篠田節子のレビュー一覧

  • インドクリスタル 下

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    全てを理解するのが難しいと思えるほど、
    インドは広い。

    歴史、風習、宗教、経済、文化があまりにも違いすぎ、多種多様といった言葉では形容するにはあまりにもインドという国が抱えている闇が深い。

    2025年現在世界一の人口を抱え、指定部族の数は600以上ある。インドという1つの国にまとまってはいるが、ここまで文化が違えば別な国と思ってしまうほどだ。
    また、この物語を複雑化させているのは、
    イギリスの植民地時代の名残り、馴染みのないカースト制度だろう。

    古い慣習に囚われ、自由もなく、虐げられ、暴力によって支配された世界が少しずつだが、変わっていく希望の物語であると思うが、自分の目で確認できること

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    2025年03月11日
  • 失われた岬

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    ネタバレ

    カリスマ主婦、ノーベル文学賞作家、由緒ある名家の令嬢…北海道の片隅にある岬に引きよさせらた、彼らの謎を追うミステリー。
    経済も国力も停滞し衰え、インフラ整備や外国の侵犯にも手をこまねく近未来の日本を舞台に、不老不死や若返りの妙薬の謎を追いかける話になっていく。

    ミニマムとか断捨離とかにあこがれ、少しずつでも実践しているのだが、その極地である欲望を制御しきった先にある生き様を考えさせられた作品。不老不死の謎を解明したシーンには共感と同時にちょっと背筋が寒くなる気がした。

    ギラギラした欲望を排除して灰汁の抜けきった生き方は平穏ではあるけれど、外から見れば不幸で無力に見えるのかもしれない。それは

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    2025年03月05日
  • 竜と流木

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     軍人の父と日本人の母を持つジョージは幼い頃から、父の休暇シーズンになると、太平洋上の小島で過ごし、その近隣の島「ミクロ・タタ」で出会った愛らしい両生類「ウアブ」に魅了されたことがきっかけで、二十代後半になった今では、「ウアブ」の研究者としてその世界では知られた存在になっていた。「ミクロ・タタ」の経済の発展のために、絶滅の危機に追い込まれたウアブの生育環境を守るために、外国人富裕層向けリゾートを建設し、他の島々より一足早く発展を遂げた「メガロ・タタ」にウアブを移動することになった。生態系の変化への懸念はあったにも関わらず――。

     というのが、本作の導入です。『仮想儀礼』や『弥勒』で分かってい

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    2025年01月30日
  • 絹の変容

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    動物パニック小説、たかが15センチの虫(?)に脅かされる世界って…
    展開の速さと、リアルな恐怖感が絶妙

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    2025年01月23日
  • 冬の光

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    主人公はもちろんですが、登場人物が豊かな設定で濃いです。さらに、もちろんですが、人物像設定以外も濃いです。

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    2025年01月18日
  • 斎藤家の核弾頭

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    2024年に某制度を国民に事実上強制した、「デジタル」といえば何でも許されると思っている、あの実力と乖離して意味不明に自信満々な某世襲政治家が憧れていそうな超管理社会ディストピアを描いた小説。
    抜群に面白い。
    1997年に刊行されたとは思えないほど、いまの現実社会とこの社会が目指してるものを正確に皮肉り嘲笑っている

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    2025年01月09日
  • 女たちのジハード

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    前半100ページ程はなぜ?直木賞受賞したのって感じだった(康子さんの競売物件、紀子さんのDV騒動)が、東大病院の医師、理想の夫を獲得したかに見えたリサが発展途上国民族への支援という男の夢に殉じてネパールへ旅立つ、翻訳家を目指し搾取され、遂にアメリカ留学し、英語で生きることをやめ、ヘリコプターパイロットを目指す紗織、脱サラトマト農家との出会いから食品加工で起業をはじめる康子。怒涛の聖戦、ジハードでした。『鉄道員ぽっぽや』と直木賞受賞を分け合った作品だ。小気味いい作品です。みんながみんな『たった一つの自分の人生を選び取る』お話です♪

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    2024年12月03日
  • ゴサインタン 神の座

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    アジアからの花嫁。八王子の豪農の息子。新興宗教の教祖。ネパールの貧困と神聖。よくもこんな話が誕生するんだとその着想、描き切る筆力の感心させられる。300ページ過ぎた辺りでどこに連れていかれるのか不安になりながら、カトマンズのゴサインタンで「日本から男が一人、求婚しにきた。それだけだ。金はないが、体は丈夫だ…畑仕事は得意だ」で長い旅路が終わった、そして「耀くばかりに無邪気な笑顔」…神の座の物語。

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    2024年12月02日
  • 斎藤家の核弾頭

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     首都圏大地震や出血性激症性感染症の大流行、経済混乱による物不足を受けて、家族主義を単位とする国家主義が復権し、国民能力別総分類制度、反体制派からは、「国家主義カースト制度」が導入された2075年の日本が舞台。30年近く前の作品なのに、物語のいたるところに、〈今〉を思わせて、読んでいてなんだかとても怖くなる作品です。

     階級制度が敷かれた日本で、特A級の市民である最高裁の裁判官だった斎藤総一郎は職を追われ、国家からは家族共々、現在住んでいる場所の移転を命じられる。やがて移転先で目にする光景に総一郎は――。

     ということで、後半は壮大な戦いの物語にもなっているのですが、特に魅力的だなと思った

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    2024年11月11日
  • 仮想儀礼(下)(新潮文庫)

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    怒涛のラスト250ページ。放心状態だ。主人公の二人の男たちが本当の宗教家へ脱皮していく様が痛々しい。

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    2024年10月08日
  • アクアリウム

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    10年ほど前。
    古本屋の一冊百円のコーナーにあり、題名が目に留まり買った。すでに帯もカバーもないのでなんの前情報もないまま読んだのだけど、面白かったので、色んな人に貸した。
    どんな話か知っていた方がいい場合もあるけど、何も知らずに読む本はどこに連れて行かれるか未知で面白い。

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    2024年10月04日
  • ゴサインタン 神の座

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     測りし得ない作者の創造力に圧倒された。
    一人の人間の変わりゆく様々な欲を味わえた気がする。
    農村地方内での人間関係、家系、また人が加わるその人の内情、ありとあらゆる様々な色の染まった絵画のようで面白かった。
    今の自分の概念が変わる作品に出会えた。

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    2024年09月16日
  • 夏の災厄

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    とても面白かった。

    ただ、首都圏が被害にあってないので
    国民が他人事のように書いてあるが、
    新型インフルやコロナであんなに大騒ぎしてたのに
    死者があれほど出たこのパンデミックで
    あのような扱いはないなと思った。

    しかしコロナの時も思ったが
    所詮はよその国頼みなんだと哀しく思った。
    日本人は医学界でも優秀だと信じたい。

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    2024年09月11日
  • 四つの白昼夢

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    日常に起きた、白昼夢のような四つのお話。
    不可思議な話のようで、蓋を開けてみれば意外な事実。
    そう思って、安心して読んでいたら、最後の二つは不思議話と、バリエーションに富んでいて、でもさすがの文章力で読ませてくる。コロナもうまく絡めてあるところも、さすがとしかいいようがない。ベテランの筆致をみた。

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    2024年09月08日
  • 女たちのジハード

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    確か、高校生の時に初めて読んだと思いますが、性差の話とか、女性の努力とか、それまでまったく触れたことがないけど、多分世の中こんなもんなんだろうな…という世界の出来事が綴られているにも関わらず、なんか圧倒されて元気が出たのを覚えています。また読みたいな。

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    2024年08月14日
  • 鏡の背面

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    登場人物の裏にある背景が緻密に記されており、ありえないほどの没入感があった。
    「人格」とは脆いものなのかもしれないと学びになる一冊だった。

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    2024年07月24日
  • 田舎のポルシェ

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     順風満帆とは言えない人生。その転機を迎えてロングドライブをすることになった人たちの踏ん切りとリスタートを描くロードノベル短編集。
              ◇ 
     深夜3時。台風接近中ということだが空には半月がかかっている。
     ここは灯りの消えたコンビニの駐車場。私は車を待っていた。ハイエースが迎えに来ることになっている。

     しばらくするとヘッドライトがコンビニを照らしながら入って来た。軽トラなのでコンビニ目当てかと思っていると、目の前で止まった。運転席の窓から手ぬぐいを被った男が顔を出す。

    「どうも。増島さんですか?」
    「あ、はい、増島ですが……」
     その目つきの鋭さにひるみつつ答えるより早

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    2024年07月20日
  • 長女たち(新潮文庫)

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    厳しい現実を突きつけられ、考えるさせられる。親(や自分)の老化は誰にとっても他人事ではない。
    女1人がどんなに足掻いてもどうしようもない。論理と感情が相反する。正解のわからない問題に対してどう折り合いをつけるのか?
    自分ならどうするかなぁと読後も考えてしまいます。

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    2024年07月16日
  • アクアリウム

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    地底湖に棲む謎の生物“イクティ”を救え!
    ダイビングの最中に突然現れた謎の生物は不可思議なコミュニケーションで正人の意識に入り込んできた。果たしてその正体とは。幻想的な描写を得意とする篠田節子の原点となるファンタジー小説。

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    2024年06月03日
  • セカンドチャンス

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    久しぶりについつい先が読みたくなった小説。
    周りを優先して自分を後回しにする主人公の麻里を絶妙に引き上げて背中を押していくスポーツクラブの仲間たち。それぞれのペースでありながら、どこかに温かい人の手が織り交ぜられていて、ひとりひとりが少しずつ進化を遂げながら互いの距離を縮めていく様子に温かい読後感だった。

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    2024年05月06日