篠田節子のレビュー一覧
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現在コロナウイルスが世に蔓延しているが、
小説の世界ではパンデミックはそう珍しいことじゃないのだ。
あっちでもこっちでも起きている。
『夏の災厄』の中では今現在ではほとんど見られなくなった日本脳炎が広がる。
小説の中でも医療従事者たちは初期の頃から警鐘を鳴らし、役所はどうにか打つ手はないかと走り回っている。
国はのギリギリまでらりくらり。
25年前に書かれた本だが、あれ、何だか今と対応が何も変わっていない気がするぞ。
感染対策とはそもそもこう言うモノなのか。
それとも大元が全く成長していないのか。
果たしてどっち。
オカモノアラガイが気持ち悪すぎる! -
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ついあてにされ、行動でも心意気でも妙に力んで引き受けてしまう、これが長女に生れたついた者のサガ、わたしも長女だからよくわかる。わかるけれども、お人好しな要領が悪いところもあるようだ。
という『長女たち』の「家守娘」「ミッション」「ファーストレディ」中編3つの内容。
3編とも母親を介護することになって娘が奮闘するのだが、それらに登場する老いた母親たちが、モンスターのごとき、阿修羅のごとくわがままでもの凄いし、どんなに尽くしても満足もお礼もない母親の娘に対する「私物化」が情けない。そんなに激しく描かなくてもと、もう高齢のわたしなど身を縮めてしまうけど、篠田さんのオカルトめく筆はうまくて参ってし -
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一気に読みました。
篠田節子さん、第117回直木賞作品。私は篠田さんは初めて。
5人の個性あふれる女性の良い意味での現代女幸福論の数々。
解説の田辺聖子氏も『いい意味での女手(男性作家の手に合わぬ分野)の小説群』とおっしゃってます。
痛快で面白かった。
結婚が幸福のカギとならなくなって久しいが、さりとて何がそれなのかと悩んでいる人間の性が女性となると戦いとなる!!
しかし、深刻な人生論をぶつのではなく、実際的で、頭脳を働かせつつ、かつ色気もあって、この作品は飽きさせない。
5人の中で私は誰が好きか?
康子。どじな観音様みたいなんだけれども、実務派。
ひそかにオムニバスでなくて -
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"今はそれどころじゃない、たいしたことはない、と体からの警告や訴えを無視して仕事に励み、子育てや介護に勤しむ。それが深刻な結果をもたらすこともある。
体の声を無視してはいけない。
おかしい、と思ったら立ち止まる、危ない、と判断したら医療機関を訪れる。その一瞬をないがしろにせず、自分ファーストに切り替えることの大切さを、病気になって初めて知る。"(p.14)
"人は永遠には生きられないが、ハード面の進歩によって、死の間際までそこそこの快適さを享受できる可能性は、この二十年の間に飛躍的に高まったはずだ。事が起きた場合に、だれかのせいにして自身の心理的負担を減ら -
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篠田節子『竜と流木』講談社文庫。
南方の架空の島を舞台にした生物パニック小説。平和な島を突如襲った黒い悪魔の正体は……
帯にはバイオミステリーと紹介されているが、生物パニック小説の方が相応しいのではなかろうか。人間が平和な島に存在しないはずの生物を持ち込んだために生態系を破壊し、とんでもない化け物を産み出してしまうという物語である。化け物の正体にも早い段階で気付いてしまうのも残念だし、化け物にももう少し暴れてもらった方が面白かったと思う。
太平洋の小島ミクロ・タタの綺麗な淡水に棲息する両生類ウアブに魅せられた素人研究家のジョージはウアブの絶滅を危惧し、ウアブを近くの小島メガロ・タタへ持ち -
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久しぶりにホラー小説でも読んでみようと思った。
「家鳴り(やなり)」という耳慣れない言葉。この本の5番目の短編のタイトルだ。
ホラーといっても、悪人の魂が入り込んだ人形が人を殺しまくることもなく、街中にたくさんのゾンビが徘徊するわけだもない。夢の中で殺人鬼に殺される恐怖も、巨大な隕石が地球に衝突する事態もない。
惰性で7年付き合った恋人のように新鮮味に欠ける言い方だけど、そんな世の中で一番恐ろしいのは結局人間だということなのか。
読み終わったあとにゾクっとする話あり、ページをめくるたびに息苦しくなる話あり、
かと思えば、全て無くしたと思われる人生の中で微かな希望を持とうとする意外な結末もあ