篠田節子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ホラーとファンタジーが無理なく日常に混じって練り上げられている。
他人から見たらホラーでも、本人にとっては、現実からの幸せな解放だったかもしれず、
あんな人とは釣り合わない、うまく行ってないに違いないと外野は勝手に思い込んでいるが、ちょっとやっかみが入っていないか、とか。
ほんとうはしあわせなおはなし。
『屋根裏の散歩者』
すぐに連想するのは、江戸川乱歩の同名の小説。
ボタニカル系の人気イラストレーター祥子は、生活の拠点を自然の中にある郊外の借家に移す。
庭に自然の植物が繁り、ナチュラル嗜好の祥子の趣味にぴったり。
ところが夜中に天井裏から、ずるずると何かを引きずる音や、ズシン、という響き。 -
Posted by ブクログ
刊行されたのは、1995年ということだが、今はいくらか落ち着いた現代のコロナ渦の勃興期を思わせるような作品。
作家の想像力の凄さを感じさせる。
埼玉県の郊外の街で、住民が次々に病魔に襲われる。
日本脳炎と診断されるが、撲滅したはずの伝染病が何故?
感染イコール発病、ウイルスが体内に入ったら必ず発病してしまうという事態に、異変を気づいた保健センターの職員やベテランの看護師、診療所の医師たちが真相に迫るべく行動を起こすが、彼らはけっしてヒーロー的な活躍をするわけではない。
次第に無害化するのがウイルスの特徴なのに、このウイルスは進化の仕方がおかしいと、ますます悲惨な状況に。
隔離、封じ込め、さらに -
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Posted by ブクログ
金儲けのために宗教を始めるには、正彦は真っ当過ぎ、矢口はお人好し過ぎたんだろうな。全てを奪い尽くされてそれでも奪ってこようとするものから逃げる、教祖と幹部と信者5人が辿り着いたところとは。圧巻でした。
作り上げられた宗教は暴走して教祖の正彦の手には負えなくなり、狂信的な信者たちとの逃避行のなかで正彦も呑み込まれてしまう。
お人好し矢口の最期は凄かった…それを菩薩行、と錯覚してもおかしくない極限状態で正彦は真の宗教家になってしまいました。
マスゴミか、と思ってたルポライターの安藤がずっと味方なのが唯一の救いです。ほんと、唯一の…だけれど、ジャーナリズムとはこれだ。ビジネスライク増谷も良い人だった -
Posted by ブクログ
大手ゼネコンに勤務していた49歳の加茂川一正は、インドネシア出張の折にネピ島という小さな島の海底に聳え立つ仏塔らしきものを発見する。
一正は遺跡の保護活動を自らの使命とし、日本の考古学者、民俗学者を巻き込んでの遺跡調査に乗り出す。
ネピ島の殆どを占めるムスリム、開発を最優先する地元の大地主、そして独特の文化を守り続けながらも首狩族などと野蛮人扱いを受けてきた先住民たちは、何故か外部の人間との関わりを受け入れない。
一正の積極的な性格は良いのだが、ちょっと空気を読めない癖がたまたま功を奏したのか、あっという間に先住民の青年ケワンと知り合い、その一家に溶け込んで調査をするためのベースをネピ島に確保