篠田節子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ホラーというほどホラーじゃない。不気味でも、怖くはありませんでした。
かつての友人が最期に残した一本の音楽テープにより、
テープを託された女性の周りで、不可解な現象が起こります。
過去を振り返りながら、死んだ友人とテープの謎に迫る物語です。
結局あの人は死んでもなお、音楽で何を伝えたかったんだろう。
読み終わっても、読み返しても、それが俺には明確に見えてきません。
カノンを選んだ理由も、俺には謎です。
でもその不思議な名残みたいなものが、良い味を出しているように思えました。
ただ、一種の「完璧」を目指していたことは分かります。
でも俺は、音楽に完璧も何もないと思っています。
だからなのか、 -
Posted by ブクログ
とある編集者が行方不明の小説家の行方を追う、サスペンスです。
いろんな意味で死にたくなりました。
いや、これじゃあ表現がまずいな。
帰りたくなったというか、返りたくなったというか、還りたくなったというか・・・。
失ったもの、敵わないもの、美しいもの、そんなものにすがってしまう。
普段はそんなこと思ってもいないのに、いざ目の前に現れると、抗えない。
嗚呼、人間って弱い生き物なんだなって、登場人物たちの姿を見て思いました。
でもきっと、どんなに強い人でも、弱い部分があるんです。
どんなに隠すのが上手でも、ふとした瞬間ですべてが崩れてしまうこともある。
でも、それでいいんだ。
崩れるなっていう -
Posted by ブクログ
ネタバレ「勝ち組負け組みという言葉があるが、あの町では出て行った者が勝ち組なのだ」 寂れていく一方の町、駒木野。その町を再生しようと、青年クラブのメンバーが奮闘する。あがく彼らを通して、地方の現実を見せ付けられ、胸を痛めて読み続けた。彼らは、そして駒木野はどうなるのか?四次元観光で村おこし!?常識と非常識の間で揺れ動く青年クラブの面々。その中で、いっぷう変わった鏑木という都会から流れてきた青年が、なんだか頼もしくみえてくるのが面白い。
これはもちろん小説だが、実際に日本で産業や観光がない地方が生き残っていくためには、結局原発や産業廃棄物を受け入れるしかないのだろう。そういう現実があることを、思い出させ -
Posted by ブクログ
2008年07月22日 03:53
すべてがいまいちの男が超エリート美人と結婚できることになる。
夢のような話だったが、いざ新婚生活が始まってみると、完璧だったはずの彼女は綻び、穴だらけだった。
ヒステリーがちで、家事はからっきし、その上に子供まで生まれて…
どたばたコメディでありながら、ちょっと考えちゃったとこもあった。
この三流男が「なんで俺が家事を・・男のプライドが・・」などと愚痴りながら炊事洗濯をしているところは一種爽快で、「男の沽券(笑)有能な妻に嫉妬してるだけの下らない男だ」なんて思ったり。
でもこれがすでに差別の始まりなのかもしれない。
だってこの逆は今でも日本の家 -
Posted by ブクログ
美しい虹色の絹織物との出会いから全ては始まった。
篠田さんのデビュー作です。
まさか、こんな内容だったとは、という感じです。
読んでいて背筋のぞわぞわが止まりませんでした。
何故なら、ただでさえ昆虫類が苦手な私なのに、この本には15cm級の蚕が大量に出てくるから。
それも、肉食の蚕。
想像したくないのに、映像が勝手に思い浮かびます。
読み終わってから、あんなに怖い思いをするなら途中で読むのを止めればよかった、と思ったのですが、読んでいる最中は目を離せませんでした。
思い出しても鳥肌が立ちます。
盛り上げておいてラストが尻すぼみになったのが残念。
土産物屋の老女の言葉が、最後に思い出されま -
Posted by ブクログ
サイエンスパニックホラーを得意とする作者の初期の頃の作品。熱帯魚の飼育が趣味という真面目な会社員の青年が遭難したダイビング仲間を探すために、奥多摩の地底湖に潜るところから物語は始まります。主人公の青年が湖の底で遭遇した大きなイルカのような未知の生物。水死した仲間の死因探しからいつしかこの生物の救出作戦へ、そして全ての不幸の根源となった地域開発反対運動へと話は広がっていきます。未知なる生物は、古代からの生き残りかしらとドキドキし、謎の潜む地底湖の自然破壊問題では、環境破壊はここまできたかとハラハラさせられました。水中の世界の描写や熱帯魚とのふれあいの描写に読者である私までもが癒され、「地底湖」と
-
Posted by ブクログ
福祉事務所に勤めるケースワーカー、彼らが担当する様々なケースたち。
虐待、家庭問題、アル中、浮浪者etc・・・
単語を見ると、新聞で目にすることだって珍しくない。
けれどそれらにはみんな、個別の背景があって。
「社会的弱者」が、必ずしも弱いわけじゃないし、ケースワーカーだってそんなに強くない。
登場人物が、「人間」っていう同一線上で描かれている。
実習で生活保護世帯の人たちと接するようになってから見えてきた世界が、この小説からも少し垣間見れた気がします。
それが単に綴られてるのではなく、フィクション小説として織り上げられてる。素敵な織物のような小説でした。