篠田節子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
きっと幻想的な伝奇小説なのだろうと思って読み始めたけれど、いつまでたってもそういう展開にはならず、あれ?あれ?と思いながらとうとう最後まで行ってしまった、という印象。終わってみればインドネシアを舞台にしたリアルで文化論的な冒険フィクションであり、それぞれの場所で日々を生きる庶民達への人生賛歌でもある力作ではあったのだけれど、エンタメ的に面白いかと問われると、決して面白くはなかった。勝手に「インドクリスタル」を思い描いていたこっちが悪いのだ。けれど、かの地の生活様式だったり文化的な風習だったりをここまで尊重して描ける篠田さんはやはりすごいのです。
主人公の性格が下世話すぎるのが玉に瑕だったな。 -
Posted by ブクログ
ネタバレほんとに著者女の人?っていうくらい男の視点が細かく書かれ、語り口も硬質。事実を並べればしょうもない男なんだけど、本人の語りで読むと、そんなこともあるか…と思わせてしまう描写力。一人の人間の中に存在する多面性、弱さ、人間くささがよく描かれている。
でも莉緒との関係は余計だ。気持ち悪い。
ところどころ光った表現がある。
「動物は着替えたりしない、という前衛アーティストの言葉そのままに、昔とまったく変わらぬ身なりで」
「人生の終焉の迎え方としてはね、今の日本がおかしいんですよ。リーダーシップを譲るべき時に次世代に譲らず、それどころか介護という形で何十年も負担をかけて、未来を紡ぐ芽をつぶしていく。そう -
Posted by ブクログ
1999(平成11)年に単行本化。
初めて読む作家。裏表紙に「ホラー短篇集」とあったので買ってみて、また気晴らしのつもりで読み始めたのだが、これは「ホラー短篇集」とは言えない。巻頭の「幻の穀物危機」と「家鳴り」あたりはややホラーっぽいと言えなくもないが、ほかのはちょっと「世にも奇妙な物語」のようなテイストではあっても、ホラーのカテゴリにはまるものではなかった。「恐怖」が主眼ではないからだ。
が、どうもこれらの作品は後味が悪いようで、どこか「イヤな気持ち」にさせられた。イヤミスなる言葉は最近あるようだが、ミステリではないから該当しない。イヤ小説集であることは確かだ。
こうした後味の悪さ、 -
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