篠田節子のレビュー一覧
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ネタバレある人物として長年過ごしてきた人が実は違う人だったということが判明し、その足跡を辿り来し方を紐解いてゆく…という、類型の1つといっても差し支えないパターンを踏みながら、そこはさすがの筆力でぐいっと読者を引っ張っていく。
"女性"を描くという点においては人後に落ちぬ著者であるが、今作においてもそれが遺憾なく発揮されている。
そしてこれは、同性である女性にしか書けない小説であろうとも、同時に思う。
また、アジアの猥雑な街をリアルに描写する技術もまた、多数の作品で感じられる著者一流のものであり、ひりつくようなマニラの熱気がぶわっと襲い掛かってくるようだ。
骨子たるプロットについ -
Posted by ブクログ
けっこう努力して辛抱して読破しました。が、あまり報われた気がしない。
題材的にも心惹かれるものがあったのですが、冗長?すぎて。
あぁ、こうやって闇に消えていく本物の遺跡もあれば、
地元住民のメシの種にするため、デッチ上げに近いような遺跡もある。
その遺跡の発掘、保護にそれぞれの思惑で関わる3人の日本人。
出自や歴史もろもろで対立する地元の住民たち。
それぞれ魅力的な設定だし、エピソードなんだけど、なんか散漫なかんじで。
やっぱ主人公のカモヤンに、いまひとつ魅力を覚えないからかな。
スペック高いんだけど、どこか傲慢なカン違い野郎。
もうちょっと魅力的な人物に仕立てても良かったんじゃ、と思いま -
Posted by ブクログ
ネタバレ失業者の正彦と矢口は金儲けのために教団「聖泉真法会」を立ち上げる。似非教祖側を描く小説はお初かも…面白いです。
ビジネスとして宗教をやる彼らの教団には悩める女性たちや生きづらい系の若者が集まってたけど、元役人の性なのか一歩引いてて教祖っぽい事を言いつつ内心ツッコんでる正彦とお人好しの矢口には「似非宗教」という自覚があるからか、「〇〇しないと地獄に堕ちる」等の脅しをしない。寧ろ信者がこの方向のこと言ってて、正彦と矢口は行政に繋いだりと冷静な対応しています。
そのうちに食品会社社長というビッグな信者が出来てトントン拍子か…と思ったら、宗教ビジネスにたかってくる面々できな臭くなってきてラスト遂に…! -
Posted by ブクログ
篠田節子さんは初読みの作家さん
男性心理をメインに描いた作品で大人のディープな世界観だった。
『冬の光』
東日本大震災のボランティア後に、四国遍路を終えた帰路フェリーから冬の海に忽然と消えた父
高度成長期の真っ只中で企業戦士として働き、専業主婦の妻に家庭を任せ順風満帆だったはずの父
何故、父は帰らぬ人となったのか・・・
物語は、四十年にも及ぶ父とその愛人との繋がりと、長年裏切られた憎しみと恨みを抱えた母、
その影響を受けた姉妹の関係性が軸になっている。
父の死がどこか釈然としない次女の碧は、数日間の休暇を使って父の最期の旅路に出掛ける。そこに過去の父の経験が重なる形で物語は進行する。
感 -
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ダイビングのために訪れたインドネシアにある小島で、海中に聳え立つ仏塔を発見する。
これは遺跡なのか?
加茂川一正は、大手ゼネコン会社を早期退職し、非常勤講師となった今、一回り若い静岡海洋大学の准教授・藤井とリベラルアーツ系海洋学群海洋文明研究科特任教授・人見淳子と共に本格的な調査に向かう。
宗教と信仰の制限の多いなか、すんなりと調査は進まない。
次々と障壁が立ち塞がるなか、果たしてその仏塔の真偽は⁇
部族同士の諍いや何かにつけて祟られるという不穏な空気や閉塞感に読み進めるのも少々疲れる。
冒険譚といえるのかもしれないが、3人の逞しさには脱帽した。