篠田節子のレビュー一覧

  • 長女たち(新潮文庫)

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    以前からテーマが気になっていた短編集。
    年老いた母親の介護要員として、結婚もせずキャリアも諦め家に縛り付けられる長女。生まれた時点でその役割を期待されながら育つというのはとても恐ろしいことだと思った。
    「殺すか、逃げるか。」という長女の悲痛な葛藤があまりにも極限で震えた。

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    2019年01月13日
  • 銀婚式(新潮文庫)

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    以前読んだことがあるのを失念して、また購入してしまったため再読。
    主人公がエリートであるのに、いろいろな理由で転職を繰り返しているのが、我が身と重なり(私はエリートではないが転職を経験しているので)興味深かった。最近親を亡くした経験もあり、親の介護などで戸惑う場面も同感しながら読んだ。

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    2019年01月06日
  • 蒼猫のいる家(新潮文庫)

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    『トマトマジック』、『蒼猫〜』と読み進み『ヒーラー』で、え?SF?ってなった。読後感がそれぞれ違う短編集でお得感があります。
    どの話も皮肉が効いてるけど、動物がでてくる二編はラストに(どっちも主人公の状況はどん詰まりなのに)爽やかささえ感じさせる救いがある…気がする。
    表紙が猫。

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    2018年12月31日
  • 聖域

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    異動先の編集部で偶然見つけた未発表の未完原稿に魅了された実藤が、僧侶が主人公のそれの続きが読みたい、結末を知りたい一心で、失踪した謎めく作者を追い求め、ついに見つけた新興宗教のイタコな彼女に、故人が夢に現れる中、続きの執筆を迫る。現実の動きと導入部の作中作に隔たりがなく滑らか。自然体なみっしりさ。

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    2018年10月16日
  • インドクリスタル 上

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    ネタバレ

    ウーン。何と言っていいか。インドのカースト制度を見せられ日本人の冒険活劇を見せられたような。でも、この年の人が仕事とはいえこんなにのめりこむのかな。日本の家族はたまったものじゃない。

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    2018年07月30日
  • 聖域

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    篠田エンターテイメントはやはり読み応えがある。面白い。しかしこれは、そもそも主人公である実藤に魅力が乏しく、また、彼が小説「聖域」にそこまで強く惹かれる理由に説得力が足りなかったように思う。そして、周囲の人々がことごとく水名川泉を忌避するのも大げさな謎かけっぽくて納得感が薄かった。
    何かに憑りつかれた男の人生の顛末を描くことこそが著者の本分で、あの世とかこの世とか実相とか色即是空とかは本来的なテーマではないのだと思うが、どちらかというともっとそっちへシフトした物語が読みたかったな、という気持ちにさせられた。

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    2018年07月29日
  • 銀婚式(新潮文庫)

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    都立の進学校から国立大学を卒業し、大手証券会社に入社、社内留学を経てMBAを取得後ニューヨーク支店勤務と順風満帆な人生を送っていた高澤が、慣れないアメリカ生活での妻の発病、離婚、会社の経営破綻、再就職、鬱病発症、リストラ、再再就職と都落ちしていく人生の悲哀を描いた長編。

    前半は高澤の前向きな生き方に頭がさがるばかり。特に、再就職した中堅損保会社での代理店のおばちゃんたちへの誠実な対応と、再々就職で大学教員になってからの学生への精一杯の教育など、常に目の前の仕事に真摯に向き合う姿勢には清々しさを覚えた。

    こうなると再婚もしてほしかったけど、いくら前妻との間に息子がいるからって、離婚したのにこ

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    2018年06月26日
  • 絹の変容

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    書店で、帯に惹かれて衝動買い。この作者は初。
    イモムシ、もっとはっきり言うと蚕が主人公(?)の
    「生物もの」パニック小説。

    偶然目にした虹色に輝く絹布を再現するべく、
    虹色の絹糸を生む蚕を探す(人間の)主人公。
    苦労して見つけた野蚕を繁殖させるべく、
    専用の飼育場まで作って入れ込んでいくが...

    あまり細かく書くとネタバレになってしまうので(^ ^;

    アイディアは悪くない。が、別に新しくもない。
    「気色悪いシーン」の描写も悪くない。
    が、何か読後感が今ひとつ物足りない(^ ^;

    一つは、文体...と言うか、文の「リズム感」。

    決して「読みにくい文章」とかではない。
    が、最初から最後ま

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    2018年05月09日
  • 絹の変容

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    一気に読めて気持ち悪さもちょうど良かった。
    蛾に遺伝子操作を加える所が個人的に一番気持ち悪かった。

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    2018年04月12日
  • 死都 ホーラ

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    ギリシャのパナリア島を舞台にしたミステリー。全体的に、同じ作者の「廃院のミカエル」にかなり近い。

    主人公の亜紀はヴァイオリニストで、建築家の聡史と10数年W不倫の関係を続けている。ある日2人で内緒の旅行に訪れたロンドンで、聡史は海の底から発見されたというヴァイオリンを亜紀に贈る。その後アテネに渡った2人はパナリア島に行くことになり、かつて異教徒たちの都があったホーラにたどり着く…。

    ギリシャ語のχώραには都市、栄えている場所という意味があるらしい。パナリア島という場所は知らなかったけどロードス島の近くにあり、ロードス島と同じく騎士団の要塞跡などがあるらしいので一度行ってみたい。

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    2017年12月23日
  • 秋の花火

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    ネタバレ

    「観覧車」「ソリスト」「灯油の尽きるとき」「戦争の鴨たち」「秋の花火」の5編からなる短編集。
    どの物語も短編ながら奥の深い、密度の濃いものになっている。設定も、主人公たちの抱える問題もそれぞれ別物でありながら、行き詰まり、鬱屈しているという点で共通している。
    「観覧車」は最後に感じる小さな希望にホッとし、「灯油の・・・」はつらい結末に気分が塞ぐ。
    「戦争の・・・」はどこかコミカルでありながら、痛烈に現実をえぐるところが篠田さん的で、タイトルの「鴨」にニヤリ。
    そして、秀逸なのが標題作「秋の花火」。秋の花火は夜空に大きく開いて消える夏の花火とちがい、手元で闇を一層際立たせながらそっと横顔を照らす

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    2017年12月03日
  • 銀婚式(新潮文庫)

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    会社が倒産し日本に帰国、転職先では鬱になり離職することになる。その後、大学に仕事先を求めて、人生をやり直す高澤だった。とことん落ちていかないところが、逆にリアリティがあるのかもしれない。妻とは離婚はするが息子を通して、家族の絆が絶えることはない。高澤が再婚せずに、前妻と縁が切れない辺りが、ありそうで読んでいて感情移入できる。篠田節子本にハズレなし

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    2017年11月25日
  • 絹の変容

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    最初の方はすごく引き込まれる感じでハラハラするのがすごく良かった。終わり方があまり好みではなかったかな。
    気持ち悪いのが苦手は人は注意な小説です。

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    2017年10月13日
  • ハルモニア

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    脳に障害を負った女性にチェロを教えることになったチェロ奏者の主人公。彼女の天才的なチェロを目の当たりにして自分の才能のなさを痛感させられる。それと同時に彼女自身の音が出せるようあの手この手で導いていく、彼女が望んでいるかわからないが。
    主人公も含め彼女を取り巻く人たちが自分のエゴを彼女を通して実現させようとするのにうんざりする。それぞれが彼女のためと言いながら自分の夢を託す。それとサイコキネシスが出てくるのに興ざめ。

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    2017年05月14日
  • コミュニティ

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    2006年に刊行された単行本『夜のジンファンデル』を改題して文庫化。収録されているのは「永久保存」、「ポケットの中の晩餐」、「絆」、「夜のジンファンデル」、「恨み祓い師」、「コミュニティ」の6編。文庫化に当たり表題作を変更したのはどういう意図があってのことか深読みしてしまいます。というのも、ホラーの名手による本作は、「夜のジンファンデル」を除くと、いずれもジワッと嫌な感じ。それが「夜の〜」のみ、あきらかに趣を異にしています。ある男女がダブル不倫に陥りそうになりながらも踏みとどまって50代間近、片方が突然死を迎えてしまうという、切ないと言えば切ない、煮え切らないといえば煮え切らない1編。あとの5

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    2017年05月10日
  • 家鳴り

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    篠田さんのホラーは突発的な怖さではなく、こころの底にある恐怖をじわじわと突きつけられてくるような不気味さを伴う。
    幻の穀物危機、やどかり、操作手、春の便り、家鳴り、水球、青らむ空のうつろのなかに、の8編が収録されている短編集だか、どれも全く違う方向から視線を当てられていることに驚く。中でも気になったのは表題作の家鳴りだ。
    妻が際限なく太っていくー。失業中の男性は、愛犬をなくしたことで拒食となった妻に食事を作るようになる。延々と食べ続け、丸々と太っていく妻。凝った食事を作り続ける男性。徐々に変化していく関係と異存。ほんの少しの興味と気味の悪さを感じながらも、二人の結末にしわあせなものを感じてぞく

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    2017年02月24日
  • 銀婚式(新潮文庫)

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    著者の小説は主人公の状況がこれでもかと言うぐらい悪くなるパターンが多いと思っている。この小説も山一證券をモデルとした大手証券で働く40歳を超えたサラリーマンが、職場も家庭も失い、滑稽なほど転がり落ちていく様は痛快に読み進める。しかし、いつまでたっても状況は好転せず、低空飛行のまま進むのでだんだんと心配になってくる。人生はこんなものだと感じるが、真面目で堅実な主人公の生き方には何かしら共感してしまう。ニューヨークの世界貿易センタービルの電力供給問題でエレベーターが停止し、89階から階段を歩いて降りるくだりがある。同じ経験をした身としては、著者がヒアリングを重ねて小説を組み立てているのがわかる。

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    2020年10月26日
  • 廃院のミカエル

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    面白くはあったが、少し物足りなくもあり。いつも楽しまさせてくれる著者の作品ということで、期待値が高すぎたかも。

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    2017年02月12日
  • 死神

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    市の福祉事務所のケースワーカーの連作短編 8つの話
    一応解決するけれど、その後は大丈夫なのか?と思うような終わり方
    『花道』はイラッとする人が多かった男に寄生して生きていく綾。ひょんなことから、ケースワーカーの赤倉は自分のダンナを綾に取られてしまう、でも、結局赤倉のダンナの仕事が危うくなると、働き始めた先の経営者に乗り換えられ…という情けないダンナ 現実に綾みたいな強かな女、そんな女に良いように利用されちゃうおパカな男いるよなぁ

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    2017年01月11日
  • 秋の花火

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    閉鎖した日常に訪れる転機を、繊細な筆致で描く短編集…

    まさしくその通りの5つの話。
    「秋の花火」はオトナの静かだけど胸が苦しくなるような切なさを感じた。

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    2017年01月15日