あらすじ
遭難したダイビング仲間を探すため、奥多摩の地底湖に潜った正人は複雑に枝分かれした水中洞窟に迷い込む。命綱は切れて酸素の残りもわずか。死を覚悟した正人を出口へと導いたのは、直接頭に入り込んできた“彼女”だった。体の奥に響く衝撃とともに浮かぶイメージ。あれは一体何だったのか。正体を明らかにしようと再び正人はその地へと向かう――。著者の原点となった傑作ファンタジー小説。
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Posted by ブクログ
10年ほど前。
古本屋の一冊百円のコーナーにあり、題名が目に留まり買った。すでに帯もカバーもないのでなんの前情報もないまま読んだのだけど、面白かったので、色んな人に貸した。
どんな話か知っていた方がいい場合もあるけど、何も知らずに読む本はどこに連れて行かれるか未知で面白い。
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地底湖に棲む謎の生物“イクティ”を救え!
ダイビングの最中に突然現れた謎の生物は不可思議なコミュニケーションで正人の意識に入り込んできた。果たしてその正体とは。幻想的な描写を得意とする篠田節子の原点となるファンタジー小説。
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篠田作品の中でも最も印象に残る小説の一つ。表現力がすごいためなのか、洞窟の中にまるで自分も入ったような不思議な体験をしてしまった。(篠田作品からそういう影響を良く受けるのだが…) 自分勝手に動いていく主人公の狂気にも吸い込まれて一気に読める。
好みの作品です。
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友人を亡くした奥多摩の地底湖で謎の生き物と出会い、そこから環境活動団体に参加し…という話。
前半と中盤と後半の雰囲気が全然違うので飽きないまま先が気になってほぼ一気読み。
暗い地底湖は読んでて息苦しさを感じるけれど、そこでの不思議な体験の描写がとても好きだった。
篠田節子さんの描く、ちょっと不安にもなる美しく不思議な体験にとても惹かれる。
読書がつらい時期でも篠田節子さんの物語は読めるので他のも読みたい。
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スーパー林道が、
東京と山梨の接点で開発される。
その中における「環境を守る。」ということは、
重要なことであるが、
その運動の質はいかなるものか?
環境を守るためには、シンボルがいる。
内封性クジラがいた。
目がなく、白色化し、内蔵まで見える。
「不思議な力」を持ち、
人間とコミュニケートできる。
人間の持つイメージに対応する。
想像力によって、コミュニケートすることができる。
教育委員会に勤める、
日頃まじめだった青年のひょっとした
アクアラング仲間の洞窟での死。
そこから引き寄せられた。
そして、環境を守る運動に巻き込まれる。
「澪」のイメージ、
シルクウッド、想像力としての女性。
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遭難したダイビング仲間の遺体の捜索をその恋人から頼まれて、奥多摩の地底湖に潜った主人公は、そこで不思議な生物と遭遇する。どうやらその場所に閉じ込められたまま独自の進化(いや変異、特殊化か)を遂げた哺乳類であるらしい。うーむ、じつに魅力的な設定ですね。サスペンス・ファンタジーと銘打ってありますけど、どうだろう。ぼくはハードボイルドだと思って楽しんだんだけど。「地球にやさしい」というぼくはあまり好きじゃない文句があるんだけど、この物語を読んでいると、いったい自然て何なんだろうと考えさせられてしまう。人間のあがきなんてじつにちっぽけなものにすぎないですよね。「地球にやさしい」ってのは、どうにも人間中心的なんだな。人間だって地球の一部なんだから、自然と人間を対極のところに位置づけるのはどうかと思う。こういうすばらしい物語を読んで、自分というものの位置を改めて考えてみるのはよいことではないでしょうか。
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物語の焦点や世界観が度々変わり、思いもよらない結末になったため不思議な気持ちになった。幻想小説のような雰囲気を出しながらもリアルな泥臭い社会の現実を描き出している点に独自性を感じた。私が幻想小説が好きなこともあるのかもしれないが、物語めいた結末を予想していたため面食らった。主人公のその後を思うとやりきれない思いはあるものの、結末に向かうにつれスピード感も増し話に引き込まれていったことは確かである。作者の他作品も読んでみたいと思った。古本屋でたまたま手に取った本だが、よい出会いだった。
Posted by ブクログ
熱帯魚趣味のオタクな公務員正人が、ケイブダイビングの友人の死の探索に行った事から、不思議な生物と出会い捕われて行く。少し不気味な香のする、環境問題をも扱った、一人の戦い。
Posted by ブクログ
森の中の地底湖に、一人で友人の死体を探しに行くという設定からして最高に怖い。真っ暗な水の中での一挙一動と心理状態の描写に病みつきになった。お気に入りの一冊。
友人の死因はあえて答えを2通り用意しているのだろうか。藪のなかみたいな感じで。イクティに謎を残すために。私はそういうのは好きでないな。
後半の自然愛護騒動についても、大衆のおろかさは指摘できるけど、じゃあどうすればいいかは見えてない、みたいな作者のたち位置が嫌。この作者の本は他には3冊しか読んでいないが、それらもそう感じた。でも好きだから読む。
Posted by ブクログ
最初は正人と友人とその彼女の三角関係(片思いだけど)のお話なのかと思ったら、話はだんだん全く違う方向へ・・・。
知的生命体との遭遇・交流・そして恋?
でもその実体は私からしたらグロテスクなんですが、水槽で魚を飼って、それをこよなく愛している正人にとっては全然OKなんだね・・。
しかもその生命体は脳に直接コンタクトしてくる・・美しい女性の姿で。
結局のところ、この生命体「イクティ」が一体何を考えてどうしたかったのか全く分からないんだけど、正人は「イクティ」を愛するあまり、イクティを守るためならなんでもすると言う常軌を逸した方向へ走り出していくんだなぁ・・。
ある意味、こういった偏執的な男は客観的に見たら引くよね。
でも彼の心の中は意外と純粋なんだな・・。
逆に彼の、自分への恋心を利用して、可憐な姿をしながら思い通りに正人を使おうとする友人の恋人、澪の方が醜悪な感じに取れる。
しかも、地底湖で行方不明の恋人を危険だと知りながら正人に捜索させて、恋人の遺体を発見させたら、「ようやく気持ちの整理がついたの」って、もう違う男の元へ。ええー!そんな・・正人は確かにちょっとキモいところがあるかもだけど、それはないんじゃない~。
ちょっと期待を持たせる素振りまでしておいて・・。
だから正人は穏やかな気分にさせてくれる「イクティ」に恋心が芽生えちゃう?
見た目はグロイけど、受け入れてくれた「イクティ」に・・。
ここまではわりと幻想的なのに、後半からがらっと話の雰囲気が変わってしまいます。
知的生命体「イクティ」の棲む地底湖がトンネル工事・開発によって汚染され、水位が下がり、それが原因で「イクティ」が弱り始めると、正人はいつもなら絶対相手にしない怪しい団体にまで関わって、トンネル工事の阻止を図ろうとする。けれどその計画は色々政治的にも、そして地方の利益も絡んで、このままではどうにも出来ないと分かっていく正人。
工事反対を掲げる団体も、反対と騒げばお金が流れ込むと思っているような感じで、正人はついに一人でテロを起こすことを決意する・・。
この辺はあの幻想的な前半とは違って、バイオレンス?!
そして、爆弾を作っているところに、ひょっこり現れる澪、てっきり男と別れて正人と恋?って思ったら全く違って、正人のプライドをズタズタにすることをこの期に及んで・・。お~い・・
この女、本当に「女」の嫌な部分の象徴みたいだなぁ・・・。同属嫌悪かも・・。苦笑
でも男性からは、はかなく見えて惹かれるんだろうなぁ・・・このタイプ。俺がついてやらなきゃみたいな・・・苦笑
そして何かと手助けをしてくれた冴えない事務員の女性、伊丹の存在。
最後らへんはこの伊丹がカッコいいー!
情けない正人に強い女伊丹・・。
このコンビの行く先は・・・・
最後でどうなっちゃうの?って思うけれど、なんだか伊丹が頼もしくて、何とかなるかもって思っちゃう。笑
前半と後半がこんなに雰囲気が違うとは・・・
それはそれでいいか・・。
「イクティ」や死体を食う魚たちの描写が生々しくて、目に浮かぶようです・・
そう言う表現、巧いですね篠田さんは・・。
Posted by ブクログ
あっという間に読めてしまいました。奥多摩の地底湖で25年前に行方不明になった学生の話がヒントになったのかな。最近発見されて又話題になりましたよね。
Posted by ブクログ
サイエンスパニックホラーを得意とする作者の初期の頃の作品。熱帯魚の飼育が趣味という真面目な会社員の青年が遭難したダイビング仲間を探すために、奥多摩の地底湖に潜るところから物語は始まります。主人公の青年が湖の底で遭遇した大きなイルカのような未知の生物。水死した仲間の死因探しからいつしかこの生物の救出作戦へ、そして全ての不幸の根源となった地域開発反対運動へと話は広がっていきます。未知なる生物は、古代からの生き残りかしらとドキドキし、謎の潜む地底湖の自然破壊問題では、環境破壊はここまできたかとハラハラさせられました。水中の世界の描写や熱帯魚とのふれあいの描写に読者である私までもが癒され、「地底湖」という言葉に幼少期の頃の冒険心を思い起こさせられた小説です。
Posted by ブクログ
日常系ともファンタジー系ともいえる日常と非日常の境目。
主人公正人が、ある生物を守るため過激派環境保護を展開!
伏線の回収が下手、ってか回収されないまま終わってしまった。
ストーリーの骨組みからして、不確かなものを題材にしている以上、
あやふやに終わらせるしかないか。