あらすじ
遭難したダイビング仲間を探すため、奥多摩の地底湖に潜った正人は複雑に枝分かれした水中洞窟に迷い込む。命綱は切れて酸素の残りもわずか。死を覚悟した正人を出口へと導いたのは、直接頭に入り込んできた“彼女”だった。体の奥に響く衝撃とともに浮かぶイメージ。あれは一体何だったのか。正体を明らかにしようと再び正人はその地へと向かう――。著者の原点となった傑作ファンタジー小説。
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Posted by ブクログ
森の中の地底湖に、一人で友人の死体を探しに行くという設定からして最高に怖い。真っ暗な水の中での一挙一動と心理状態の描写に病みつきになった。お気に入りの一冊。
友人の死因はあえて答えを2通り用意しているのだろうか。藪のなかみたいな感じで。イクティに謎を残すために。私はそういうのは好きでないな。
後半の自然愛護騒動についても、大衆のおろかさは指摘できるけど、じゃあどうすればいいかは見えてない、みたいな作者のたち位置が嫌。この作者の本は他には3冊しか読んでいないが、それらもそう感じた。でも好きだから読む。
Posted by ブクログ
最初は正人と友人とその彼女の三角関係(片思いだけど)のお話なのかと思ったら、話はだんだん全く違う方向へ・・・。
知的生命体との遭遇・交流・そして恋?
でもその実体は私からしたらグロテスクなんですが、水槽で魚を飼って、それをこよなく愛している正人にとっては全然OKなんだね・・。
しかもその生命体は脳に直接コンタクトしてくる・・美しい女性の姿で。
結局のところ、この生命体「イクティ」が一体何を考えてどうしたかったのか全く分からないんだけど、正人は「イクティ」を愛するあまり、イクティを守るためならなんでもすると言う常軌を逸した方向へ走り出していくんだなぁ・・。
ある意味、こういった偏執的な男は客観的に見たら引くよね。
でも彼の心の中は意外と純粋なんだな・・。
逆に彼の、自分への恋心を利用して、可憐な姿をしながら思い通りに正人を使おうとする友人の恋人、澪の方が醜悪な感じに取れる。
しかも、地底湖で行方不明の恋人を危険だと知りながら正人に捜索させて、恋人の遺体を発見させたら、「ようやく気持ちの整理がついたの」って、もう違う男の元へ。ええー!そんな・・正人は確かにちょっとキモいところがあるかもだけど、それはないんじゃない~。
ちょっと期待を持たせる素振りまでしておいて・・。
だから正人は穏やかな気分にさせてくれる「イクティ」に恋心が芽生えちゃう?
見た目はグロイけど、受け入れてくれた「イクティ」に・・。
ここまではわりと幻想的なのに、後半からがらっと話の雰囲気が変わってしまいます。
知的生命体「イクティ」の棲む地底湖がトンネル工事・開発によって汚染され、水位が下がり、それが原因で「イクティ」が弱り始めると、正人はいつもなら絶対相手にしない怪しい団体にまで関わって、トンネル工事の阻止を図ろうとする。けれどその計画は色々政治的にも、そして地方の利益も絡んで、このままではどうにも出来ないと分かっていく正人。
工事反対を掲げる団体も、反対と騒げばお金が流れ込むと思っているような感じで、正人はついに一人でテロを起こすことを決意する・・。
この辺はあの幻想的な前半とは違って、バイオレンス?!
そして、爆弾を作っているところに、ひょっこり現れる澪、てっきり男と別れて正人と恋?って思ったら全く違って、正人のプライドをズタズタにすることをこの期に及んで・・。お~い・・
この女、本当に「女」の嫌な部分の象徴みたいだなぁ・・・。同属嫌悪かも・・。苦笑
でも男性からは、はかなく見えて惹かれるんだろうなぁ・・・このタイプ。俺がついてやらなきゃみたいな・・・苦笑
そして何かと手助けをしてくれた冴えない事務員の女性、伊丹の存在。
最後らへんはこの伊丹がカッコいいー!
情けない正人に強い女伊丹・・。
このコンビの行く先は・・・・
最後でどうなっちゃうの?って思うけれど、なんだか伊丹が頼もしくて、何とかなるかもって思っちゃう。笑
前半と後半がこんなに雰囲気が違うとは・・・
それはそれでいいか・・。
「イクティ」や死体を食う魚たちの描写が生々しくて、目に浮かぶようです・・
そう言う表現、巧いですね篠田さんは・・。