あらすじ
自殺者がのこした音楽テープは遺言なのか、それとも怨念なのか。曲を聴いた児童はひきつけを起こし、押入れのチェロはひとりでに弦をはじく。送り主は松本の旧家で作曲をたしなみ、同人誌を発行する「高等遊民」。気味の悪さにテープはうち捨てられるが、音楽だけ別のテープへと乗り移る。死者の真意をさぐるために音楽教師の瑞穂は奔走、その途上、彼女自身が封印してきた過去があばかれることに……。『女たちのジハード』で直木賞受賞の著者による異色ホラー長篇。
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音楽に関する話題が半端ない。
解説はピアニストの青柳いづみこ。音楽学博士が解説を書こうと思うくらい、音楽に対する話題が豊富。
「器楽合奏による日本の四季」実際に存在している楽曲か、架空のものかが分からない。
カノン、フーガが、話題にしているのはどの曲か、できれば楽曲一覧があると嬉しい。著者の推奨CDも合わせて。
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主要な登場人物は、学生時代にヴァイオリン、チェロ、ピアノでトリオを組んだ男女3人。 3人の内のヴァイオリンを弾いた1人は、後にバッハのカノンを演奏・録音しながら自殺するのですが 残された2人が形見として受け取ったカセットテープを再生すると、次々と奇怪なことが起こり始める…、 という、音楽を題材とした長編ホラー小説です。 文章力の高さゆえ、読んでいるうちにこちらまで「真夜中、月明かりを浴びたピアノの横に自殺したはずの男が立っている」 ような気がしてきて、結構怖かったのですが、全編を通して「音楽とは何か?」 ということを強く訴えていて、とても考えさせらる“音楽ホラー小説の傑作”でした。 ホラーが大丈夫な方にはお奨めです。バッハの音楽には彼岸と此岸をつないでしまうような何かがある! と思えてきます。
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クラシック音楽、楽器演奏者からみたその深淵。若くない人達がかつての青春に再び焼かれる。完璧人間の凋落と復活。
僕が好きな色んな要素が入ってる。
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学校を出て会社に入り、家庭を作って必死に暮らしている中。
突然あらわれる空虚感。
自分の人生、これでいいのか?これで終わるのか?
と思うような時があるはず。
そのキッカケに友人の死があったりなど。
そんな多くの人が通る通過点を、篠田節子がお得意の音楽とホラーミステリーで描いた作品だと思います。
ただちょっと過去時代と、主人公が関わる2人の男性と、そして音楽と盛り沢山に描き過ぎている感じがします。
とはいえキラリと光る前向きな希望で終わる最後は、篠田節子先生のどの作品でもそうですが、やはり好きなのです。
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2人の男性と1人の女性の音楽を軸にしたお話。本当にどういう生き方がしたかったのかを振り返り、再度考えるきっかけを作ってくれた彼。彼の言いたかったことを理解するために何度もあった葛藤。
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読んでいる間、ずっと耳にバイオリンが響いて来るようだった。
ミステリでもあり、すこしづついろんなことが明らかになっていくのは読んでいて引き込まれる。ホラーとしても一級。派手に出てこないところがかえって怖い。
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経済的理由から音大に進めず教育学部で音楽を専攻し、チェリストになることを夢見ていた主人公。彼女は学生オケで出会ったヴァイオリニストに恋をし、その恋情を彼女の思うようには遂げられず妊娠堕胎といった失意のうちに夢にさえも挫折し流されるまま教職の資格を得て小学校の音楽教諭となる。それから二十年近くが経ったある日、もの悲しいヴァイオリンの音色とともに彼女の青春のすべてだったかのヴァイオリニストの訃報がもたらされこの物語は始まる。ヴァイオリニストが残した主人公と交わした約束の曲が儚くなった彼の幻とともにたち現れては彼女になにかを訴えかけ、彼女はその謎を追って長野県の松本市へと向かう。……長野県民としては、というかよく知った地名に誘われて頁をめくる指はどんどん進んだ。ホラーともいえるがミステリでもある。そして、一人の人生の折り返し地点にきた女が自らのうちに眠らせていた夢を再び追う物語だ。ラスト、彼女は仕事をやめすべてを捨てて音楽だけに生きようとしながらも家族だけは捨てきれないまま学生時代のようにチェロを抱く。
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音楽教師の瑞穂は、夫と一人の子供と毎日を忙しく過ごしていた。ある日、瑞穂に一本の電話がかかってきた。大学時代からの付き合いがある正寛からで「香西が死んだ・・」と・・・。
自殺した葛西康臣は、瑞穂が大学時代に出合った人だった。
康臣との出会いは、大学時代のサークルの集まりのオーケストラの合宿だった。あまり腕のいいオーケストラでなく不甲斐ない演奏をしたため、揉め事が起きた。その時突然流れたバイオリンの調べ・・。それが康臣との出会いだった。当時チェロを弾いて、プロになろうとしてた瑞穂は、康臣の演奏に魅了された。そして、アンサンブルをしようと言われオーケストラを抜け出し二人は、会うようになった。ある時アンサンブルは、ピアノを含めてやろうと言われ紹介をされたのが正寛だった。そして、夏休みに康臣の別宅で合宿をしようという事になり、あの出来事が起きた・・・。
康臣の通夜に行って、渡された一本のテープ。その中には逆に流れてたバッハのカノンの調べが・・・。このテープを手にしてから、瑞穂の周りで奇怪な出来事が起き始める。日常生活が軋み始め、瑞穂の心にも・・・。失われた歳月をえて託された正臣のメッセージ・・。幻の旋律は瑞穂をどこにいざなうのか・・・。
と言う感じのホラー小説です。個人的に好きな部類に入る本です。心理的に怖いと思わせるそんな本ですよ。ん〜でも、「贋作師」の方が怖いですけどねちょっと異色のホラーもたまには、いいのではないでしょうか?
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昔の恋人が遺したヴァイオリン演奏を聞いて以来,
身辺で奇妙なことが起こり始める。
恋人とその親友,主人公で始めたある夏の合宿。
そこへ向かって,テープがそうであったように逆行していく。
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ブクオフ100円。タイトルと本の厚さにひかれて購入。ちょっと眠かったとかそういうことが影響してるのかもしれないけど、何だか、世界に入り込んだような気がする。[08/05/09]
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新規購入ではなく、積読状態のもの。恐らく1999年4月に購入。
2019/1/9〜1/13
積みも積んだり19年ものの積読本。音楽や芸術に打ち込む、というのは残酷なことだなぁ。購入した当時は趣味ではなかった登山関係の描写もあり、積んで良かったのかもしれない。奥穂高は行ったことがあるが、あの稜線で雷に遭うなんて、想像もしたくない。
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内容(「BOOK」データベースより)
学生時代の恋人が自殺する瞬間迄弾いていたバッハのカノン。そのテープを手にした夜から、音楽教師・瑞穂の周りで奇怪な事件がくり返し起こり、日常生活が軋み始める。失われた二十年の歳月を超えて託された彼の死のメッセージとは?幻の旋律は瑞穂を何処へ導くのか。「音」が紡ぎ出す異色ホラー長篇。
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しっかりとした知識に裏打ちされ、緻密な描写で読者を引き込む篠田節の一作である。
音楽から最後には登山まで、よく取材されているのは感心する。しかしながらカセットテープを中心に、呪いや謎の怪談じみた超常現象が作品のキーとなるのだが、ちょっとばかり消化不良気味。不倫だの学生運動だの、必要だったかどうかという点については少々疑問が残る。というか、全体的に「駄長」としか言いようのない印象で、長編1冊にするより、1冊に2作ほどの中編にするべきではなかったのか。ここまで長くするのなら、テープの逆回転や学生運動、登山など、必要性に関してもう少ししっかりした理由付けが欲しかった。
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『本の雑誌』で紹介されているのを見て読んでみた。
こんなにレビューを書くのが難しい本も珍しい。いや、ほんとに面白く読んだし、読んで良かったとは思うんだけんどもね。
間違いなく言えるのは”音楽”が主役だってことでしょうか。
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ハルモニアに続く、音楽もの。
今回のテーマは、
ベースが少しありきたりなようなきがする。
教師という選択をした音楽をめざした瑞穂が、
青春の時の合宿にさかのぼりながら、
フラッシュバックさせていく。
カノン いわゆる輪唱
フーガの技法 反進行と拡大によるカノン
香西康臣 小田嶋正寛 小牧瑞穂
ナスターシャ 岡宏子
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どういう展開になっていくのか、と思ったら、
ホラーぽくなって、ちょっと意外だったが、
バカっぽくなく、美しい展開だったのでよかった。
音大時代の同級生たちとの交流や、
舞台が松本なこと(私の母校らしき場所の描写があった)で、
好意的に読み始めたが、
主人公が、演奏をあきらめて教員をやっている今の自分を
卑下しすぎ~。
ここに描かれている音楽感は、超一流のごく一部の人の感覚。
それか、プライドだけが高く、現実がわかってないか。
小説としては、神聖で荘厳で神の領域として「音楽」を描いていて、
嫌いではないけど、
一般の人が、音楽家ってこうなんだと思うのは違うと思う。
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主人公たちが同年齢ということもあり、
ドキドキしながら読み進めた。
私は恐がりなので、ホラーは苦手なのですが、
この作品は怖いという作品ではなかった。
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ホラーというほどホラーじゃない。不気味でも、怖くはありませんでした。
かつての友人が最期に残した一本の音楽テープにより、
テープを託された女性の周りで、不可解な現象が起こります。
過去を振り返りながら、死んだ友人とテープの謎に迫る物語です。
結局あの人は死んでもなお、音楽で何を伝えたかったんだろう。
読み終わっても、読み返しても、それが俺には明確に見えてきません。
カノンを選んだ理由も、俺には謎です。
でもその不思議な名残みたいなものが、良い味を出しているように思えました。
ただ、一種の「完璧」を目指していたことは分かります。
でも俺は、音楽に完璧も何もないと思っています。
だからなのか、彼あの人が不憫というか、見ていて寂しくなりました。
自分が完璧だと思っても、伝えたい相手にちゃんと聞いてもらえなければ、意味がないんです。
あの人も彼女も、見事なすれ違いだなぁと悲しくなりました。
お互いの音に、きちんの共鳴できていたのにもったいない。
いつまでも、お互いの音を大切にして欲しかったです。
Posted by ブクログ
確かに怪奇現象は起きますけど、「これ、異色ホラーですかっ?」…という感じです。
ホラーを期待している方はご注意ください。
幸せな家庭生活を送る主人公・瑞穂。
かつて愛した男が亡くなったことで何気なく流れていた日常のリズムが狂い、
人生を立ち止り、振り返り、40歳を目前にして焦り始めます。
女性として共感できる部分も多く、
自分を取り戻すチャンスを得た瑞穂は幸せ者です。
これから演奏三昧な生活を送るであろう彼女が何だか羨ましいです♪
グイグイ引き込まれて一気に読み終えた一冊でした。
しか~し、今まで「フーガの技法」ってつまらないと思っていましたが、
良い演奏にめぐり合っていなかっただけかも知れません。。
もう一度お勉強し直す必要を感じました…。
(過去ログより)