世の中って、キビしいよなあ・・この小説を読んでつくづくそう思った。
「ケースワーカー」とは、福祉事務所において生活保護を受けている人に対して、様々な働きかけをする職員のことを呼ぶそうだ。
この小説の舞台は新宿に近い「稲荷町」という町の福祉事務所。
そして8つの短編に、この福祉事務所に勤めている
...続きを読むケースワーカーがそれぞれ登場する。
ドメスティックバイオレンス、幼児虐待、アルコール依存症に精神分裂症...
ケースには様々な事情がある。それを理解して、この仕事を貫いていく精神は並大抵のことではない。
しかし同情するだけでは仕事にならない。
社会的弱者たるケースに福祉の手を差し伸べることは重要だが、中には生活保護を不正受給しようと考える悪い輩もたくさん存在するのだ。
そんな中でこの福祉事務所のケースワーカーたちは、ケースと正面から向き合いながら問題を解決していく・・。
「ファンタジア」という短編では、ケースワーカー富樫の元にかつて自分があこがれていたファンタジー作家があらわれる。
それも「生活力の無い栄養失調の中年女」として・・。
うーん、これはいささかリアルな話なのかもしれない。
夢だけを食って生きていけたら幸せだ。
しかし現実という世界では、夢だけでは飯の種にはならない。
世の中には運の悪い人は確かにいる。
しかし、どんな人間でも現実を生きていかなければならないのだ。
フィクションの小説を読むだけでも、オレにはこの仕事は無理だな・・と思った。
現実に、ケースワーカーとして日々仕事を全うしている方々に心より敬意を表したい。