篠田節子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
登場する三人の40歳代となる長女たちは、高齢化社会の陰で責任を一身に背負い、過酷な状況に置かれた人達だった。
男の兄弟や次女、三女たちは何気に苦境から逃げ切るかのような生き方が可能だが、責任を一身に背負ってしまう性格の長女にとっては、自由さえ遠い存在となる生き方を歩まなければならない。
そんな生き方を選ばざるを得なかった三人の長女たちの中編からなる物語だ。
⚫︎家守娘
認知症を患う母親の介護のため、キャリアと恋を諦めて自宅に縛り付けられる長女。
自らの自由は求められないのか⋯
⚫︎ミッション
自由な生き方を模索して生きてきた長女は、一人暮らしにした父親を孤独死させてしまう。
その贖罪の念に悩む長女の心情が綴られる。
⚫︎ファーストレディ
心情的に良好な関係ではなかった母親が、重度の糖尿病を患う。
救うためには腎臓移植が唯一の術だが、母親に提供するべきか悩む長女。
ここに登場した主人公の長女たちは、社会的に自立した人たちだ。
自立した長女は、様々な問題を抱えることになると云う一面が宿命的にあるように思える。
男女雇用機会均等法が1986年に施行された後、若い女性たちが口にしたのは「女性の自立って大変だから、私はいらない」と、笑いながらインタビューに応えていた報道を思い出す。
昔は人生50年などと言われていたが、今や人生100年時代だから大変な問題なのは明らかだが、解決策は見当たらないのが実情だ。 -
Posted by ブクログ
インドと言えば、『近年目覚ましい経済発展と共に、優秀な人材が世界各国を席巻している』又は、『明るく笑えるボリウッド映画』というステレオタイプなイメージしか無かった。
なんと無知だったかと思い知るとともに、世界各国の観光地でみられるインド人旅行者は、相当に恵まれた人々なのだと改めて感じた。
この小説が初出版され、既に10年以上の時が経っている今も表面化しづらい形でカーストや差別が蔓延っている事を思うと歴史と文化が異なる日本人にとっては難解なのだと思った。
本書はビジネスサスペンス?アドベンチャー?的要素の中にロサというインドの複雑なカーストに沼ってる才女の哲学的思考が複雑に絡まりとても興味深く、一気に読み切ってしまった。 -
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バブル末期に日本で大流行したハワイアンアートといえばラッセン…
ジャン・ピエール・ヴァレーズは彼をモチーフにしたのかなと思うけれど、真実であったとしたら驚きの展開が描かれている。
フィクションなのだろうけれど、半分くらいは真実なのかしら…と思わせるほど、後半は惹き込まれてしまった。
ラッセンの絵は流行していた時期からギラギラとした不自然さを感じていた。ヴァレーズの絵も美術界には認められず、主人公の真由子も違和感を感じていたという設定。
読み進めると、その違和感の正体が明らかになっていき、やけに納得してしまった。
出版業界ではゴーストライターは当たり前のようだし、絵画の世界でもあり得るのだろう…
ヴァレーズと同じかはわからないけれど、私が30年近く感じていたラッセン作品に対する気持ち悪さは、作品の製法にあるようだ。ラッセンの原画は違う印象かもしれないし、ラッセンのデッサンはどんな感じなんだろうと興味が湧いた。
篠田節子さんの作品は初めて手にしたけれど、なんだか肝の据わった文章で、好感度はまずまず。
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Posted by ブクログ
父が四国遍路の旅を終えた直後、冬の海へ消えるというミステリアスな事実から物語が始まります。次女が父の跡を辿り、遍路の道中で未知の父の姿が徐々に浮かび上がり…多くを抱えた父の生き様が深く描かれます。
仕事でも家庭でも恵まれ安定した人生と思われる男が、学生時代からの女性と長年関わり家族を裏切ります。次女の視点から切り替わり、父が人生に対して孤独と葛藤を抱えていたこと、被災地でのボランティア、実父の介護を経て、震災犠牲者のための鎮魂と祈りの旅に出たことが語られます。
主人公の男の人生に感動も共感もできません。女性なら嫌悪感さえ覚えるかもしれません。しかし、高度成長期を支えた男の矜持や虚無感など、底知れぬほど深く淀んだ心の奥深さに引き摺り込まれそうになります。その死は悲しく痛ましいと心から思えます。
悲しく痛ましいと思えるのは、おそらく人は多面的で見えない側面があり、誰もが割り切れず捉えどころのない部分をもっているからに他なりません。悲しいかな、本当の姿だとか真にその人を理解することなど土台無理な話でしょう。
物語の背景に描かれる、この国の男女格差などのあり様がリアルで、女性作家と思えないほど人生の混沌の果てが表現されています。
自分もそれなりの歳なのか、この男の孤独感、喪失感、虚無感が妙に強く伝わりました。人の生き様は、無理やり生きた意味を見い出さなくとも、冬の光のように後から昇華されるのかもしれません。なんとも言葉にし難いとても後を引く読後感でした。 -
Posted by ブクログ
下記3つのエピソードが収まった本。
・家守娘
・ミッション
・ファーストレディ
私も長女だけど、ここに描かれてるような思い遣りや責任感や共感を母親に寄せたことはないなと感じた。
ファーストレディで描かれる主人公が母親の行動の背景にある孤独に思いを馳せて、大きな決断をして寄り添う場面があるけど、私はどこまでいっても「とはいえ、選べたでしょう?その選択をしたのは貴方でしょう?」という眼差しを向けてしまうから。
程度の差こそあれ、望んでない私に子供(孫)を求める感じとか、見たいものしか見ようとしない感じとか。
作中に描かれてる母親と自分の母親が重なる部分がある気がして、気が重くなると同時に、本当にうまく描く作家さんだなぁと感じた。
ミッション だけは毛色が少し違ったように感じた。
どう生きてどう弱りどう死ぬか、みたいな
文化や価値観だけでない経済状況やインフラみたいなことも含めて形成された死生観の異なる環境で、自分が思う正義や常識を持ち込む難しさがひしひしと伝わってきた。
彼女が今後をどう生きるのか、続きを読んでみたい。
全体を通して、重いけど、読んでよかった。
言語化得意な友達がこの本読んでどう感じるのか聞いてみたいな。