篠田節子のレビュー一覧
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職のない男が2人で宗教を興すお話。
金儲けの為に始めたのですが、トントン拍子に信者が集まり、それに伴い教団の収入も増えていく。
上巻ではあまりにトントン拍子な気もしますが・・・
でも適当に始めた割に(ほんとに始め方がすごい適当!)、あれよあれよと大規模になっていく様子は中々面白いものがあります。
でもこういうお話はきっと最後は転落するんだろうなって思いながら読んでいます(笑)
教祖となった正彦ですが、これが案外真面目で堅物。
新興宗教なので胡散臭いのですが(そもそも何の宗教的思想もない人が興した教団)、自分でそこは自覚していて、信者ともなるべく真摯に向き合おうとする様は好感が持てました。
金儲けの為に始めた事なので、霊媒師の真似事とか「このままでは不幸になる」とか言って壷を売ったりとか、やろうと思えば手っ取り早く金儲けできるのですが、正彦はあくまでビジネスとして先を考え、人としての道は外さぬよう努力しています。
ただあくまでビジネスとしてしか考えていないので、金にならなそうな信者はあっさり切り捨てようとするのですが、そこはもう1人の矢口が担当し、変にバランスも取れている。
中々読み応えがあって面白いです。
上巻の最後の方から不穏な空気が漂い始め、下巻も楽しみです! -
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トントン拍子で話は進んでいく。主人公というものはなんて運がいい生き物なのだろうか。
ホラー小説とは思わず現代的な謎解き小説だと思って読み始めたのでいきなりマジカル的で心霊的な要素が出てきてびっくりした。
最後には全部ぴったりはまってウーンなるほどなあと納得
クライマックスの描写もリアルで生々しく少々恐怖を感じ、それなりによかった
一気に読んでしまった
全体的に幻想的で陰気
どれくらい陰気かというと私の性格ぐらい陰気だ
全然関係ないけどつり橋効果でリアルにくっつくカップルはどれくらいいるんだろう。
☆は3にしておいたけれども実際3.5ぐらい
佐渡島に行ってみたい。 -
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贋作師という「裏方」。
決して世に出ない「役割」の人間。
なぜ贋作師としての道を選んだのか?
「創造性」「芸術性」のなさを自覚する。
師匠のものを真似て、
書いたという「方法論。」の踏襲。
「スライドを絵にしていく手法。」
本当に魂のある絵になるんだろうか?
こういうのを贋作というのだろうか?
しかし、贋作師というのは、著名なヒトの絵を
描くヒトで、さしずめ「ゴーストライター」
ということになるんでしょうね。
「風景画」ということ。
と、人間の中に深く入っていく画家。
「宗教画」に到達していく心境が大切。
「可能性が、どこにでもありそうなんだけど
全部ふさがれている、何をやったらいいのか
わからないみたいな状況」篠田節子。
そんな人間がどのような行動をつくりだしていくのか?
自分であるということへの自信。 -
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上巻では新興宗教を立ち上げて、順調に信者数を増やし、収入も増え、起業スポンサーもつくなど順調に経営をしていた。
が、下巻に入り、所詮思いつきで教義をつくり、その辺にあるものを材料に仏像などを作ってきたため、だんだん化けの皮が剥がれ、今度は負のスパイラルに巻き込まれていく。
嘘が当初うまくいき、それがいつの日か逆回転し始めるという意味で、著者の「ロズウェルなんか知らない」にパターンが似ている。
小説を面白くするには主人公におきてほしくない事をどんどんおこすのが必要らしいが、よくここまでおきてほしくない事が思い浮かぶとおもう。
本著で著者の現在長編で文庫になっているものは読み終わった。 -
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ネタバレ篠田さんの作品って、婚期を逃していると自分で思い込んでいる女性がよく登場しますね・・・。
時代からか、私から見たら「全然OKじゃない?」と思える年齢なのだけれど、時代の流れでしょうか・・。
そしてこの女性の家族もあからさまに結婚してくれることを願っていて、早とちりしてるところが面白かったり。
ホラーなんですが、所々笑えてしまうのが、今まで読んだ篠田作品とは異なるかな・・。
このバイオレンス作家の男、美鈴慶一郎の人間性が面白いです。
バイオレンスとは程遠い、おっとりした感じの冴えない男に見えるんだけど、話が進むうちに駄目な部分まで許せる気分になります。
きっと彼が自分に正直で、そんな自分もさらけ出しているからだと思うんですが・・。
そして主人公の谷口葉子は失恋してから化粧気のないお仕事人間になってしまって、男性を寄せ付けない頑なさがあり、仕事ゆえの熱心さから一番いけ好かないタイプのバイオレンス作家と仕事で組むことになるんですが、この二人のやり取りがまたちょっと笑える。
雪を耳に詰め込み、頭を石で打ちつけて失神し凍死した河野珠枝。河野珠枝の生涯を映画化した女性監督もまた謎の自殺を遂げていた。
河野珠枝の描いた「朱鷺飛来図」には怖ろしいもう一つの絵が隠れていて、それに気がついた二人はますますこの絵に関する情報を集めようとする。
そして踏み込んではならない場所へ入って行き・・・
異次元空間に迷い込んだ彼らを襲う、神鳥・・・
それは人によって絶滅の道に追いやられた朱鷺の怨念の世界・・
巨大な鋭い嘴は迷い込んだ二人を狙う。
後半になると、神鳥との戦いや逃避が怖ろしく迫ってきますが、本当の恐怖はその後からなんだな・・と。
精神までも蝕まれそうになる二人がとった方法、それは上手く行くか分からないままに物語は終わります。
気になるラストですが、きっと彼らなら自分たちの問題も含めて、逞しく乗り越えていけるような気がします。
最初は何故河野珠枝が悲惨な死に方をしたのか、映画監督までが何故自殺したのか謎ですが、ラストに近づくと分かってきます。
怖いんだけど、ちょっと面白い場面もありで娯楽性があるのかしらん。
なので、閉塞感はラストまではあまり感じませんでした・・。
きっと良いほうに向くんだろうなと思えるラスト、お互いが支えあえているうちは・・ね。 -
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ネタバレレーザーディスクのように輝く美しい絹織物・・
長谷康貴はその不思議な繭を見つけ出して、養蚕を試みようとするのだが。
特殊な条件下でしか生息しなかった蚕を、バイオテクノロジーの力で繁殖に成功させていく彼と技術者有田芳乃。
それは無理に人間側に都合よく改良したためのしっぺ返しだったのかもしれない・・
絹糸は蚕がはくたんぱく質の糸・・。
組成がたんぱく質なら、植物からたんぱく質を合成させるより、動物性のたんぱく質から合成させた方が効率がいいじゃんって思ったんだろうけど・・。
肉食蚕は怖いです、はい。
そしてその異たんぱく質が激しいアナフィラキシーショックを招くことも・・。
モゾモゾ・・モゾモゾ・・が苦手な人は駄目かも。苦笑
そして長谷に関わる人はみな不幸になるんだな・・。
有田も彼女らしく最後まで冷たい人であったら、巻き込まれなかったのかな・・
結末は無事解決と言う感じではないですね。
再びパニックが起こりそうな予感がします。
お蚕さんって、子どもの頃家で育てましたが、夜中にバリバリバリって葉を食べる音が響くんですよ。
怖かったですね、あの音は迫力あります。 -
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ネタバレ最初は正人と友人とその彼女の三角関係(片思いだけど)のお話なのかと思ったら、話はだんだん全く違う方向へ・・・。
知的生命体との遭遇・交流・そして恋?
でもその実体は私からしたらグロテスクなんですが、水槽で魚を飼って、それをこよなく愛している正人にとっては全然OKなんだね・・。
しかもその生命体は脳に直接コンタクトしてくる・・美しい女性の姿で。
結局のところ、この生命体「イクティ」が一体何を考えてどうしたかったのか全く分からないんだけど、正人は「イクティ」を愛するあまり、イクティを守るためならなんでもすると言う常軌を逸した方向へ走り出していくんだなぁ・・。
ある意味、こういった偏執的な男は客観的に見たら引くよね。
でも彼の心の中は意外と純粋なんだな・・。
逆に彼の、自分への恋心を利用して、可憐な姿をしながら思い通りに正人を使おうとする友人の恋人、澪の方が醜悪な感じに取れる。
しかも、地底湖で行方不明の恋人を危険だと知りながら正人に捜索させて、恋人の遺体を発見させたら、「ようやく気持ちの整理がついたの」って、もう違う男の元へ。ええー!そんな・・正人は確かにちょっとキモいところがあるかもだけど、それはないんじゃない~。
ちょっと期待を持たせる素振りまでしておいて・・。
だから正人は穏やかな気分にさせてくれる「イクティ」に恋心が芽生えちゃう?
見た目はグロイけど、受け入れてくれた「イクティ」に・・。
ここまではわりと幻想的なのに、後半からがらっと話の雰囲気が変わってしまいます。
知的生命体「イクティ」の棲む地底湖がトンネル工事・開発によって汚染され、水位が下がり、それが原因で「イクティ」が弱り始めると、正人はいつもなら絶対相手にしない怪しい団体にまで関わって、トンネル工事の阻止を図ろうとする。けれどその計画は色々政治的にも、そして地方の利益も絡んで、このままではどうにも出来ないと分かっていく正人。
工事反対を掲げる団体も、反対と騒げばお金が流れ込むと思っているような感じで、正人はついに一人でテロを起こすことを決意する・・。
この辺はあの幻想的な前半とは違って、バイオレンス?!
そして、爆弾を作っているところに、ひょっこり現れる澪、てっきり男と別れて正人と恋?って思ったら全く違って、正人のプライドをズタズタにすることをこの期に及んで・・。お~い・・
この女、本当に「女」の嫌な部分の象徴みたいだなぁ・・・。同属嫌悪かも・・。苦笑
でも男性からは、はかなく見えて惹かれるんだろうなぁ・・・このタイプ。俺がついてやらなきゃみたいな・・・苦笑
そして何かと手助けをしてくれた冴えない事務員の女性、伊丹の存在。
最後らへんはこの伊丹がカッコいいー!
情けない正人に強い女伊丹・・。
このコンビの行く先は・・・・
最後でどうなっちゃうの?って思うけれど、なんだか伊丹が頼もしくて、何とかなるかもって思っちゃう。笑
前半と後半がこんなに雰囲気が違うとは・・・
それはそれでいいか・・。
「イクティ」や死体を食う魚たちの描写が生々しくて、目に浮かぶようです・・
そう言う表現、巧いですね篠田さんは・・。 -
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ネタバレ今回は、不思議な世界へ誘う短編集です。
1)「彼岸の風景」
末期癌を患った夫と8年ぶりに訪れる夫の実家。
豪農だった旧家のその家に結婚の許しを得に言って以来、二度と来ることはないと思っていた二人。
夫の死を前に、せめてもう一度両親に会わせておきたいと夫を連れて来たものの、嫁とは認められず単なる客人として扱われていることの虚しさ。
夫がその実家で亡くなった後、彼女に残されたものは思い出と戸籍だけだった・・分骨も許されず居場所もない彼女の目に仏壇に納められている夫の喉仏が映る。とっさにその喉仏を掴んで夫の実家を飛び出す彼女・・。
8年前と同じことを繰り返して・・。
亡くなった夫を偲んで思い出の場所に訪れた彼女の目の前に、あの時の夫の後姿が現れて・・。
何とも切ない。
夫さえいてくれればと思っていた彼女から、夫がいなくなってしまう・・。
ラストシーンはおぞましいような、美しいような・・。
「逝かせてあげる・・・」
夫の喉仏を口に入れて噛みしめる彼女・・。
女の情念を感じるなぁ・・。
私には出来ないけど・・。
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2)「ニライカナイ」
大学生の頃から貢いできた男に捨てられた朋子、28歳。
男から渡された手切れ金の使い道を考える気力もなく、証券会社で働く友達に渡して、死に場所を求めて紀伊半島に向かう・・
そこで体験する不思議な光景・・「ニライカナイ」・・。
海からこちらへ押し寄せる無数の鼠とその背後の巨大な船・・。
それは幻・・?
死ぬきっかけを失って帰宅すると、証券会社勤めの友人から渡したお金が5倍に跳ね上がったと聞かされる。
その後、運命の赴くままに社長夫人に納まる朋子だが、夫の事業の失敗で多額の負債を抱え・・夫婦で死に場所を求めて再び紀伊半島のあのホテルへ向かうと、そこにはまたあの「ニライカナイ」の光景が・・。
二人は再び事業を再建し、成功する朋子の前に、夫が自身の子どもとその子を産んだ女性を連れて来て、朋子に離婚して欲しいと言い出す。
承諾し、自分で起業する朋子・・。
また事業に失敗して落ちぶれていく元夫を尻目に、朋子の事業は成功、儲け話を持ちかけるスーツ姿の「鼠」が朋子に次々と寄ってくる・・。
しかし、いつしか事業に影が射して行き、あっという間に全てを失う朋子・・白髪頭の老婆はまたあのホテルへ向かうのだが・・・
朋子の心が冷め切っているのが、辛いな・・。
どんなに豊かになっても、心は冷たい風が吹いているような・・。
老婆になった彼女が見た「ニライカナイ」は、彼女を連れ去っていったのか・・。そういう契約だったのかな・・。
幻想的であり、朋子の心を暖めてくれたのは「ニライカナイ」で踊る老婆たち(神さま?)だったのかな・・。
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3)「コヨーテは月に落ちる」
町で見かけたコヨーテ。
そのコヨーテに惹かれて、後を追う美佐子。
気が付けば、自分が先日購入したマンションの建物の中。
まだ鍵を渡されていない美佐子は部屋には入れず、マンションを出ようとするが、どうやっても出ることが出来ない・・
生き物のように建物が形を変えて美佐子を閉じ込めているかのよう・・。
マンションの住人も誰もドアを開けて美佐子を助けようとはしない。
再びコヨーテは現れて、美佐子はその後を再び追う・・。
すごい閉塞感・・。
こんな悪夢を見たことがあるなと・・。
建物から出られない・・。
ぐるぐると建物を回って、出口を探すけれど外に出られる通路がない・・。
それは異界なのか、常世なのか・・?
やっと出られたかと思ったら・・・ってこと。
同じように閉じ込められた人の異様さ。
悪夢の世界に入り込んだ気分に・・。
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4)「帰還兵の休日」
バブル景気に乗って、優雅な生活をしていた住宅販売会社に勤める男、菅本。バブルが弾け、極貧の生活に落ちながらも販売の仕事を続ける彼の目の前に映ったのは、橋の下の中州で暮らす浮浪者の3人の老婆。
ふとしたきっかけで、その老婆たちの身の上話を聞くことに。
それは老婆たちの華麗なる過去だった。
しかし、後でそれが全くのでたらめであると知る菅本。
からかわれたのか、老婆の妄想か・・。
二月の豪雨によって、菅本の住む安アパートは床上浸水となり、わずかに残った家財道具も泥まみれになる。
その時になって、辛い過去を一編の物語に作り変えて語った老女たちの心中が分かった菅本。
━『悔恨、羨望、希望、そうしたものが過ぎ去った時代を作り替える。未来は幻に過ぎないし、それまでの人生も各自の記憶の集積に過ぎない。』━と菅本は考える・・・。
老齢になると、過去の自慢話をする人が多いですね・・。
それは、嘘とは言わないまでも、自己の存在価値を伝えておきたいと言う老化現象の一つかもしれません・・誰もが通る道なのかな・・。
洪水が収まった中州に再びビニールシートを張って、何事もなかったかのように生活する老婆たち。
災害に一番強いのは、高価な耐震マンションではなく、あの中州の小屋だと実感する菅本。
そしていつかあのバブルの頃の生活を取り戻すんだと、仕事に向かう・・一発逆転と唱えながら・・。
戦中、戦後を潜り抜けてきた老婆たちを見ていて、自分のいまの状況が大したことじゃないと思えてきたのかな・・。
少し希望の見えるラストでした。
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5)「コンクリートの巣」
衰弱したインコを連れ帰った縁で、同じ団地の階下の小学生亜美と知り合う正恵。
インコは亜美の飼っていたものだった。
その後、階下で亜美と出会うようになる正恵だが、亜美の様子に不審感を抱き始める。
鍵を持っていなかったからと、家の前でいつまでも佇む亜美。
深夜、全裸でずぶ濡れになって、べそをかいている亜美を見つけた時に正恵の疑問は確信に変わる。
―亜美は虐待を受けている―
母親と姉から虐待を受けている亜美、独身の正恵はどうして良いか分からない。こっそり亜美の小学校校長に連絡するも、亜美自身が虐待を否定していると逆に詰問されてしまう。
団地の住人も見て見ぬふり、自分も関わるのはよそうと決めるのだが・・。
ある日、正恵の目の前で、走る車から突き飛ばされ怪我を負う亜美を目撃してしまう。亜美の母はそのまま車でどこかへ行ってしまい、正恵は亜美を病院へ連れて行く。
医師ははっきりと虐待であると判断し、警察を呼ぶ。
母の危機を知って、逃げるようにと母に電話をする亜美。
それを見て、虚しくなる正恵。
駆け付けた警察官が言った言葉に愕然とする正恵。
亜美の母が運転中に操作を誤り、事故死したのだった。
亜美の電話中に聞こえた姉の悲鳴・・あれは事故の時のものだった・・。
子どもにとって、親しか拠り所がないんだよね・・。
虐待されても、しがみついていなきゃ生きられない。
だから、叱られたのは自分が悪くて、虐待なんてされていないって言うんだな・・と気づかされる作品。
本人が否定するから、回りもなかなか手が出せないというところもあるんでしょうね。
重いお話です。
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6)「レクイエム」
教団幹部の伯父が、隠し続けた戦地パプアニューギニアでの兵役の実態。
末期癌に侵された伯父が姪の祥子に遺言として託したのは自分の死後、腕を切断してパプアニューギニアの、自分が死にかけて倒れていた、その大地に埋めて欲しいと言うものだった。
戦争末期、食料の補給もない熱帯のジャングルで、仲間に見捨てられ、死を待つだけだった伯父を救ったのは現地に住むパプア人女性だった。
同じ戦地にいた伯父の戦友から聞く戦慄の真実・・。
食料を絶たれた日本兵たちは、何を食料にして生き延びようとしたのか・・?
死んだ仲間の肉を食らったのか?
祥子の脳裏に浮かぶ同胞の死肉をあさる光景・・。
しかし、真実はもっと悲惨だった・・。
彼らは「猿」と呼んでいたパプア人をだまして殺し、食べていたのだった・・。
パプア人の集落で回復し、パプア人女性と恋をした伯父が行方不明の恋人を捜して軍にたどり着いた時、上官は「これでも食え」とある肉を差し出す。それを見て震えだす伯父。
伯父は「ありがとうございました」と、その肉を食べ・・。
上官命令は絶対、殴られても「ありがとうございました」と言わなければならない戦時下の異常な世界・・
だから伯父や、当時その場にいて九死に一生を得た者たちは口をつぐんで、口外しようとしなかったのだと祥子は悟る。
極限のところでは、ヒューマニズムは存在しないのだなと考えさせられる作品。
自分の腕をその戦地に埋めて、芋の栄養にして欲しいと願った伯父の懺悔の気持ちと、復員後、宗教に没頭したのは実は戦地で亡くなった者たちを供養するためだったと知って、伯父の気持ちを理解する祥子。
何だか、目に見えるようなおぞましい内容に、逆に引き込まれます。
結局、伯父の願いは別の形で果たされることになるんですけど。
「腕を持って行け」と言われてもね・・
全体的に短編ながら、読みごたえがありました。
特に「「ニライカナイ」は幻想的で、「コンクリートの巣」は現代社会の問題を痛烈に感じ、「レクイエム」はショッキングな戦争の本質を教えられる気がします。 -
Posted by ブクログ
元々はホラー文庫だったのですね。精神的にキます・・。
自分の顔を徹底的に造りなおすこともそうですが、人形の変わりに愛されるということ。などなど。
美しさについて、考えちゃいますね。。。
この作品に出てくる人形は、フィレンツェのラ・スペコラ博物館にあるという
「解体のウェヌス」のことなのでしょうか?
村上喜代子さんの短編集を読んだときにも出てきたのですが、(もし同じものがモデルなら、ですが)人形の顔の描写が随分違うのですね。
確か村上さんの方では、ボッティチェリのヴィーナスと瓜二つ、みたいな
御顔だったと思うのですが。
ここでもまた、人によって違う美の受け取り方があるのでしょうか。