篠田節子のレビュー一覧
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ネタバレ読み終えたとき、高澤と共に長い人生を歩んだ気がした。
…いやいや、それでは私が主人公と銀婚式(笑)
確かに、NY赴任時に仕事を理由に妻の不調に寄り添わず、離婚に至ってしまったところまでは、彼を「仕事は有能だが、家庭人としては失格」というような眼で見ていた。
しかし、会社が倒産し、次々に同僚が新しい職場探しに奔走して退職していく中、最後まで敗戦処理として会社に残る姿は、退却するしんがり武将のようであった。
その後も、何故かめぐり会う仕事はことごとく「尻拭い」「敗戦処理」
あ~、なんて運の悪い人なんだろうと思うと同時に、何があっても投げ出さない姿勢に感心する。
そして水面下で…ちゃんと見ている人たちの信頼を勝ち得ているではないか。
普通に生きていて、仕事は別としても、子供の問題、老親の問題、心配事はあとを絶たない。
特に介護の問題の深刻さはリアルに描かれていて、自分の身にも重ねてしまう。
一つ一つクリアした後…何が残るか、だ。
とても良い終わり方だと思う。 -
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篠田節子さんの著作は「女たちのジハード」に続き、2作目。「女たちの」も面白かったが、こちらはもっと迫力がある。先がどうしようもなく気になり、一気に読んでしまった。案外評価が低いようで、驚いている。
個人的にこういった不気味な話が大好物である。日本(特に地方)固有の暗さ・怖さがある。ストーリーは、出版社に勤める主人公が書きかけの小説を見つけ、その先が読みたくなり、舞台となった東北地方に行方不明の著者を探しに行く、というもの。ジャンルとしてはミステリーだが、単なる謎解きや犯人探しではなく、宗教を通して人生の意味を問いかけるようなものになっている(こう書くと陳腐に聞こえてしまうが)。
少し難解な箇所もあるが、トリックに技巧を凝らす現代ミステリーとは一線を画する、硬派な小説だと思う。 -
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ネタバレや~っぱおもしろいなぁ~。
登場人物の面々が、(ほとんどがおっさんか老人たちかばかりなのですが)それぞれ持ち味を存分に発揮してくれてます。こんな小説好きなんだよなぁ~。
普段小説の読み返しなんかめったにしない自分が、忘れた頃合を見計らってまた何度でも再読したくなってしまうほどです。
そしてまたこの、読後感が何とも言えず良い。人生、勝負を仕掛けるのに遅すぎるなんて事はないもんだ!て事を、読み返す度に改めて認識させてくれます。すごく勇気になる。
そしてそしてこんなメッセージも・・・
“未来も金もプライドも何もない。失う物がないんだから、何でもできるんだ。やってみようよ。”
とにかく。自分の人生これでいいのか?なんて、漠然とした気持ちを抱えたまま毎日を過ごしてる人にはぜひ一読して頂きたい!とてもコミカルに話が進むので、文庫本の厚みにビビる必要はなし!
おすすめです!
【DATA】
温泉無し、歴史無し、観光スポット無し、都会からは交通の利便性も無し。無いものだらけの山あいの町、駒木野。地元青年団の面々は、かつての観光産業の賑わいを少しでも取り戻そうと七転八倒の毎日を送っていた。そんな中、駒木野の名前はひょんな事から“四次元地帯”としてオカルト方面に火が着き始め・・・。
過疎化の問題も深刻な、この日本のど田舎町。UFO墜落の地として世界に名を馳せたロズウェルに続く事は、果たしてできるのか!? -
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篠田節子といえば、重厚な長編の『聖域』を心から楽しく、また感動して読んだ。
そんな印象があったので、この変わったタイトルの短編集を手にしたとき、さて、どんなものだろう、と、まずはわくわく感から入った。
あらたまったフルコースをいただいたレストランで、ふとカジュアルなランチコースを見つけたような。あ、ちょっと試してみようかなあ、というような。
タイトルがまず、そそられる。これはSF好きなら必ずぴんとくる、SFの古典的名作で、映画『ブレードランナー』の原作ともなった、『アンドロイドは電子羊の夢を見るか?』から発想を得たのは間違いないであろう。あ、このひと、結構、SF好きなのかな?とおもってしまう。付け焼き刃でSF書いてみよう、ではないな、と。
もちろん篠田節子、である。そんなはずはない。しかしてこの作品群を読み進めると、その思いは確信へと変わり、またそれを超えて感動と驚きに変わる。
あまり詳細をつまびらかにするとネタバレになるので避けるが、レアメタルのパラジウムを体内に大量に保有していたウナギによる食中毒騒ぎから一転、資源ビジネスと特許、国境問題へと発展する第一作、『深海のEEL』。巨大ウナギの描写がすさまじいが、それ以上に人間の欲望と計算の交錯が面白く、また、食品加工問題はまさにタイムリー。すごい作品だった。
最後の一作も、メインのストーリーラインは、あたかも垣根涼介ばりの、異文化と日本人の血の問題かと思いきや、一転してエネルギー問題に姿をかえる、鮮やかすぎる出来栄え。
圧倒的な筆致で描かれる1話1話に、きちんとした現代科学への問題意識をベースとした事実の裏打ちがなされており、説得力がある。また、巻末の解説にもあったが、とにかくすべての作品群において、作者の意気込みというか、強烈な熱が放たれている。
読んでみてください、というのではない。丁寧に織りなされてはいるものの、作品そのものが誇らしげに頭をあげて、さあ、読むがいい、と、胸を張っているような強さなのだ。
この作品群には、たしかに、作者の熱がある。そして熱は、流れをうみ、流れこそが人を巻き込み、人を動かすのだと思う。
篠田節子が、時代とガチンコで書き上げた科学小説。面白くないはずなはかったが、正直、それ以上だった。
本当に本当に、面白すぎた。 -
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ネタバレ豪農の跡取り息子40歳が見合いするも話がまとまらず、アジア人の若い女を妻にしようと実行するところから始まる、
よくあるアジア人嫁の話かと思ったら、
嫁はネパールのさらに北のはずれ
(ゴサインタンという山の麓の村)から来た、言葉も通じない、食べ物や風習も全く違う、工場で働くとだまされて連れてこられた女性だった
そして農家の姑と夫にいじめられて心折れて逃げ帰るかと思ったら、
神がかりになり、教祖になり、夫から財産のすべてを奪い、(奪うというか、捨てるしか救われる道はないと説く)
怪しい新興宗教と思われる比喩も登場し、
宗教の行きつく先、人生の救いとか幸福とか、人間の生きていく上での価値観を突き付けてくる、
徹底的に救われない話
でも先が気になって、やめられなくてどんどん読んでしまう。
最後は主人公にとってはハッピーエンドなのか?
農家の嫁問題・宗教ほかいろんな問題を提起しており、
長いけど夢中になって読める -
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失業し、奥さんや不倫相手も去っていったどん底状態の正彦&矢口。この2人がビジネスとしての新興宗教を立ち上げるところから物語が始まります。
食うや食わずの貧乏時代を経て、森田社長を信者として獲得したあたりから宗教団体は大きくなり、宗教ビジネスは軌道に乗っていくのですが、、、というところまでが上巻です。
正彦が元都庁職員の知識と経験を生かして信者を獲得していくところは結構リアルで、こんなにうまく行くわけないやんな〜と思いつつも引き込まれていきました。教団は順調に大きくなっていくのですが、なんとなく破滅への影もチラチラ見えてきて、「この辺でやめといたほうがええんちゃう??」とドキドキ。
正彦&矢口、それから初期の信者の方たちが幸せになってほしいとめっちゃ感情移入してしまうのですが、きっと誰も幸せにはなれそうもないだろうな、という気もめっちゃします。
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忘れられない作品は誰にでもあると思う。私の場合はこれの表題作だ。中学生か高校生くらいに読んで、ショッキングで影響を与えた作品。タイトルを失念してしまい、覚えている内容を頼りに探していたのだが、ようやく見つけることができた。
昔はただ漠然とした気持ち悪さを感じていただけだが、大人になって読み返すと作者の皮肉と現代社会の問題示唆が見える。全て1990年代に発表された作品だが、今読んでも時代感というか、まったく古さを感じないのが凄い。
あと、篠田節子の作品を読むたびに感じ入るのが、メタファーの巧みさ。
【幻の穀物危機】
パニックホラー
東京に大震災が起きる。首都圏は壊滅。伝染病が蔓延り、避難民があぶれる。同情し、案じながらひとつのショーとして眺めていた地元の人間達だが他人事ではなくなってゆく。
実際に経験しないと共感できないから、衆目を気にしてうわべでは同情するが他人事だという皮肉を言っている。実際、東北ではまだ復興できていないところもあるのに今では話題にすらあがらない。
ホタルゴケのカニバリズムの話を思い出す。極限状態になると、モラルなんて言っていられなくなる。食糧のためなら人も殺すカオスを淡々と書いているのが恐怖を煽る。
《東京という町が、砂漠の中に作られた人工のドームか、更に言えば宇宙ステーションのようなところだった、ということを私はようやく理解した。》
という一文が都心の惰弱性を的確に表していると思う。
【やどかり】
文部省の役人である哲史はネグレクトされている女子高生と思いがけず身体の関係を持ってしまう。強かな少女の策略かと、主人公も読者である私も思い込んだが、少女は純粋に恋をしていたことが最後にわかる。
穿って見れば最期のも演技で自分の現状に嫌気がさして親妹弟に身を呈して広い家を遺したのかもしれないが。
哲史は最後に《自分はやどかりだ》と思う。前半に少女達がやどかりを食べていたが、哲史も食い尽くされる暗示だったのだろうか。
【操作手】
単なる介護の話ではない幻想小説。
介護する嫁と介護される姑。交互に視点が変わる。
嫁は介護に疲れきっている。姑は嫁をいらっしゃいませとひたすら繰り返す機械に譬ている。お荷物として祖母を見殺しにしようとした孫が怖い。
家族はおばあちゃんが自分達の言葉を理解しないと思い込んでいるが、実際は億劫で閉じてしまっているだけなのが姑のモノローグから窺える。
どうなるのかなって思っていたらまさかの近未来もの?である。10年以上経った今でも、実際に人工知能の組み込まれた介護ロボットは実用化されているのだろうか?
姑が死ぬことを待っている一家は不気味。介護に疲れた家族はこういうものなんだろうか。
姑は介護ロボットに幻想を見る。人間が機械に見えて機械が人間にみえるなんて皮肉。
ロボットが本当に意思を持ったように見えるラストはとんでもない展開になる。
好きな表現がたくさんある。
《バラの香料が、緩慢な死の腐臭を覆ってきつく立ち上る》
それにしても骨格の美しい中高の顔ほど、こうなると廃鶏を思わせるきつく荒んだ表情になるのはなぜだろう。
《仮面などではない。鉄色の顔だ。硬く冷たく光沢を放つ顔の上下がぱっくり分かれ、何か軋むような音を立てた。喋っているのだ。壊れたラジオの音で。》
【春の便り】
こちらも介護されている老女の話だが、明るくて幻想的。毒があまりない。今まで救いがなかったので箸休めだろうか。
【家鳴り】
ずっと忘れられなかった作品。昔読んだときは好きではなかったのに、ストーリーを細部まで覚えていた。
子供はおらず、セックスレスの夫婦の可愛がっていた犬が死んでしまう。妻は拒食症になる。
夫は肉欲を伴わない愛を崇拝していて、潔癖症に見える。料理を作り、妻に食べさせることを愛だと思い込む。愛が暴走していく。脂肪の塊になった妻を狂気じみた愛情で甘やかすのが怖い。共依存の関係になって、お互いの重さに(体重的にも)耐え切れず死んでしまう。
しかし悲惨さはない。幸福の中で二人は死ぬ。
そこはやどかりと少し似ているかもしれない。
そしてストーリーを覚えていても、何度でも衝撃を受けてしまう。そんな作品。
【水球】
水球の中の魚のように小さな世界で停滞していた中沢。ずっと続くと思っていた幸せは不意に崩壊する。
二兎追うものは一兎も得ずな結果に。
【青らむ空のうつろのなかに】
まずタイトルが好き。
虐待されて心を閉ざした少年が豚と心を通わせる話と聞けば聞こえはいいが、豚以外には心を開かない。命を奪って食べることを拒否し、最後には豚と一緒にどこかに消えてしまう。よくある話なら、少年の心の傷は癒されるのだが、光は頑なに変わろうとしない。一度形成された自我は変わらないということを書いているのだろうか。
自分の家族を食べるとき、光はせめて自分がと思い、すべての豚カツを食い尽くしたと思うとせつない。 -
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ネタバレすげえ力技の小説。
勿論、力だけではなく上手い小説でもあるんだけど、読み終わった後の疲労感が「オモロかった」より「読み遂げたぁ」という感想になるあたりが、力でガツんとホームラン打たれた感がするのである。
新興宗教をテーマにしている小説。宗教観については個人的な見解も色々だろうし、そこをなんやかやというつもりはない。宗教とか救済とかその手の事についてどう書いてあるか気になる人は、この作品を読んで自身の感想をもてばよいと思う。
「絶対信じる」と言うた側はそこで思考停止する言い訳をしてるのであって、またそれを受け入れた側が思考停止を認めた段階で相手を人間として扱っていないことになる。
マスコミが言うていることが正しいのではないということ、大新聞がNHKが報道したんだから正しいというのは、「絶対」を信じる思考停止に似た心境なんだろう。この小説は「絶対」に信じる存在の危うさ、信じられることの危険性を一つのテーマにしてるのかなと思った。
某知り合いが「Mバーガーはミミズの肉使ってる」と大勢の場で言うた事があって「そんな噂バラまくなよ。ここにかって関係者おるかも知れんねんで」と言い返したら「だってテレビで言うてたからホンマやろ」と…。この知り合いを稚拙と笑うのは簡単だけど、その手のギミックに引っかかってるは俺含めて結構多いのではないか?
弱ってる時は寄る辺を欲するものである。それはもう絶対必要なんだけど、回復したら自分で立てるようにしとかないと、思考も筋肉も使わないと衰えるもんなんだということである。 -
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やっと読み終わった。
この本は友達のおすすめで出会った本。読み始めはおもしろそうだなーという漠然とした、どちらかというコメディ要素もあるのかなと勝手に想像を膨らませていた。
ところが物語は宗教を興すという、意外な展開をみせる。
そんな簡単にいくのかと思うほど、トントンと話は進み、わたしものめり込んでしまっていた。
だけど、途端に事態は急降下。
人間の欲や本能、心の奥底の深くて暗い隠された部分が見え隠れする。
正直読んでいて、不快なときもあったし、終わったあとは疲れたなという思いが強かった。
でもそれを含めて本当に面白かった。
面白いという表現がいいのかわからないけど。
人は究極という悲劇や、心のストレスなどを受けたとき、
その環境の影響から、こんなにも人としての内面や感覚が理解できないようなことになってしまうものなのかと、漠然と怖くなった。
人は弱い。
弱くて、でも強い。
結局、最後はどうなんだろう。
これは洗脳なの?といまだに私も謎。 -
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ネタバレチェロひきが、脳に傷を持つ女性に施設で教える。
どんどん上達し、演奏会を開催する。
集中すると周囲を傷つけることがあるのを理解していなさそう。
音楽会の裏表がわかる。
最後は、文学だから仕方がないのだが、幸せをつかむことができたのだろうか。人生と住んでいるところからの逃亡が幸せでは悲しい。
脳と音楽の関係が、もう少し深掘りしてあるといいかもしれない。
脳波と体温の関係とか、血中の諸物質の濃度との関係とか、肺での酸素の出入りとか。
解説を石堂藍が書いている。ファンタジー評論家とのこと。
解説ももう一歩、もう二歩、突っ込みが欲しいかも。 -
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上巻はトントン拍子に教団が大きくなり、普通はこんな簡単にできひんよな〜と感じるところもあったんやけど、下巻のあれよあれよという間にガンガン転落いく様はさらにリアリティを感じて、ああ〜もうこれ以上落ちていって欲しくないなあとだんだん読むのが苦しくなってくるんやけど、ほぼよどむことなく一気に最後まで読めました。
でも一気に読めるんやけど、これは相当体力がいります。
こんなに骨太の小説を読むのは久しぶりかもです。
読み終わったあとはぼーっとして、頭のなかがぐるぐる回って、現実世界に帰るまでにものすごい時間がかかりました。
仮想儀礼を読む前までは、新興宗教とか占いとかうさんくさいな〜、なんか信者のひとってだまされてる感があって気の毒〜、とか思っておったのですが、今となってはこの小説みたいなことってホンマにあるのかも。と感じております。それくらい、後半はすごくリアルに感じました。