あらすじ
甘く切ない恋の至福のときは短くて、頂点を極めたあとには、ただ、執着と妄想に満ちた永い時間が続くだけ……。かつての恋人と共に、死者の世界を永遠にさまよう甘美な地獄を幻想的な筆致で描く「38階の黄泉の国」。出ていった男を待ち暮らす寂しい女の危うい心理を追う「ピジョン・ブラッド」など、恋と、恋の残滓の中にひそむ、恐怖とサスペンスとミステリーを描く愛の終わりの物語全6編。
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Posted by ブクログ
短編六話
秋草
38階の黄泉の国
コンセプション
柔らかい手
ピジョン・ブラッド
内助
内助は、黒い。相手をうまく生かし切れなかった。
ピジョンブラッドもその意味では相手を理解しきれていなかった。
心をというよりは行動を理解しきれていなかったことを悔やむ物語。
小池真理子の解説がいい。
分野(ジャンル)を無視した書き物。
書きたいから書くというような。
篠田節子の技量を褒め称えている。
作家が書く解説は面白い。
読者にはない視点を提供してくれる。
Posted by ブクログ
30年近くも前の作品なのこれ…
危うい男女の短編6篇。方向性は違えど全編「女って怖え…」となる。おかしいな、男どももそんなに屑ではないんだけどバッドエンド気味だな…大好物だが
Posted by ブクログ
篠田節子さんが若い頃に発表した6篇からなる短編集だ。
篠田さんがデビューして初期から中期の作品と云うこともあり、とてもエネルギーに満ちた激しさがある。
恋は甘美で至福の時を分かち合うものだが、やがて小さなすれ違いから破綻を迎える物語が綴られている。
人の心に潜む執着心、独占欲、願望などが複雑に絡み合い、妄想と現実の世界との差から葛藤が始まる時、相思相愛の関係から残酷とも云える関係に変化するのだろうか⋯。
そんな緊張感が伝わってくる短編集だ。
突如にして小さなきっかけで愛が憎しみに変わり、狂気の沙汰とも云える行動に出たりする。
世には幸せそうな家庭が散見されるが、一つ間違えばいとも簡単に不穏な空気を醸し出すと云うことだろうか。
夫婦が突如奈落の底へ落ちる可能性はどこにでもあるのかも知れない。
この物語に登場してくる男性たちは、何だかとても単純な考え方をしているように思えるのだが、きっと平均的な日本の男性なのだろう。
我が身を振り返って、奈落の底へ滑落しないように肝に銘じようと思った。
Posted by ブクログ
6つの短編作品は、それぞれ独特の雰囲気を醸し出していて飽きることがなく、ひとつひとつ嚙みしめながら読んだ。
『秋草』という作品の中に「芸術の毒にあてられると、破壊するか自殺する」という話がある。本当にあるんだろうか?
アーティストではないけれど、そんな心を奪われるものに出会えるのは、ある意味幸せなんだろう。
『38階の黄泉の国』は、死んでからも仕事すんの嫌でしょ!が正直な感想(笑)
1997年の作品を2020年の今の時代に読んでみると、20年の歳月で環境も価値観も大きく変わったものだと思い知らされる。
Posted by ブクログ
6つの短編集。
サスペンスとミステリーという位置付けらしいが、
そこまでのものではないと思う。
ただ女性の怨念や情念、到底男性には理解できないであろう想いが、恐怖に感じさせられる。
それもあってか、男性の純朴さ素直さが浮き彫りになって、とても対照的である。
とてもおもしろかった。
Posted by ブクログ
再読。
筆者30歳代の作品という事で力量がぐいぐいのして行った時期かと思われる・・だけに表現や心情の底に流れる情感の言語化は巧み。
その後、一気にブームにもなった嫌ミスならぬホラー恋愛の流れ的嚆矢?
6つの短編が掲載。
標題にある「愛逢い月」に込められている陽の如く「燃え上がっていく恋愛感情が時の流れに拠ったり感情の浮遊などで、気が付けば別の方向を向いていた・・てなニュアンス。
筆者と同世代の男女の機微が惨く、寒く、白々しく描かれる。
そういや、その頃「誠意大将軍」てなはやり文句があったなぁ