篠田節子のレビュー一覧
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贋作師という「裏方」。
決して世に出ない「役割」の人間。
なぜ贋作師としての道を選んだのか?
「創造性」「芸術性」のなさを自覚する。
師匠のものを真似て、
書いたという「方法論。」の踏襲。
「スライドを絵にしていく手法。」
本当に魂のある絵になるんだろうか?
こういうのを贋作というのだろうか?
しかし、贋作師というのは、著名なヒトの絵を
描くヒトで、さしずめ「ゴーストライター」
ということになるんでしょうね。
「風景画」ということ。
と、人間の中に深く入っていく画家。
「宗教画」に到達していく心境が大切。
「可能性が、どこにでもありそうなんだけど
全部ふさがれている、何をやったらいいの -
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上巻では新興宗教を立ち上げて、順調に信者数を増やし、収入も増え、起業スポンサーもつくなど順調に経営をしていた。
が、下巻に入り、所詮思いつきで教義をつくり、その辺にあるものを材料に仏像などを作ってきたため、だんだん化けの皮が剥がれ、今度は負のスパイラルに巻き込まれていく。
嘘が当初うまくいき、それがいつの日か逆回転し始めるという意味で、著者の「ロズウェルなんか知らない」にパターンが似ている。
小説を面白くするには主人公におきてほしくない事をどんどんおこすのが必要らしいが、よくここまでおきてほしくない事が思い浮かぶとおもう。
本著で著者の現在長編で文庫になっているものは読み終わった。 -
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ネタバレ篠田さんの作品って、婚期を逃していると自分で思い込んでいる女性がよく登場しますね・・・。
時代からか、私から見たら「全然OKじゃない?」と思える年齢なのだけれど、時代の流れでしょうか・・。
そしてこの女性の家族もあからさまに結婚してくれることを願っていて、早とちりしてるところが面白かったり。
ホラーなんですが、所々笑えてしまうのが、今まで読んだ篠田作品とは異なるかな・・。
このバイオレンス作家の男、美鈴慶一郎の人間性が面白いです。
バイオレンスとは程遠い、おっとりした感じの冴えない男に見えるんだけど、話が進むうちに駄目な部分まで許せる気分になります。
きっと彼が自分に正直で、そん -
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ネタバレレーザーディスクのように輝く美しい絹織物・・
長谷康貴はその不思議な繭を見つけ出して、養蚕を試みようとするのだが。
特殊な条件下でしか生息しなかった蚕を、バイオテクノロジーの力で繁殖に成功させていく彼と技術者有田芳乃。
それは無理に人間側に都合よく改良したためのしっぺ返しだったのかもしれない・・
絹糸は蚕がはくたんぱく質の糸・・。
組成がたんぱく質なら、植物からたんぱく質を合成させるより、動物性のたんぱく質から合成させた方が効率がいいじゃんって思ったんだろうけど・・。
肉食蚕は怖いです、はい。
そしてその異たんぱく質が激しいアナフィラキシーショックを招くことも・・。
モゾモ -
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ネタバレ最初は正人と友人とその彼女の三角関係(片思いだけど)のお話なのかと思ったら、話はだんだん全く違う方向へ・・・。
知的生命体との遭遇・交流・そして恋?
でもその実体は私からしたらグロテスクなんですが、水槽で魚を飼って、それをこよなく愛している正人にとっては全然OKなんだね・・。
しかもその生命体は脳に直接コンタクトしてくる・・美しい女性の姿で。
結局のところ、この生命体「イクティ」が一体何を考えてどうしたかったのか全く分からないんだけど、正人は「イクティ」を愛するあまり、イクティを守るためならなんでもすると言う常軌を逸した方向へ走り出していくんだなぁ・・。
ある意味、こういった偏執的 -
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ネタバレ今回は、不思議な世界へ誘う短編集です。
1)「彼岸の風景」
末期癌を患った夫と8年ぶりに訪れる夫の実家。
豪農だった旧家のその家に結婚の許しを得に言って以来、二度と来ることはないと思っていた二人。
夫の死を前に、せめてもう一度両親に会わせておきたいと夫を連れて来たものの、嫁とは認められず単なる客人として扱われていることの虚しさ。
夫がその実家で亡くなった後、彼女に残されたものは思い出と戸籍だけだった・・分骨も許されず居場所もない彼女の目に仏壇に納められている夫の喉仏が映る。とっさにその喉仏を掴んで夫の実家を飛び出す彼女・・。
8年前と同じことを繰り返して・・。
亡くなった夫を -
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元々はホラー文庫だったのですね。精神的にキます・・。
自分の顔を徹底的に造りなおすこともそうですが、人形の変わりに愛されるということ。などなど。
美しさについて、考えちゃいますね。。。
この作品に出てくる人形は、フィレンツェのラ・スペコラ博物館にあるという
「解体のウェヌス」のことなのでしょうか?
村上喜代子さんの短編集を読んだときにも出てきたのですが、(もし同じものがモデルなら、ですが)人形の顔の描写が随分違うのですね。
確か村上さんの方では、ボッティチェリのヴィーナスと瓜二つ、みたいな
御顔だったと思うのですが。
ここでもまた、人によって違う美の受け取り方があるのでしょうか。 -
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日常が非日常へ、そして奇妙な世界に自分自身転がってしまっているのではないか、そんな感覚を持たせてくれる作品。
たまに時と時の流れがプツッと切れてしまうような印象はありましたが、私個人的にはまぁまぁ楽しんで読めました。
何か1つあげるとすれば…「夜のジンファンデル」。
他の作品が奇妙さを取り巻いているのであれば、こちらは美しくも儚く且つ官能的な雰囲気を纏っている。
大人の切なく甘美な恋愛。
読後、ぜひジンファンデルを食べてみたくなりました。
2009年7月25日初版
目次
・永久保存
・パケットの中の晩餐
・絆
・夜のジンファンデル
・恨み祓い師
・コミュニティ
解説 吉田伸子 -
Posted by ブクログ
どういう展開になっていくのか、と思ったら、
ホラーぽくなって、ちょっと意外だったが、
バカっぽくなく、美しい展開だったのでよかった。
音大時代の同級生たちとの交流や、
舞台が松本なこと(私の母校らしき場所の描写があった)で、
好意的に読み始めたが、
主人公が、演奏をあきらめて教員をやっている今の自分を
卑下しすぎ~。
ここに描かれている音楽感は、超一流のごく一部の人の感覚。
それか、プライドだけが高く、現実がわかってないか。
小説としては、神聖で荘厳で神の領域として「音楽」を描いていて、
嫌いではないけど、
一般の人が、音楽家ってこうなんだと思うのは違うと思う。