篠田節子のレビュー一覧
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全てを理解するのが難しいと思えるほど、
インドは広い。
歴史、風習、宗教、経済、文化があまりにも違いすぎ、多種多様といった言葉では形容するにはあまりにもインドという国が抱えている闇が深い。
2025年現在世界一の人口を抱え、指定部族の数は600以上ある。インドという1つの国にまとまってはいるが、ここまで文化が違えば別な国と思ってしまうほどだ。
また、この物語を複雑化させているのは、
イギリスの植民地時代の名残り、馴染みのないカースト制度だろう。
古い慣習に囚われ、自由もなく、虐げられ、暴力によって支配された世界が少しずつだが、変わっていく希望の物語であると思うが、自分の目で確認できること -
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ネタバレカリスマ主婦、ノーベル文学賞作家、由緒ある名家の令嬢…北海道の片隅にある岬に引きよさせらた、彼らの謎を追うミステリー。
経済も国力も停滞し衰え、インフラ整備や外国の侵犯にも手をこまねく近未来の日本を舞台に、不老不死や若返りの妙薬の謎を追いかける話になっていく。
ミニマムとか断捨離とかにあこがれ、少しずつでも実践しているのだが、その極地である欲望を制御しきった先にある生き様を考えさせられた作品。不老不死の謎を解明したシーンには共感と同時にちょっと背筋が寒くなる気がした。
ギラギラした欲望を排除して灰汁の抜けきった生き方は平穏ではあるけれど、外から見れば不幸で無力に見えるのかもしれない。それは -
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軍人の父と日本人の母を持つジョージは幼い頃から、父の休暇シーズンになると、太平洋上の小島で過ごし、その近隣の島「ミクロ・タタ」で出会った愛らしい両生類「ウアブ」に魅了されたことがきっかけで、二十代後半になった今では、「ウアブ」の研究者としてその世界では知られた存在になっていた。「ミクロ・タタ」の経済の発展のために、絶滅の危機に追い込まれたウアブの生育環境を守るために、外国人富裕層向けリゾートを建設し、他の島々より一足早く発展を遂げた「メガロ・タタ」にウアブを移動することになった。生態系の変化への懸念はあったにも関わらず――。
というのが、本作の導入です。『仮想儀礼』や『弥勒』で分かってい -
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首都圏大地震や出血性激症性感染症の大流行、経済混乱による物不足を受けて、家族主義を単位とする国家主義が復権し、国民能力別総分類制度、反体制派からは、「国家主義カースト制度」が導入された2075年の日本が舞台。30年近く前の作品なのに、物語のいたるところに、〈今〉を思わせて、読んでいてなんだかとても怖くなる作品です。
階級制度が敷かれた日本で、特A級の市民である最高裁の裁判官だった斎藤総一郎は職を追われ、国家からは家族共々、現在住んでいる場所の移転を命じられる。やがて移転先で目にする光景に総一郎は――。
ということで、後半は壮大な戦いの物語にもなっているのですが、特に魅力的だなと思った -
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順風満帆とは言えない人生。その転機を迎えてロングドライブをすることになった人たちの踏ん切りとリスタートを描くロードノベル短編集。
◇
深夜3時。台風接近中ということだが空には半月がかかっている。
ここは灯りの消えたコンビニの駐車場。私は車を待っていた。ハイエースが迎えに来ることになっている。
しばらくするとヘッドライトがコンビニを照らしながら入って来た。軽トラなのでコンビニ目当てかと思っていると、目の前で止まった。運転席の窓から手ぬぐいを被った男が顔を出す。
「どうも。増島さんですか?」
「あ、はい、増島ですが……」
その目つきの鋭さにひるみつつ答えるより早