篠田節子のレビュー一覧
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★3.5くらい。読み終わるのに1ヶ月近くかかってしまった。P648の長編小説。人間救済、回復の物語。
<名前の回復>カルバナ・タミという名前を剥奪された「淑子」。
<人間性の回復>人間(輝和)が変わるには、これほどまでの痛苦を味わう必要があるのか。想像を絶する「墜ち方」。ここまで墜ちても回復できるのだとしたら、墜ちてみるのもありかもしれないよなあと思う。残念ながら、普通だったら、どっかで死ぬだろう。主人公・輝和、人間の機微を理解できない、この鈍感な男が、最後には頼もしく、再生してゆく様。
<家父長制(家)の崩壊>豪農の跡取り息子・輝和が、すべてを失う。本当に「すべて」を。名士としての歴史 -
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たんたんと話が進んでいって、
たんたんと読んでいったけど、
特に大きな盛り上がりがあるわけではなく、
そのまま終わった。
とは言え、人生そんなもんだと思った。
都会の情景やそこに生きる人々が独特な表現で、
姉エリの心のうちがテレビの雑音、ブラウン管の中の世界で
表わされていて、よく分からないけど、なんだか分かった。
都会という波に飲みこまれながら
個々がそれぞれに考え、悩みを持って
毎日陽は登る。
そんな毎日が第三者の目線を用いて
きちんと描かれていた。
初めて村上春樹の作品を読んだけど、
なかなか不思議な世界だった。
読み終わった後、なんとなくタイトル -
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経済的理由から音大に進めず教育学部で音楽を専攻し、チェリストになることを夢見ていた主人公。彼女は学生オケで出会ったヴァイオリニストに恋をし、その恋情を彼女の思うようには遂げられず妊娠堕胎といった失意のうちに夢にさえも挫折し流されるまま教職の資格を得て小学校の音楽教諭となる。それから二十年近くが経ったある日、もの悲しいヴァイオリンの音色とともに彼女の青春のすべてだったかのヴァイオリニストの訃報がもたらされこの物語は始まる。ヴァイオリニストが残した主人公と交わした約束の曲が儚くなった彼の幻とともにたち現れては彼女になにかを訴えかけ、彼女はその謎を追って長野県の松本市へと向かう。……長野県民としては
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ネタバレあまり女性作家の作品は読まないがこの作品は表題に惹かれて以前購入し本棚に放置してあった。彼女の別作品を先日読み在庫にあったなと。
内容は
ひょんな理由から都庁を退職。家庭も崩壊してお金儲けを目当てに
宗教を主宰した男たちの顛末記。
なるほど女性の視点で描くとこうなるのかという感じ。
男性の私から見れば主人公はまっとうすぎた。
教祖はもう少し泥臭くなければ務まるまい。
おそらくこんな男性はあまりというか、かなりレアだろう。
新堂冬樹の「カリスマ」のほうがより実際的な気がする。
私がその立場だったらと随分考えさせられた。
泥臭さには自信があるが、こんな女性信者からは
即刻逃げ出しそうだw
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「朱鷺飛来図」が描かれた理由と珠枝の謎の死と
映画監督の不審死の原因を探るために奥多摩に向かう主人公二人。
ここまでなら、よくある好みの展開だったりするが
奥多摩の山中に足を踏み入れた途端に迷い込む魔境。
何かがいる気配ではなく、いない気配。ここで既に怖い。
これは種そのものを絶滅に追いやられた朱鷺の怨念ですよ。
散りばめられた伏線を回収するかのごとく収束に向かい、
謎が解明された時、更なる恐怖が主人公たちを襲う。
ページを捲る手を止められなくて一気に読んだわ。
主人公の1人がヘタレだってことにイラっとしたけど
面白かったからいいでしょう。 -
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パンチェンラマ十世のミイラが蘇るという荒唐無稽な物語の中にチベットの現状を描き込んだスラップスティック・コメディ。
ダライラマやチベット仏教をを扱った本は何冊か読んだけれど、本作を読んで全然わかっていなかったと感じた。たとえば、作中にある〈素のままのチベット人は、今でも勇猛果敢で残酷で、その上狡猾な、厳しい気候に鍛え上げられたとてつもなく強い民族だ。チベット人の苛烈さを封じ込めていた仏法を、共産党はそれとは知らずに破壊してきた。その結果が、今日見たあの騒ぎだ。どれほど弾圧しようと工作しようと、面従腹背で、いつでも敵の寝首をかこうと待ちかまえているのがチベットの民だ〉とか〈時代が違います、猊下。 -
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諸事情により職を失った二人の男が、たまたまニュースで目にした9.11事件に光景に感化されて、事業としての宗教を始めるという話。
個人的には面白い、というか興味深い本だったけど、あまり人にはお勧め出来ないと思ってしまった。篠田節子の小説は何かひとつ伝えたい主題もないし、感動があるわけでもなく、いま自分たちが暮らしている日常の中で起こりうる、あり得る世界を提示するものだと思っている。宗教的な超常現象を絡めながらもそこに恐ろしくリアリティを感じさせてしまうのがこの著者の凄いところ。宗教が人間を象徴するものであるというのもあるけれど、今回もかなり引き込まれてしまった。
ちなみに、この後は平野敬一郎 -
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脳に障害をもつ由希が奏でる
超人的なチェロの調べ。
指導を頼まれた中堅演奏家・東野は
その天才的な才能に圧倒されます。
名演奏を自在に“再現”する才能を持つ由希に足りないのは、
“自分自身の音楽”。
彼女の演奏に何とか魂を吹き込もうとする東野の周りでは、
次々と不可解な事件が起こり始めます。
音楽にすべてを捧げる二人の行着く果ては。。。。。
中庸な演奏を得意とする(…時には必要に迫られ。)東野にとって、
非凡な才能を持ちながらコピー演奏しかできない由希が不憫であり、
自分では成し得ない理想の演奏を叶えるに相応しい分身だったのでしょう。
次第に破壊していく由希の体、
それと並行して社会から