【感想・ネタバレ】功名が辻(四)のレビュー

あらすじ

関ケ原決戦――徳川方についた伊右衛門は、この華々しい戦でも前線へ投入されたわけではない。勝ち負けさえわからぬほど遠くにあって銃声と馬蹄の轟きを聞いていた。しかし、戦後の行賞ではなんと土佐二十四万石が……。そこには長曽我部の旧臣たちの烈しい抵抗が燃えさかっていた。戦国痛快物語完結篇。

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戦国時代、土佐24万石を手に入れた山内一豊と、その妻・千代を主人公とした物語。
律義さだけが取り柄の一豊を、千代が上手く導きながら徐々に出世させていくところがとても面白かった。
土佐の領主となり身分が上がったことで、少しずつ変わっていく一豊と、その変化に戸惑う千代の姿には複雑な気持ちになった。
身分が変わっても初心を忘れてはいけないのだと強く感じた。

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2025年11月28日

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全体を通して読みやすい物語だった。
千代の先見の明もしかり、織田、豊臣、徳川と次々と変わる時代の流れを読み、人の心を読む力が凄い。それに山内一豊の律儀さ謙虚さが合わさり、2人なら夫婦仲良い掛け合いが面白い。2人が死ぬまでの話はかなりすっ飛ばしてる感あり、物語はあっさり終わる。見所は豊臣から徳川へ仕え、全く縁もゆかりも無い土佐の藩主に命じられるまでの道のりを追う所だと思った。

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2023年09月23日

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全4巻の物語の完結巻。山内一豊のことはよく知らなかったが、彼が千代のサポートのもと、見事土佐の大名に任ぜられるところまでは、痛快な話だった。しかし、土佐土着の武士、一領具足たちの反乱が治らなかったため、その指導者たちを騙し討ちのようにして虐殺する場面は悲しかった。
最後に、長い「おわりに」がある。一豊と千代の別れの場面は、自分のなかでは司馬遼太郎の作品中、一二を争うぐらい感動の場面だ。

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2022年11月23日

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律儀だけが取り柄の暗愚な国主。
本書を読んで、それ以外のイメージが湧かない。
堂々たる、千代の手綱さばきだけがクローズアップされる。
司馬遼太郎には珍しく、女性が主人公。
繊細にして、大胆な千代の性格を見事に描ききっている。

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2020年10月04日

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もう、何年前になるだろうか?歴史系小説が好きになったきっかけの本。最近、歴史年表が気になっていて本書も再読してみる。再読してもやはり面白く、特に後半はグググッっと引き付けられる。

織田、秀吉、家康に使えてきた山内豊一の話。機転の利く妻の協力もあり、最後は四国の大名にまでなる。

織田、秀吉、家康と歴史の流れもわかるので、日本史初心者にも良い書物なのではないだろうか。

【感心】
「関ヶ原の勝利の一因は、山内対馬守夫人と細川越中守夫人に多くを負っている」

現代にも通じるところがあるな
議場が合戦、決まれば実行するだけ

男が自分の技能に自信を持ったときの美しさと言うのは格別なものだが、自分の位階に自信を持った場合は、鼻持ちならなくなる。

豊一と言う男が現在の高知市を作ったわけだが、それはまったく土地を造成したと言えるほどの土木工事であった。

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2015年05月04日

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ネタバレ

関ケ原決戦―徳川方についた伊右衛門は、この華々しい戦でも前線へ投入されたわけではない。勝ち負けさえわからぬほど遠くにあって銃声と馬蹄の轟きを聞いていた。しかし、戦後の行賞ではなんと土佐二十四万石が…。そこには長曽我部の旧臣たちの烈しい抵抗が燃えさかっていた。戦国痛快物語完結篇。

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2013年11月16日

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関ヶ原で勝ち、土佐一国を拝領した時までは夫婦二人三脚で階段を一段一段駆け上がってきた努力が報われて良かったと読んでいて嬉しくなった。
しかし、土佐入国後に一豊のあまりの変わりようにガッカリさせられた。国主になったプレッシャーがあったのかな。最後は読んでいて寂しくなった。
土佐独自の身分制度が出来上がっていく背景や流れを理解することができた。
一豊の一生を見ていて、人間は律義さ、実直さ、謙虚さ、懐の深さ、そして夫婦の絆はとても大事だなと思いました。

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2013年09月07日

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ネタバレ

関ヶ原の合戦を前に徳川家康に城や領地を差し出す伊右衛門。関ヶ原の合戦では前線へ投入されず、勝ち負けすら分からないほど遠くにあって銃声と馬蹄の轟を聞いているだけだったにも関わらず、恩賞は土佐一国二十四万石。しかしそこには長宗我部の旧臣たちの激しい抵抗が…。

関ヶ原までは伊右衛門も千代も可愛らしい感じで良かったが、土佐を手にした伊右衛門の変わり方が…。

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2025年11月08日

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ネタバレ

胸が締め付けられる結末

種崎事件のあとの千代と一豊の話は、仲直りの様子が見えず、そこであとがきに入る。
千代の気持ちを考えると切なさや悲しさが襲ってくる。

途中までの功名を立ててるときは明るく楽しい話だったが、巧妙を立てて、一国一城の主となった四巻は千代と一豊の心が離れていく、いや、根底では繋がってるが、意見が分かれていく、そういう話になって、心苦しかった。

それでも、千代は一豊を、一豊は千代を、愛し続けていた、それは変わらなかったと思う。

長編と言いつつも、新聞の連載だったからこその、尻切れトンボのような語り口が、かえって、余韻を残す作品。

時代が経っても風化しない、いつでも読みたい本の一つであることに間違いはない。

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2025年09月26日

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実直で自惚れることのない、伊右衛門の姿は人生の指針になると感じていた。関ヶ原の合戦前の小山軍議において、伊右衛門が自分の人生を振り返る場面がある。
「よく生きてきたものだ。運が良かった。ワシには知恵がないが、千代達の助けを借り、場数を踏む中で動じない心を作り上げた。」と、
かくありたいと思った。
方で、土佐入国後の種崎浜事件に失望し、読むのをやめようかとも思った。反乱分子となりえる領民のリーダー格を相撲大会と偽り集め、楽しみに集まった70余名を全員虐殺したのだ。
失望の一方で、凡夫たる人間の両側面を見た気がする。

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2025年06月01日

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そして、最終巻。

終わってしまった。
一豊と千代との楽しい旅が。

歴史は苦手だが、歴史小説は好きだ。
命を賭して生き抜く様に熱くなる。

文句なしの面白さ。
司馬遼太郎、凄い。

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2025年04月06日

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人の人生とは不思議なものだなぁという印象が大きく受けた。

一豊は一貫して真面目でコツコツと積み上げていく、千代は独自の感性と時代の流れを汲み取る力でお互いに支えて登ってきた。そこには運も絡んだであろうことは明白であるが。

最後はどちらの考え方にも正解はなかったというと語弊があるが、どちらのやり方も間違ってはいなかったのではないか。しかし最善手ではなかったように思える。一豊も千代も年齢を重ねており、様々な思考の散りつもり、若々しく話を重ねていくというのが難しかったのではないか。
あそこでお互いの折衷案のような形を出せれば良かったのかなぁ。流れは変わったのか、変わらなかったのかは知らないが。

何事においても、自分を信じ、相手に耳を傾けて、自分を疑ってみる。この工程が大切なのではないか。

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2024年02月15日

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とても興味深く読んだ。
山内一豊が土佐の地を家康から拝領した理由、高知という名付けの意味、高知に入ってからの一豊と千代のすれ違い。
幕末、薩摩、長州と並んで勤王の志士をたくさん生んだ土佐だか、その背景は前者の二つとは違うような気がした。司馬氏の見解を聞いてみたいと思った。

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2023年10月21日

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歴史長編小説。
四巻やっと読めました。

律儀だけが利点の旦那(この言い回しは何度も出てくるが、作者が結構歴史人物をディスっていて最初驚いた)
を一国の主へと上手に導いていく千代の賢さが面白かった。
これは、会社の上司に対しても使えるかも、などと勉強になりました。

これから先どうなっやって出世していくのだろう、とワクワクしながら読んだ一巻が1番面白かった。


以前NHK大河ドラマにもなったそうですが見たかったなぁ。

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2022年08月13日

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ネタバレ

完結編。
しかし、この夫婦、最後は幸せだったのだろうか。
分不相応にも二十四万石の大名となり、しかも長曾我部の旧臣たちは山内一豊を認めようしない。
ヒステリックなくらい力で弾圧しようとする一豊と、懐柔策を提言する千代。
ふたりの思いは最後まですれ違う。

千代は後悔した。
身に余る褒賞を受け、上手く抵抗を抑える術を持たない夫を見て、鼻白む。
自分の提言を聞く耳すら持たなくなった夫を見て、こんなはずでは…と思う。

この二人には、どうも夫婦の間にある機微が欠けているような気がした。
千代が夫を操作する姿は、過保護な教育ママが息子を操っているように見える。
微塵も尊敬とかないよね。

築城に関しても、本職を差し置いて意見を言うのだけど、直接言うのではなく、伊右衛門の弟に入れ知恵をする小賢しさ。
「女の身で築城のことにまで口を出すなどとはいかがわしうございますから、康豊殿のお考えとして殿に申しあげなさい」だってさ。

しかし折々に顔をのぞかせる司馬遼太郎らしい目線。

「いつの時代、いつの場合でも、人間の十中八九は定見もなく風次第で動く、というのが正直なところ、浮世の姿でござるよ」

「人々の暮らしに希望をもたせる、というのが国主の政治のかなめどころではありませぬか」

何百年たっても、人の世とは変わらぬものよの。

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2021年04月27日

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真面目さだけが取り柄のパッとしない一豊が、妻の才女・千代に導かれながら戦国時代を生き抜き、土佐藩主に成り上がるまでの物語。
男の自分としては、不器用にもひたむきに立身を目指す一豊の生きさまに共感。
一方で、千代の眩しいほどの才覚に、時に感動しつつ時にイラッとするのも自分が男だからか。

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2021年01月03日

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功名の形は人それぞれ。
現代でも通じる生き方。
必死にがむしゃらに武功だけを求めていくだけじゃ、限界も見えるし、先が閉ざされることもある。
細く?長く生きた成功例。ただ、成功してもまたその先は沼。

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2020年11月03日

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山内一豊と千代の一代記。

山内一豊(伊右衛門)は千代の作品である

という軸に貫かれた作品。司馬遼太郎が描く主人公に共通する快活さや明晰や、人間的魅力は伊右衛門ではなくどちらかというと千代にそれが見いだされている。

出世や功名、その前提としての主人との関係というものを当時の武士、武将がどのように捉えていたか(江戸時代以降のいわゆる忠義や礼節重視のあり方ではない)ということを繰り返し描いてくれるのですが、こういう当日の「普通の感覚」的なものは、時代をつくった英雄による物語では描きにくいし、想像しにくいわけです。伊右衛門という一人の特別の才のない武士の目線で語られるからこそ、家を興すことに対する強力な執念や、戦場に赴く怖さや、一つ一つの判断の難しさが分かる。

また、この作品の価値は、『新史太閤記』では描かれなかった秀吉の晩年を描いたことにもあるように思う。(『関ヶ原』にも描かれているのかもしれませんがまだ読んでない)司馬遼太郎に「日本人の傑作」とまで言わしめた秀吉も、その晩節は非常に醜く、後世にもさまざまな禍根を残すものでしたが、その変容を「家を興す、残す」という戦国的発想から描き、かつ土佐入国後の伊右衛門とも重ねながら描いたのはなるほど、とうならせるものだった。

伊右衛門の土佐での国造りの影響がその後幕末に至るまでどのような影響を残したのか、それこそ圧倒的な竜馬びいきの司馬遼太郎がどのように結末を描くのかとドキドキしながら読み進めたがある意味拍子抜けするほど淡白な描き方でなるほど司馬遼太郎らしい、と感じる作品でした。

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2020年08月04日

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掛川城主6万石になった山内一豊(伊右衛門)は徳川方への忠誠を尽くし、関が原の合戦を経て、土佐二十四万石の領主になる。奥方・千代は大坂の屋敷に篭って関が原の合戦まで主人の帰りを待っていた。その後、土佐に住むことになるが、土佐の領主になった主人の変貌と領民への誹謗な行ないに千代の心は塞いでいく。シリーズ完結編。

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2019年07月20日

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愚直で正直者の伊右衛門が軍議での功を讃えられ土佐一国を食む。運もあるがやはり千代の存在が大きい。残念ながら24万石はその器量には大きすぎたらしく、種崎浜の悲劇となる。史実は少し違うようだが、この逸話で物語全体の印象か大きく変わります。千代が察知して悲劇を未然に防いてくれると願いつつ、はらはらしながら読み進めました。その後何事も無かったように“あとがき”は進みますが、これを境に一豊と千代の確執が深まったことでしょうね。
今回も戦国武将の逸話が散りばめられ濃密て読み応えがありました。知的好奇心を存分に満たしてくれる作者の作品を貪り読みたくなる衝動に駆られます。

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2016年10月16日

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山内一豊の4巻目。一豊が土佐に入り、国守となるまでだったが、国主となって千代と政策を練るのかと思っていたのだが、どうも守りに入ったような気がした。一豊を応援していただけに、残念な結末。しかし立場が付けば一豊のように守りの面も出てくるものなのか。物事様々な視点で考えないといけないと痛感した作品だった。

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2014年03月04日

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初めは千代の賢しら加減が嫌味で、一豊サイドも戦ばかりでつまらずあまり楽しめなかった。
2巻あたりから、戦国スターものの作品で語られない、秀吉衰退期や、関ヶ原で家康側につく人の様子などが描かれているところに面白さを見出した。
最後はかなしい。「竜馬がゆく」の上士、郷士につづいていく。
かっこいい!好きだ!おもしろい!という想いで(書き手も?)読み手も進んでいくタイプの小説ではなかった。

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2012年10月08日

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伊右衛門はもはや残りの春秋の多くもない生涯であるが、この最後の世の変動を機会に一国のあるじになりおおせてみたいと思っていた。(おれは太守、千代は太守夫人)という、まるで子供っぽい夢ではあったが男の生涯など、思ってみればその子供っぽい夢がかれを駆けさせる原動力になっているのではあるまいか。(p.86)
(ひととは強欲なものだ)と、千代はぼんやり考えた。一代できずいた身代は一代かぎりでほろぼせばよいのに、晩年になればいよいよそれを永世にのこそうという気持ちが強く動くようであった。特に大名家業というのはそうであった。家が滅べば、家臣は禄をうしなって路頭に迷う。この家業に関するかぎり家をつづかさねば、伊右衛門の創業は成功したといえないのである。(p.300)

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2020年07月15日

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土佐を得てからのすれ違いが凄まじい。
二人三脚でどうこうなるレベルを超えて出世してしまうと、自らの支えがなんだったのか分からなくなるほど眼が曇るのかと思うと、なんとも虚しく感じてしまう。

関ヶ原までは秀逸そのものだったと思う。

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2022年09月13日

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信長、秀吉、家康に仕え、土佐藩主に上り詰めた山内一豊とその妻 千代の物語。(小説では)ボンクラな一豊を千代が励まし、煽て、苦言しながらもワンチームで生きていく姿が、なんとも微笑ましい。
一豊のボンクラっぷりが、自分を見ているようで、なんだか親近感だわ。

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2020年02月07日

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大河ドラマにもなった大人気歴史小説の最終巻。この巻の本編では、関ヶ原の戦いから土佐での地位を築くまでが描かれ、その後「あとがき」として、主人公である山内夫妻の最晩年の様子が描写されている。本編のラストは後味のあまりよくないものであるが、これが本書をただの出世物語で終わらせない深みを与えていると思う。

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2018年10月09日

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自分だったら、たまたま、コネのおかげで、出世できたとしても、あんまりうれしくない。冷静に分析しすぎて、引け目を感じてしまうだろう。

分析すらせず、ただ素直に地位を受け入れる伊右衛門は参考にならないが、
分析したうえで、自分のこれからのために、手に入れたものを最大限活かす。そういう開き直りができたら、いいんだろうな。

ある意味千代も、伊右衛門に依存しているのか。

伊右衛門が土佐を拝領したときに、現地の人を採用していたら、明治維新でも何か変化があっただろう。土佐内で上士と郷士の間の軋轢なんてのもなかっただろうし。武市が処刑されることもなく、もしかしたら、長州・薩摩と肩を並べる維新推進藩になっていたかも。竜馬も、脱藩せず、土佐の中で・・・縮こまったままだったかも。

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2016年04月17日

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解説は成る程と思った。確かにあはれではなく、をかしという感じかもしれない。
人間なんてそんなものと言われればそうなのだが、千代も一豊も思考や性格が安定していないように感じた。感情に関する描写があまりないので、何を考えてその言動なのか、よくわからない時があった。
にしても、時代物っておもしろい。地名と照らしあわせて考えると、未だに昔からの流れが続いているのだと感じられる。

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2015年03月06日

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四巻は、関ヶ原の前哨となる奥州、上杉討伐のころから描かれる。
史書によると関ヶ原では山之内一豊は、さしたる槍働きがないとされるのにもかかわらず、土佐一国を与えられている。このくだりは、本巻のハイライトとも言えるものであろう。読者は、凡庸の中の非凡を山之内一豊の中に感じ、近親感を持って一巻から読み進めてきたと思う。千代の操縦にも上手く嵌り、誠に良く出来た山之内夫婦に理想を重ねていたかもしれない。しかし、司馬遼太郎は、そのような偶像視がいかにも人間の本質を捉えてないことを諭す。人間の器と地位との関係のバランスが崩れるといろいろ難しいということを最終巻では語っている。いろいろ考えさせられる一冊である。

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2015年01月07日

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それでも英雄に憧れる。だから全体の評価は3かな。織田、豊臣、徳川その三代にわたり生き延び、幕末までその家を残した山内家。家祖山内一豊とその妻。司馬作品では珍しい女性の主人公千代(実名はまつ)。

長宗我部作品も好きなので複雑。司馬作品では、戦国期の俯瞰図として良い。豊臣の功臣たちが徳川支持に変遷する、私には理解しずらかった部分の司馬さんの解釈は本作に最も詳しい。

藩翰譜、鳩巣小説、常山紀談にその引用があり、戦前の教科書には頻繁に紹介されていたとする名馬購入の話。面白い。知らない人が多いでしょう。(NHKの大河ドラマでやや復活)今やそれを貞淑良妻のモデルと捉えられない人が大半では無いでしょうか。

永井路子さんの解説で、司馬さん作品への解釈が拡がった。紫式部の「あはれ」と清少納言の「をかし」の対比説明。司馬作品の決定的な新しさと面白さは「をかし」にあると。徹底した客体視、中立の独立した視点。冷徹な観察。「をかし」の説明になるだろうか。それでありながら小説であって、その独立した視点には強烈な好き嫌いがある。

本作最終章。夏草の賦とともに、龍馬がゆくを読む前に読めるといいですね。

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2014年06月18日

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