篠田節子のレビュー一覧
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小粋な題名に魅かれ、午睡の前のひとときにと、本棚から取り出す。13年ぶりの再読に、すっかり内容は忘れている。
朝日新聞家庭欄に連載されたエッセイとのこと。巻末の、重松清との対談を読むと、著者はエッセイにこだわりがあるそうな。ともかく、日常生活の中で出会ったいい話が詰まった社会はエッセイ。
印象に残ったのが、現在のエンターテイメント小説がもっと海外で翻訳出版され、外に出ていけば、「日本の顔」が外国人にも見え、感情的な反発や理由のない警戒にさらされることが、今より少なくなるのでは、という著者の意見。確かに、工業製品に比べて、文化については、日本はまだまだ輸入大国と言っていい。 -
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男女逆転のカップルの結婚、妊娠、出産にまつわるお話。正直なところ割れ鍋に綴じ蓋、としか思えない。仕事はできるけど、自分自身の面倒もみられな梨香子さんも情けないけど、女ならこうあるべき、という凝り固まった思考の真一君もかなりうっとうしい。
真一君の思考が痛すぎて、粗筋にあるように「コメディ」とは思えなかった。
後書によると、篠田さんはイクメンの子育て体験談に違和感を覚えたことがこの小説を書くきっかけになったらしいので、それを読んで漸く真一君の描かれ方に納得した。
世の中には仕事を言い訳に家事一切妻に任せる男性なんてたぶん沢山いるのに、男女が逆転すると、とたんに世間では異質なものになるのだなあ…… -
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地方で埋もれた画家があるエッセイがきっかけで注目されるようになる。
でも、遺された画家の妻智子はその作品の一部を「偽物」と言い張り画集に掲載するのも、展覧会で展示するのも認めない。
妻の言動が段々と常軌を逸してきて、途中から「これはホラーじゃないよね?」と、困ったお婆ちゃんだと思いながら読んだ。
妻はなぜその作品を「偽物」と主張するのかを巡るミステリーであり、美術品を巡る様々な事情も絡んできて、興味深いけど、あまり先が気にならないのは何故だろう?
最後には画家がブレイクした裏側も明かされ、世の中こんなものなのかもといった、モヤモヤとした感覚が残った。 -
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2014.11.8
すごい作品だった。
宗教、信仰、生と死、人はなぜ生き、生かされているのか…。
終始どんよりと東北の海の色のように暗く重たいテーマで進むこのストーリーを私の稚拙な文章力では書き表せられない。今までに読んだこのとのないジャンルのストーリーでした。
最初にこの本を買った時に思い描いていた話の展開とは全く違っていて、序盤の『聖域』のあらすじ部分は読むのが辛かったけど、中盤から実藤が水名川泉を追って東北に行くあたりで徐々に話が急展開していき、引きこまれていきました。
読み応えのある作品でしたが、ちょっと自分には重たすぎ、なんだかどんよりとしていて読んでて不安になるような小説でした。 -
Posted by ブクログ
しっかりとした知識に裏打ちされ、緻密な描写で読者を引き込む篠田節の一作である。
音楽から最後には登山まで、よく取材されているのは感心する。しかしながらカセットテープを中心に、呪いや謎の怪談じみた超常現象が作品のキーとなるのだが、ちょっとばかり消化不良気味。不倫だの学生運動だの、必要だったかどうかという点については少々疑問が残る。というか、全体的に「駄長」としか言いようのない印象で、長編1冊にするより、1冊に2作ほどの中編にするべきではなかったのか。ここまで長くするのなら、テープの逆回転や学生運動、登山など、必要性に関してもう少ししっかりした理由付けが欲しかった。