【感想・ネタバレ】この国のかたち(一)のレビュー

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Posted by ブクログ 2023年04月03日

・日本の偉人の評価
・日本人及びその国の特性と成立ち
を司馬遼太郎の極めて主観的でありながら、
納得感があり、まるで会って話して来たかのような
語り草がたまらなく面白い。

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Posted by ブクログ 2023年02月19日

司馬遼太郎氏生誕100年でもあり、約20年振りに読み返してみました。
《この国のかたち》とても素敵な言葉です。いろいろな歴史的背景を踏まえ、政治、経済、社会、文化、生活等々今を生きる私たちに様々なテーマを投げかけ、考えさせられるとてもおもしろい本です。特に、亜細亜への考え方、太平洋戦争に至るプロセス...続きを読む、神や宗教感に対する考えは…。人も20年経つとものの見方がちょっとは深まるのでしょうかね‥‥

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Posted by ブクログ 2022年09月11日

十数年ぶりの再読にも関わらず、いくつかの章は印象に残っている。江戸時代の各藩の多様性が明治維新を産んだというあたりは再読して良かった。
土佐の藩風の倜儻不羈(てきとうふき)は博覧強記の司馬先生ならではの言葉ではないかなぁ

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Posted by ブクログ 2020年01月08日

司馬遼太郎が好きなので、今回は短編集を。
中世から第二次大戦にかかる日本史を、順不同でつらつらとかきつつも、その主張は明晰で分かりやすい。
息子にも読んで欲しい本。

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Posted by ブクログ 2017年03月03日

この国のかたち。第1巻。司馬遼太郎さん。

司馬遼太郎さん(1923-1996)が、晩年に文芸春秋に連載していたエッセイ。
歴史の逸話、地理、文化や宗教などの雑学が雑然と山積みされたオシャレな市場を、「へええ」と周遊する。そんな愉しみに頁をめくっていると、日本、この国の輪郭というか個性を見上げなが...続きを読むら散歩している気分になってくる。銅像に例えれば、横から見たり後ろから見たり。そして、この国のかたちを感じるためには、当然のように、他の国のかたちも感じなければ判りません。中国、インド、朝鮮、オランダ、などなど…日本と縁があった様々な国についての造詣を元に、「この国」のかたちが浮き出てくるわくわく感。
もちろん、それは、「だからこの国はよその国に比べて素晴らしい」という話でも無ければ、「よその国に比べて劣っている」という話でもなく。(ここンところがレアな貴重さであるところが昨今の悲しさか)

司馬遼太郎さんのエッセイは、どんなものでも読み易くアベレージが高いのですが、まとまっている感や、連続エッセイとして愉しめるお得さで言うと、司馬エッセイの中でも文句なく白眉。一家に一冊、永久保存版。

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●現在に至るまで、日本人のある一面のイメージを作っている、「儒教」「朱子学」について。その中国や朝鮮との比較。

●明治維新の基礎思想「尊王攘夷」自体が輸入思想である、というお話。

●明治日本、つまり帝国主義の加害者側に立って行く舞台裏の必死さ、オモシロサ。

●権威だけを持つ貴族の時代(平安)から、実際の農業を土地に密着して行う武士の時代へ。このリアリズムへの大転換が革命的に日本史を面白くした、という視点。鎌倉時代のオモシロサ。

●昭和10年~20年の、軍部主導の国家運営についての、分析というより、感慨というか怨嗟。これはもう、好む好まざるに関わらず、司馬さんの印鑑というか筆跡というか体臭みたいなもので、何冊かエッセイを読むと落語家の十八番のように耳タコになります。

●信長について、秀吉について、浄瑠璃について、仏教、孫文。経済、物流、文学から地理地形まで。「ブラタモリ」的な快楽も余裕で内包してしまう懐の深さ。



以下、本文より

いくつかは、司馬さん死して20年余、2017年の「この国」にぐっと刺さる警句になっている、と感じるところもあります。
「そんなことはない」と言いたいところですが…

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人間と言うのは、よほどな人でない限り、自分の村や生国(こんにちでいえば母校やひいき球団もこれに入る)に、自己愛の拡大されたものとしての愛をもっている。社会が広域化するにつれて、この土俗的な感情は、軽度の場合はユーモアになる。しかし重度の場合は血なまぐさくて、みぐるしい。

単なるナショナリズムは愛国という高度の倫理とは別のものである。

ナショナリズムは、本来、しずかに眠らせておくべきまのである。わざわざこれに火をつけてまわるというのは、よほど高度の(あるいは高度に悪質な)政治意図から出る操作というべきで、歴史は、何度もこの手でゆさぶられると、一国一民族は壊滅してしまうという多くの例を残している(昭和初年から太平洋戦争の敗北までを考えればいい)。

“正義”を一点設けて、それを論理づけ、ひとびとに実行を強いる体系―もっと粗々に言いきれば、イデオロギーーというべきである。

イデオロギーの常として、善玉と悪玉が設けられた。マルキシズムもふくめて、イデオロギーが善玉・悪玉をよりわけたり、論断したりするときには、幼児のようにあどけなく、残忍になる。

革命政権というのは革命思想を守るものなのである。あとからきた思想は、当然危険思想あつかいにされてしまう。

過去は動かしようのないものである。ただ、これに、深浅いずれにしても苦みを感ずる感覚が大切なのではないか。

組織というのは、たとえ目的がなくても細胞のように自己増殖をのみ考えるものだ。

日本が朝鮮に対して売ったのは、タオル(それも英国綿)とか、日本酒とか、その他の日用雑貨品がおもなものであった。タオルやマッチを売るがために他国を侵略する帝国主義がどこにあるだろうか。

本来の仏教というのはじつにすっきりしている。人が死ねば空に帰する。教祖である釈迦には墓がなく、おしなべて墓という思想すらなく、墓そのものが非仏教なのである。

日本はたとえばブータンやポーランドやアイルランドなどとくらべて特殊な国であるとはおもわないが、ただキリスト教やイスラム教、あるいは儒教の国々よりは、多少、言葉を多くして説明の要る国だとおもっている。


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何年前だか、一度読んだものですが、電子書籍化を機に再読。こういう短い章立ての素敵なエッセイが、スマホでいつでも読めるのはありがたいことです。

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Posted by ブクログ 2015年12月11日

学校で、歴史を学ぶ際にこういう話も入れてくれたら!と思う…教科書の歴史って流れが急で、覚えるだけになってしまう。特に大学で歴史を学ぼうとしなければ、余計にぶつぶつと切れた知識みたいになってしまって。
この年で、こういう本を読む。惜しいことをしたと思いつつ、今だから、ということもあるのだろう。

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Posted by ブクログ 2014年03月15日

面白い。日本の特徴、歴史的な歩みを、文化的、宗教的、教育的側面から記載している。
尊皇攘夷の起こりが、中国宋にあったこと。朱子学と結びついていること。
あとは、昭和の戦争、参謀に対する描写が面白い。第三話もよい。

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Posted by ブクログ 2024年03月08日

1990年に上梓されたエッセイ本。しかし、充分に読み応えがあります。どの章も重みがあり今を生きる私たちの標になります。
歴史的知識だけではその時代を理解できません。誰がいつどこでどうしたのか。何故そうなったのか…史実の背景を読み解く必要がありますが、これを読み教科書的のみで浅かった知識が広がり深まり...続きを読むました。
歴史小説を何冊も書いてきた司馬さんですが、それも明治時代まで。
あの昭和初期から敗戦に至るまでの日本史に猛烈に怒っています。
…ながい日本史の中でも特に非連続の時代、ーあんな時代は日本ではないーと理不尽なことを灰皿でも叩きつけるようにして叫びたい衝動が私にはある。…日本史のいかなる時代とも違う、“異胎の時代”とも表現しています。
日本陸軍、参謀本部の暴走の正体を説いています。
自分たちの名田を守るために武装して起こった武士の時代。鎌倉時代の坂東武者に代表されるような一所(名田)に命を懸ける潔さ、名誉を尊ぶ気質など日本史を貫くもの。日本人の底流にあるものに目を向けています。

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Posted by ブクログ 2023年04月01日

近代精神。宗教権威の否定(富永仲基)。科学的合理性・人格の自律(山片蟠桃・三浦梅園)。人間主義(井原西鶴)。

※倜儻不羈(てきとうふき)。すぐれていて拘束されない。志が大きく抜きんでている。馬のたづなに拘束されない。独創。独立。
※惣は日本の公(共同体)の原形。
※皇族の出の人が一兵卒として徴兵さ...続きを読むれる明治の平等主義。
※独裁は日本人の気質に合わない。信長。井伊直弼。
※尊王攘夷。契丹・女真族に漢民族が服属する宋代。漢民族の王が中国を支配すべきだという考えから。
※明治憲法下で天皇は政治に対して能動的な作用は一切できなかった。例外は敗戦時の聖断のみ。
※7世紀に統一国家ができたのは隋による侵略に対抗するため? 
※隋唐から官制を導入したが、宦官と科挙は採用せず。
※藩という言葉が日常語になったのは幕末。
※地域色が強く多様なことは大事。
※歴代の天皇で中国的な専制を得ようとした天皇は後醍醐天皇だけ。
※昭和10~20年は異質な時代。「非日本的」。非連続。※昭和の一時代を過度に醜悪なものと見、他の時代を過度に美化。「日本人は」と全体を一枚岩として語る傾向。

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Posted by ブクログ 2021年07月13日

「日本とはどういう国なのか」と司馬さんが、23歳の自分自身に手紙を書くようなエッセイ。

それにはわけが、、、
召集されて軍隊を経験した23歳の司馬さんは、戦争に負け終戦の放送をきいたあと「なんとおろかな国に生れたことか」と思ったのだそう。

「昔はそうではなかったのではないか」鎌倉・室町期や江戸・...続きを読む明治期のころのことをである。
それを小説に書いてきたのでもあった。

そして、昭和の軍人たちが国家そのものを賭けにしたようなことは、昔にはなかったと確信する。

「それではいったいこの国は、どうであったのか」と歴史を紐解きながら「この国のかたち」を探る。

まるで司馬さんの頭の中の引き出しが開かれていくような感じで、話はあちこちに飛びますが、司馬節にあやされて、歴史に詳しくなったような気になること請け合いです。

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Posted by ブクログ 2020年04月20日

儒教は諸悪の根源として描かれる。特に朱子学。汚染されなかったのが日本のラッキーなところという。たしかに、宦官や衣装、男尊女卑すぎる世界に汚職は少ない日本。そうかもしれない。では、儒教とは、朱子学とはなんなのだろう。まるで邪教ではないか。
戦前、戦中を鬼胎の時代とした。完全にミッシングリンクの時代と。...続きを読むそれは司馬さんの願いでもあるのかもしれない。現代も、とても戦時中の国家に似ているからだ。誰もが肌で感じている政府の無能さ。

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Posted by ブクログ 2019年10月12日

国、日本人というものを構成するに至った歴史的背景を探るとともに、他国との比較なども含まれている。
そして、著者の私感や意見なども随所に折り込まれ、著者の取材と研究の素晴らしさ、ひいては「司馬 遼太郎」観の集大成とも受け取れる。

日本という国、日本人というものに対して、実は誠に浅薄な知識しか持ってい...続きを読むない私達世代には、歴史書などよりも読みやすく、とても良い書籍だと感じる。

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Posted by ブクログ 2019年03月02日

やっぱり、司馬遼太郎の文体が好きだ。
電車通勤の時間に、読書の体力が残っている時にだけ読むから、まだ3巻目しか読めていないけど。日本の国の歴史に対する深い洞察、きっと著者の読書量は半端ないんだろう。
陸軍士官として戦争を経験したがゆえに感じたこと。当時の雰囲気。それらを後世に残してくれたことを感謝。

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Posted by ブクログ 2018年10月25日

日露戦争から第二次大戦まではなかったことにしたいという
いわゆる司馬史観の教本
ローマ大好きな西の歴史小説家がキリスト教が嫌いなのでなく認めたくないのと同じく
いかにも日本人な歴史
けれどその時だけ別物だったというのはいかにも無理あると思う
一方で
評論でなく月刊誌の随筆なので
論を詰めることない適...続きを読む当さが史観の顔することに対する憤り派の気分もわかるが
一般大衆は歴史の中身なんざNHK大河ドラマと同じくお話としての価値しかないのが
大学卒業が普通になっても変わらない
この国の(この国に限らないが)かたちなんである

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Posted by ブクログ 2018年01月08日

章により面白さに差があるためつまみ読みで良い。
統帥権や参謀本部の項目は面白かった。
「昭和ヒトケタから同二十年の敗戦までの十数年はながい日本史のなかでも特に非連続の時代だった」に同意。

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Posted by ブクログ 2015年04月18日

まず、司馬遼太郎はやはり面白い。どこか客観的でありながら、ズバリと主観的意見を主張する。この本は全6巻でまさに「この国のかたち」を論じている。第1巻は大正期から戦前までの時期、なぜ日本人が無謀な戦争に走ったかについてページを割いている。司馬は「鬼胎」いう造語を使って突然変異としか思えぬような取り扱い...続きを読むをしているが、読み進めるとその原点が次第に明らかになる。その他、江戸文化や武士の振る舞いなど、日本人論として必読。

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Posted by ブクログ 2014年09月28日

安倍内閣の内閣改造、ネット上に飛び交うヘイトスピーチ。この国はどうなっているのか?政権内部あるいはネット上のごく一部の現象だろうとは思うが、かなりうんざりして幻滅している。司馬さんは終戦の時に参謀本部が滅ぼしたこの国の愚かさにうんざりし、昔はそうじゃなかった。こんな愚かしさを生み出したものは何だった...続きを読むのかを知りたいと思ったと書かれている。
今の私の気分にとてもマッチした、そういう考え方をしなければやりきれなくなるこの状況に読むべきであろう本のような気がする。全6巻。文字が大きいし行間もわりとあるので恐らく読めるだろう。
この本を知ったのは、内田樹さんが中小企業の社長さんが読むべき本として推奨されていたツイートである。
なぜかわからないが読んでる時はものすごく興味深く「へぇ〜?!」とか感心するのだが、今思い出そうとすると何も覚えていない。まぁそれでもいい。博識の矍鑠としたお爺ちゃんのお話しを聞いているような感じ。司馬さんは大正12年生まれ。私にこんなおじいちゃんがもしいたら、私ももう少しマトマな人間になっていたかもしれない。
いまさら遅いけどね。

Mahalo

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2014年06月19日

司馬遼太郎先生の歴史エッセイ。司馬史観が徐々にわかっていくような、彼の全作品の追記という感じ。

 歴史的教養が詰まっている。福田定一が歴史知識によって作り上げてきた司馬遼太郎という人格の脳味噌がこの本に詰まっている。とは言い過ぎである。
 とはいえ、司馬先生の知識量には憧れる。速読ができたそうで、...続きを読む自分ももっと読むスピードを上げたい。集中力を高めたい。

 統帥権の暴走には気を付けたい。

 高田屋嘉兵衛の「菜の花の沖」を読みたいと思います。

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p34  雑貨屋の帝国主義
 この話、すごくいい。40年というクリーチャーのぶよぶよ感がいい。宮崎駿っぽい。
 帝国主義は自国の資本過剰により、外国に市場開拓を求めて発生するものである。しかし日本は…。明治時代からの日本は近代化したといっても、産業革命に成功したというほどでもない。日本政府が朝鮮を併合して売りつけたものはタオルや砂糖などの雑貨品であった。この程度のものしか持たない国家が、日露戦争で運よく負けなかったことで勘違いを起こしてしまった末路は、司馬氏には許しがたいものだった。
 司馬氏の忌み嫌う、参謀本部について、実に興味深い。今の日本はこの参謀本部を作ることはないだろうか。ねぇ、安倍さん。

p126  高田屋嘉兵衛
 ゴローニン事件らへんの人。司馬遼太郎が会いたい人。

p145  天下布武の意味
 武を持って天下を統一するという専制思考なのかと思ったらそうではないようだ。天下を私物化したいのではなく、天下のために天下を整えたいという気持ちからこの朱印を用いた。
 信長の徹底的な合理主義は、不合理な中世のしくみをただ忌み嫌い、ぶっ壊したかった。世の理を自分の満足のいくようにできれば、天下などどうでもいいぐらいだったのではないか。というお考えらしい。
 日本人には英雄は合わない。統治機構を整える人物は歓迎だが、英雄には誰もついてこない。「公」の精神(出る杭は打つ)がとても強い民族なのである。
 「君臨すれども統治せず」が昔から日本人のスタンダードだったことは、誇りと考えていい。が、トップの周囲が腐敗して、その政治がとんでもないことになった事例はいくつもある。北条高時とか後醍醐天皇もそうだし、陸軍参謀官はその極みであった。

p150  中国留学生1万人
 明治期にはおよそ1万人の中国留学生がいたといわれる(その中に孫文もいた)。この留学生をうまく育成して、中国に親日本国家を作る人材にすればよかったのだ。留学生が望むように清政権は打倒したけど、二十一か条要求は反発されるわ。

p158  買弁(ばいべん)
 アヘン戦争後に中国に進駐してきた西欧列強の外国資本の支援者になった現地人。中国の国益を損なう行為や商売を積極的に行い、自己の私腹を肥やした連中。
 日本には買弁がほとんど見られなかった。中国人は多民族国家で個人の意識が強いからか、清王朝が女真族のものだからか。変わって日本は「公」の意識が強かった。尊王攘夷が流行ったから、商人も迂闊に売国的商売なんてしたら暗殺されるからできなかったんだろう。アヘン戦争で買弁の情報も日本に流れてきてたのかな??

p187  「隊」は長州藩の造語
 江戸期の集団は組を称していた。しかし長州の奇兵隊は、それ自身が封建制外の集団であることをアイデンティティとして新たな呼称を用いた。この「隊」は中国や朝鮮にも逆輸入されているから面白い。この言葉は近代化のシンボルの一つのようである。
 「藩」という言葉も新しい言葉で、江戸末期になって定着した。従来はお殿様に家臣と民が従属する意識だったが、江戸の太平の世では殿の代わりに行政は家老たちが主導するようになり、また戦もなくなって国家運営に注力されることで国家意識のようなものが芽生えてきた。そして藩という組織のなかで公の意識が醸成されていった。

p211  加賀一揆
 一揆=集団。農民が一揆を組むのは憎き守護に対抗するため。一揆というのは守護というしくみの終焉を告げるシンボルとして扱おう。

p213  豊臣政権の革命的3要素
 ①楽市楽座の全国化 ②大阪を中心に経済の統一化 ③検地による時代遅れな地侍層の排除
 鎌倉・室町期の地方行政の守護はその晩年は有名無実、ただ税を徴収するだけのふんだくり屋であった。
 室町時代には日本全体で鉄の生産量が増加し、史上空前の農業生産高を誇った。その米を狙ってきた守護に対抗するため、農民は武装化して地侍となった者たちもいる。例えば加賀一揆は守護の富樫氏と争って、自治を勝ち取った。その後百年は、加賀は百姓の持ちたる国だった。室町期はある種新興の地侍の世ともいえる。

p272  平氏没落の原因
 武士の発生は「名田」を守るためだ。平安末期に東国に入植するものが増え、名田主(名主)となった。これらの棟梁であった平氏だったが、中央で権力を手に入れて貴族になってしまった。律令制の仕組みでは公地公民としていつ自分の開墾した土地が召し上げられるかわからない。貴族になってしまった平氏に反感を持って武士団が頼朝をたてて挙兵した。
 この武士vs平氏の構図は深読みすれば、名田を守りたいものvs律令制といえる。源平合戦は律令制終焉のシンボル。

p279  源平藤橘の四姓が天皇制を庶民に根付かせた
 平安末期の東国武士たちは律令制の関係上、天皇の臣籍の源氏とか平氏の姓を名乗って京都の公家に親近感を与えておく必要があった。
 庶民にとって天皇は距離的にも存在としても遠くにあって、あってないようなものだったろうと思う。でも、自分の名前とかに確かに関係している。そんな虚ろな権力というのは不思議である。
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 もう、いい話ばかりで、全部要約したい。
 この読書感想文も、ほとんどまんまで、よくないんじゃないかと慄いている。

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Posted by ブクログ 2014年05月01日

著者の小説ファンであれば既に語られている内容も多少あるように感じるが全作品を読んではいない自分としてはなるほどという内容が多い。まだ読んでない作品、既に読んだ作品も再読したいと思いました。著者の歴史観を通して日本、世界を改めて見直せる良著だと思う。次巻にも期待。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2016年06月15日

購入詳細不明。
2016/6/9〜2016/6/15

長らくの積読本。私の歴史観は井沢史観に支配されている(?)ので、他の歴史観のようなものに触れるために、もっといろんな歴史書に触れる必要があると思い買ったはず。司馬さんの本は、浪人時代に「竜馬がゆく」を読んだだけであるが、なかなか面白かった。二巻...続きを読む以降まだ買っていないが、全巻読んでみたいと思う。

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Posted by ブクログ 2020年08月18日

雑談的に、日本の様々な歴史についてあっちへ行ったりこっちへ行ったり色々なテーマについて書き連ねている。本人にとってはほんとうに雑談のような気軽さで書いているのだろうけれども、それでも、この著者の、歴史についての豊富な知識を充分うかがわせる内容になっている。
毎回題材として挙げられる内容も、その展開も...続きを読む、まったくのアトランダムで、その縦横無尽さがいい。明治維新の話しをしていたかと思うと突然戦国時代や平安時代の話しになる。ふらふらしているようで、最後には一本の筋が通って話がまとまる。読んでいてなるほどと感心することばかりで、一つの筋道だった物語を読む時とはまた違った面白さがある。
一つ一つのテーマは、十数ページくらいのまとまりなので、とても読みやすい。物識りのおじいさんから、直接、昔話を聞いているような気分になる本だ。

「私は、日本史は世界でも第一級の歴史だと思っている。ところが、昭和十年から同二十年までのきわめて非日本史的な歴史を光源にして日本史ぜんたいを照射しがちなくせが世間にあるようにおもえてならない。」(p.83)
「日本史には、英雄がいませんね」と、私にいった人がいる。この感想は正鵠を射ていると思った。
この場合の英雄とは、ヨーロッパや中国の近代以前にあらわれた人間現象のことで、たとえばアレクサンドロス大王や秦の始皇帝、あるいは項羽と劉邦といった地球規模で自己を肥大させた人物をさし、日本史における信長、秀吉、家康という、いわば「統治機構を整えた」という人達を指さない。世界史的典型としての英雄を日本史が出さなかった−−というよりその手の人間が出ることを阻みつづけた−−というのは、われわれの社会の誇りでもある。(p.144)
日本史における自己肥大は信長をもって限度いっぱいと考えていい。そういう信長さえその部下に殺されざるをえなかった。光秀が殺したというよりも、日本史に働いている微妙なものが、信長を阻んだと考えていい。(p.145)
ふと思うことだが、一介の浪人の力で薩長という二大雄藩の握手が可能なはずがない。発言の立脚点として、海援隊の勢力があったといっていい。さらにかれは役人にはならないということをつねづね語っていた。大政奉還という奇手が可能だったのも、かれが新政府に官職をもとめるということをせず、いわば無私になることができたからだ。無私の発言ほど力のあるものはない。(p.202)

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Posted by ブクログ 2023年01月03日

30年前「文藝春秋」に連載されていたもの。 著者が今の日本をみたら、どんな風に思い、どんな国のかたちを書くだろう。 歴史的知識の乏しさのせいか、テーマによっては難解な物もあったけど、興味や知識がある物はとても面白く読めた。 学生時代一番苦手な教科だった歴史だけど、この歳になってもっと歴史を勉強したい...続きを読むと思うようになるとは。

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Posted by ブクログ 2022年11月28日

はたと、この偉大な歴史小説家が日本という国をどのように思っていたのかが知りたくなり、本書を読み始めた。脈絡もなく続く著者の思いに納得したりそうでなかったり。ただ昭和初期のあの戦争の時代に対する考察は僕の思いと一致した。

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Posted by ブクログ 2022年10月13日

日本の近代や歴史についての理解を深めるのに良いと思います。
日本について一つでも多くを知る事は、生きていく上で、必要と感じます。

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Posted by ブクログ 2019年09月25日

司馬遼太郎の書きたいことがつらつらと書いてあり、いつものわかりやすい説明もないのでちょいと難しかった。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2019年04月21日

司馬遼太郎が歴史小説を書くようになった原点の本
戦時中、満州で戦争に従事し理不尽な思いをしたその原因を参謀本部の「統帥権」の暴走である。としてそこから日本人がどのような民族であるかを展開している。

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Posted by ブクログ 2018年08月02日

某書でオススメされていたので購入。
歴史系の本はあまり読んだことが無かったので新鮮。
続きも読んでみたいと思う。

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Posted by ブクログ 2017年10月09日

司馬遼太郎の小説をある程度読んでから読んだ方がよい。司馬遼太郎の歴史に対する見識がよくわかり、小説の背景知識を得ることができる。これを読み再度小説を読むとより理解が深まるだろう。ただ、司馬小説を読んでいないと興味が湧かないと思う。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2015年09月19日

人間というのは、よほど変人でないかぎり、自分の村や生国(こんにちでいえば母校やひいき球団もこれに入る)に自己愛の拡大されたものとしての愛をもっている。社会が広域化するにつれて、この土俗的な感情は、軽度の場合はユーモアになる。しかし重度の場合は、血なまぐさくて、みぐるしい。ついでながら、単なるナショナ...続きを読むリズムは愛国という高度の倫理とは別のものである。

しかし、その社会も成熟しはじめたいまとなれば、それがこんにちの私どもを生んだ唯一の母胎であるといわれれば、そうでもないと言いたくなる。いまの社会の特性を列挙すると、行政管理の精度は高いが、平面的な統一性。また文化の均一性。さらには、ひとびとが共有する価値意識の単純化。たとえば、国をあげて受験に熱中するという単純化へのおろかしさ。価値の多様状況こそ独創性のある思考や社会の活性化を生むと思われるのに、逆の均一性への方向にのみ走りつづけているというばかばかしさ。これが戦後社会が到達した光景というなら、日本はやがて衰弱するのではないか。

さらに兆民の障害をみると、強烈なほどに自律的ではあったが、他から拘束されることを病的なほどに好まなかった。ただし「硬質」とはいえない。
「硬質」という用語も、江戸期、人間批評としてよく用いられた。頑固者などといえば一種の美質のようにきこえるが、たとえば長の吉田松陰などは門人を教える場合、これをマイナスの評価として用い、固定概念にとらわれて物や事が見えないおろかしさという意味に使った。

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Posted by ブクログ 2015年07月14日

いやはや字が大きくて読みやすい。
すべての歴史、文化、伝統等は地理的環境から生まれる。
その通りなような気がする。
これを本書ではなんと呼んでいたか、一向に思い出せないが。

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