篠田節子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ホラーとファンタジーが無理なく日常に混じって練り上げられている。
他人から見たらホラーでも、本人にとっては、現実からの幸せな解放だったかもしれず、
あんな人とは釣り合わない、うまく行ってないに違いないと外野は勝手に思い込んでいるが、ちょっとやっかみが入っていないか、とか。
ほんとうはしあわせなおはなし。
『屋根裏の散歩者』
すぐに連想するのは、江戸川乱歩の同名の小説。
ボタニカル系の人気イラストレーター祥子は、生活の拠点を自然の中にある郊外の借家に移す。
庭に自然の植物が繁り、ナチュラル嗜好の祥子の趣味にぴったり。
ところが夜中に天井裏から、ずるずると何かを引きずる音や、ズシン、という響き。
5才年下のチェリストである夫の貴之は、ぽっちゃり系でおっとりしているが、いざという時に大胆な決断をする。彼の人柄が救い。
『妻をめとらば才たけて』
市役所の同僚だった三人の男は、定年退職後に一緒に呑むようになった。
浅羽は芸術的趣味があり、ヴァイオリンの名手。司書と学芸員の資格もあり、わざわざ公立コンサートホールに併設された資料室へ希望を出して転属、出世コースからは自ら外れた人。
一度は役所内のしっかり者の保健師と結婚したが、有名ピアニストと不倫をして再婚をした。
彼は、妻の骨壷を、故意に電車の中に置き去りにしたのか?
『多肉』
コロナ禍で飲食店の苦戦が続く中、多肉植物「アガベ(?)」に魅入られた、レストランオーナーの転落
『遺影』
義母が亡くなり、遺影に使う写真を探すが、難航していたところ、人見知りで警戒心の強かった義母が珍しく晴れやかに笑っている写真を夫が見つけてくる。
しかし、義母の肩には隣にいる初老の男の手が掛かっていた。 -
Posted by ブクログ
刊行されたのは、1995年ということだが、今はいくらか落ち着いた現代のコロナ渦の勃興期を思わせるような作品。
作家の想像力の凄さを感じさせる。
埼玉県の郊外の街で、住民が次々に病魔に襲われる。
日本脳炎と診断されるが、撲滅したはずの伝染病が何故?
感染イコール発病、ウイルスが体内に入ったら必ず発病してしまうという事態に、異変を気づいた保健センターの職員やベテランの看護師、診療所の医師たちが真相に迫るべく行動を起こすが、彼らはけっしてヒーロー的な活躍をするわけではない。
次第に無害化するのがウイルスの特徴なのに、このウイルスは進化の仕方がおかしいと、ますます悲惨な状況に。
隔離、封じ込め、さらに感染者や感染場所への差別行為。現代のコロナ渦と同様な状況が繰り広げられる。
パニック小説であるとともに、医療現場やその行政を告発した医療小説でもある。
老獪な医師が語る言葉が、現代の我々への警句になっている。
「・・・ウイルスを叩く薬なんかありゃせんのだ。対症療法か、さもなければあらかじめ免疫をつけておくしかない。たまたまここ70年ほど、疫病らしい疫病がなかっただけだ。愚か者の頭上に、まもなく災いが降りかかる・・・。半年か、1年かあるいは3年先か、そう遠くない未来だ。そのときになって慌てたって遅い」
様々な警句や対処行動が描かれたこの小説、コロナ渦前にもっと読まれていたら・・・。