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Posted by ブクログ
「ニューヨーク散歩」と題しながら、短期滞在だったのだろうか、あまり土地にまつわる思索はすくなく(唯一、旅行記らしいのはブルックリン橋の建設秘話くらいだろうか)、紙幅の大部分がドナルド・キーン氏との交流の記録に費やされている。それはそれで興味深い小話に富んでいた。
特に、キーンさんのコロンビア大学での恩師、角田柳作氏にまつわる記述に強く惹かれた。アメリカで「日本学」を確立したのがこの明治人なのだという。「コロンビア大学では当時、日本語でセンセイと発音すれば角田先生のことにきまっていた」と、ある教え子は述懐している。「明治人」という呼称が許されるなら、司馬氏の文章から匂い立つ角田柳作氏の人物像ほど「明治人」と呼ぶにふさわしい人はいない。
さらに、群馬県は前橋高校の出身(わたしと同郷!)で、卒業した大学学部も一緒だったので、とても親近感が湧いた。
だが、この無名の巨人について知ろうとしても、著作がほとんど手に入らない。残念な限りである。
Posted by ブクログ
1994年刊。もとは「週刊朝日」に連載(93.3.5~6.25)。
タイトルはニューヨーク散歩だが、本丸はコロンビア大学のドナルド・キーン。そこに至るまでの散策が長く、内容もちょっと散漫。
ニューヨーク訪問は、ちょうどキーンのコロンビア大学退職の時期にあたっていた。キーンの半生が駆け足で紹介されている。コロンビアでの彼の師・角田柳作にも触れている。コロンビアの現役の日本文学研究者、バーバラ・ルーシュやポール・アンドラも登場する。読みどころはこの後半部。
ドナルド・キーンは京都に留学中に、同じ下宿の永井道雄(のちに文部大臣)、そしてその友人の嶋中大鵬二(のちに中央公論社社長)と懇意になった。キーンはその後鶴見俊輔とも懇意になる。司馬遼太郎は、この3人――永井と嶋中と鶴見――が同じような話し方をすることに気づいた。江戸弁丸出しの小林秀雄などとはえらく違う。なんと、3人は東京高等師範附属小学校の同級生だった。そして嶋中が明かすには、日本でのラジオ放送開始にあたって発声日本語の標準化(東京の山の手のことば)がはかられ、なんと、東京高師付属小が実験学級に指定されたのだという。余談として書かれているが、これはトリビア中のトリビア。
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