篠田節子のレビュー一覧
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バブル末期に日本で大流行したハワイアンアートといえばラッセン…
ジャン・ピエール・ヴァレーズは彼をモチーフにしたのかなと思うけれど、真実であったとしたら驚きの展開が描かれている。
フィクションなのだろうけれど、半分くらいは真実なのかしら…と思わせるほど、後半は惹き込まれてしまった。
ラッセンの絵は流行していた時期からギラギラとした不自然さを感じていた。ヴァレーズの絵も美術界には認められず、主人公の真由子も違和感を感じていたという設定。
読み進めると、その違和感の正体が明らかになっていき、やけに納得してしまった。
出版業界ではゴーストライターは当たり前のようだし、絵画の世界でもあり得るのだろう…
ヴァレーズと同じかはわからないけれど、私が30年近く感じていたラッセン作品に対する気持ち悪さは、作品の製法にあるようだ。ラッセンの原画は違う印象かもしれないし、ラッセンのデッサンはどんな感じなんだろうと興味が湧いた。
篠田節子さんの作品は初めて手にしたけれど、なんだか肝の据わった文章で、好感度はまずまず。
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Posted by ブクログ
父が四国遍路の旅を終えた直後、冬の海へ消えるというミステリアスな事実から物語が始まります。次女が父の跡を辿り、遍路の道中で未知の父の姿が徐々に浮かび上がり…多くを抱えた父の生き様が深く描かれます。
仕事でも家庭でも恵まれ安定した人生と思われる男が、学生時代からの女性と長年関わり家族を裏切ります。次女の視点から切り替わり、父が人生に対して孤独と葛藤を抱えていたこと、被災地でのボランティア、実父の介護を経て、震災犠牲者のための鎮魂と祈りの旅に出たことが語られます。
主人公の男の人生に感動も共感もできません。女性なら嫌悪感さえ覚えるかもしれません。しかし、高度成長期を支えた男の矜持や虚無感など、底知れぬほど深く淀んだ心の奥深さに引き摺り込まれそうになります。その死は悲しく痛ましいと心から思えます。
悲しく痛ましいと思えるのは、おそらく人は多面的で見えない側面があり、誰もが割り切れず捉えどころのない部分をもっているからに他なりません。悲しいかな、本当の姿だとか真にその人を理解することなど土台無理な話でしょう。
物語の背景に描かれる、この国の男女格差などのあり様がリアルで、女性作家と思えないほど人生の混沌の果てが表現されています。
自分もそれなりの歳なのか、この男の孤独感、喪失感、虚無感が妙に強く伝わりました。人の生き様は、無理やり生きた意味を見い出さなくとも、冬の光のように後から昇華されるのかもしれません。なんとも言葉にし難いとても後を引く読後感でした。 -
Posted by ブクログ
下記3つのエピソードが収まった本。
・家守娘
・ミッション
・ファーストレディ
私も長女だけど、ここに描かれてるような思い遣りや責任感や共感を母親に寄せたことはないなと感じた。
ファーストレディで描かれる主人公が母親の行動の背景にある孤独に思いを馳せて、大きな決断をして寄り添う場面があるけど、私はどこまでいっても「とはいえ、選べたでしょう?その選択をしたのは貴方でしょう?」という眼差しを向けてしまうから。
程度の差こそあれ、望んでない私に子供(孫)を求める感じとか、見たいものしか見ようとしない感じとか。
作中に描かれてる母親と自分の母親が重なる部分がある気がして、気が重くなると同時に、本当にうまく描く作家さんだなぁと感じた。
ミッション だけは毛色が少し違ったように感じた。
どう生きてどう弱りどう死ぬか、みたいな
文化や価値観だけでない経済状況やインフラみたいなことも含めて形成された死生観の異なる環境で、自分が思う正義や常識を持ち込む難しさがひしひしと伝わってきた。
彼女が今後をどう生きるのか、続きを読んでみたい。
全体を通して、重いけど、読んでよかった。
言語化得意な友達がこの本読んでどう感じるのか聞いてみたいな。 -
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女たちのジハード
女たちのジハード 75/100点
『女たちのジハード』は、篠田節子による第117回直木賞受賞作で、バブル崩壊後の日本を舞台に、中堅損保会社に勤める5人のOL(リサ、紀子、みどり、康子、紗織)が、結婚、キャリア、自己実現といった人生の岐路で、男性優位社会や自身の願望と闘いながら、それぞれの「聖戦(ジハード)」を繰り広げる群像劇。(AIより)
○良かった点
・男性優位社会で生きづらさを感じている5人のOLそれぞれの人生が描かれる。結婚=女性が目指すべきゴールというような前時代的価値観の中で”聖戦”後に最終的に着地するそれぞれの登場人物の未来はむしろ令和の今にも繋がるべき価値観であり、全く古臭さを感じない。
・各章で主人公の視点や描かれる人間関係が変わるため、スラスラと読み進めることが出来る。
・「上昇気流」の章で描かれる、リサと出会った医師とのストーリー、特に彼女なりのこれまでの男性経験を活かしたテクニックでアプローチした結果に訪れるある種の悲劇ともいえる展開には思わず笑ってしまった。お気に入りの章。
○悪かった点
・終盤康子が遭遇するある人物との出会いとそこからの展開、および沙織が留学するための費用を得るあるバイトの展開や留学後のストーリーはややご都合主義的な展開でリアリティを感じられない。
・30年近く前の作品のため描かれる会社の雰囲気やいわゆるOLに対する扱いは、良い点にも記載した通りあまりに前時代的であり、その時代を経験していない私が今の価値観に照らし合わせて読むと、例えば途中出てくる専務の振る舞い等、今の時代では一発レッドになるであろう腹立たしくなる場面が多い。ただ、作者自身が役所出身の作家であることからリアリティの欠如というよりはジェネレーションギャップを背景としたものである点は理解できるが。
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Posted by ブクログ
「絵を描ければ、それだけでよかった…」本の帯に書かれた一行は、物語の中心であるマリンアートの作者ジャンピエール・ヴァレーズが発した言葉なのか、それとも別の誰か?
偶然見かけた海の絵に引き込まれた有沢真由子は経済紙の美術専門出版社に勤める50代。
かって問題ある売り方で一大ブームを起こしたアートの再燃かと疑いながらそのその絵に魅せられていく。
金髪の魅力的なダイバーである作家という触れ込みのヴァレーズはどんな人物なのか?
以前現実にブームを引き起こしたクリスチャン・ラッセンの絵を思い浮かべながら読み進めた。
物語はハワイ島へ。ヴァレーズの妻という日本人やマリンアートを描く人々を通してヴァレーズの謎が解き明かされていく。
絵を描きたい人、絵を買いたい人、絵で儲けたい人、好きな絵を見たい人、絵画ひとつに色々な人間の思惑が入り混じる。なるべく皆が幸せに絵を見つめたいものである。