Posted by ブクログ
2012年08月30日
司馬遼太郎版「国姓爺合戦」というべき傑作。
島原の乱の数年後、世は将軍家光のもと幕藩体制がかたまりつつあった。
主人公の浪人剣客 浦安仙八は、怪しげな術を使う大盗禅師の導きにより、幕府転覆を狙う計画に加担させられるのだが・・・。
タイトルの大盗禅師をはじめ、由比正雪、鄭芝竜、鄭成功や、幕府隠密、...続きを読む両性具有の美女など多彩な人物が織りなす群像劇が幕を開ける!
国内に充満した浪人を糾合し、幕府転覆を狙う由比正雪。
幕閣は由比正雪に警戒の念を高めながらも、国内に充満する浪人問題に頭を悩ませる。
一方支那では、南下する女真族に追いつめられた明朝は風前の灯火。忠国の念から立ち上がった海賊 鄭成功は、女真族に対抗するべく援軍の要請を徳川幕府に送る。
江戸・五島列島・廈門へと物語はスケールを広げながら男達の闘いを描く。
司馬遼太郎の小説は、膨大な取材と資料に基づいているため、歴史の解説が緻密である。
時折小説としては解説が多すぎるような印象をもつのだが、この作品のように虚実入り乱れた物語では、歴史解説が非常に効果的に時代の空気を伝えてくれる。
また、司馬遼太郎の小説には珍しく幻想的なシーンも多い。個人的には幕末の硬派な小説(やや時代論的に感じるが)よりも此方の方が好みに合った。
物語設定・登場人物の魅力・スケール感などどれをとっても素晴らしい。
ただし全集未収録作品といういわく付きの一冊でもある。
もしかして、司馬遼太郎本人はあまり気に入っていなかったのかもしれない。
司馬遼太郎のファンからしたら異質な作品にとられるかもしれないが、私的には最高のエンターテイメント作品だと思う。
伝奇小説好きの方んはオススメの一冊です。