篠田節子のレビュー一覧

  • 鏡の背面

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    ネタバレ

    膨大なボリュームだが読む手が止まらない。自分とは比べ物にならない強靭な人物にすり替わることで半田明美は崩壊していった。
    女性たちに対する容赦ない描写はこの著者ならではで本当にうまい。
    キリスト教の「神は貧しく小さくされた者とともにある」という教えが通底している。

    P424 「親身」が通用しない場合もある。時には腫れ物にさわる慎重さや冷めた視線、そして必要と判断したら白百合会を通して専門家に助けを求める臨機応変さも必要だ。

    P629 矛盾に引き裂かれても、立場と行動は簡単には変えられない。自分の思考と感情を行動と立場に合わせて変えるほうがはるかにたやすい。【中略】それが極限まで行けば、思考と

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    2025年12月21日
  • 青の純度

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    ミステリー仕立てで読者を惹きつけて読みやすい上に、アート、ビジネス、出版、日系人などの世界についても知ることができて興味深い。フィクションだが実際にこういうことがあるのかもと思わせる筆力。
    この著者の書くデキる女性がいつもカッコよくて好き。

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    2025年11月29日
  • 長女たち(新潮文庫)

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    現代の「親問題」が浮き彫りになった中編集。食生活の向上や医学の発展から長生きが普通になった世の中で、苦労を強いられるのは長女たち。

    母親として、子供に迷惑をかけずに、ボケる前にポックリいきたいな…と思わずにいられない。

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    2025年11月27日
  • 田舎のポルシェ

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    ネタバレ

    中編集。
    いつも読んでいなかったパターンだったけれど読後感、サイコ〜!
    ドライブ好き、冒険好き、もちろん本好きの方々にお勧めしたい。
    「田舎のポルシェ」いいえ、軽トラです。
    「ボルボ」まさかの◯さんに出会った〜
    「ロケバスアリア」コロナ禍の…

    どれも一緒にドライブ楽しめました。
    リアル恐い思いも、◯さんや病やら。

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    2025年10月31日
  • 恋愛未満

    購入済み

    切ない

    篠田節子さんの作品は、ほぼ読んでいます。壮大なスケールの話も良いけど、恋愛小説も切なくて素敵です。

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    2025年10月18日
  • 本からはじまる物語

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    全体的にかなりのショートショートで18人の作家で有名な作家も取り揃えて234ページとは、かなりお得感がある。
    そして、それぞれが書店や貸本屋、本にまつわる出来事を綴っていくのはおもしろかった。

    本を読むのが苦手な人もこのくらいの短さであれば読むのも楽なのかなと思った。

    個人的には下記が印象に残ったが、
    それぞれの作家さんがこんな短い話しにきちんと自分の色を出しているのはすごいと思った。

    十一月の約束 本多孝好
    サラマンダー いしいしんじ
    読書家ロップ 朱川湊人
    閻魔堂の虹 山本一力

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    2025年10月05日
  • ゴサインタン 神の座

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    これは一人の男性が、自分の人生の責任を認識するということをテーマにした小説と捉えた。
    この類の男性の通過儀礼をテーマにした小説は多々あるが、本作はそれらの作品とは一線を画した、ジェンダー問題への鋭い示唆に富んだ作品だ。
    ある出来事が起きて、「俺は変わったんだ」という言葉と共に、何も変わることなく生きている男性は多い。
    口だけではなく実際に新たな責任を背負うためにはとても困難な認識の変化が求められるが、それは革命的な転換ではなく、牛歩的なプロセスであることを本作は示している。
    主人公の行動描写と内的描写が撚り合わさり、その遅々とした歩みを描き切っている点、本作は未来を先取りしていると感じた。

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    2025年09月26日
  • 青の純度

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    ハワイ在住のジャンピエール・ヴァレーズが描くマリンアートの作品を巡ってのミステリー。

    新聞社の社員としてアート誌の編集に携わっていた主人公の有沢真由子は、50歳の誕生日を迎えた日に熱海のホテルでジャンピエール・ヴァレーズの絵と出会う。
    過去にブームだったジャンピエール・ヴァレーズの絵だが、再度ブームの兆しがあるのだろうか⋯。
    以前の真由子は、芸術性とは程遠いヴァレーズの絵を鼻先で笑って相手にもしていなかったのだが、何故かホテルで出会った時に惹かれるものを感じてしまう。
    真由子は何故に今となってヴァレーズが描いたマリンアートに心を動かされたのかを自らに問う。
    その結果、ヴァレーズの価値を再検証

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    2025年09月19日
  • 青の純度

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     かつて、日本でブームを巻き起こした画家ジャンピエール・ヴァレーズの謎をめぐるミステリー小説。ヴァレーズは架空の人物ですが、クリスチャン・ラッセンの画風がダブります。
     主人公の真由子が、ヴァレーズを取り巻く様々な闇を解き明かしていく過程は、手に汗握る展開で、最後は勧善懲悪で気持ち良かったです。色々な人が登場する中で、新倉海玲(にいくらみれ)に対しては、底しれぬ恐怖を感じました。
     純粋に「描くこと」が好きで絵を描き続けてきたグラント・ササキがどうなるかハラハラしましたが、最後に報われたことが一番嬉しかったです。
     心地よい読後感でした。

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    2025年09月03日
  • 家鳴り

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    ネタバレ

    災害が起こり食べる物を求めて集団で人を襲う、襲われる方も身を守る為に相手を殺す..えげつない

    代わり映えのない日常だったり、穏やかな日常の中に小さな不穏が混じってて後半に一気にその不穏が暴走するような話ばかりだった
    それなのに終わり方が温いというか前向き
    なんだか最後幸せそうな空気が出ているそれが地味に怖い

    大きな災害、育児放棄の家庭、介護問題、夫婦格差、不景気に不倫、扱いにくい子供と虐待と社会問題がたっぷり詰まってました

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    2025年08月29日
  • 夏の災厄

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    篠田節子さんの作品は女たちのジハードぶりの2作目で
    夏だし、と思って表題で手に取りました。
    パンデミックの話で、コロナの以前に描かれた本でしたが予防接種の薬の認可やみんな家に引き篭もり、閑散とした町や飲食店、まるで予言していたような本でびっくりしました。
    作者の医療や行政についての知識にも感嘆しますし、この作品を描くにあたりさらに資料を集めたり様々な調べものや取材などされたであろう事にも思いを巡らせてしまいました。
    さて、小説としては、医療や行政の話としても感慨深く読めますが、わたしとしては登場人物ひとりひとりが個性的に描かれていて読んでいて楽しかった。小西、普通のサラリーマン、よけいな波風立

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    2025年08月01日
  • 青の純度

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    〈青。それも限界まで純度の高い透明な青と白い砂浜のコントラスト。寄せる波はレースのように繊細に泡立ち、海に戻っていくアオウミガメの濡れた甲羅を朝日がバラ色に染めている。澄み切った青い海から立ち上がる波頭の菫色の輝きと、曙光に照らされた遠い海面のシャンパンゴールド。〉

     自身が区分所有権を持つ老朽化した熱海のホテルで誕生日をひとりで祝っていた編集者の有沢真由子は、そこに置かれていたハブルの遺産のような絵に心を奪われる。その作者は、かつて美術書の編集に携わっていた頃には馬鹿にしていたジャンピエール・ヴァレーズの絵だった。当時から美術業界から黙殺され、大衆からも忘れ去られた作家だ。そんな折、真由子

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    2025年07月13日
  • 女たちのジハード

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    ネタバレ

    面白かった!
    時代背景が古いなと思ったら25年前に
    描かれたものだったのですね。
    5人の女性がたくましく成長していく姿が描かれており
    読んでいて気持ちがいい。
    紀子だけは好感が持てなかったのだけれど
    解説を読んだら男性審査員の間で一番評判がよかったのは
    紀子だったとか。
    分からないもんだなと思いました。
    それぞれの5年後の姿を見てみたいと思える作品。

    0
    2025年06月08日
  • 本からはじまる物語

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    面白かったー。
    「本」からはじまるのがテーマといっても、それぞれの作家さんごとにアプローチが違って、ジャンルもそれぞれで楽しかった。
    恩田陸さんの「飛び出す絵本」、「飛び出す」の意味をそう持っていくか、というのが面白いし、阿刀田高さんの『本屋の魔法使い』も素敵。石田衣良さん三崎亜記が久々だった。
    どれもよかったけど、やっぱり、なんと言っても朱川湊人さん!ここで猫の話が読めるなんて、最高すぎる。朱川さん、大好きだー。お初の山本一力さんも猫♪
    はい、もう、これはかんっぺきに猫本である!!

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    2025年05月26日
  • インドクリスタル 下

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    全てを理解するのが難しいと思えるほど、
    インドは広い。

    歴史、風習、宗教、経済、文化があまりにも違いすぎ、多種多様といった言葉では形容するにはあまりにもインドという国が抱えている闇が深い。

    2025年現在世界一の人口を抱え、指定部族の数は600以上ある。インドという1つの国にまとまってはいるが、ここまで文化が違えば別な国と思ってしまうほどだ。
    また、この物語を複雑化させているのは、
    イギリスの植民地時代の名残り、馴染みのないカースト制度だろう。

    古い慣習に囚われ、自由もなく、虐げられ、暴力によって支配された世界が少しずつだが、変わっていく希望の物語であると思うが、自分の目で確認できること

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    2025年03月11日
  • 失われた岬

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    ネタバレ

    カリスマ主婦、ノーベル文学賞作家、由緒ある名家の令嬢…北海道の片隅にある岬に引きよさせらた、彼らの謎を追うミステリー。
    経済も国力も停滞し衰え、インフラ整備や外国の侵犯にも手をこまねく近未来の日本を舞台に、不老不死や若返りの妙薬の謎を追いかける話になっていく。

    ミニマムとか断捨離とかにあこがれ、少しずつでも実践しているのだが、その極地である欲望を制御しきった先にある生き様を考えさせられた作品。不老不死の謎を解明したシーンには共感と同時にちょっと背筋が寒くなる気がした。

    ギラギラした欲望を排除して灰汁の抜けきった生き方は平穏ではあるけれど、外から見れば不幸で無力に見えるのかもしれない。それは

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    2025年03月05日
  • 竜と流木

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     軍人の父と日本人の母を持つジョージは幼い頃から、父の休暇シーズンになると、太平洋上の小島で過ごし、その近隣の島「ミクロ・タタ」で出会った愛らしい両生類「ウアブ」に魅了されたことがきっかけで、二十代後半になった今では、「ウアブ」の研究者としてその世界では知られた存在になっていた。「ミクロ・タタ」の経済の発展のために、絶滅の危機に追い込まれたウアブの生育環境を守るために、外国人富裕層向けリゾートを建設し、他の島々より一足早く発展を遂げた「メガロ・タタ」にウアブを移動することになった。生態系の変化への懸念はあったにも関わらず――。

     というのが、本作の導入です。『仮想儀礼』や『弥勒』で分かってい

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    2025年01月30日
  • 絹の変容

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    動物パニック小説、たかが15センチの虫(?)に脅かされる世界って…
    展開の速さと、リアルな恐怖感が絶妙

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    2025年01月23日
  • 冬の光

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    主人公はもちろんですが、登場人物が豊かな設定で濃いです。さらに、もちろんですが、人物像設定以外も濃いです。

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    2025年01月18日
  • 斎藤家の核弾頭

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    2024年に某制度を国民に事実上強制した、「デジタル」といえば何でも許されると思っている、実力と乖離して意味不明に自信満々な、あの某世襲政治家が憧れていそうな超管理社会ディストピアを描いた小説。
    抜群に面白い。
    1997年に刊行されたとは思えないほど、いまの現実社会とこの社会が目指してるものを正確に皮肉り嘲笑っている

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    2025年01月09日