篠田節子のレビュー一覧
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長女という立場の3人の女性たちの3つの物語。
「家守娘」では、出戻りの長女が骨粗鬆症を患っている母が認知症まで発症してしまい、その対応に四苦八苦する。
「ファーストレディ」では、糖尿病を患っているのに甘いものを止めず、過去に医者である父の義父母との同居や病院のスタッフとの確執等の恨み辛みを嫁に行かず、母の代わりに父の片腕として奔走する娘が受け止める。
この2つは母と娘の深い溝を感じる。
母と娘でありながら、友達のようであり、母の所有物である長女たち。
どちらも年老いていく母の介護という、重い現実が突き付けられる。
「ミッション」だけは、長女であるが母との確執といったものはなく、父の孤独死という傷を抱えながらも、日本から離れた貧困国での医療に携わる。
そこでの生活は現地で事故死した医師の後を継いでのことであったが、他2人の介護と対照的に、その在り方の是非を問うというか、現在の延命治療に対する疑問というか、何かそんなことを考えさせられる。
2019.6.16 -
Posted by ブクログ
都立の進学校から国立大学を卒業し、大手証券会社に入社、社内留学を経てMBAを取得後ニューヨーク支店勤務と順風満帆な人生を送っていた高澤が、慣れないアメリカ生活での妻の発病、離婚、会社の経営破綻、再就職、鬱病発症、リストラ、再再就職と都落ちしていく人生の悲哀を描いた長編。
前半は高澤の前向きな生き方に頭がさがるばかり。特に、再就職した中堅損保会社での代理店のおばちゃんたちへの誠実な対応と、再々就職で大学教員になってからの学生への精一杯の教育など、常に目の前の仕事に真摯に向き合う姿勢には清々しさを覚えた。
こうなると再婚もしてほしかったけど、いくら前妻との間に息子がいるからって、離婚したのにここまで前妻の家庭の事情に関与されたら、やっぱり相手の女性もいやよね・・・
元妻の父母の介護に対する頑なさにはほとほとうんざりで、若いうちから大人にならざるを得なかった息子がかわいそうだし、ことあるごとに巻き込まれる高澤も気の毒。
親も死に、息子も巣立ち、独りぼっちになったからってじゃあ、やり直そうか?っていうのがお手軽過ぎてほんと嫌だわ。
ということで、残念ながら終わり方が嫌いです。 -
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書店で、帯に惹かれて衝動買い。この作者は初。
イモムシ、もっとはっきり言うと蚕が主人公(?)の
「生物もの」パニック小説。
偶然目にした虹色に輝く絹布を再現するべく、
虹色の絹糸を生む蚕を探す(人間の)主人公。
苦労して見つけた野蚕を繁殖させるべく、
専用の飼育場まで作って入れ込んでいくが...
あまり細かく書くとネタバレになってしまうので(^ ^;
アイディアは悪くない。が、別に新しくもない。
「気色悪いシーン」の描写も悪くない。
が、何か読後感が今ひとつ物足りない(^ ^;
一つは、文体...と言うか、文の「リズム感」。
決して「読みにくい文章」とかではない。
が、最初から最後まで、同じペースで書かれていて、
しかも基本形が「早足」な感じがして...
侘び寂や「深み」が感じられない。
何というか「あらすじ読んでる感」が(^ ^;
普通の部分をもうちょっとテンポダウンして、
パニックシーンでは思い切りハイテンポで、
どきどきするようなシーンはアッチェレランドで、
たまにある「心通わせるシーンは」スローで...と、
リズムの起伏をはっきりさせられると、
もっとそれぞれのシーンが生きてくるのになぁ、と(^ ^;
あと、パンデミック収束の方法も描写も今イチ。
残念ながらあまり印象に残らなかった(^ ^;
主人公と「研究員の女」の関係もはっきりしないし(^ ^;
ラストシーンの「続編への余韻の残し方」も
定番過ぎて何だかなぁ...というのが正直な気持ち(^ ^;
悪くはないが、取り立てて見るべき点もない、感じか。
本作がデビュー作らしいので、その後の作品に期待。 -
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ギリシャのパナリア島を舞台にしたミステリー。全体的に、同じ作者の「廃院のミカエル」にかなり近い。
主人公の亜紀はヴァイオリニストで、建築家の聡史と10数年W不倫の関係を続けている。ある日2人で内緒の旅行に訪れたロンドンで、聡史は海の底から発見されたというヴァイオリンを亜紀に贈る。その後アテネに渡った2人はパナリア島に行くことになり、かつて異教徒たちの都があったホーラにたどり着く…。
ギリシャ語のχώραには都市、栄えている場所という意味があるらしい。パナリア島という場所は知らなかったけどロードス島の近くにあり、ロードス島と同じく騎士団の要塞跡などがあるらしいので一度行ってみたい。 -
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ネタバレ「観覧車」「ソリスト」「灯油の尽きるとき」「戦争の鴨たち」「秋の花火」の5編からなる短編集。
どの物語も短編ながら奥の深い、密度の濃いものになっている。設定も、主人公たちの抱える問題もそれぞれ別物でありながら、行き詰まり、鬱屈しているという点で共通している。
「観覧車」は最後に感じる小さな希望にホッとし、「灯油の・・・」はつらい結末に気分が塞ぐ。
「戦争の・・・」はどこかコミカルでありながら、痛烈に現実をえぐるところが篠田さん的で、タイトルの「鴨」にニヤリ。
そして、秀逸なのが標題作「秋の花火」。秋の花火は夜空に大きく開いて消える夏の花火とちがい、手元で闇を一層際立たせながらそっと横顔を照らす。そんな花火に、ひそかに心を通わせる男女の姿を映す物語は静かで、だからこそドキドキするようなエロスがある。
篠田作品、堪能しました。 -
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2006年に刊行された単行本『夜のジンファンデル』を改題して文庫化。収録されているのは「永久保存」、「ポケットの中の晩餐」、「絆」、「夜のジンファンデル」、「恨み祓い師」、「コミュニティ」の6編。文庫化に当たり表題作を変更したのはどういう意図があってのことか深読みしてしまいます。というのも、ホラーの名手による本作は、「夜のジンファンデル」を除くと、いずれもジワッと嫌な感じ。それが「夜の〜」のみ、あきらかに趣を異にしています。ある男女がダブル不倫に陥りそうになりながらも踏みとどまって50代間近、片方が突然死を迎えてしまうという、切ないと言えば切ない、煮え切らないといえば煮え切らない1編。あとの5編は自信過剰のパワハラ課長、軽度の知的障害を持つ同級生の女性をいわばヤリ逃げした男性、不倫相手への手切れ金として不良物件を押しつけた男、恨みだけで生きながらえてきた老母娘、そして文庫の表題作は「みんな家族」という設定が恐ろしい。これらのなかで異質だった「夜の〜」が控えに回ったのは、そんな切ない話よりも、嫌な話のほうが売りやすいからかと思わずにはいられません。ホラーを想定すればさして怖くもなく、ただ「嫌な感じ」で終わってしまうのが物足りなく嫌な感じ(笑)。篠田節子ならばもう少し読み応えのある長編のほうが私は好きです。