篠田節子のレビュー一覧
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ギリシャのパナリア島を舞台にしたミステリー。全体的に、同じ作者の「廃院のミカエル」にかなり近い。
主人公の亜紀はヴァイオリニストで、建築家の聡史と10数年W不倫の関係を続けている。ある日2人で内緒の旅行に訪れたロンドンで、聡史は海の底から発見されたというヴァイオリンを亜紀に贈る。その後アテネに渡った2人はパナリア島に行くことになり、かつて異教徒たちの都があったホーラにたどり着く…。
ギリシャ語のχώραには都市、栄えている場所という意味があるらしい。パナリア島という場所は知らなかったけどロードス島の近くにあり、ロードス島と同じく騎士団の要塞跡などがあるらしいので一度行ってみたい。 -
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ネタバレ「観覧車」「ソリスト」「灯油の尽きるとき」「戦争の鴨たち」「秋の花火」の5編からなる短編集。
どの物語も短編ながら奥の深い、密度の濃いものになっている。設定も、主人公たちの抱える問題もそれぞれ別物でありながら、行き詰まり、鬱屈しているという点で共通している。
「観覧車」は最後に感じる小さな希望にホッとし、「灯油の・・・」はつらい結末に気分が塞ぐ。
「戦争の・・・」はどこかコミカルでありながら、痛烈に現実をえぐるところが篠田さん的で、タイトルの「鴨」にニヤリ。
そして、秀逸なのが標題作「秋の花火」。秋の花火は夜空に大きく開いて消える夏の花火とちがい、手元で闇を一層際立たせながらそっと横顔を照らす -
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2006年に刊行された単行本『夜のジンファンデル』を改題して文庫化。収録されているのは「永久保存」、「ポケットの中の晩餐」、「絆」、「夜のジンファンデル」、「恨み祓い師」、「コミュニティ」の6編。文庫化に当たり表題作を変更したのはどういう意図があってのことか深読みしてしまいます。というのも、ホラーの名手による本作は、「夜のジンファンデル」を除くと、いずれもジワッと嫌な感じ。それが「夜の〜」のみ、あきらかに趣を異にしています。ある男女がダブル不倫に陥りそうになりながらも踏みとどまって50代間近、片方が突然死を迎えてしまうという、切ないと言えば切ない、煮え切らないといえば煮え切らない1編。あとの5
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篠田さんのホラーは突発的な怖さではなく、こころの底にある恐怖をじわじわと突きつけられてくるような不気味さを伴う。
幻の穀物危機、やどかり、操作手、春の便り、家鳴り、水球、青らむ空のうつろのなかに、の8編が収録されている短編集だか、どれも全く違う方向から視線を当てられていることに驚く。中でも気になったのは表題作の家鳴りだ。
妻が際限なく太っていくー。失業中の男性は、愛犬をなくしたことで拒食となった妻に食事を作るようになる。延々と食べ続け、丸々と太っていく妻。凝った食事を作り続ける男性。徐々に変化していく関係と異存。ほんの少しの興味と気味の悪さを感じながらも、二人の結末にしわあせなものを感じてぞく -
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著者の小説は主人公の状況がこれでもかと言うぐらい悪くなるパターンが多いと思っている。この小説も山一證券をモデルとした大手証券で働く40歳を超えたサラリーマンが、職場も家庭も失い、滑稽なほど転がり落ちていく様は痛快に読み進める。しかし、いつまでたっても状況は好転せず、低空飛行のまま進むのでだんだんと心配になってくる。人生はこんなものだと感じるが、真面目で堅実な主人公の生き方には何かしら共感してしまう。ニューヨークの世界貿易センタービルの電力供給問題でエレベーターが停止し、89階から階段を歩いて降りるくだりがある。同じ経験をした身としては、著者がヒアリングを重ねて小説を組み立てているのがわかる。
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ネタバレ農家の跡取り息子がネパール人の妻を娶ったことから始まる人生の転換を、宗教や異文化への理解を通して描く物語です。
主人公が没個性的であるため、読者が世界を見る媒体としての役回りと割り切るまでは読み進めることに苦労しました。
全体として細部の取材が行き届いていることから確かな現実感あり、主人公が経験する壮大な断捨離は物語の中でしか味わえないなかなかの衝撃がありました。
現代日本の生活も、宗教の功罪も、途上国の現実も相対化して提示する作者の姿勢は誠実で好感が持てます。
居場所探しとしてはあまりにスケールが大きいため真似できるものではありませんが、自らの立ち位置を見直すには、いい機会となるかも