篠田節子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
弥勒を読んだ勢いで読む。「弥勒」の後と勝手に思い込んでいて、なるほど「弥勒」味があるなと思っていたら、直木賞を取った「女たちのジハード」よりも前の作品なのね。だから「弥勒」が「ゴサインタン」味があったのだ。本書は東京の西に住む冴えない40男のもとにネパールから嫁いできた女性がもたらす宗教味の強い出来事と、それに翻弄された主人公がついに行き着く場面まで、いくつもの物語としての転機を持ちながら描かれていく。女性が奇蹟というか秘蹟的なことを起こした時点で、あぁこういう話ね、となんとなく納得というかやめようかなと思っていたら、終盤の主人公の行動にある意味期待感が高まり読むのをやめずに良かったと思えた。
-
Posted by ブクログ
登場する三人の40歳代となる長女たちは、高齢化社会の陰で責任を一身に背負い、過酷な状況に置かれた人達だった。
男の兄弟や次女、三女たちは何気に苦境から逃げ切るかのような生き方が可能だが、責任を一身に背負ってしまう性格の長女にとっては、自由さえ遠い存在となる生き方を歩まなければならない。
そんな生き方を選ばざるを得なかった三人の長女たちの中編からなる物語だ。
⚫︎家守娘
認知症を患う母親の介護のため、キャリアと恋を諦めて自宅に縛り付けられる長女。
自らの自由は求められないのか⋯
⚫︎ミッション
自由な生き方を模索して生きてきた長女は、一人暮らしにした父親を孤独死させてしまう。
その贖罪の念に悩む -
Posted by ブクログ
インドと言えば、『近年目覚ましい経済発展と共に、優秀な人材が世界各国を席巻している』又は、『明るく笑えるボリウッド映画』というステレオタイプなイメージしか無かった。
なんと無知だったかと思い知るとともに、世界各国の観光地でみられるインド人旅行者は、相当に恵まれた人々なのだと改めて感じた。
この小説が初出版され、既に10年以上の時が経っている今も表面化しづらい形でカーストや差別が蔓延っている事を思うと歴史と文化が異なる日本人にとっては難解なのだと思った。
本書はビジネスサスペンス?アドベンチャー?的要素の中にロサというインドの複雑なカーストに沼ってる才女の哲学的思考が複雑に絡まりとても興味深く、 -
Posted by ブクログ
バブル末期に日本で大流行したハワイアンアートといえばラッセン…
ジャン・ピエール・ヴァレーズは彼をモチーフにしたのかなと思うけれど、真実であったとしたら驚きの展開が描かれている。
フィクションなのだろうけれど、半分くらいは真実なのかしら…と思わせるほど、後半は惹き込まれてしまった。
ラッセンの絵は流行していた時期からギラギラとした不自然さを感じていた。ヴァレーズの絵も美術界には認められず、主人公の真由子も違和感を感じていたという設定。
読み進めると、その違和感の正体が明らかになっていき、やけに納得してしまった。
出版業界ではゴーストライターは当たり前のようだし、絵画の世界でもあり得るのだろう -
Posted by ブクログ
父が四国遍路の旅を終えた直後、冬の海へ消えるというミステリアスな事実から物語が始まります。次女が父の跡を辿り、遍路の道中で未知の父の姿が徐々に浮かび上がり…多くを抱えた父の生き様が深く描かれます。
仕事でも家庭でも恵まれ安定した人生と思われる男が、学生時代からの女性と長年関わり家族を裏切ります。次女の視点から切り替わり、父が人生に対して孤独と葛藤を抱えていたこと、被災地でのボランティア、実父の介護を経て、震災犠牲者のための鎮魂と祈りの旅に出たことが語られます。
主人公の男の人生に感動も共感もできません。女性なら嫌悪感さえ覚えるかもしれません。しかし、高度成長期を支えた男の矜持や虚無感