【感想・ネタバレ】長女たち(新潮文庫)のレビュー

あらすじ

あなたは、そこまでして私の人生を邪魔したかったの――。認知症の母を介護するために恋人と別れ、仕事のキャリアも諦めた直美。孤独死した父への悔恨に苛まれる頼子。糖尿病の母に腎臓を提供すべきか苦悩する慧子。老親の呪縛から逃れるすべもなく、周囲からも当てにされ、一人重い現実と格闘する我慢強い長女たち。その言葉にならない胸中と微かな希望を描き、圧倒的な共感を呼んだ傑作。(解説・徳川家広)

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

「家族だからできる」と言われていることは、家族だからこそできない。きっと、家族だから、より残酷で、逃げ場がなく、追い詰められていく。最後の一言を何度も呑み込みながら、耐えながら。

3編の主人公は、このままでは逃げ出すしか救われない。そんな気がする。介護退職なんてもっての外、どうやって生活するの?看取った後、どうするの? そんなことを考えてしまう。
親と対峙する必要があるのかもしれないけど、「家族だから」できない。絶対に、ヘルパー、介護システムを頼るべきだと思う。令和の時代だから。

高齢化が進むことによって、健康寿命以降の過ごし方が問題になってきている。特に、介護する側に。「ミッション」で描かれているように、長生き(延命)は本当に幸せなのだろうか。節制しながら生きていくことは喜びなのだろうか、と考えさせられます。

「そんなに長生きしたいの?」そして「長生きして何をしたいの?」。ふと、そんなことを想ってしまう。子どもの肝臓を移植して生き延びようとは親なら絶対思わない、と語る父親。しかし、母親は…。そして、なぜか理解ってしまう。それが、かえって辛く、悲しい。

長女。きっと真面目で責任感がある娘かな? 介護は、責任感がある人に負担がかかる。

0
2022年02月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

短編3つのうちの「ファーストレディー」に関して。
私は母は子供のころは世界で一番好きな人であり、大切な人だった。
しかし成長するにつれその思いは老いて理性を失い奔放になっていく母を疎ましく思うように変わってくるのだが根底にはやはり母を好きという気持ちがあることには変わりない。
だから主人公の気持ちの揺れ動きに共感できた。
「パッション」は人間の理想的な死に方を教えてくれたように思う。
「家守娘」は篠田節子らしい最後にゾワっと感じられるストーリーだった。

0
2020年08月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

介護問題は現在の日本の一番のホラーであると思う。
三作からなる本作の二話目の村に酷く共感した。
一、三話は我が家の状態(祖母(セコンド妹)vs母,私)に似ていて腹が立ち冷静には読めなかった。
年長者が若年者の重石になっているこの国は歪んでいる。
それをさも当然でそのために子供を作った、というようなことを豪語する年寄り達は心底気持ちが悪いと思います。
三作目の父息子の手術に対する台詞にも共感です。

とても気持ち悪く腹の立つ小説でした。
(それだけリアリティーがあり面白かったということです。)

ただ一話目に軽くファンタジーが絡んでいたのは好みではなかったです。

0
2019年02月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 さすが、篠田節子さん‼︎ シャープで面白い。
わたしも長女なので、大いに共感しました。

『家守娘(いえもりむすめ)』
 認知症の母の介護に悪戦苦闘する長女。 恋も仕事も、次から次へと・・・。 しかし、最後は期待通り。 力強く生きていく姿に安堵します。

『ミッション』
 舞台は、ヒマラヤ奥地の貧しい村。
生と死、医療、生への巡礼・・・わたしたちにとっては残酷な現実を教えてくれます。
なので、涙とともに心には苦い味が広がりました。
しかし、その苦味を味わい尽くした後には、不思議とほのかな甘味が広がるような味わい深い素晴らしい物語です。

『ファーストレディ』
 『ミッション』(シンプルな生と死)の余韻のなか読み進めると、否応無く、日本の家庭・医療を見る目は、冷ややかなものになりました。 それでも、葛藤し頑張る長女には共感してしまうのです。
糖尿病を患う母に対する長女の立ち位置は、弟とも父とも大きく違います。 それは、家庭の構造と長女自身によるものか? 理性と情の狭間に不必要な罪悪感も加わり・・・。
そして、母が舅姑に仕え見送った過去の様々な思いにも気づき、母に臓器を提供しようと思うのですが・・・。

『お父さんの臓器なんか、死んだってもらうのは嫌だ。』(母の夫への思い)
『病気ではない体にメスを入れさせて、万一のことがあったら・・・』(母の息子への思い)
『あんたのなら自分の体と同じだもの』(母の長女への思い)

ラスト、長女の選択は?


感慨深い小説です。 わたし自身、高齢の親がいる身です。 そんなわたしに覚悟の二文字を与えてくれました。 
" 明るい気持ちで淡々とシンプルに受け止める "
それほど、心に響きました。
特に、『ミッション』は。

0
2022年12月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

なかなか恐ろしい内容だった。

以前親しかった学生時代の次女の友人が
『長女って僻みっぽいから〜』が口癖だった。

理由はその子の姉がよくその子に説教をすると。
『親から家を買う資金をもらったとき、姉が説教してきた。羨ましいなら自分も貰えばいいじゃーんね!』と言っていた。

彼女にかかると『いいなぁ!羨ましい〜』と言うお世辞すらも長女が言うと『僻み』となるらしい。

この事から、なるほど根本が違うんだなと感じたのを覚えている。
彼女の姉は『羨ましいから』説教したのではないと私は思ったから。

本当に長女として、親の事や妹を気にかけていたのだと思う。

現に妹の方は、その時の旦那とは離婚し一年もしないうちに別の男性と子連れ婚した。
昔から男をコロコロ変えていたので驚きはなかったけど、彼女の強さというか、図太さにむしろ尊敬した。

きっと、その子の姉が離婚したら、そうはいかないだろう。子供の事、親の事第一に考えてしまい自分の幸せは二の次にしたと思う。

これは長女だから次女だからとは関係ない話だけど。
この本を手に取る度、その姉妹を終始思い出し、また私も長女なので、弟達の『世話はしないが偉そうに口を出す』態度と重ねて読んだ。

母と暮らす私は、いずれ来る介護に少し緊張感が生まれた。

0
2022年03月20日

「小説」ランキング