篠田さんの作品って、婚期を逃していると自分で思い込んでいる女性がよく登場しますね・・・。
時代からか、私から見たら「全然OKじゃない?」と思える年齢なのだけれど、時代の流れでしょうか・・。
そしてこの女性の家族もあからさまに結婚してくれることを願っていて、早とちりしてるところが面白かったり。
...続きを読むホラーなんですが、所々笑えてしまうのが、今まで読んだ篠田作品とは異なるかな・・。
このバイオレンス作家の男、美鈴慶一郎の人間性が面白いです。
バイオレンスとは程遠い、おっとりした感じの冴えない男に見えるんだけど、話が進むうちに駄目な部分まで許せる気分になります。
きっと彼が自分に正直で、そんな自分もさらけ出しているからだと思うんですが・・。
そして主人公の谷口葉子は失恋してから化粧気のないお仕事人間になってしまって、男性を寄せ付けない頑なさがあり、仕事ゆえの熱心さから一番いけ好かないタイプのバイオレンス作家と仕事で組むことになるんですが、この二人のやり取りがまたちょっと笑える。
雪を耳に詰め込み、頭を石で打ちつけて失神し凍死した河野珠枝。河野珠枝の生涯を映画化した女性監督もまた謎の自殺を遂げていた。
河野珠枝の描いた「朱鷺飛来図」には怖ろしいもう一つの絵が隠れていて、それに気がついた二人はますますこの絵に関する情報を集めようとする。
そして踏み込んではならない場所へ入って行き・・・
異次元空間に迷い込んだ彼らを襲う、神鳥・・・
それは人によって絶滅の道に追いやられた朱鷺の怨念の世界・・
巨大な鋭い嘴は迷い込んだ二人を狙う。
後半になると、神鳥との戦いや逃避が怖ろしく迫ってきますが、本当の恐怖はその後からなんだな・・と。
精神までも蝕まれそうになる二人がとった方法、それは上手く行くか分からないままに物語は終わります。
気になるラストですが、きっと彼らなら自分たちの問題も含めて、逞しく乗り越えていけるような気がします。
最初は何故河野珠枝が悲惨な死に方をしたのか、映画監督までが何故自殺したのか謎ですが、ラストに近づくと分かってきます。
怖いんだけど、ちょっと面白い場面もありで娯楽性があるのかしらん。
なので、閉塞感はラストまではあまり感じませんでした・・。
きっと良いほうに向くんだろうなと思えるラスト、お互いが支えあえているうちは・・ね。