篠田節子のレビュー一覧
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これが篠田節子の原点かと思うと、「意外」と「さもありなん」が交錯する。
前半と後半で、まったく別の物語になってしまう展開を「破綻している」と見るか「ダイナミック」と見るかで評価は変わるだろうが、一つだけはっきり言えるのは、これは確信犯的なストーリー展開であり、そこに異様なまでの迫力が存在しているという事だろう。「美へのこだわり」や「自然の尊厳」といった、後の篠田作品で扱われる様々なテーマの萌芽が見えるのも面白い。
こうしてみると「絹の変容」とはなんと卓越したタイトルであることか。まさしく篠田節子はという作家は、一作ごとに「変容」して来ているのである。 -
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上巻では、トントン拍子に成長していく教団の姿が書かれていましたが、下巻では一転。ドンドン転落していきます。
適当にでっち上げた宗教。
それが次第に一人歩きし始め、そして教祖・慧海の手には負えなくなって行く様子が見事ですね~。
宗教って、信仰って何なんだろう?と考えさせられます。
教祖以上に教えを信じ込む女性信者たち・・・
信じる者は強く・恐ろしい。
とにかく下巻は圧巻でした。
暴走する信者・それを客観的に眺める教祖・世間からはカルト教団の烙印を押され弾圧される・押しかける信者の関係者。
すごく怖いです。
やはり下手なホラーよりも一番怖いのは人間だ、と再認識させられる怖さ。
そして暴走す -
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日常生活が、ふとしたことからズレていく。ずれは思いもかけない方向に進み加速度を増す。気がつくとまったく違ってしまった自分と家族と日常になってしまっている。そんな静かな恐怖を描いた短編7作。
中でも「幻の穀物危機」が鋭い。幼い子と妻と3人、脱サラをして山梨のペンション村に引っ越して喫茶店を営む主人公。周りには穀物危機が来ると信じて疑わない同じ脱サラ組の農業者もいる。そんある日東京西部で大きな地震が起き続々と東京から難民がやってくる。生活機能がマヒし食糧が手に入らなくなったのだ。それは東京のみならず県都の甲府でも起きていた。そして田舎にいながら農地を持たない主人公も食べ物が底をつく。穀物危機は外 -
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スーパー林道が、
東京と山梨の接点で開発される。
その中における「環境を守る。」ということは、
重要なことであるが、
その運動の質はいかなるものか?
環境を守るためには、シンボルがいる。
内封性クジラがいた。
目がなく、白色化し、内蔵まで見える。
「不思議な力」を持ち、
人間とコミュニケートできる。
人間の持つイメージに対応する。
想像力によって、コミュニケートすることができる。
教育委員会に勤める、
日頃まじめだった青年のひょっとした
アクアラング仲間の洞窟での死。
そこから引き寄せられた。
そして、環境を守る運動に巻き込まれる。
「澪」のイメージ、
シルクウッド、想像力としての女性。 -
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篠田さんお得意の人間ホラー短編集。
『幻の穀物危機』
東京西部で大地震が発生し、生き残ろうとする人々が理性を失っていく様子を描いたパニック小説。
主人公は地震前に東京を離れ、別荘地(長野あたり?)でパン屋を営む男。
極端な話だと笑えないのが恐ろしい。
でも集団パニックを防ぐ方法ってないよなと途方に暮れてしまう。。
『やどかり』
教育センターで相談員を務める男が、家庭に問題のある少女と関わりを持ったことで破滅に進んでいく話。
主人公は愚かだけれど、だんだん追い詰められていく過程が恐ろしい。
オチはもっと最悪のものを想像していたから少々意外な形だった。
『操作手』
姑の介護をする主人公のもと -
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信者の家族、マスコミ、国家権力によって追い詰められた聖泉真法会は次第に瓦解、暴走してゆく。様々な追及、いやがらせによって教祖と信者たちは狂気にむかってゆく。そして、あまりにもおぞましい事件が起こる…。
この小説を読んでいて、登場人物に共感出来たことがなかった。あまりにも恐ろしく、醜く、そして弱かった。しかし、彼らは決して珍しい人たちではないと思った。このレビューを書いている俺も、聖泉真法会の教祖や信者、彼らを追い詰める独善的で残忍な人たちと同じ要素を持っているのかも知れない。彼らは少し前まで、「普通の人たち」だったのだから。宗教というのは、それに関わる人の運命を多かれ少なかれ変えてしまうも -
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人生の敗者となったふたりの男は、金儲けのための教団「聖泉真法会」を設立して再起をはかる。金だけを目当てにした教団には次々と信者が集まり、教団はふたりの予想を超えて巨大化してゆく。しかし、巨大化した教団を食い物にしようと、おぞましい人間たちが群がりはじめる…。
神聖なものであるはずの宗教が世俗的な欲望に彩られている。聖泉真法会は人間の絶望と欲望のかたまりだ。主人公は極めてビジネス的な視点で教団運営を図る。宗教というのは、ビジネスにとって最高のフィールドらしい。完全にビジネス化した聖泉真法会に救いを求め、実際に心の平安を得る信者も存在する。その信者にとって聖泉真法会はかけがえのない存在である。 -
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『聖域』『ゴサインタン』『弥勒』の宗教三部作に続く第四弾!ゴサイ~が僻村に嫁入りしたネパール人妻が神懸り状態になり自然発生的に教団が形成される過程を描いたのに対し、本作では失業中の男二人がほどほどの金儲けを目的に似非教団を作る。ところが思惑を越え信者の数は増え続け、やがて二人は現代日本の宗教を取り巻く大きなうねりの中に呑み込まれて行く。教祖役は元都庁職員であり、詐欺師にも拘わらず社会常識に長けた堅実な人物として描かれており、物語の目撃者の役割を果たしている。終盤、宗教を食い物にする怪人物登場。読み応え有。
荻原 浩の『砂の王国』が似たような設定らしい。φ(.. )