あらすじ
あなたは、そこまでして私の人生を邪魔したかったの――。認知症の母を介護するために恋人と別れ、仕事のキャリアも諦めた直美。孤独死した父への悔恨に苛まれる頼子。糖尿病の母に腎臓を提供すべきか苦悩する慧子。老親の呪縛から逃れるすべもなく、周囲からも当てにされ、一人重い現実と格闘する我慢強い長女たち。その言葉にならない胸中と微かな希望を描き、圧倒的な共感を呼んだ傑作。(解説・徳川家広)
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Posted by ブクログ
現代の「親問題」が浮き彫りになった中編集。食生活の向上や医学の発展から長生きが普通になった世の中で、苦労を強いられるのは長女たち。
母親として、子供に迷惑をかけずに、ボケる前にポックリいきたいな…と思わずにいられない。
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厳しい現実を突きつけられ、考えるさせられる。親(や自分)の老化は誰にとっても他人事ではない。
女1人がどんなに足掻いてもどうしようもない。論理と感情が相反する。正解のわからない問題に対してどう折り合いをつけるのか?
自分ならどうするかなぁと読後も考えてしまいます。
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タイトルからの勝手な想像で、ユーモアとかペーソスとかを期待していたが、読んでみると切実さとアイロニーに満ちていた。
本作における「長女キャラ」とはどういうものか。どうやら、真面目で有能だがあまり要領良く生きられない人たちらしい。我慢強いが、それが裏目に出てしまうことも度々。
それ故か本作の長女たちは皆三十代後半〜四十代後半で独身、そしておそらくは独身であるがために、近親者への献身と近親者からの搾取の境界線上で揺れている。認知症介護・独居老人・依存症・生活習慣病・臓器提供といった一筋縄ではいかない家族問題の「担当者」という役回りを周囲から期待され、圧力をかけられもする。
その背後にあるのは家父長制だろう。つまるところ、本作における長女とは家父長制の中の被抑圧階級なのだ。
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「家族だからできる」と言われていることは、家族だからこそできない。きっと、家族だから、より残酷で、逃げ場がなく、追い詰められていく。最後の一言を何度も呑み込みながら、耐えながら。
3編の主人公は、このままでは逃げ出すしか救われない。そんな気がする。介護退職なんてもっての外、どうやって生活するの?看取った後、どうするの? そんなことを考えてしまう。
親と対峙する必要があるのかもしれないけど、「家族だから」できない。絶対に、ヘルパー、介護システムを頼るべきだと思う。令和の時代だから。
高齢化が進むことによって、健康寿命以降の過ごし方が問題になってきている。特に、介護する側に。「ミッション」で描かれているように、長生き(延命)は本当に幸せなのだろうか。節制しながら生きていくことは喜びなのだろうか、と考えさせられます。
「そんなに長生きしたいの?」そして「長生きして何をしたいの?」。ふと、そんなことを想ってしまう。子どもの肝臓を移植して生き延びようとは親なら絶対思わない、と語る父親。しかし、母親は…。そして、なぜか理解ってしまう。それが、かえって辛く、悲しい。
長女。きっと真面目で責任感がある娘かな? 介護は、責任感がある人に負担がかかる。
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長女体質…主人公3人の思考、行動、いちいち同意出来た。ヤダヤダと思うけど、生まれてからの環境で、こういった性分は出来上がるのではないか?
今まさに直美と彗子と同じ状況。
きっと死ぬまで私は変われないだろうな。
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短編3つのうちの「ファーストレディー」に関して。
私は母は子供のころは世界で一番好きな人であり、大切な人だった。
しかし成長するにつれその思いは老いて理性を失い奔放になっていく母を疎ましく思うように変わってくるのだが根底にはやはり母を好きという気持ちがあることには変わりない。
だから主人公の気持ちの揺れ動きに共感できた。
「パッション」は人間の理想的な死に方を教えてくれたように思う。
「家守娘」は篠田節子らしい最後にゾワっと感じられるストーリーだった。
Posted by ブクログ
介護問題は現在の日本の一番のホラーであると思う。
三作からなる本作の二話目の村に酷く共感した。
一、三話は我が家の状態(祖母(セコンド妹)vs母,私)に似ていて腹が立ち冷静には読めなかった。
年長者が若年者の重石になっているこの国は歪んでいる。
それをさも当然でそのために子供を作った、というようなことを豪語する年寄り達は心底気持ちが悪いと思います。
三作目の父息子の手術に対する台詞にも共感です。
とても気持ち悪く腹の立つ小説でした。
(それだけリアリティーがあり面白かったということです。)
ただ一話目に軽くファンタジーが絡んでいたのは好みではなかったです。
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身につまされる話
家守娘の母娘の会話はリアル
いつの時代も、いや 今の時代だからこそ核家族になり突きつけられる現実。
他人ではないから甘えがあり、思い出があり、切なさとの葛藤を抱えながら行き着く思い。親子でなければ行き着かない結果だと思う。
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恐ろしい本だと思った。3編の短編小説はいずれも長女が主人公だが、現代の深い問題をえぐりだすような内容となっている。解説者の言葉を借りれば、「老人が尊厳をもって天寿をまっとうすることと、数が少なくなった若者が幸福で充実した人生を送ることと、両立が困難だということ」がテーマになっているように思われる。第二話の「ミッション」ではヒマラヤの山奥の村を舞台にしているが、長女の側面はほとんどなく、現代の日本人にない彼らの生死感にはハッとさせられ、価値観を激しく揺さぶられる。
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3人の長女たちの物語。
帯にある「当てにするための長女と、慈しむための他の兄弟。それでも親の呪縛から逃れられない」
というフレーズが心に染みる。
今現在、老いた母の面倒をみながら葛藤を抱える自分を振り返り、あんな気持ちになるのは自分だけではないんだと安心する。
そして、自分はそんな母親にはなりたくない。
Posted by ブクログ
あー、迫力すごい…
畳み掛けるようにこれでもかこれでもかと突きつけられるかんじ。的を得ていてリアルで容赦ない。
あっという間に読んでしまう。
長女としては思い当たる節もたくさんあるし…なんか怖かった。
Posted by ブクログ
さすが、篠田節子さん‼︎ シャープで面白い。
わたしも長女なので、大いに共感しました。
『家守娘(いえもりむすめ)』
認知症の母の介護に悪戦苦闘する長女。 恋も仕事も、次から次へと・・・。 しかし、最後は期待通り。 力強く生きていく姿に安堵します。
『ミッション』
舞台は、ヒマラヤ奥地の貧しい村。
生と死、医療、生への巡礼・・・わたしたちにとっては残酷な現実を教えてくれます。
なので、涙とともに心には苦い味が広がりました。
しかし、その苦味を味わい尽くした後には、不思議とほのかな甘味が広がるような味わい深い素晴らしい物語です。
『ファーストレディ』
『ミッション』(シンプルな生と死)の余韻のなか読み進めると、否応無く、日本の家庭・医療を見る目は、冷ややかなものになりました。 それでも、葛藤し頑張る長女には共感してしまうのです。
糖尿病を患う母に対する長女の立ち位置は、弟とも父とも大きく違います。 それは、家庭の構造と長女自身によるものか? 理性と情の狭間に不必要な罪悪感も加わり・・・。
そして、母が舅姑に仕え見送った過去の様々な思いにも気づき、母に臓器を提供しようと思うのですが・・・。
『お父さんの臓器なんか、死んだってもらうのは嫌だ。』(母の夫への思い)
『病気ではない体にメスを入れさせて、万一のことがあったら・・・』(母の息子への思い)
『あんたのなら自分の体と同じだもの』(母の長女への思い)
ラスト、長女の選択は?
感慨深い小説です。 わたし自身、高齢の親がいる身です。 そんなわたしに覚悟の二文字を与えてくれました。
" 明るい気持ちで淡々とシンプルに受け止める "
それほど、心に響きました。
特に、『ミッション』は。
Posted by ブクログ
現代の日本人が抱える高齢者介護の問題を考えさせられました。親子の関係性が密だと言われる現代。その先にある問題でもあるように感じました。
3つの物語で構成されている作品ですが、介護に答えがあるとしたら、真ん中の作品の中に見出せるのではないかと、考えさせられました。世界には、死を日常の一部として捉える…そんな日常を送る世界があり、現代医学の進歩の副作用的な結果としての高齢者介護問題に苦しむ日本社会との対比が鮮烈でした。
現代の日本(西欧社会に影響を受けた)の価値観が本当に幸せなのか…そんなことを深く考えさせられました。
Posted by ブクログ
なかなか恐ろしい内容だった。
以前親しかった学生時代の次女の友人が
『長女って僻みっぽいから〜』が口癖だった。
理由はその子の姉がよくその子に説教をすると。
『親から家を買う資金をもらったとき、姉が説教してきた。羨ましいなら自分も貰えばいいじゃーんね!』と言っていた。
彼女にかかると『いいなぁ!羨ましい〜』と言うお世辞すらも長女が言うと『僻み』となるらしい。
この事から、なるほど根本が違うんだなと感じたのを覚えている。
彼女の姉は『羨ましいから』説教したのではないと私は思ったから。
本当に長女として、親の事や妹を気にかけていたのだと思う。
現に妹の方は、その時の旦那とは離婚し一年もしないうちに別の男性と子連れ婚した。
昔から男をコロコロ変えていたので驚きはなかったけど、彼女の強さというか、図太さにむしろ尊敬した。
きっと、その子の姉が離婚したら、そうはいかないだろう。子供の事、親の事第一に考えてしまい自分の幸せは二の次にしたと思う。
これは長女だから次女だからとは関係ない話だけど。
この本を手に取る度、その姉妹を終始思い出し、また私も長女なので、弟達の『世話はしないが偉そうに口を出す』態度と重ねて読んだ。
母と暮らす私は、いずれ来る介護に少し緊張感が生まれた。
Posted by ブクログ
今の自分が読むべきものだったような色々と考えさせられる内容だった。巻末の解説を読んでも自分の感じたことがそのまま代弁してあるように思えた。高齢化社会と介護の問題は益々誰もが直面することのなっているので共感する場面も多い。いつの日か自分の娘にも読んでもらいたいけれど。。。
Posted by ブクログ
絶望の淵ギリギリを歩く女性たちを描く作品。
彼女らの苦悩をこれでもかと描き、最後には光とも呼べない薄明かりのようなラストを見せる篠田節子先生の筆致は大変素晴らしい。
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著者は大人の内面の葛藤を、ひねりの効いた設定の中で生々しく描くのが本当に巧みだと思う。
本書はなかなかどの話も客観的に見ると救いがないけど、でもそんなの関係なくて本人たちはただ自分の引き受けることになった人生に向き合って進んでいっている、そんな長女たちのたくましい話だった。
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3つの中編が収められています。
「家守娘」では長女の言い分、次女の言い分 それぞれの気持ちに共感する部分があり、ノンフィクションの様な作品でした。
平均寿命が延び、長男・長女と言うだけで感じる重圧 親子とは言え、そこには情だけでは乗り切れない感情も生まれます。
家族みんなが少しでも幸福になれる道を模索する大変さをしみじみと考えさせられました。
Posted by ブクログ
ついあてにされ、行動でも心意気でも妙に力んで引き受けてしまう、これが長女に生れたついた者のサガ、わたしも長女だからよくわかる。わかるけれども、お人好しな要領が悪いところもあるようだ。
という『長女たち』の「家守娘」「ミッション」「ファーストレディ」中編3つの内容。
3編とも母親を介護することになって娘が奮闘するのだが、それらに登場する老いた母親たちが、モンスターのごとき、阿修羅のごとくわがままでもの凄いし、どんなに尽くしても満足もお礼もない母親の娘に対する「私物化」が情けない。そんなに激しく描かなくてもと、もう高齢のわたしなど身を縮めてしまうけど、篠田さんのオカルトめく筆はうまくて参ってしまう。
母親の立場、娘の立場の両方に感情移入して読んだ。寄り切られっぱなしでもなく、娘たちの再生もほのめかされていて、それがホッとさせられる。
Posted by ブクログ
「長女たち」というタイトルに魅かれて読んだ。
自分も長女だし娘も長女。
一作目の「家守娘」と三作目の「ファーストレディ」は母と娘の物語。痴呆の母と糖尿病末期の母を世話する娘の葛藤のドラマ。自分と娘に重ね合わせて読んでしまう。
ただ作品は娘の視線から描かれていて母側の葛藤が伝えられきれていないのが残念。
二作目の「ミッション」はヒマラヤの山奥へ医者として赴任する女医さんがみた現代医学と現地人の死生観の違いに強く引きつけられた。命を引き延ばすことの功罪を考えさせられた。
読んで良かった一冊。
Posted by ブクログ
自分も長女なので見につまされながら読みました。
長女に限らないかもしれないけれど家族の中でそんな役回りの人っていると思う。
かなり重たい題材ですが、少しミステリーっぽい仕上げになっているので読み物として面白かった。
Posted by ブクログ
怖い怖い。
我が身を振り返ってぞっとした。
たしかに長女気質ってあると思うし、長女が損なところって多いと思う。(ファンタジー方面に昇華させたのが魔法使いハウルのソフィーだけど。)
そして、親との関係。恐ろしいなーと思った。
Posted by ブクログ
常日頃から感じてる『長女の呪い』をものすごく端的に表現してもらえた!と感じられる
全長女にお勧めしたい本。
我が身に迫るようで恐ろしい反面、これよりマシで良かった、という救いと、
読んだ後の気持ちの良さが素晴らしいです。
Posted by ブクログ
「長女」として
母親への思い、葛藤、振る舞い、立場
同じ長女として 痛いほど感じるものもあったし、怖くもなった。
「ファーストレディ」なんて、ホラーかな?って思うほどに 母親の言動に狂気を感じた
『あんたのなら自分の体と同じだもの』
……こっわーーーー!
Posted by ブクログ
三つの長女たちの話
親たちの認知、孤独死、糖尿病に悩む長女たち
「ミッション」は世界が違いすぎて理解出来なかったが、他の二つは共感するところが多かった
「周囲からも当てにされ、一人重い現実と格闘する我慢強い長女」わかるわー
Posted by ブクログ
自分のキャリアや結婚を諦めて、親のお世話をする長女たちを描いた3つの物語。
痴呆や病気を患った老親の介護をするために一人で奮闘する頑張り屋さんで我慢強くてしっかり者の長女たち。
切なく心にしみる話でした。
Posted by ブクログ
長女という立場の3人の女性たちの3つの物語。
「家守娘」では、出戻りの長女が骨粗鬆症を患っている母が認知症まで発症してしまい、その対応に四苦八苦する。
「ファーストレディ」では、糖尿病を患っているのに甘いものを止めず、過去に医者である父の義父母との同居や病院のスタッフとの確執等の恨み辛みを嫁に行かず、母の代わりに父の片腕として奔走する娘が受け止める。
この2つは母と娘の深い溝を感じる。
母と娘でありながら、友達のようであり、母の所有物である長女たち。
どちらも年老いていく母の介護という、重い現実が突き付けられる。
「ミッション」だけは、長女であるが母との確執といったものはなく、父の孤独死という傷を抱えながらも、日本から離れた貧困国での医療に携わる。
そこでの生活は現地で事故死した医師の後を継いでのことであったが、他2人の介護と対照的に、その在り方の是非を問うというか、現在の延命治療に対する疑問というか、何かそんなことを考えさせられる。
2019.6.16