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「新春漫語」「綿菓子」「古本の街のいまむかし」「学生時代の私の読書」といった身辺雑記から「自作発見『竜馬がゆく』」「『翔ぶが如く』について」自作について、「文化と文明について」「日韓断想」「バスクへの尽きぬ回想」といった地域、歴史への想いなど、折りにふれて書かれた、厖大な量のエッセイから厳選した七十一編。森羅万象への深い知見、序文や跋文に光るユーモアとエスプリ、弔文に流れだす、人間存在へのあふれるような愛情と尊敬――。日本人の高潔さと美しさを見つめた視線の先には何があったのか。司馬遼太郎という作家の豊穣な世界に、あらためて酔う一冊。
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Posted by ブクログ
毎夜寝る前の30分ほど読んでいましたが、この本を読むと不思議に神経が休まり、安眠に導いてくれるのです。
500ページ以上のボリュームがありますが、司馬遼太郎の豊穣な世界に改めて酔うことの出来る一冊です。
以下興味を持った箇所の一部です。
『裾野の水』
「かつて『箱根の坂』という作品を書いたとき・・・富士の描写については自分の臆病さがつらくなるほどで、できるだけそれに触れることを避けた。実をいうと、西にいる者にとっては、富士ほどわかりにくい山はない」
『概念! この激烈な』
「私には、物事を悲観的に見たがる傾向はない。しかし朝鮮・韓国人と日本人の集団対集団の間柄については、楽観的気持ちを持ちかねている。隣人として、たがいの文化と歴史を理解し、尊敬しあえるときがくるのは、百年以内ではとてもという気持ちがある・・・(略)・・・十五年戦争の時は、朝鮮人の個人と尊厳の象徴である姓名さえとりあげ、かつ日本語を押しつけ、さらには強制労働に就かせ、多くの人々を死や一族離散に追いやった」
司馬遼太郎の慧眼には感心する。
一方で戦後世代としては、理解は出来るのだが、朴槿惠大統領のように「謝罪!謝罪!」といまだにそれを執拗に言われても・・・。
『浄土ー日本的思想の鍵』と『日本仏教小論』は、仏教および親鸞の思想についての力作である。これまで親鸞についても浄土真宗についても興味がなかったが、これほど分かりやすく噛み砕いて、かつ興味深く読ませるものに出会ったことはない。
「釈迦はキリストのように救済は説かなかったのです。釈迦は解脱を説いたのです。解脱は禅宗の悟りと同じで、それは文字を用いたり、言葉で説明することでは果たせないのです。ですから釈迦が何を言ったか、釈迦はどういう思想を持っていたのか、よくわからないのです」
また歎異抄の『善人なほもて往生をとぐ、いはんや悪人をや』については「叡山の僧侶で、非常に秀才で学問があり精神力と体力のある人は解脱できる、これを善人というのです。しかし、親鸞はそんな人間は絶無か、めったにいないと思っている・・・どうしても魚が食べたい、奥さんがほしい、道を歩いているとアリを踏んでしまう。稲の害になるイナゴは殺さねば農民は生きてゆけない。これら全部悪人なのです。そのときどきの用語なのです。明治以降われわれはキリスト教的になり、悪人、善人をクリスチャンでもないのに西洋概念で見るようになりましたが、親鸞の言う悪人、善人とは、言語内容が違うのです。善はいまの言葉で言えばとびきり良質の人間、悪はいまの言葉で言うと普通の人間という意味です」
これほど物事を易しく言う人は稀有な存在なのかも知れない。
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