あらすじ
証券会社のNY本部で多忙をきわめていた高澤は、妻との関係が壊れ離婚。会社も破綻する。再就職先で直面した、華やかなキャリアなど通用しない中堅損保の厳しい現実。再び転職した地方の無名大学で、都落ちの寂寥感に沈む高澤の前に現れたのは、学部長秘書の清楚な女性だった……。低迷する日本経済を背景に、もがきながら生きるビジネスマンの仕事と家族を鮮烈に描き、万感胸に迫る傑作。(解説・藤田香織)
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
篠田節子さんに魅せられての二冊目です。
大いに笑わせて考えさせられた、一冊目『百年の恋』とは、対照的な物語をリアリティでグイグイ引っ張てくれる読み応えのある傑作です。
篠田節子さんに更に惚れました。
高澤修平の順調と思えた人生に、離婚、何度かの転職、息子の受験の失敗、新たな恋の難しさ、介護、と荒波が次々と押し寄せる。
だが、この男性、仕事に、人に、実直でいて誠実なので、無職になっても、鬱になっても、葛藤の中、助けてくれる人が不思議と現れる。 そんなシーンに何度も涙する。
そして、彼のような誠実なサラリーマンがこの世の中を支えているのだと、また胸が熱くなる。
高澤たちの『男の本文は仕事だ』が価値観の時代を懐かしく読み、我が夫婦に想いを馳せる。 高澤夫婦と差して変わらず、当たり前のように色々なことがあったなと。 無我夢中で生きてきたなと。
高澤夫婦は、離婚してしまったのは残念だが、若い頃は、互いに幼く未熟なもの、本物の夫婦になるには年季がいるのだと想う。 我が夫婦もまだまだですが。
もしかすると、歳を重ね、枯れ始めて、初めて内面の成熟期を迎えるのかもしれない。
最後に、題名の『銀婚式』についてだが・・・女性の台詞に効果的に登場する。 最後まで読み終えた時、その思いがじわじわと心に広がるニクイ演出である。
Posted by ブクログ
やっぱり上手いなぁ〜篠田さん‼︎
ミステリーのような、とんでもない事件やどんでん返しはないけれど、本人にとっては『大事件』であることの繰り返し。このお話は、歳をとって中高年になってから読んでこそ、面白いと思う!
最初はちょっと鼻持ちならないエリートに感じた高澤も、読んでいくうちに、その必死さ、真正面から頑張り、もがいていくところが、私は好感が持てました。高澤の人生を速回しで一緒に体験した気分です。
なぜ「銀婚式」ってタイトル?と思って読んでいたけれど、ラストはしみじみ…。
個人的には、女子大生が、とんでもないことに足を踏み入れそうになるのを、素早い英断で止めたエピソードが印象深かった。(本当に世間には酷い奴がいる)
人生って、長いよね…。一つ解決したと思っても、また次のハードルがあり、悩みは絶えない。私の好きな言葉で『人間万事塞翁が馬』ってあるけど、本当に、良いことの後には悪いこと、辛いことの後には楽しいこと……と、繰り返しなのが人生だと思う。それでも、死ぬまでは生きていかなきゃならないものね…。
印象に残ったところを少し…。
ーーーーー
自分にもこんな根拠のない自信を抱いていた時期があった、と高澤は思い出す。長すぎるほどの未来を抱えて、少しの恐れも抱かず、努力すれば道は開けると無邪気に信じこんでいた人生の夏は……
表面的な学力で測れない知性というものが存在することを改めて知らされ、彼らの、ひょっとすると持っているかもしれない途方もない可能性に思いをはせる。
人間、死んだら二度と生まれてこないんだから。
身辺の年寄りたちが、季節が移り変わるように相次いであちらの世界に旅立ち、どこか観念的に捉えていた自分自身の老いと死を身近なものとして意識するようになった。
人生、うまくいかないからおもしろい。
何もかも筋書き通りにいくはずもない。定められたレールを踏み外すのが、必ずしも悪いこととは限らない。
ーーーーー
篠田節子さんの作品のなかでは、地味、ともいえる作品かもしれませんが、私は好きでした(^^)
Posted by ブクログ
50代の元エリートサラリーマンの半生。
エリート証券マンが、ニューヨーク在住中に離婚、その後会社は破綻し、損保会社に再就職するも、鬱を患い退職。仙台の無名私立大学の非常勤講師として再々就職。
何とも波乱万丈な主人公高澤。
それでも、誠実で仕事に対しても熱意があり、品行方正なため、周りからの評価は常に高く、好感が持てます。
大学での功績は高く、やる気のなかった学生達が、きちんとした大人になることが出来るよう、下地を作ったのは彼でした。
元妻、息子との距離感は、かなり近いもので、タイトルからもしかしてと想像しながら読み進めていました。
浪人して国立大学に進学した息子にひと安心するも、最後までそのままでは終わらせない展開に、思わずまたか…と。(笑)
この2人なら元サヤはありでしょう。
我が家は来年が銀婚式です。
Posted by ブクログ
読み終えたとき、高澤と共に長い人生を歩んだ気がした。
…いやいや、それでは私が主人公と銀婚式(笑)
確かに、NY赴任時に仕事を理由に妻の不調に寄り添わず、離婚に至ってしまったところまでは、彼を「仕事は有能だが、家庭人としては失格」というような眼で見ていた。
しかし、会社が倒産し、次々に同僚が新しい職場探しに奔走して退職していく中、最後まで敗戦処理として会社に残る姿は、退却するしんがり武将のようであった。
その後も、何故かめぐり会う仕事はことごとく「尻拭い」「敗戦処理」
あ~、なんて運の悪い人なんだろうと思うと同時に、何があっても投げ出さない姿勢に感心する。
そして水面下で…ちゃんと見ている人たちの信頼を勝ち得ているではないか。
普通に生きていて、仕事は別としても、子供の問題、老親の問題、心配事はあとを絶たない。
特に介護の問題の深刻さはリアルに描かれていて、自分の身にも重ねてしまう。
一つ一つクリアした後…何が残るか、だ。
とても良い終わり方だと思う。
Posted by ブクログ
銀婚式というタイトルからイメージしていたストーリーと良い意味で違っていた。
男性が主人公なので、男性ぽい価値観や行動が印象的だった。が、作家さんは女性であり驚いた。
ジェンダーレスの時代を生きる男性が、この主人公の年齢になった時、共感するのはどんなところなんだろう。
そんなこと思う自体が間違っるのか…。
どんな時代になっても、人は必ず老いていく。
ひとりで生きていける強さも必要だけど、誰かと支え合うための強さと優しさも必要な気がする。
気づけば銀婚式だったという、時間の流れは尊く、そこに家族や愛おしい存在があることは本当に奇跡でしあわせなことかも。
Posted by ブクログ
文章が秀逸。証券会社のエリートビジネスマンの青年期から壮年期を淡々と描いている。淡々と…なのだがなかなかの紆余曲折があり先が気になり一気読み。小説なんだけれどちょっとリアリティあり「へ〜!」と感心してしまった。想像していたエンディングとは違っていたけれど、それすらも感心。良い読み物でした。
Posted by ブクログ
主人公と同じ世代を生きた身として、様々なシーンで共感できました。
じんわり感動。
一気に読みたくなる面白さは、30年前に読んだ「女たちのジハード」を再読したくなります。
Posted by ブクログ
1人の平凡な男性が、挫折や苦労を味わいながらも、ひたすら人生に対し真剣に向き合って生きる姿を描いた小説ですが、サスペンスでも推理小説でもないはずなのに、なぜか、あっという間に読み終えることができました。
Posted by ブクログ
華々しい学歴は、社会に出た後にその一生を保証するものではなかった。それでも身に付けた自助努力の精神は、人生のどん底を経験したとき、破滅の淵に転がり落ちる寸前で、何とかもちこたえ、はい上がるチャンスを与えてくれるものになるだそうと高澤は信じている。
最敬礼されて事務所を出てふと振り返ると、まだ見送っている錦城の姿がある。
濃霧が晴れて視界が開けたような気がした。
「人生、うまくいかないからおもしろい」
父の残した言葉が、よみがえる。
何もかも筋書き通りにいくはずもない。定められたレールを踏み外すのが、必ずしも悪いこととは限らない、と息子のことを思った。
Posted by ブクログ
同年代で損保業界の話もあり、手に取ってみた。
読み進めるうちに親の介護、看取り、子供の受験といった欠かせないことがあり、我がことを振り返りながら、読み終えました。
Posted by ブクログ
高澤修平が証券会社、損保会社、大学と職場を変える中で様々な奮闘を詳細に記載した物語だが、最後の大学編が面白かった。学部長などからの圧力に歯向かう形で学生たちとの交流を深める中で、多くの成果が上がる。鷹右左とのもどかしい感じの付き合いもよかったが、離婚した妻の由貴子と息子の翔とのやり取りが現実の問題として誰にでも起こりそうな形で述べられているのが素晴らしい。
Posted by ブクログ
公立高校から国立大学、証券会社に就職し結婚、ニューヨーク勤務。ここまでは順調な人生にみえた主人公。妻の病気、ここから人生の軸がブレ出す。
離婚、経営破綻、再就職、鬱病、リストラ、転職、老老介護、認知症、再婚、年の差婚、大学受験、浪人、セクハラ、できちゃった婚、ケアマネージャ・・・・。現在、よく耳にする言葉が溢れてくる。だからこそ、リアルに感じて引き込まれていく。
タイトルの銀婚式ってこの離婚男にどう結びつくのだろう?再婚予定の年下の女性から、銀婚式が迎えられるまで一緒に生きていく、って言われた箇所か?なんて思ったが・・・。
周りの人に影響を与え、与えられながら人は生きていく。そうして、自分の運命が決まっていくという、当たり前のことを今更ながら認識させられた。
さらに、自分の人生は自分で切り開いていくものであり、何もしなければ何も起こらない。地味に心に響く作品でした。
Posted by ブクログ
初めての作家さん
盛りだくさんな内容、奥さんが鬱に、離婚、自分はリストラ、息子は浪人、友達の紹介で教えている大学では学生が変な道に行きそうになったり、離婚した元妻の介護問題、離れていた老親、失恋、息子が今度は学生なのに子供ができる…
高澤はそこここでちゃんと考え正しい対処をしている ただ、それが一緒に住む家族や付き合う彼女さんにとっては心地よいのかどうかは別部だと考えされられた
Posted by ブクログ
「男の本分は仕事」 それは幸せな人生ですか? 歳月を経て、夫婦がたどり着いた場所。働くとは、結婚とは、幸福とは-。激動する時代の「家族」の物語。
Posted by ブクログ
平成のサラリーマンの挫折とロマンを描く作品…かな(笑)
花形部署にいたサラリーマンが仕事一辺倒で家族を失い、バブル崩壊を経経し、新しい職場で苦労しながらも信頼を得て、若い女性とちょっと恋愛関係になったりして、結局は別れた奥さんとイイ感じで収まるという話。
あっさりとまとめると、こんな感じ。
身も蓋もない説明になってしまうのは、最後に別れた奥さんとイイ感じになって終わるところが好きではないから。
とはいえ篠田節子さん、保険会社の代理店制度や地方の学生が集まらない私立大学の問題点などが描かれており面白いのです。
キラキラしたイメージのある海外駐在も、現実は体調を崩して帰国してしまうご本人や家族も実際にあります。
鬱と間違えてしまう甲状腺の病気とかリアルなんですよね。
後半の介護保険制度については、お得意の分野。
「きっとこれまでに介護に関わったことのない、自分のような男たちが机上で練ったプランに違いない」と主人公に語らせ、介護保険制度をぶった切り痛快です。
Posted by ブクログ
一見普通の人の普通のおじさんの地味なストーリー
…なんだけど、結構恵まれている。
きっとそんなに都合良く仕事決まらないし
ましてや教授なんてなかなかなれないし
別れた妻とまた…なんて展開は
現実の女なら別れた旦那となんて嫌だと思うし。
けど、なかなかジンワリくるものがあって
楽しかった。
将来自分も孤独を味わう事は確実なので
こういう話を読むと少し胸が苦しくなる
Posted by ブクログ
『銀婚式』というタイトルが
読み終えた後になって
じんわりと
心に沁みてくる一冊。
45歳以下には
退屈で理解できない
味わいかなーと。
ひとりの企業人の半生を
淡々と描いていて
離婚や転職などの
転機はあるものの
それほど
波乱万丈というわけでもなく
どんでん返しがあるわけでもなく
でも 同じ組織人として
身につまされたり
共感したり
気がついたら 一気読みでした。
もう 若くはなく
ちょっと くたびれていて
いい大人なのに
悩んだり 躓いたり
でも 確固たる信念を持った
少し不器用な
そして
そんな自分を俯瞰して
思わず笑ってしまえるような
健全なユーモアを持った男性
が 主人公の作品って
なんか いいですよね。
リアリティも大切。
Posted by ブクログ
タイトルから想像した内容とは違ったけれどラストにそのタイトルが染み込むように納得してしまった。真面目なエリート男性の人生中盤からの物語で世代的にははまるけど、目線が男親だから共感よりも、そんなものか、うちの旦那もそうかもな、などと思ってしまった。人生うまくいかない、真面目にやってもどうにもならない時もある。それは1人で生きてるわけじゃないから。その通りだと思う。
Posted by ブクログ
以前読んだことがあるのを失念して、また購入してしまったため再読。
主人公がエリートであるのに、いろいろな理由で転職を繰り返しているのが、我が身と重なり(私はエリートではないが転職を経験しているので)興味深かった。最近親を亡くした経験もあり、親の介護などで戸惑う場面も同感しながら読んだ。
Posted by ブクログ
都立の進学校から国立大学を卒業し、大手証券会社に入社、社内留学を経てMBAを取得後ニューヨーク支店勤務と順風満帆な人生を送っていた高澤が、慣れないアメリカ生活での妻の発病、離婚、会社の経営破綻、再就職、鬱病発症、リストラ、再再就職と都落ちしていく人生の悲哀を描いた長編。
前半は高澤の前向きな生き方に頭がさがるばかり。特に、再就職した中堅損保会社での代理店のおばちゃんたちへの誠実な対応と、再々就職で大学教員になってからの学生への精一杯の教育など、常に目の前の仕事に真摯に向き合う姿勢には清々しさを覚えた。
こうなると再婚もしてほしかったけど、いくら前妻との間に息子がいるからって、離婚したのにここまで前妻の家庭の事情に関与されたら、やっぱり相手の女性もいやよね・・・
元妻の父母の介護に対する頑なさにはほとほとうんざりで、若いうちから大人にならざるを得なかった息子がかわいそうだし、ことあるごとに巻き込まれる高澤も気の毒。
親も死に、息子も巣立ち、独りぼっちになったからってじゃあ、やり直そうか?っていうのがお手軽過ぎてほんと嫌だわ。
ということで、残念ながら終わり方が嫌いです。
Posted by ブクログ
会社が倒産し日本に帰国、転職先では鬱になり離職することになる。その後、大学に仕事先を求めて、人生をやり直す高澤だった。とことん落ちていかないところが、逆にリアリティがあるのかもしれない。妻とは離婚はするが息子を通して、家族の絆が絶えることはない。高澤が再婚せずに、前妻と縁が切れない辺りが、ありそうで読んでいて感情移入できる。篠田節子本にハズレなし
Posted by ブクログ
著者の小説は主人公の状況がこれでもかと言うぐらい悪くなるパターンが多いと思っている。この小説も山一證券をモデルとした大手証券で働く40歳を超えたサラリーマンが、職場も家庭も失い、滑稽なほど転がり落ちていく様は痛快に読み進める。しかし、いつまでたっても状況は好転せず、低空飛行のまま進むのでだんだんと心配になってくる。人生はこんなものだと感じるが、真面目で堅実な主人公の生き方には何かしら共感してしまう。ニューヨークの世界貿易センタービルの電力供給問題でエレベーターが停止し、89階から階段を歩いて降りるくだりがある。同じ経験をした身としては、著者がヒアリングを重ねて小説を組み立てているのがわかる。