あらすじ
2011年度芸術選奨受賞作家。謎の死を遂げたパンチェンラマ十世が、突然蘇った。卑しい男の魂が転生してしまったのか、この活仏(かつぶつ)は意地汚くて女好き。動くミイラと化したラマは、当局の目を避け、小僧のロプサンを連れてインドへの道を急ぐが……。核の脅威が迫るチベット高原でラマはある行動に出る。(講談社文庫)
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Posted by ブクログ
面白かった!!
笑って、ドキドキして、怒って、ホッとして、考えさせられて、ちょっぴり涙した!!
手塚治虫さんが生きてたら描くのではないかという題材。パンチェンラマ10世のミイラが生き返るというとんでもない話なのだが、現実におきている中国のチベット侵略を批判している。
こんな救世主が現れなくてならないほど、どうしょうもない危機的状況なのかも今の地球。
中国の横暴、日本のテレビ局の情けなさ、放射能問題、食品の安全。
今、しのださんが考えているであろう様々な問題がちりばめられていた。軽い小説の形をした重い内容のおはなしでした。
Posted by ブクログ
実に深刻なチベット弾圧の状況を描いているけど、荒唐無稽で可笑しい。うまい。ただ内容的には作者がチベットを描きたいってのが先行してて人物や設定はそのおまけって印象も否定できないかな。
Posted by ブクログ
パンチェンラマ十世のミイラが蘇るという荒唐無稽な物語の中にチベットの現状を描き込んだスラップスティック・コメディ。
ダライラマやチベット仏教をを扱った本は何冊か読んだけれど、本作を読んで全然わかっていなかったと感じた。たとえば、作中にある〈素のままのチベット人は、今でも勇猛果敢で残酷で、その上狡猾な、厳しい気候に鍛え上げられたとてつもなく強い民族だ。チベット人の苛烈さを封じ込めていた仏法を、共産党はそれとは知らずに破壊してきた。その結果が、今日見たあの騒ぎだ。どれほど弾圧しようと工作しようと、面従腹背で、いつでも敵の寝首をかこうと待ちかまえているのがチベットの民だ〉とか〈時代が違います、猊下。今どき、フリーチベット、ダライラマ万歳を唱えるのは、一部の活動家だけです。普通の人々の心を占めているものは、政治でも信仰でもありません。今日の糧です〉とか読むと今までの〈チベット=弱者、虐げられるだけの存在〉という自分の認識がいかにうすっぺらく、現実味のない考えだったかがわかった。この作品のチベットには血が通っていると感じた。蘇ったパンチェンラマ十世も〈意地汚くモモを食べ、女の尻をなで回し、ペンキで塗られた目をぎらぎらさせて中国共産党と毛沢東への恨みを語り、放射能汚染によって死にかけている移牧民のために激怒〉する、非常に人間的な存在として描かれている。かと思えば物語後半では当局の無謀な計画を防ぐ冷静な奮闘をする聖人らしさをみせる。これは、人間は煩悩があるもの、それにとらわれないことが重要なのだという大乗仏教の真髄ではないかと感じた。
それと、篠田節子の他の著作でも感じることだけれど、著者は超常現象を扱った作品を書きながら本当の意味でそういったことを信じていないのではないか。世の中には何か現代の科学では説明できない不思議なことが数多くあるけれど、それは輪廻転生やあの世や霊魂や神なんかではなくもっと別のものなんだという考えで描いている。それは本作中のパンチェンラマ十世のミイラが、十世から転生したといわれる十一世ゲンドゥン・チュキ・ニマ経由ではなく、十世のパーソナリティをそなえて蘇ったことでもわかる。魂というものがあるかどうかはわからないけれど、もしあったとして、それは別の肉体に転生するものなんかではなく、肉体固有のものなんだという考えがあるからこういう描き方になっているのだと思う。蘇ったパンチェンラマ十世は言う〈私は私だ。生まれたときからずっと私だ。他の人間であってたまるか〉のはそういったことを一行であらわすすばらしい表現だ。
ごちゃごちゃ理屈を書いたけれど、本作の魅力は単純に面白くて笑えるところ。何も考えずに読むよろし。
Posted by ブクログ
金色のミイラがチベットの大地を駆け巡る奇想天外な話。チベット人の厳しい境遇もよくわかり、政治的なくだりも多い。最後は想像を超えたスケールの大きな展開が楽しめる。
Posted by ブクログ
7月-1。3.0点。
チベットの村で、パンチェンラマのミイラに、魂が復活。
寺の小姓と一緒に、中国当局から逃げる。
荒唐無稽な話に見えるが、さすが篠田節子。チベットの時事問題やらに、うまくストーリーを紡いでいく。
一気読み。
宗教系の話がうまいな。
Posted by ブクログ
チベットの状況やラマのことは全く知らなかったので、その状況を知るにはよい本だったが、ストーリーとしてはイマイチ。もっとも、普通に書けば重くなりすぎてしまうかもしれないので、コメディタッチでちょうどいいのかもしれないが。しかし、解説で夢枕獏も書いているが、作者は大丈夫なのか。