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江戸の道場をつぎつぎと破り、剣名もあがった千葉周作は諸国回行に出ることを決意した。まず目指すは当時、最大の剣門「馬庭念流」の本拠地、上州。かって、馬庭念流の剣客に敗れたことへの雪辱と、兵法の国・上州で名を売れば天下の剣は滔々として「北辰一刀流」になびくであろうと考えてのことだった。
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Posted by ブクログ
剣術を技術体系化し、剣道の礎を築いた千葉周作。僕には宮本武蔵より魅力的。その千葉周作が言葉の力(舌刀)も重視していたのは思うところありました。
こういう形での筆の置き方もあるのか。 却って余韻が残るというか、いい意味での切なさを感じるラストだった。 千葉周作の遺した、北辰一刀流の極意。 ほんの短い言葉でも彼が生涯貫いた心の有り様が見える。 自分の決めた道を真摯に生き通すということはいつの時代でも難しいけど そういう人は何年経った時代でも褪...続きを読むせずに讃えられるんだね。
千葉周作の伊香保事件を中心に描く。その後の神田お玉が池の道場開設も描かれており、幕末に近いところが分かる。子供たちが早世したのは残念。人間の幸せの量は人によって変わらないのかもね。剣術を合理的に教授するというのが、新奇性ということだった。
北辰一刀流を開いた千葉周作の半生。父親、幸右衛門の愛情がすごいです。竹刀、胴、面、籠手。今日の剣道様式を定着発展させたのでした。組太刀稽古の対。 それ剣は瞬速 心気力の一致
「剣は理から入るほうがいい」 というのが、周作の一貫した教授態度である。この若い流祖は、他の剣客のように哲学的用語をつかったり、剣と宗教と混同したような虚喝(こけおどし)な神秘的態度をいっさいとらない。 「剣は理である」 という態度を一貫してとった。剣禅一如とか神仏の現示などというようなことは口...続きを読むにもしなかった。 その点「小天狗鞍馬流」という流名の宗家を名乗っている鹿子木一閑の兵法に対する態度とはひどくちがうといっていい。 この点について一閑のさしまわした人物らしいのが、 「いかがでありましょう、剣はついに神仏の境地のものであると申しますが」 と、周作の存念をきいた。このころにはすでに周作の剣法は古来の剣法がもっていた神秘的権威をひきむしろうとするものだという評判が、世上に流布されている。 「その神仏の境地というものを、私はまだ知らない」 と周作は正直にいった。 「あるいは年をかさねれば私もそういう境地に達するかもしれないが、達したところでそれは剣法とは別のものだろう。憲法はあくまでも理である」 「しかし」 と、その者は神秘的立場から駁論してきたが周作は笑って、 「下駄の職人でも法華信者もあればそうでない者もある。法華を信ずればいい下駄がつくれるかといえばそうでもなかろう。いい下駄をつくる作らぬというのは、法華を信ずることと別のものだ。神仏の境などといっても撃ちあいに負けてはなにもならない」 といった。 この言葉は、伝統的な立場をとる鹿子木一閑に対し、そのまま挑戦の言葉になった。 戦国末期以来、ひさしく停滞していた剣法は、周作の剣理によってあたらしく再組織され、万人が上達しうる道が発見された。このことは世間が待ち望んでいたことでもあったのだろう。諸藩でもこれが問題となり、あらそって周作を指南役に招こうとした。 が、東条一堂は、 「浪人でいよ」 といった。登場自身がそうであった。一藩の需官や指南役になれば影響するところはその藩だけでしかない。浪人の自由な境涯においてこそあたらしい思想は天下に流布せしめることができるのだ、というのが東条一堂の意見であった。 周作はその通りにした。 諸藩はやむなく藩費による留学生として藩士を送り、周作に対してはそれらの教授料として捨て扶持をあたえた。尾張、加賀、肥後熊本、伊勢津、備後福山といった藩が、そういう関係を周作と結んだ。 周作の編みだした体系の特徴は、剣術教授法の一新にある。 「凡才でも一流たりうる」 という法であった。このため水戸藩の剣術水準は飛躍的にあがった。 周作には、子が多い。 もともと剣技は天分に俟つところが多いため、多くの剣客の子は必ずしも剣客になることができないが、周作の子どもたちだけは例外であった。 「それが北辰一刀流の特徴だ」 といわれた。教授法の理論がすぐれているため、普通の素質でも天才的な域にまでひきあげることができる、ということの現実の証拠となった。 司馬遼太郎は坂本龍馬、高田屋嘉兵衛などの合理主義精神をもつ人物の技術的能力に着眼して、その異能の人が歴史を衝き動かし、その流れを変えるに至る人生軌跡を好んで描いている。 すぐれた鉄砲の技術者、雑賀孫一が奇数の鉄砲集団の技術を諸大名に売り込んで活躍するありようをとらえた「尻啖え孫市」、西洋の軍事技術を重視し、ミニエー銃、ガットリング機関砲を積極的に導入した、越後長岡藩の開明的な河合継之助を描く「峠」、医学と蘭学という技術学問に通じた長州藩の西洋式の軍事技術者、大村益次郎を通して、革命期に登場する人間と技術という主題を鮮明に映し出した「花神」など、数えあげると、〝技術史観〟による小説は実に多い。〝技術史観〟は、わたくしの造語で、司馬文学を解き明かすキーワードだ。(磯貝勝太郎)
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