篠田節子のレビュー一覧

  • 四つの白昼夢

    Posted by ブクログ

    ホラーとファンタジーが無理なく日常に混じって練り上げられている。
    他人から見たらホラーでも、本人にとっては、現実からの幸せな解放だったかもしれず、
    あんな人とは釣り合わない、うまく行ってないに違いないと外野は勝手に思い込んでいるが、ちょっとやっかみが入っていないか、とか。
    ほんとうはしあわせなおはなし。

    『屋根裏の散歩者』
    すぐに連想するのは、江戸川乱歩の同名の小説。
    ボタニカル系の人気イラストレーター祥子は、生活の拠点を自然の中にある郊外の借家に移す。
    庭に自然の植物が繁り、ナチュラル嗜好の祥子の趣味にぴったり。
    ところが夜中に天井裏から、ずるずると何かを引きずる音や、ズシン、という響き。

    0
    2024年07月23日
  • 四つの白昼夢

    Posted by ブクログ

    「屋根裏の散歩者」
    「妻をめとらば才たけて」
    「多肉」
    「遺影」
    四話収録の短編集。

    どの物語も死の空気を纏いつつ、可笑しみと恐怖を感じさせてくれた。

    30代の夫婦が移り住んだ理想の家。
    しかし天井からは、ずるずると何かを引きずるような異音が聞こえて来る。
    その正体はまさかの…。
    確かに『屋根裏の散歩者』だ。

    最もインパクトがあったのは『多肉』。
    多肉植物「アガベ」に魅せられた故に、仕事も家庭も失い堕ちていく男。
    一度は復活の兆しを見せるも、衝撃のラストが待ち構える。
    これはまさにホラー。

    コロナ禍を背景に静謐な筆致で綴られた一冊。

    0
    2024年07月20日
  • ゴサインタン 神の座

    Posted by ブクログ

    知っている田舎の状況と重なって、途中は重苦しい気持ちになりながら最後まであっという間に読み終えた。
    社会も生活もガラリと変わっているのに、輝和の抱える閉塞感が2024年の今にも通じていると感じるのはなぜだろうか…。
    『弥勒』『家鳴り』など他の作品群も読みたい。

    0
    2024年07月17日
  • 女たちのジハード

    Posted by ブクログ

    お気に入りの作品!5人のOLが人生を切り開いてく。特にカッコよくて好きなのが康子。「やればできるのよ。いつも辛いことばかり思い出して後ろ向きに生きてちゃだめ。理由なんてどうだっていい。今やってることを一つ一つカタをつけて実績作っていかなくちゃ」

    0
    2024年07月06日
  • 夏の災厄

    Posted by ブクログ

    刊行されたのは、1995年ということだが、今はいくらか落ち着いた現代のコロナ渦の勃興期を思わせるような作品。
    作家の想像力の凄さを感じさせる。
    埼玉県の郊外の街で、住民が次々に病魔に襲われる。
    日本脳炎と診断されるが、撲滅したはずの伝染病が何故?
    感染イコール発病、ウイルスが体内に入ったら必ず発病してしまうという事態に、異変を気づいた保健センターの職員やベテランの看護師、診療所の医師たちが真相に迫るべく行動を起こすが、彼らはけっしてヒーロー的な活躍をするわけではない。
    次第に無害化するのがウイルスの特徴なのに、このウイルスは進化の仕方がおかしいと、ますます悲惨な状況に。
    隔離、封じ込め、さらに

    0
    2024年06月30日
  • 本からはじまる物語

    Posted by ブクログ

    まだ本を本格的に読み始めたばかりなので、各作家さんの特徴など、自分にとって読みやすかったなどが分かり、これから本を…という人におすすめ!
    本屋を巡る話しはどれも面白かった!

    0
    2024年06月27日
  • 絹の変容

    Posted by ブクログ

    めっちゃ気持ち悪いけど面白かった!巨大蚕が集団で襲ってくるとか嫌すぎるんだが…

    アレルギー・アトピー・喘息を持ってる身としてはすっごい嫌な死に方だわ。読んでて腕がゾワゾワした。

    200ページもないけど大丈夫?って思ったけどサクサク読めて止まらなくなるし、しっかり楽しめた!

    0
    2024年05月24日
  • 神鳥(イビス)

    Posted by ブクログ

    佐渡島に行くことになって、以前読んだこの本を思い出した。
    内容はよく覚えてなかったが、美しくも妖しい朱鷺の飛ぶ姿が心に残っていた。
    実際に島で見た朱鷺は美しく愛らしい鳥だったが、この小説の朱鷺は怪奇で恐ろしい。
    100年前に夭逝した日本画家珠枝の絵に描かれた「朱鷺飛来図」は恐ろしい絵だった。
    珠枝の小説を書こうとする作家と表紙を頼まれたイラストレーター葉子は佐渡から奥多摩へと調査し、恐怖の体験をする。

    0
    2024年05月16日
  • アクアリウム

    Posted by ブクログ

    友人を亡くした奥多摩の地底湖で謎の生き物と出会い、そこから環境活動団体に参加し…という話。
    前半と中盤と後半の雰囲気が全然違うので飽きないまま先が気になってほぼ一気読み。
    暗い地底湖は読んでて息苦しさを感じるけれど、そこでの不思議な体験の描写がとても好きだった。
    篠田節子さんの描く、ちょっと不安にもなる美しく不思議な体験にとても惹かれる。
    読書がつらい時期でも篠田節子さんの物語は読めるので他のも読みたい。

    0
    2024年04月24日
  • 女たちのジハード

    Posted by ブクログ

    結婚がすべてではない今に読むと、90年代ごろの結婚観や文化を知ることができて非常におもしろかった。現代ならセクハラ・パワハラになることのオンパレード。しかしこれがその当時の当たり前。

    三者三様ならぬ四者四様と言おうか、主な登場人物となる女性たちの性格はさまざまで、でも共通しているのは誰かを見下しているというか、無自覚に自己評価が高くある点。

    いろいろなことがある中で、女性たちがそれぞれの道を選んでいく様が丁寧に描かれていて、すっきりとした読後感を得られた。

    0
    2024年04月04日
  • 冬の光

    Posted by ブクログ

    人の考え方ってその人それぞれなんだなぁ、と読んでて考えさせられました。

    初めてこの作家さんの本を読んだけど、描写、ストーリー性、心情の書き方、素敵だと思います。他の本も読んでみたい、そう感じました。

    0
    2024年03月23日
  • 介護のうしろから「がん」が来た!

    Posted by ブクログ

    ☆読む前に知っていたこと
    がん=治らない悲観する病の時代ではなくなりつつある。でもだからといって取っておしまいではないし、術後にも厄介なことはたくさん待ち受けている。
    乳がんの経験がある家族がいるので入院の際お金を払えば個室にできる件や治療の選択肢についてはある程度知っていた。
    ☆知らなかったこと
    介護に関しては無知だった。介護によって自分の身体のことは後回しになってしまうこと、施設はどこもいっぱいで簡単に入れないことは知らなかった。

    ※☆は独自の項目です。

    0
    2024年11月18日
  • 廃院のミカエル

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    オカルトと見せかけてサイエンスに持っていく篠田さんが好きだわ〜。ちょっとビビったけど。
    肺炎?からの黴で安心した…ちゃんと原因があってよかったよう(怖がり

    0
    2024年03月13日
  • ゴサインタン 神の座

    Posted by ブクログ

    20代の頃に「女たちのジハード」を夢中になって読みました。それより前の作品だということを読み終わった後に知りました。
    作品に入り込んでしまいあっという間に読んでしまいましたが、30年前から日本は変わったのかなぁ、、、と考えさせられました。
    時代を超えて読み継がれる作品ですね。

    0
    2024年02月26日
  • 田舎のポルシェ

    Posted by ブクログ

    星4.5
    ロードノベル3編からなる。
    わたしと年齢が近いからか、やはり篠田節子は面白い。どの作品も、平凡に終わったりはしないが、奇をてらうようなストーリーではない。続きが気になり、あっという間に読んでしまった。
    若い人でもおもしろいと思ってくれそう。

    0
    2024年01月30日
  • 田舎のポルシェ

    Posted by ブクログ

    「ポルシェ」「ボルボ」「アリア」と、車名を題名にしたロードノベル中編3作。
    『田舎のポルシェ』は、軽トラックで岐阜から東京、そしてまた岐阜へと高速道路や田舎道をひたすら走る話。
    実家で収穫した150キロの米を運ぶため、助力を依頼した主人公翠の前に現れたのは、坊主頭に紫色のツナギを着た巨漢の男。喉元からは金の鎖が。
    この男との千キロのドライブは、台風が接近し、警察の検問には引っ掛かりと、波瀾万丈の展開が。
    他2作も、それぞれ面白く、読者の心を揺さぶる。

    0
    2024年01月27日
  • 仮想儀礼(下)(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    金儲けのために宗教を始めるには、正彦は真っ当過ぎ、矢口はお人好し過ぎたんだろうな。全てを奪い尽くされてそれでも奪ってこようとするものから逃げる、教祖と幹部と信者5人が辿り着いたところとは。圧巻でした。
    作り上げられた宗教は暴走して教祖の正彦の手には負えなくなり、狂信的な信者たちとの逃避行のなかで正彦も呑み込まれてしまう。
    お人好し矢口の最期は凄かった…それを菩薩行、と錯覚してもおかしくない極限状態で正彦は真の宗教家になってしまいました。
    マスゴミか、と思ってたルポライターの安藤がずっと味方なのが唯一の救いです。ほんと、唯一の…だけれど、ジャーナリズムとはこれだ。ビジネスライク増谷も良い人だった

    0
    2023年12月21日
  • 冬の光

    Posted by ブクログ

    これを書いているのが女性だというのが不思議でならない
    不倫の話をここまで男に寄り添った視点で書けるものだろうか

    結局は家族を想って亡くなったという、最後は優しい話でした

    0
    2023年11月30日
  • 弥勒

    Posted by ブクログ

    これほどに重厚感のある小説を書ける作家はそんなにはいないのではないか。
    パキスムという小さな国でのクーデター。クーデターが起こった中、そこに閉じ込められた極限状態の人間から浮かび上がる、人間の愚かさや醜さが重厚感を持って描かれている。人間の心を救済するものは果たして何なのか。
    600ぺージを超える小説でしたが、一気に読み進めることができました。

    0
    2023年11月21日
  • ドゥルガーの島

    Posted by ブクログ

    大手ゼネコンに勤務していた49歳の加茂川一正は、インドネシア出張の折にネピ島という小さな島の海底に聳え立つ仏塔らしきものを発見する。
    一正は遺跡の保護活動を自らの使命とし、日本の考古学者、民俗学者を巻き込んでの遺跡調査に乗り出す。
    ネピ島の殆どを占めるムスリム、開発を最優先する地元の大地主、そして独特の文化を守り続けながらも首狩族などと野蛮人扱いを受けてきた先住民たちは、何故か外部の人間との関わりを受け入れない。
    一正の積極的な性格は良いのだが、ちょっと空気を読めない癖がたまたま功を奏したのか、あっという間に先住民の青年ケワンと知り合い、その一家に溶け込んで調査をするためのベースをネピ島に確保

    0
    2023年11月01日