篠田節子のレビュー一覧

  • コミュニティ
    2006年に刊行された単行本『夜のジンファンデル』を改題して文庫化。収録されているのは「永久保存」、「ポケットの中の晩餐」、「絆」、「夜のジンファンデル」、「恨み祓い師」、「コミュニティ」の6編。文庫化に当たり表題作を変更したのはどういう意図があってのことか深読みしてしまいます。というのも、ホラーの...続きを読む
  • 家鳴り
    篠田さんのホラーは突発的な怖さではなく、こころの底にある恐怖をじわじわと突きつけられてくるような不気味さを伴う。
    幻の穀物危機、やどかり、操作手、春の便り、家鳴り、水球、青らむ空のうつろのなかに、の8編が収録されている短編集だか、どれも全く違う方向から視線を当てられていることに驚く。中でも気になった...続きを読む
  • 銀婚式(新潮文庫)
    著者の小説は主人公の状況がこれでもかと言うぐらい悪くなるパターンが多いと思っている。この小説も山一證券をモデルとした大手証券で働く40歳を超えたサラリーマンが、職場も家庭も失い、滑稽なほど転がり落ちていく様は痛快に読み進める。しかし、いつまでたっても状況は好転せず、低空飛行のまま進むのでだんだんと心...続きを読む
  • 廃院のミカエル
    面白くはあったが、少し物足りなくもあり。いつも楽しまさせてくれる著者の作品ということで、期待値が高すぎたかも。
  • 死神
    市の福祉事務所のケースワーカーの連作短編 8つの話
    一応解決するけれど、その後は大丈夫なのか?と思うような終わり方
    『花道』はイラッとする人が多かった男に寄生して生きていく綾。ひょんなことから、ケースワーカーの赤倉は自分のダンナを綾に取られてしまう、でも、結局赤倉のダンナの仕事が危うくなると、働き...続きを読む
  • 秋の花火
    閉鎖した日常に訪れる転機を、繊細な筆致で描く短編集…

    まさしくその通りの5つの話。
    「秋の花火」はオトナの静かだけど胸が苦しくなるような切なさを感じた。
  • 神の座 ゴサインタン
    篠田節子さんの本を読みあさって何冊目か。チベット辺りの宗教的な内容と、何もかも失って行く、追いつめられて行くような定型パターン。
    「弥勒」と似ている感じもするし、「仮装儀礼」にも似ている気がする。
    そして私は今回の物語は最終的には純愛じゃないかなと解釈した。

    ちょっと違うパターンも読んでみたいもの...続きを読む
  • はぐれ猿は熱帯雨林の夢を見るか
    ユーモアと皮肉をほどよく効かせた現代と地続きの近未来を描いたSF短編集。著者の引き出しの多さには脱帽。イチ推しは「豚と人骨」。
  • 女たちのジハード
    20160814
    ここ数ヶ月、慣れない仕事に終われ、せっかく買ったこの本も読むのに数ヶ月もかかった。
    久しぶりに纏まったお休みが取れたから、後半から一気に読破。だから、後半部分しか印象に残ってない。

    沙織の、「自分が求めていたものがわかりかけてきた。それは漠然とした英語力でも、キャリアを誇れる仕事...続きを読む
  • レクイエム
     『死神』につづき篠田節子の短編がなかなかか良い。最後の短編『レクイエム』で戦争体験者の老人が語る言葉に「戦友会なんてやって思い出を語れる連中は地獄を見ていない」とある。この老人が語りだす体験談が凄まじいの一言、世の中、数ある恐怖、ホラー小説はあれど史実にはかなわない。
  • 神の座 ゴサインタン
    農家の跡取り息子がネパール人の妻を娶ったことから始まる人生の転換を、宗教や異文化への理解を通して描く物語です。

    主人公が没個性的であるため、読者が世界を見る媒体としての役回りと割り切るまでは読み進めることに苦労しました。

    全体として細部の取材が行き届いていることから確かな現実感あり、主人公が経験...続きを読む
  • 家鳴り
    生まれ育った八王子を、何度も潰した小説家として紹介されていた篠田節子に興味を持ち、読んだ小説が家鳴りだった。幻の穀物危機は何とも気味が悪く、投げ出そうとしたが、読み進むうちにこれまで読んできたものとの異質さを覚えて逆に新鮮な気持ちで読み進むことができた。
  • ハルモニア
     脳に障害を持つ女性が音楽に異常な才能をみせる。サヴァン症候群「知的障害や発達障害などのある者のうち、ごく特定の分野に限って優れた能力を発揮する者の症状を指す」(wiki参照)これを病気と片づけて無視することはできない。それほどに常人では達成できない才能を示す女性が登場する。現実では病気とワンセット...続きを読む
  • インコは戻ってきたか
    内容(「BOOK」データベースより)

    “究極のハイクラス・リゾート東地中海の真珠キプロス島”女性誌の編集部員響子の海外取材は、このキャッチコピーのようにいくはずだった。だが実際は限られた予算と日程をやりくりする、カメラマンとの二人旅。そして風光明媚で文化遺産に恵まれた島は、民族と文化が複雑に交錯す...続きを読む
  • 仮想儀礼(下)(新潮文庫)
     エセ宗教家の末路がこれでよいのか、あの法の華三法行の福永法源などは娑婆に出てきて、性懲りもなく活動再開しているらしいし、大悪人の麻原なんて刑務所で日々脱糞しながら瞑想(迷走)している・・・小説に登場するエセ宗教家は悪人になり切れず、かといって自分がつくった宗教から逃げ出すことができずに自滅するのだ...続きを読む
  • 仮想儀礼(上)(新潮文庫)
     禍々しい宗教家の誕生秘話ではない。突然、神の声を聞き教祖になったという話ではなく、普通の人がビジネスで宗教を起こして成功するという小説である。普通といっても元ゲーム作家というところが現代っぽい(笑
  • 寄り道ビアホール
    小粋な題名に魅かれ、午睡の前のひとときにと、本棚から取り出す。13年ぶりの再読に、すっかり内容は忘れている。
    朝日新聞家庭欄に連載されたエッセイとのこと。巻末の、重松清との対談を読むと、著者はエッセイにこだわりがあるそうな。ともかく、日常生活の中で出会ったいい話が詰まった社会はエッセイ。
    印象に残っ...続きを読む
  • 百年の恋
    男女逆転のカップルの結婚、妊娠、出産にまつわるお話。正直なところ割れ鍋に綴じ蓋、としか思えない。仕事はできるけど、自分自身の面倒もみられな梨香子さんも情けないけど、女ならこうあるべき、という凝り固まった思考の真一君もかなりうっとうしい。
    真一君の思考が痛すぎて、粗筋にあるように「コメディ」とは思えな...続きを読む
  • 夏の災厄
    いわゆるドラマティックな大仕掛けがあるわけでなく、
    わりと静かに淡々とハザードが進行していく。
    これが妙にリアルで怖い。
    ほんとに蚊に刺されると一瞬ドキッと
    したりしなかったり。

    なんか盛り上がんないな~
    と思ってた前半が嘘のよう。
  • 沈黙の画布(新潮文庫)
    地方で埋もれた画家があるエッセイがきっかけで注目されるようになる。
    でも、遺された画家の妻智子はその作品の一部を「偽物」と言い張り画集に掲載するのも、展覧会で展示するのも認めない。
    妻の言動が段々と常軌を逸してきて、途中から「これはホラーじゃないよね?」と、困ったお婆ちゃんだと思いながら読んだ。
    ...続きを読む