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Posted by ブクログ
「街道をゆく」のかなり最後の方の1冊。つまり、司馬遼太郎さんの最晩年の本。
いや、実にわくわく面白かった。傑作。
もう、本当にほぼジャンル分け不能な本です。
一応は、「街道をゆく」ですから、旅行記なんですが。
他の「街道をゆく」もそうなんですけど、実は半分以上は、司馬さんの歴史解説エッセイとでも言うべき内容。
ただ、司馬さんの語り口のきっかけになっているのは、現場を踏んだ、現場を踏んで考えた、ということですから、そういう意味では旅行エッセイ…。
三浦半島についてなんですが、実は「伊豆、鎌倉、そして三浦半島」とでも言うべき内容。
そして、半分以上は、平安時代から鎌倉時代にかけての、「武士台頭の時代」とはなんだったのか。頼朝とはなんだったのか、みたいな話です。
これが実に、解剖的に俯瞰的に、わかりやすい言葉で語られて、実にガッテンな面白さ。
ミクロになって人体に入って、カラダの仕組みを解説されるような。
あるいは、スーパースローな映像でスポーツのワンプレーを見るような。
かんたんにまとめると、「土地を、耕作者開墾者(に近い者)が、所有する」という、ある種、切れば血が出るリアリズムの欲求なんですね。
平安末期の貴族の支配というのは、言ってみれば社会主義全体主義みたいな。全ては国営で、国が保有している。
そして、その国は、藤原家が仕切っている、みたいな。
それが煎じ詰めると、地方の耕作の現場に居て、力を持ってきたものたちが、
「なんであいつらのモノなんだ。おれたちのモノじゃん」ということなんですね。
ただ、泣き所は二つあって。
自家所有を、権威に対して守ってくれる親分。権威。名家。行政機関。
自家所有の避けられない事態として、土地争いが頻発する。それに納得できる裁定を下してくれる司法機関。
なんですね。
その構造に、自覚的だったのが、頼朝。その構造自体が、ものすごく斬新で、ものすごくリアリズムだった。
そういう意味で天才的だった。
求められたのは、行政機関、司法機関、としてのお神輿であって、第二の藤原家や平氏ではないんですね。
(そこに無自覚だったのが、義経…。というか、ほぼみんな無自覚だった)
その、平安時代から鎌倉時代への、土地所有のリアリズム転換というのが、「考え方全般のリアリズム傾倒」を呼んだ。美術ひとつをとっても、それが見て取れる。
司馬さんは、「そのリアリズム転換がなかったら、日本史はもっと詰まらないものだったに違いない」と、独特のふわっとした、同時にものすごくざっくり切り捨てる口調でつぶやくわけです。
そして。
頼朝が気づいていた、「幕府に求められている機能」を、共有できていたのが、北条政子と、北条時政と、義時だった。
それをさっぱりわかってなかったのが、頼朝の子供達だった。
なので、徐々に北条ファミリーに疎まれ、殺されてしまう。
血族の殺戮のあとにたたずむ、生母の政子の姿を思うと、一篇の小説を読み終えたかのような満足感。
後段は、横須賀、海軍のよもやま話もあって、それはそれで楽しく読みました。
けれど、なんといってもこの1冊は、「頼朝とそのファミリーの物語」が白眉。
伊豆方面、鎌倉方面へ遊びに行きたくなる読書でした。
Posted by ブクログ
はじめての街道をゆくシリーズ
話はあちらこちら、場所を変えて、時代を超えて飛んでいくので最初は戸惑ったが、そこにある物語へは引き込まれていきます。
三浦半島に焦点が置かれた本作では、鎌倉時代前後の話、横須賀=明治以降の海軍の話が多いです。
鎌倉時代前後の話
頼朝、北条氏の政治思想の中心にあるものを知りながら、そのおこりから体制強化の流れを捉えることができる。目新しく楽しむことができた。
海軍の話
陸軍と海軍の違いが、これもまた興りから知ることができ、その後太平洋戦争の終結までを新たな視点で捉えることができた。(海軍は明治時代から新しい文化を海外(イギリス)などから取り入れながら急速に作られたものであり、陸軍は旧来の土俗的な文化、仕組みなどが残っているという点。)
違う視点を学ぶことで、目の前にある材料、ここでは歴史は全く違うもので見えてくる。面白いなあと。
知らない話もたくさん出てくるけど、やっぱり大きな話しは面白いし、心躍らされる。
薩長同盟の会談の物語はかっこえーなーって思うし、日露戦争、太平洋戦争の話も面白いなーって。なんでだろ。
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