよう」という安直に走る暗殺者にいくら焦点を当てても、魅かれるものがないだろうなぁ。
桂小五郎が逃げ上手だったこと、井上馨がゾンビのような生命力の持ち主だったこと、そんなコマギレ情報が頭の片隅に少し加わりました(笑)。
でも、もう三度目はないだろうなぁ(笑)。
Posted by ブクログ
山中に隠遁でもしていなければ何とも物騒騒然とした世相で、想像するほどに空恐ろしい。攘夷提唱なぞ到幕派の因縁かと思いきや、佐幕派も唱えていたり、とにかく狂乱、剣呑であること極まりない。いずれの側にせよ明日の命は知れず、斬るか斬られるか。暗殺事件、というより暗殺者を描いた12話。
Posted by ブクログ
新選組のマイブーム経由で読んでみた。
自分はまだ幕末の知識が浅いので、背景はうっすらしか分からず本作を十分に楽しめなかった。
また歴史の知識を身につけた後、再読してみようと思ふ。
Posted by ブクログ
時間に限りがあり、最後まで読めなかった...。
司馬遼太郎の本ということで、とにかく辞書を引きまくりながら読みました(笑)
様々な人の生き様を魅せてもらいました。
やっぱり複雑な心境です、今の平和な世を生きるわたしにとっては。
歴史からもっと私たちは学び、そして未来を今よりもよいものにできるよう努力せねばならないと思った。
Posted by ブクログ
暗殺だけは、きらいだ。という著者が書いた暗殺の物語。 暗殺は殺される人間がどんなに嫌いであっても殺した側はヒーローにはなり得ない。それはフェアじゃないからなのか何なのか。時に時代が必要とすることなのかもしれないけれど、私もやっぱり暗殺は好きではないらしい。