篠田節子のレビュー一覧
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ネタバレミクロ・タタに生息するイモリもしくはオタマジャクシのような容貌を持つウアブの可愛らしさにハマり、ウアブの研究者呼ばれるまでになったジョージは、島のインフラ開発計画でウアブ存続の危機に直面する。そこでウアブ保護クラブを立ち上げ、メンバーらとどうやってウアブを守るか議論を重ねていく。そして、メガロ・タタの複合リゾート施設ココスタウン付近の池へ移動させることを決意する。移動後しばらくは特に問題なく、順応しているかように見えたウアブだが、突然の大量死をきっかけにして人が次々咬まれる事態が相次いで起こりーー。
ジョージと父の関係&やりとりの変化、現地住民との考えの相違、本来の住処から良かれと思って移動させたことが環境の自然破壊・ウアブの変態を引き起こし、どうにかして収束させようと奮闘するシーンは読み応えがある。また、ゴミに乗ってあちこち生息地を広げていくくだりはゾッとしたし、封じ込め作戦が如何にこの現代では難しいかが伝わってくる。バイオミステリーものは読んだことがなかったが、勉強になった。かわいいからと言って安易に保護するのもよくないんだなと感じた。
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Posted by ブクログ
ネタバレなかなか恐ろしい内容だった。
以前親しかった学生時代の次女の友人が
『長女って僻みっぽいから〜』が口癖だった。
理由はその子の姉がよくその子に説教をすると。
『親から家を買う資金をもらったとき、姉が説教してきた。羨ましいなら自分も貰えばいいじゃーんね!』と言っていた。
彼女にかかると『いいなぁ!羨ましい〜』と言うお世辞すらも長女が言うと『僻み』となるらしい。
この事から、なるほど根本が違うんだなと感じたのを覚えている。
彼女の姉は『羨ましいから』説教したのではないと私は思ったから。
本当に長女として、親の事や妹を気にかけていたのだと思う。
現に妹の方は、その時の旦那とは離婚し一年もしないうちに別の男性と子連れ婚した。
昔から男をコロコロ変えていたので驚きはなかったけど、彼女の強さというか、図太さにむしろ尊敬した。
きっと、その子の姉が離婚したら、そうはいかないだろう。子供の事、親の事第一に考えてしまい自分の幸せは二の次にしたと思う。
これは長女だから次女だからとは関係ない話だけど。
この本を手に取る度、その姉妹を終始思い出し、また私も長女なので、弟達の『世話はしないが偉そうに口を出す』態度と重ねて読んだ。
母と暮らす私は、いずれ来る介護に少し緊張感が生まれた。
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出版社の不人気文芸誌に異動させられた実藤。実藤の異動の直前に突然退職した篠原のデスクを整理している最中に『聖域』と題された小説の原稿を見つける。そこには魑魅魍魎と戦う慈明上人の壮絶なるストーリーが綴られていた。しかし、500枚以上の原稿はみかんであることに気がつく。作者の水名川泉の行方は、関係者も誰も知らない…。
いや、面白い。ここのところ、悪い言い方をすると"薄い"小説ばかりを読んできていたので、本作はゴッテリと重く濃厚だ。登場人物は実藤、泉以外はほとんど動かないし、多少何人も増えたところで、まったく「誰だっけ?」とならない配分がなされているのは、最近読んだ本の中でもずば抜けてよかった。
前半では作中作『聖域』のストーリーあらすじが記されるのだが、あらすじなのか本文なのかという振れ具合が少々ひっかかり、早く終わんないかなと思ってしまったのは事実である。
その後の水名川泉探しと、死後の世界を目の当たりにする、大きな事件こそ起こらなくなるものの、ゆらぎ繰り返される感覚も、冗長には感じない。最終的に結末を手に入れられるのか?ということすらどうでも良くなっていくのである。
口寄せ、イタコと死後の世界というのは、ちょっとやりすぎな感じはあったものの、篠田節子らしい切り口で、決して胡散臭かったり、必要以上に語るわけでない部分は好感が持てた。
長い作品だが、読む分にはさほど長く感じないのではないか。それくらい完成度は高い。 -
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心的外傷を負った女性たちが暮らす施設が火事に。
「先生」と慕われるマザーテレサのような小野尚子が死亡した。しかし、遺体は別人だった。
果たして死者は誰なのか。ミステリアスな冒頭から引き込まれ、文庫本641頁もアッという間。
施設代表の優紀とフリーライターの知佳が、「先生」は誰だったのか、本当の小野尚子はどこにと、真相を明かすべく行動を開始する。
そして、小野尚子とは全く異なる生き方をしてきた人物が浮上する。
「人の視覚はカメラと違う。像の中に思いを重ね合わせ、寮の人々は愛情と喪失と悲哀のフィルターを通して」人物を見るというが、果たして異なる顔が同一人物に見えるのだろうか。
さらに、別人格の人間が他人にどこまで同化できるのか。
しかし、そんな疑問も緻密な物語構成によって、違和感なく納得できてしまう。
別人物になり得ることを、著者は題名ともなっている鏡で説明する。
鏡の部屋で見たのは、「正面の鏡に映った自分の姿が背後の鏡にさらに映り込み、無限の像を結ぶ。混乱の中に見えるのは増殖する自意識か、自己と他者の境界の消滅か」と。
「心霊現象とは関わりなく、人は自分でない他人になってしまうことがある」
我々の自我など、思っているよりも脆いものだと、この小説は明かしてくれる。 -
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埼玉の住宅街で突然起こった日本脳炎大流行。
対策はワクチンしかないと踏んだ市井の人たちが自分の持ち場で働きまくるお仕事小説。
篠田節子自身が市役所出身の人だけあって、市役所時代に舐め尽くした辛酸の全てをぶちこんだような描写の数々がよかった。公務員とてたいへんに大変である。
20年前に読んだときは「日本版バイオハザード怖〜」くらいの印象だったけどバイオハザードの恐ろしさの描写はあるものの本質はそこではなくて、未知の病原体に対して対策すべきは第一にワクチンという明確な主張があって、その確保と接種に行き着くまでに為さねばならない膨大な仕事の物語だった。
25年前の小説でありながらワクチン接種の重要性を主張したり、パンデミックを経験して変化する人の心であったり街の様子であったり(数ヶ月もすればなんとなく外に出てしまう人たち、ストレスによる非行の増加、自殺者の増加)
内容は全く古くない、まさに今読んで面白い小説だと思いました。