篠田節子のレビュー一覧

  • 仮想儀礼(下)(新潮文庫)
     ビジネスとして立ち上げた新興宗教。あくまでも虚実でしかなかったはずのそれが、底なし沼のように主人公を呑み込んでいく。

     主人公は一般人としての常識や良心、倫理観を持ったまま、宗教の狂気をまざまざと見せ付けられる。

     宗教とは、救いとは何なのか。

     傑作。
  • 仮想儀礼(上)(新潮文庫)
     泡のような夢のために仕事も過程も失った男が、ビジネスとして新興宗教を立ち上げる。

     主人公は善人ではないが、悪人とまではいかない。あくまでビジネスではじめたはずの『宗教』という虚実に引き摺られ、足を取られて破滅へと転がっていく。
  • 神鳥(イビス)
    相変わらず篠田節子の作品は面白い。ちょっと強引かと思う展開もあったものの、ぐいぐいと引きこまれていく。朱鷺の生態を含めて無知だったので、合わせて写真を見たり百科事典で調べたりして勉強になった。
  • ハルモニア
    脳に障害をもつ由希が奏でる
    超人的なチェロの調べ。
    指導を頼まれた中堅演奏家・東野は
    その天才的な才能に圧倒されます。
    名演奏を自在に“再現”する才能を持つ由希に足りないのは、
    “自分自身の音楽”。
    彼女の演奏に何とか魂を吹き込もうとする東野の周りでは、
    次々と不可解な事件が起こり始めます。
    音楽に...続きを読む
  • 死都 ホーラ
    ホーラという町が現実にあるかのように思えた。
    解説を読んでフィクションだと分かったが、リアルな背景や描写に行ってみたいと思わせる魅力がある。
    篠田節子らしい人間の生々しい感じが良い。
  • 聖域
    偶然手に入れた「聖域」という未完の小説に魅せられた出版社の編集者が、作品を完成させるために、消息不明の作者を追うと...というサスペンス小説。
    主人公には、今ひとつ感情移入できなかったが、先を読ませない展開で、ストーリーを追うだけでもなかなか面白かった。
  • 神の座 ゴサインタン
    ゴサインタンとはネパール語で「神の座」の意味で、チベットでいうところのシシャパンマ峰のことである。
    私は、シシャパンマはベースキャンプまで行ったことがあるので、そう言う意味ではとても気になる小説だった。

    日本の農業(とその嫁問題)、宗教感などに踏みこんだとても重い作品となっている。
  • 死神
    短篇の連作。ケースワーカーが遭遇する「弱者」のあれこれ。
    重く、時に滑稽で、身も蓋もなくて。でも最後の一編には、したたかな希望を感じます。
    読むのに少々エネルギーが要りますが、時々無性に読みたくなる作家です。
  • ハルモニア
    筆者は作品ごとに新しい世界を見せてくれるが、これもかなり現実離れしているのに妙なリアル感がある。飛躍した描写もすんなり受け入れられた。
  • 神の座 ゴサインタン
    すべてを失った男の再生の物語。

    読ませる文章がさすが。

    人間って、すべてを失わないと救われないのかな、ってちょっと思った。
  • ハルモニア
    2010年1月25日購入

    超能力物はちょっと苦手である。

    こうだったらよかったのになあ、と思うことはあるがネタバレになるので触れないでおこう。

    なにはともあれぐっと物語に入って一気に読めた。
  • 神鳥(イビス)
    朱鷺が人を襲う、その発想がまず凄い。
    近年の彼女の秀作たちに比べると、正直中身には少々古臭さを感じるし、キャラクター設定や彼らが交わすやりとりの描写なんかはそれほど巧いとは思わないが、それでも読者を捉まえて離さない、抜群の読みやすさを誇る筆致はさすが。

    文庫版巻末の解説になっていない解説はちょっと...続きを読む
  • コンタクト・ゾーン(上)
    この著者は『女たちのジハード』で直木賞を受賞している。
    『女たちのジハード』は同僚が次々と寿退社していく中での売れ残ってたOL5人の生き様を連作長編小説の形式で描いた作品で、女だというだけで男の身勝手さの中で生きていかなければならない逞しさが描かれて元気を貰えるような小説だった。
    本作『コンタクト・...続きを読む
  • ロズウェルなんか知らない
    篠田氏らしい、途中からグイグイと引き込まれて最後まで一気に読める話で面白かったです。最後も何だかすっきり。
    主人公の最後の「開き直り」がいい。
    それと旅館「きぬたや」の女将さんがいいキャラをしてました。
  • 百年の恋
    結婚って違うひとりとひとりが
    ひとつになって
    ひとつになれなくて
    でも一緒にいて
    その中で見えてくるものがあるんだと思う。
    それが結婚だと思う。
  • 贋作師
    学生時代に模写にかけてはずば抜けていた主人公の女性。
    が、自分のものとしての芸術を残すことについての疑問を持っていた。
    そして、同じような気持ちを持っていた男性と出会ったが、
    彼は有名な画家に弟子入りをするとして、彼女の元から姿を消した。
    二十年近く後、彼女は修復師として彼が弟子入りをしていた画家の...続きを読む
  • 絹の変容
    すばる新人賞を受賞した作品。
    芋虫嫌いの自分には背筋がおぞぞ…とするものでした。
    描写がリアルなので鮮明に映像を思い描いてしまう。
    篠田節子の特長です。
    最後が若干尻すぼみに終わってしまうけれど、矛盾の無さはいいです。
    虹を浮かび上がらせる羽織は着てみたいけれどそれで死ぬのやだな…。
  • ロズウェルなんか知らない

    スキー場があった頃には人が来ていたのだが・・・。
    東京から近いわけではなく遠い所でもない駒木野町。
    高速道路は、隣の町に入り口があり鉄道の駅もバスで30分以上の所にあって交通の便も悪い。
    温泉が出るわけではなく、歴史があるわけどもなく名所が無い。
    スキー場が撤退して観光客が途絶えた過疎の町...続きを読む
  • カノン
    音楽教師の瑞穂は、夫と一人の子供と毎日を忙しく過ごしていた。ある日、瑞穂に一本の電話がかかってきた。大学時代からの付き合いがある正寛からで「香西が死んだ・・」と・・・。
    自殺した葛西康臣は、瑞穂が大学時代に出合った人だった。

    康臣との出会いは、大学時代のサークルの集まりのオーケストラの合宿だっ...続きを読む
  • 死神
    『女たちのジハード』と同じように,同じ福祉事務所に勤める人々の視点をうつりながらケースワーカーという仕事を見る。
    人間が生きていくということ,お金がないということはきれいごとじゃ済まされない苦労が存在するということが分かった。