あらすじ
現代人の心の淵と魂の再生を描く圧倒的筆力
豪農の跡取り、結木輝和はネパール人のカルバナと結婚したが、両親が相次いで死に、妻の奇異な行動で全財産を失う。怒り、悲しみ、恐れ、絶望……揺れ動き、さまよいながら、失踪した妻を探して辿り着いた場所は神の山ゴサインタンの麓だった。現代人の根源にある魂の再生を力強く描く、第10回山本周五郎賞受賞作。
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Posted by ブクログ
篠田節子ブームの中で読んだ、たぶん初の長編。
長いけど、一気に読めます。
読んでから、だいぶ時間経ってるので、登場人物名とか
キレイさっぱり忘れちゃってますが。
地方の農村の旧家の跡取りが、発展途上国(ネパール?)から
嫁さんを「買って」くるところから始まる、
なんだろう、破壊と再生の物語なのかな。
この買われてきた嫁さんが、この旧家を滅ぼしていくんですよ、
なんか、神がかり的な力を得て。
「買った」はずの姑や旧家の次男(長男は海外在住で家督放棄)が
次第に従属する立場になり、ついに土地家屋財産全て擲って
帰国した嫁を追って、ネパール?に行っちゃう。
この文庫版の表紙の神の山に象徴されるような、なんというか
神々しい、祝福された再生のイメージで物語は終わります。
途中の旧家が滅ぼされていく過程や、主人公の跡取りが転落?
没落?していく様子、ネパールに入ってから辛酸をなめる様子、
なんか、「ざまあぁぁぁ!!!」ってかんじで、爽快でした。
私が女だからかな。
いろいろ社会的な問題点とか、提起されているのかもですが、
そんな構えなくても、ごく下世話に読んでも楽しかったです。
他人の不幸は蜜の味。
でも、これはハッピーエンドですよ。
Posted by ブクログ
大きな農家の長男が、ネパールの女性と結婚します。
この男、最悪です。仕事と周りとの付き合いなどはこなしますが…妻の出身地ネパールがどこにあるのかも分からず、妻の気持ちなど考えず腹が立つこと間違いなし。
彼女がそうなったのは、素質もあったのでしょうが、追い詰められたからだと思います。
この話はどこにむかってるんだろう?どうするつもりだろう?と思いつつ読んでいきました。
最高は、どこにあるのかも分からなかった地。
Posted by ブクログ
豪農の跡取り息子40歳が見合いするも話がまとまらず、アジア人の若い女を妻にしようと実行するところから始まる、
よくあるアジア人嫁の話かと思ったら、
嫁はネパールのさらに北のはずれ
(ゴサインタンという山の麓の村)から来た、言葉も通じない、食べ物や風習も全く違う、工場で働くとだまされて連れてこられた女性だった
そして農家の姑と夫にいじめられて心折れて逃げ帰るかと思ったら、
神がかりになり、教祖になり、夫から財産のすべてを奪い、(奪うというか、捨てるしか救われる道はないと説く)
怪しい新興宗教と思われる比喩も登場し、
宗教の行きつく先、人生の救いとか幸福とか、人間の生きていく上での価値観を突き付けてくる、
徹底的に救われない話
でも先が気になって、やめられなくてどんどん読んでしまう。
最後は主人公にとってはハッピーエンドなのか?
農家の嫁問題・宗教ほかいろんな問題を提起しており、
長いけど夢中になって読める
Posted by ブクログ
ガサインタン(神の座)。
これでもか、これでもかとたたみかける不幸と悲惨な状態。
いいかげんに、よしにしてくれと思うけど容赦が無い。
ひょっとしたら男性が読むのを拒否しているのかと思った。
結末まで来たら、なんだ、そんなことかとがっくりきた。
目的のためには手段は選ばないという言葉がある。
故郷に帰るという意図を掴めないまま、終わりまで来た。
国際交流ってこういうことかと納得した。
Posted by ブクログ
嫁の来てのない農家の跡取り息子がネパール人の嫁をもらう。そこから始まる奇怪な出来事。失踪する妻、それを捜し求める夫。既存の概念が次々崩されていく、篠田さん得意のパターン。ラストの夫のセリフ。そこだけ読んでも、今思い出しただけでも胸が熱くなって涙がにじむ。傑作。
Posted by ブクログ
新興宗教、農家の嫁取り・・・現代が抱える問題を鮮やかに書いてると思う。読み終えたあと、不思議な爽快感と共に、真に人間らしい生き方とはなんだろう・・・と考えさせられた。ちっとも答えは出ないけど。
Posted by ブクログ
カルバナ(淑子)の行動は被現実的なんだけど、主人公輝和をカッコよく描かず、クズっぷり、しかし後半成長する。
最後ネパールの大地での行動は、救いなのか。
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ストーリとは関係ないけど、
心に病を持った人、浮浪者のような生活をしている人、人生に疲れた人、そういう人たちを受け入れる質素な生活を行う集団いいと思う。それで、そこで暮らしていく中で贅沢な暮らしがしたくなったり、新たな目的を持って生きていきたくなったりした人はそこを出ていく、というようなコミュニティ面白いとおもう。
Posted by ブクログ
最後まで一気。ほんとにすごい小説家。
とはいえ、95年10月からの連載で、問題意識が掴みづらかった。
確かにオウム事件などが起きた直後なので、そこへの考察はあると思うが、端的に主人公は悲惨だし、宗教はクズが集まることがよくわかった。
Posted by ブクログ
ネパール人の妻を持った地主の男性が、妻の不思議な能力を気味悪がる。しかし次第にその能力に翻弄され、財産を失い、裸一貫になり、掴んだものとは。地下鉄サリン事件後に発表された本作は、人心掌握する宗教の側面と、それにとどまらない物質主義からの脱却を提起しているようにも読み取れる。今のアジアは経済的に豊かになる反面、精神面も変化が起きてもおかしくない。おそらくこれからアジアが直面するであろう、精神の再生を描いている。
Posted by ブクログ
この小説って一体なんなのか、どういう物語なのかっつーのが読後数日経った今でも捉えきれない。色んな事盛り込み過ぎなんだけど、かと言ってバラバラではない。日本ではカルバナも空っぽだったし、輝和も空っぽだった。ただ輝和が自分らしきものを手にした後半でカルバナがなんにも覚えていないってのはあまり歓迎できない展開だった。一連の神懸り的な出来事に関しては潔いまでになんの解説もないところが清々しい。教団の描写では仮想儀礼に連なるものを感じたし、過疎地での嫁取りついてはロズウェルなんか知らない、ネパールの情景では転生と後の作品の萌芽らしきものが垣間見え、それぞれ一作になるほどの数多くのテーマが含まれた作品。壮大よ。H市が八王子だってこと何故かにしばらく気付かなかった。野猿街道の西側とかそんな場所が舞台なのかな。
Posted by ブクログ
★3.5くらい。読み終わるのに1ヶ月近くかかってしまった。P648の長編小説。人間救済、回復の物語。
<名前の回復>カルバナ・タミという名前を剥奪された「淑子」。
<人間性の回復>人間(輝和)が変わるには、これほどまでの痛苦を味わう必要があるのか。想像を絶する「墜ち方」。ここまで墜ちても回復できるのだとしたら、墜ちてみるのもありかもしれないよなあと思う。残念ながら、普通だったら、どっかで死ぬだろう。主人公・輝和、人間の機微を理解できない、この鈍感な男が、最後には頼もしく、再生してゆく様。
<家父長制(家)の崩壊>豪農の跡取り息子・輝和が、すべてを失う。本当に「すべて」を。名士としての歴史すらも、搾取と強奪の構図の上に作られたものでしかなかった。
<教祖の誕生>教祖・淑子の誕生。奇妙な共同生活。
<神を犯す>虚しい排泄の感覚。
<数多ある信仰様式>ネパール、民間信仰。
Posted by ブクログ
山岳小説だと思って買ったんだけど違った。一種の「魂の再生の物語」であった。
住民の生活や新興宗教の詳細なリアリティは作者らしい。 が、それとホラーもしくは神秘小説的趣きとのギャップが奇妙。
Posted by ブクログ
ゴサインタンとはネパール語で「神の座」の意味で、チベットでいうところのシシャパンマ峰のことである。
私は、シシャパンマはベースキャンプまで行ったことがあるので、そう言う意味ではとても気になる小説だった。
日本の農業(とその嫁問題)、宗教感などに踏みこんだとても重い作品となっている。
Posted by ブクログ
先が気になってほぼ一気読みでした。篠田節子作品は割とこうなる…
そばにいてくれた白猫を葬った日に、豪農の跡取り・輝和はネパール人のカルバナとお見合いしそのまま結婚した。
カルバナに「淑子」と名付けて奪い、食文化を奪い、生活と言葉を矯正し、結木の家に当てはめ、嫁としての仕事をさせていく…この部分は辛かった。わたしの母は日本人でしたが、昭和生まれ平成育ちなのでこんな家庭は想像できます。
しかしカルバナが救いを…というよりは穏やかそうで苛烈な破壊と再生を行っていき、結木家は全てを失っていく。
その姿は周りから神と崇めれていったけれど、見抜いていたのかな?血と涙と怨嗟が染み込んでそうな結木家の資産の数々のことを。それであんなバラマキを…
結木は淑子を止めることも淑子に委ねることもできず、淑子の事を愛することも畏れることもできない。でも心配はするときもある。
失ったときに初めてその大切さに気付いたけど、それでもまだ、俺のものにしようとしている。
神の力を失ったのか、失踪した淑子を追って、全てを棄てて単身ネパールまでやってくる輝和。びっくり。
ここで、淑子信者と暮らしてたとき身に付けた技術を活かせるのがよかった。ただぼんやり、積み重ねていた日々も無駄ではない。
ラストには、本当に全てを棄てていて、どこか神々しささえ覚えました。
壮大な断捨離、とおっしゃってるレビュー拝読しました。言い得て妙です。
信者の清美さんが、「普通の女性に戻る」とさらっと言ったところに驚きました。許すのか。。すごい。
お布施でお金儲けするのではなく、作物を作って売って生活する。それだけなら良いのでは…?と思うけど、やっぱり何処となく薄気味悪さを感じてしまいます。
無宗教でなく、浄土宗なのですがね…
淑子の神通力はなんだったのか…記憶がなかったようだから、誰かが入っていたのかなぁ。淑子は消え、カルバナだけが残った。
輝和もきっとやっていけるだろうな、ゴサインタンが見下ろすこの国で。それからずっとふたりで幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし
Posted by ブクログ
6月-18。3.0点。
農業を営む地主の次男が主人公。家を継ぐが、嫁不足のためネパール人女性達と集団見合い。
結婚するものの、不思議な減少が続き、妻は家出してしまう。
前半は主人公のまごつきと、嫁の不可解な行動でなかなか読み進まず。後半は一気読み。
ラストは良かったね。
Posted by ブクログ
篠田節子さんの本を読みあさって何冊目か。チベット辺りの宗教的な内容と、何もかも失って行く、追いつめられて行くような定型パターン。
「弥勒」と似ている感じもするし、「仮装儀礼」にも似ている気がする。
そして私は今回の物語は最終的には純愛じゃないかなと解釈した。
ちょっと違うパターンも読んでみたいものです。
当分、篠田さんはもういいかな。
激動のストーリーにちょっと疲れました。
Posted by ブクログ
農家の跡取り息子がネパール人の妻を娶ったことから始まる人生の転換を、宗教や異文化への理解を通して描く物語です。
主人公が没個性的であるため、読者が世界を見る媒体としての役回りと割り切るまでは読み進めることに苦労しました。
全体として細部の取材が行き届いていることから確かな現実感あり、主人公が経験する壮大な断捨離は物語の中でしか味わえないなかなかの衝撃がありました。
現代日本の生活も、宗教の功罪も、途上国の現実も相対化して提示する作者の姿勢は誠実で好感が持てます。
居場所探しとしてはあまりにスケールが大きいため真似できるものではありませんが、自らの立ち位置を見直すには、いい機会となるかもしれません。
Posted by ブクログ
地方の名士に生れた主人公輝和は、40まで嫁が来ず、ネパール人の妻を貰う。家を守るために従順そうだという理由だけで貰った嫁は、宗教的な活動を始め、資産を食い尽くす。
細々と自然からの恵みだけでの生活がなんとか安定していたところ、妻が突然姿を消す。和輝は失踪した妻を探しにネパールへと旅立つ。
幸せとは何か、金や名声か、自給自足の慎ましやか共同生活か、何があれば心は満足するのか。それを追い求めている小説。
言いたいことは分かる。長く丁寧に色々な事象を加えて、和輝は求めているものにたどり着く。そうだろうね。という感想。
Posted by ブクログ
『聖域』『弥勒』と続く神、宗教、ヒマラヤの国と山、死者と聖者、土着信仰と組織化された宗教、失踪と流浪など共通テーマの三部作完読。前作2冊よりも田舎の嫁不足という、よりリアルなテーマを基点にしている。『ゴサインタン』は三部作の完結編という趣向ではない。この物語は永遠につづくのだろう。現代人が忘れたもの、都会では知ることができないものそういう得体の知れないものと人は大昔から共存していたのだ。現代人の悲劇はそれに気付くことを忘れてしまったことから起こるのだろう。
Posted by ブクログ
あらすじを読んでイメージしていた物語とは大分違っていた。
何か…怖かった。
宗教って本当、何なんだろう・・・
輝和は、結木家の重荷を背負って普通とは違った苦労を
してきたのかも知れないけれど、
だからといって彼がカルバナに対して取ったさまざまな行動を私
は決して許容できない。
そして、どれほどの苦労を重ねて会いに行ったからといって、
カルバナにとっては良いことのように思えない。
なのに、再会を喜んでしまう私…
長い物語に付き合っているうちに情がわいたのかしら。