篠田節子のレビュー一覧
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ちょっと怖いような不思議な四つの話。
いい大人が何かのきっかけで一つのことに心を絡め取られてしまい、深みにはまっていく。それが「白昼夢」なのか。
自分より長生きする亀と共に生きる人生、社会とも一線を引いて亀だけと生きる人生、恐ろしい。そしてその長寿の亀を自分のまだ形もない子どもに託そうとする大人にも空恐ろしくなる。
アガベに心を絡め取られて何もかも無くしてしまう男性、その堕ちていく様子は怖いのに目が離せず一気に読んでしまった。
のめり込めばのめり込むほど周りは離れていく。人が離れていけば、余計に目の前の自分を裏切らないだろう植物に傾倒していく。恐ろしい循環だ。
みんな、気がついた時にはも -
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遭難したダイビング仲間の遺体の捜索をその恋人から頼まれて、奥多摩の地底湖に潜った主人公は、そこで不思議な生物と遭遇する。どうやらその場所に閉じ込められたまま独自の進化(いや変異、特殊化か)を遂げた哺乳類であるらしい。うーむ、じつに魅力的な設定ですね。サスペンス・ファンタジーと銘打ってありますけど、どうだろう。ぼくはハードボイルドだと思って楽しんだんだけど。「地球にやさしい」というぼくはあまり好きじゃない文句があるんだけど、この物語を読んでいると、いったい自然て何なんだろうと考えさせられてしまう。人間のあがきなんてじつにちっぽけなものにすぎないですよね。「地球にやさしい」ってのは、どうにも人間中
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ネタバレ先が気になってほぼ一気読みでした。篠田節子作品は割とこうなる…
そばにいてくれた白猫を葬った日に、豪農の跡取り・輝和はネパール人のカルバナとお見合いしそのまま結婚した。
カルバナに「淑子」と名付けて奪い、食文化を奪い、生活と言葉を矯正し、結木の家に当てはめ、嫁としての仕事をさせていく…この部分は辛かった。わたしの母は日本人でしたが、昭和生まれ平成育ちなのでこんな家庭は想像できます。
しかしカルバナが救いを…というよりは穏やかそうで苛烈な破壊と再生を行っていき、結木家は全てを失っていく。
その姿は周りから神と崇めれていったけれど、見抜いていたのかな?血と涙と怨嗟が染み込んでそうな結木家の資産の数 -
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ネタバレホラーの要素を持ち、奇妙だが、素材調べがしっかりされており、あり得ないこともないと感じる4つの短編
「屋根裏の散歩者」は、借家に引っ越してきた夫婦が夜になると聞こえる屋根裏からの物音に悩まされ、その意外な正体に驚く話。ワシントン条約や希少昆虫のブリーダーにも話が及び、よく調べられてるなと感じた。
「妻をめとらば才たけて」は、ある男が電車の中に骨壺を入れた紙袋を置き忘れ、それが警察に届けられたところから始まる。相思相愛だった妻と別れ、有名ピアニストと再婚した男だったが、自分はがんになり、再婚相手はコロナに罹患する。物悲しさと幸福感が共存する深みのある結末となる。
「多肉」は、コロナ禍によって父の -
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ネタバレ流される男と流されない女のお話って感じなのかなあ。
世代や性格が違うせいか、めっちゃ性に奔放な康宏と紘子にもついていけなかったし。
康宏は「何者にもなれなかった自分」に虚無感を感じているのかなとも思ったけど。
康宏がホントに恵まれた人生すぎて、正直何ゼイタク言っとんねんくらいにしか思えなかった。
終わりくらいの、康宏と梨緒の濡れ場はめっちゃ爽やかな朝に読んでたせいか「朝っぱらから何を読まされてるんだ私は…」感が半端なかった。
康宏と紘子の話に絞っても良かったと思うんだけど、娘の碧に後を追わせたのは何故なんだろうと考えてしまった。
これ、男性が読んだらまたちがう感想が出たんじゃないかなあって -
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騙された男と騙した男が始めたインチキ宗教「聖泉真法会」。最初は訳アリな若者たちの駆け込み寺のようなものだったが、あれよあれよと言う前に信者数千人をかかえる大所帯になる。
だが、所詮は思いつきとインチキで始めたエセ宗教団体。思わぬところから足元をすくわれ、転落の一途をたどる。果たして、聖泉真法会の向かう先とは…?
上巻とは全く違って、終始重苦しくて禍々しい雰囲気が漂う中、これでもか!ってくらい堕ちていく主人公。
もうね、えげつないです、篠田節子さん…。上巻の何となく面白おかしいムードを一変して、ホラーにしちゃうんだもの。怖い怖い!
そりゃ虚業で始めた宗教(商売)だし、別に特別主人公に肩入れして -
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1997年第10回山本周五郎賞
同年の直木賞候補作にもなりました
ゴサイタンーヒマラヤ山脈にある山の名で
「神の座」の意味を持つ
東京近郊の豪農結木家
地元名士だった父、家と夫に尽くし地元にも尽力した母、家と農業を継いだ次男
長男は優秀で早々と家を出て結婚してアメリカで暮らしている
次男の輝和はまもなく40歳を迎える
家の為親の為にも結婚を希望しているが
嫁はなかなか見つからない
同じような環境の友人達と外国人花嫁の斡旋を受けて ネパール人の若い女性と結婚する
なかなかの長編で この農家の現状と外国人花嫁の受け入れ、それでもよしとする農家を継ぐ男達を中心とした心情はとても興味