篠田節子のレビュー一覧

  • 銀婚式(新潮文庫)

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    高澤修平が証券会社、損保会社、大学と職場を変える中で様々な奮闘を詳細に記載した物語だが、最後の大学編が面白かった。学部長などからの圧力に歯向かう形で学生たちとの交流を深める中で、多くの成果が上がる。鷹右左とのもどかしい感じの付き合いもよかったが、離婚した妻の由貴子と息子の翔とのやり取りが現実の問題として誰にでも起こりそうな形で述べられているのが素晴らしい。

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    2017年12月17日
  • レクイエム

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    タイトル通り、「死」をテーマにした短編集。最初の作品は純文学と言った部類だが、その他の作品は篠田節子らしい怪談じみた話。怖い話ってわけでもないけど。

    夫の死、伯父の死などの死を契機に、様々な出来事がフラッシュバックするというようなところが6本それぞれの共通点か。中間部はバブル経済とその崩壊、最後は大戦の終戦間際という、動乱を軸にしているところが篠田節子らしいっちゃあらしい。

    6本サラリと読んで、どれが好きかと言われると、結構どれも好きな作品である。バブル前にお告げを受け、バブル後にまた同じ救いを求める女性、貧してもトラサルディのスーツは譲れない不動産屋など、心機一転できそうなのに、枠組に縛

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    2017年10月26日
  • 絹の変容

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    生物災害もの(バイオハザードっていうとジョヴォヴィッチ思っちゃうよね)

    しばらく芋虫系が怖くなる

    その災害をもたらす蚕を生み出す元になったのが、繊維メーカーの若旦那(といっても中年男だが)
    もっとも、開発した芳乃は少しマッドサイエンティストのケはある

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    2017年10月21日
  • 廃院のミカエル

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    日本の輸入会社で働いていた美貴は、男女関係のトラブルでレバノンに飛ばされ、何とかビジネスをモノにしようとするも内戦でベイルートから脱出、アテネに逃げ込んだ。そんな中たまたま巡り合った白い蜂蜜をビジネスチャンスにできないかと生産地の村を訪れた美貴だったが、廃院となったメサポタモス修道院の壁に描かれたミカエルの絵を見てからというもの、不思議な現象が起こり始めるー。

    冬のギリシャの鬱屈とした感じの中に閉じ込められそうになるけど、出てくるギリシャ人がみんなすごくギリシャ的にいい人たちでほっこりする。アトス山については村上春樹の雨天炎天で読んでいたので、より想像ができて良かった。

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    2017年08月28日
  • 百年の恋

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    ネタバレ

    真一が結婚したのは容姿端麗、東大出のエリートキャリアウーマン梨香子。実は家事が出来ないどころか頭に血がのぼるとヒステリックな暴力女だった…何故か私は真一の立場になり最後まで梨香子側にはなれなかった。年収800万だからと許されたことではない。彼女の性格が変わっていけばこの夫婦はやっていける希望はある。子供の成長とともに環境も変わりどうなっていくのか…真一さえ我慢すればいいのではあまりにも可哀想で。結婚は焦らず相手を見極めて欲しいと我が息子に思いを馳せた。

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    2017年07月23日
  • 絹の変容

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    パニックもの。短くまとめたことで突っ走った感が出てて、それがまた良い。余計に話を広げず、細かいことよりも、息を止めて一気に駆け抜けた。そんな小説。

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    2017年07月03日
  • 百年の恋

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    キャリアウーマンでも家事が全くできない妻&イクメン男性のほっこりする話。女子力についても考えさせられる。

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    2017年06月10日
  • はぐれ猿は熱帯雨林の夢を見るか

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     4つの短編それぞれのテーマが面白い、希少資源を体内にため込むウナギ、掘り返された土中から蘇る寄生虫、人工知能を搭載したロボット、現代社会と隔絶された村など・・・いまの時代を風刺したお話しになっているし、突然の出来事に翻弄される人々が面白可笑しく描かれていた。

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    2017年03月03日
  • 銀婚式(新潮文庫)

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    公立高校から国立大学、証券会社に就職し結婚、ニューヨーク勤務。ここまでは順調な人生にみえた主人公。妻の病気、ここから人生の軸がブレ出す。
    離婚、経営破綻、再就職、鬱病、リストラ、転職、老老介護、認知症、再婚、年の差婚、大学受験、浪人、セクハラ、できちゃった婚、ケアマネージャ・・・・。現在、よく耳にする言葉が溢れてくる。だからこそ、リアルに感じて引き込まれていく。
    タイトルの銀婚式ってこの離婚男にどう結びつくのだろう?再婚予定の年下の女性から、銀婚式が迎えられるまで一緒に生きていく、って言われた箇所か?なんて思ったが・・・。
    周りの人に影響を与え、与えられながら人は生きていく。そうして、自分の運

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    2017年03月02日
  • 仮想儀礼(上)(新潮文庫)

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    ネタバレ

    とにかく長い。上下巻をあわせると1200ページを超える長編である。
    長いの飽きさせない。ページ数の多さに負けない中身の濃い物語だった。
    失業しこれといった夢もなくなった二人の男が軽い気持ちで立ち上げた「宗教」。
    教義のもとになったのは、正彦が書いていたゲームブック。
    その場しのぎの対応を続けた結果、いくつものトラブルに巻き込まれることになる。
    宗教にハマったことがないので、雅子たちが暴走していく心情がよくわからなかった。
    それなりの理由はもちろん理解できるのだけれど。
    何でも一番いいのは「ほどほど」なのかもしれない。
    絶対的な存在としての「教義」。
    雅子たちの狂気は、やがて偽宗教家の正彦をも喰

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    2017年03月02日
  • 家鳴り

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    じわじわと怖さがくる7編の短編集。
    凶悪な人が出てくるというわけではないけど、
    ゾッとする話と不思議な話。

    『青らむ空のうつろのなかに』は実の母親からのDVを受け、父親に施設にあずけられ、施設でも誰にも心を開かない孤独な光
    唯一心を許せるもの、守られるものが養豚場で育てている豚だった…
    切ないお話でした。

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    2017年01月11日
  • コンタクト・ゾーン(下)

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    生き残るには、愛か体力か、専門的知識のどれかが必要なんだなあと思った。若い頃に、何も考えずにフラフラ旅をしていたのが怖くなった。

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    2016年12月22日
  • 贋作師

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    やはり濃密な空気の漂う1冊である。絵画修復という職人になったヒロイン。今は亡きはかつての「恋人」の足跡を追って、美術界の大御所の遺作を手掛けるようになる。謎の森に読者は誘われる。

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    2016年11月21日
  • コンタクト・ゾーン(下)

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    最後がこ綺麗にまとまりすぎているが、バッドエンドではなく一安心。
    主人公3人組は、日本難民とかではなく、結局自分が必要とされるという実感を求めていたのだろう。しかし、精神的な安定を求めるって、物質的に満たされているからのような気もして、結局日本人って傲慢なのかと思ったり。

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    2016年10月25日
  • コンタクト・ゾーン(上)

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    第一章は、とにかく3人組の言動が鼻についてイライラする(敢えてそう描かれているのだが)。ここで挫折する人もいるのでは。その後は、アクションからのすわ無人島サバイバルかと思いきや、民族対立や伝統と発展が入り交じる村の様子が重苦しく、しかし丁寧に書かれている。主人公3人にに共感できる部分も多い。
    下巻も読まないと分からないが、もっと評価されてもよいような。

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    2016年10月24日
  • 秋の花火

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     五つの短編集、特に『観覧車』と『灯油が尽きるとき』に惹かれる。観覧車は明るい未来に一歩踏み出し、灯油~は現状から離脱するために一歩踏み出したわけである。人の人生には慣性の法則が働く、一時的な成功を手にしてもしばらくすると自己のイメージに逆戻りするのである。観覧車の二人に幸あらんことを願う。

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    2016年10月14日
  • 仮想儀礼(下)(新潮文庫)

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    この引き込まれて逃げられない展開。読まずにはいられない展開。想定しているより悲惨な境遇に一段一段落ちていく。目をそらしたいけれど指の隙間から見てしまうような、そんなストーリーでした。人間描写がすごい。
    どこかしらに、らもさんのガダラの豚を思い出させるそんな雰囲気があった。
    いやぁ、作り話にしてもなんとも恐ろしい話だ。ずーんときた。

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    2016年09月19日
  • 仮想儀礼(上)(新潮文庫)

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    文章は淡々としているが、冷徹さと熱っぽさが共存していて心地よい。 テンポよく話もすすみ、久々の期待どおりの作品になった。続きが楽しみである。

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    2016年08月22日
  • 静かな黄昏の国

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    私たちは一体どこへ向かおうとしているのか、そしてこの国はどうなっていくのか。
    どれも起こりうる物語が、嫌な気分にさせられます。

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    2016年08月10日
  • 死神

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     地方都市の社会福祉事務職員たちの奮闘記。最後の助けとなるべく、日々の問題解決にまい進する職員たち。しかし難問山積、解決の糸口さえ見つからない。無気力感に苛まれながらも職責を果たすために最善を尽くす。そんな彼らの姿に勇気をもらえる。

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    2016年06月29日