【感想・ネタバレ】冬の光のレビュー

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Posted by ブクログ 2021年12月21日

はぁ〜‼︎ やっぱり篠田節子さんの小説は、大人のお話なのだ。というか、歳をとってから読む方が、この味わいがわかる気がするのです。読んで良かった。

四国遍路を終えた帰路、冬の海に消えた父、康宏。企業戦士として家庭人として恵まれた人生、のはずだったが…。死の間際、父の胸に去来したのは、20年間、愛し続...続きを読むけた女性のことか、それとも? 足跡を辿った次女、碧が見た冬の光とは…。

こんな短い紹介文では表現しきれない、464ページでした。
読んでる間ずーっと感じていたのは『人生は長く、人は強いけれど弱い。一生、清廉潔白な人などいるだろうか?』ということ。

紹介文では20年間愛し続けた、とあるけど、それだって、実際そうなのか?というと、私は違う気もした。卒業後、学生運動からきっぱり足を洗って企業戦士になった康宏に対し、大学という社会の中で自身の正義感から闘争を続け、孤高の人となっていた紘子。気になる存在でもあり、愛していた時期もあるけれど、お互いのズレから、まるで寄り添えなかった時間の方が長かった気もする。
また、康宏の家族愛は、決して嘘ではなかったことも充分わかるし、妻・美枝子との充実した日々だっていっぱいあったのは確かなことなのだ。

愛情も憎しみも、寛容も怒りも、喜びも哀しみも…どんな感情であれ、1つの感情だけで生きていけるほど人生は短くない。逆に、忘れたり、執着がなくなったり、時間と共に辛い感情も薄れてきたり、そういうことがあるからこそ、生きていけるんじゃないかなぁ…などと感じました。

私個人としては、いわゆる“男に甘い”ということかもしれないけれど、康宏が亡くなった直後の美枝子の態度は、余りにも極端に冷たく感じてしまった…。
亡くなった人はもう言い訳も何も言えないのだから、心の中で気にかけてあげるのは、家族しかないんだなあなんて思ったり。

父の旅をなぞってみる碧と、康宏が実際に辿った道や心の中、それが交互に描かれ、人は自分が見ているものが真実だと思いがちだけど、それだけじゃない、ということを強く感じました。

私も、1番心に残ったのは若い住職の言葉でした。
『どんな経緯にあったにせよ、どんな亡くなり方をなさるか、などということは、最後の、最後の、ほんのささいな分かれ道に過ぎないのですよ。ご安心ください。』
こんな言葉に人は救われるのですよね。

印象に残ったフレーズを少し。
ーーーーー
大人の男女の出会いや別れに、告白も宣言もない。いや、色恋に限らず、日常的な人間関係もそんな風にいつとはなしに始まり、いつのまにか疎遠になって終わっていたりするものだ。

絵に描いたようなハッピーリタイアだった。にもかかわらず、異様なまでに空虚な気分に押し込められている。赤茶けた終末の風景の中に一人、立っているようだ。

結局のところ、人生とは背負った重荷なのかもしれない、と思った。自分を生かしてきたものは、背骨がきしむほどの荷物だった。それが推進力となって自分を生かしてきた。
ーーーーー
大人に読んで欲しい作品です。

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Posted by ブクログ 2024年03月23日

人の考え方ってその人それぞれなんだなぁ、と読んでて考えさせられました。

初めてこの作家さんの本を読んだけど、描写、ストーリー性、心情の書き方、素敵だと思います。他の本も読んでみたい、そう感じました。

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Posted by ブクログ 2023年11月30日

これを書いているのが女性だというのが不思議でならない
不倫の話をここまで男に寄り添った視点で書けるものだろうか

結局は家族を想って亡くなったという、最後は優しい話でした

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Posted by ブクログ 2021年12月27日

主人公の人生も奥行きが深く描かれているが女友達の紘子の人生も共感できるというわけだはないが不器用で応援したくなる気持ちもあった。
ただ実際に身近にいると距離を取りたくなるような人物ではあるが。
最後は切なくなる終わり方だ。

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Posted by ブクログ 2021年08月24日

自分の人生がどうだったかは自分にしか分からない。笹岡の人生がどうだったかは康宏には分からないし、逆も然り。親の人生がどうだったかは子には分からない。自分が満足して死ねる人生を。
康宏が、自分の人生にはプロセスはあるがテーマがない、と内省するシーンが印象的だった。テーマを持って人生を突き詰めて生きてい...続きを読むる人が果たしてどれだけいるのだろうか。考えさせられた。

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Posted by ブクログ 2021年04月28日

結局父の死の真相はなんだったのか、、、

ここに深い意味はあんまりないのか
(脳がミステリ認識してしまっている笑)

父の人生がなかなか壮絶だった。

他人をいたむ気持ちは素晴らしいが、もっと家族にも心傾けてほしかったなぁ

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Posted by ブクログ 2021年02月20日

人生の全ては自分だけのものであって、他人と分かち合ったり、他人に委ねられる物ではない。
康宏の歴史を理解していくにつれ、家族にとっての康宏がズレているのが歯痒く、人間なんてそんなもの、という寂しさを覚える。
自分が歩いてきた道を振り返り、また、これから進む道をどう行くべきか、考えさせられた。

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Posted by ブクログ 2021年02月06日

他人のことなんてわからない
自分が見ているのは一面に過ぎず、その人には色々な面がある

目の前の幸せが当たり前ではないこと、
人がいついなくなるか分からないこと、
人生をかけたいものに出会えることは幸せなこと、
を感じた

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Posted by ブクログ 2021年01月31日

ひとつの出来事に対して、割り切れない想い、他様々な想いがあり、自分の人生と比べたり点検しながら読んだ一冊。
描写などがリアルで、共感しながら読む部分が多々あった。

康宏は、最終的にあのような形になったが、個人的には幸せな人生だったのだと思う。それぞれの居場所、それぞれの康宏がいて時には虚無感などあ...続きを読むったかもしれないが、きっと最後は穏やかな気持ちだったのでは。

読みながら、染み入るような、一言で表せない感情や感覚をこの本は味合わせてくれた。

また歳を重ねて、10年後とかに読むと読後感も変わるのかもしれない。

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Posted by ブクログ 2021年01月01日

四国遍路を終え、フェリーで自宅に戻る途中に自殺したと思われる父親と、真実を求めて彼の遍路の足跡をたどる次女との二人の視点から書かれた小説。
次女から見た彼の人物像、そして妻や長女から見た人物像は、彼の本当の人物像とは大きくかけ離れている。
彼は長年にわたり、同じ女性と浮気関をしており、妻や娘たちを裏...続きを読む切ってきた。浮気相手の女性が亡くなったこともあり、家族の元へ心は戻ってくるのだが、なんとも自己中心的だと思う。
読み終わっても、モヤモヤ感が残る。

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Posted by ブクログ 2020年08月18日

一人の男の終わりを、本人から、娘の目からたどる。浮気を繰り返し、お遍路の帰りにフェリーから身を投げて死んだ男。
娘がたどり着いた父の死の真実。
バラモン教の教えには人生には四つの時期に分けられる。学びの時、子育ての時、一人で生きる時、そして最後は全て捨て死に向かう時。
子育てや家族を養う時を終えた時...続きを読む期、人は何をすべきか、自分の年齢を重ねて考えさせられた。

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Posted by ブクログ 2019年06月26日

人は人を理解できない、家族においても。
ミステリータッチの、人間存在の危うさを問う小説。
四国遍路を終えた後、海から死体で見つかった父は自殺なのか、それとも事故なのか。
次女が真実を求め、父の足跡を辿り、遍路の旅に出る。
1章、4章、6章は、次女の視点で。2章、3章、5章は父の視点で。
読者は両方を...続きを読む俯瞰することで、表層でしか自分以外の人間を見ていないことに気づかされる。

解説からの孫々引きになるが、「現代社会における文学の役割は・・・”自分の主張のみが正しい”とする狂信主義へと人々が傾くのを阻止することだ」には、同感の意を強くする。

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Posted by ブクログ 2019年04月21日

62歳で亡くなったサラリーマンが主人公の小説。娘が父親である主人公の足跡をたどる形で四国八十八カ所を巡るが、先入観や予断が繰り返し裏切られ、篠田節子の小説を読む喜びを感じる。主人公の大学時代の恋人が、人生の節目節目で現れ、彼女に接する主人公の価値観の変化がわかり興味深い。バブル崩壊や東日本大震災など...続きを読むの取り込み方に共感するところもあり、複雑で実に面白い。

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Posted by ブクログ 2024年02月29日

以前どこかの本屋さんのPOPを見て気になっていた本。

人の行動にはそれぞれの理由があって、理解できることも理解できないこともある。

物語ではどうしても登場人物には光というか、正義を求めがちだけど、必ずしも感情移入させたりせず、淡々と人間って綺麗なところや理屈で説明つくところだけじゃないよねという...続きを読むのが書かれている気がした。

最後は救われるところもあってよかったです。

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Posted by ブクログ 2023年12月18日

三十代半ばを過ぎた頃からミッドライフ・クライシスの足音が聞こえてきた私には碧の父・康宏が抱く心の葛藤を理解できる部分もあれば、それは流石に身勝手では?と感じる部分も同じくらいある。家族という運命共同体であれ、互いの心の内は決して分からないし、理解するのは無理であろう。終盤に配置された康宏と梨緒のエピ...続きを読むソードの持つ意味合いを咀嚼できなかったが、人の本質は容易に変わらないということであったり、良い面も悪い面もその全てが一個人を形作る要素であると解釈した。一人の男の生涯を通して、人間の不完全さをまじまじと考える。

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Posted by ブクログ 2023年12月13日

篠田節子さんは初読みの作家さん
男性心理をメインに描いた作品で大人のディープな世界観だった。

『冬の光』
東日本大震災のボランティア後に、四国遍路を終えた帰路フェリーから冬の海に忽然と消えた父
高度成長期の真っ只中で企業戦士として働き、専業主婦の妻に家庭を任せ順風満帆だったはずの父
何故、父は帰ら...続きを読むぬ人となったのか・・・
物語は、四十年にも及ぶ父とその愛人との繋がりと、長年裏切られた憎しみと恨みを抱えた母、
その影響を受けた姉妹の関係性が軸になっている。
父の死がどこか釈然としない次女の碧は、数日間の休暇を使って父の最期の旅路に出掛ける。そこに過去の父の経験が重なる形で物語は進行する。


感想
これは人生も程なく折り返し地点を過て、ゴールを自然と意識し始めた年齢層の方がより入り込み易い作品だと思った。

父と愛人との繋がりは、肉体的なもの以上に精神的な部分が相当に強かったのだろう。義父が言うように素人女はダメだが、学生時代から惹かれる部分をそのまま強固に磨き上げて来た女性はそう容易く代わりがきく存在でも無かったんだろう。
妻の怒りもご尤もだが、その役割はきっと家庭を完璧に守ってくれた良妻賢母の妻では難しかったのかもしれない。

でもなぁ愛人との付き合い、四十年は長過ぎる。
自立した大人同士の繋がりは希少だし、ましてや男女の仲であれば、長くなる程、形を変えて意味を持つのかもしれない。若い頃と違い一定の距離感は保ちつつも、心の奥底に根付いている関係。日常的に意識しなくとも特別なのだろう。

描いていた企業戦士の目標に辿り着けなかった父は何を胸に秘めて、何を感じていたのか・・・
旅路の終わりに次女の碧が、父の心情に少し寄り添えたのが救いだった。

本作は、家族や会社といった社会との関わりにおける「孤」の存在の意味を問われていると感じた。
四国遍路では地位も名誉も肩書きも関係ない。
退職した父の大企業を名乗る名刺も必要ない。
そこにあるのは圧倒的な弧の存在だろう。定年退職を控えた世代には特に響く内容だと思う。

読み進める内に、結局のところ父は妻にも愛人にも心の内を曝け出せていなかったことが、切なくて虚しく感じた。
これは男の美学なのかプライドなのか、それとも世間体なのか、はたまた世代の問題なのか?

そんな父が震災での生死に直面し、生涯独身となった愛人の死に様を胸に秘めた追悼旅の道すがら、不貞行為に及んでしまったのは、男のさがというよりも短期間で凡ゆる局面を目の当たりにした人間の、種の本能のように思えた。善悪はさておき、それによって補えた部分が確かにあったのだろうと思う。

二十代の頃に本作を読んでいたら、碧と同じく、父という存在に生々しい性的な要素がみえて拒否反応を起こしたかもしれない。もうすっかりそのお年頃は越えたんだなぁと自覚させられる大人向けの作品だった。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2023年08月07日

ほんとに著者女の人?っていうくらい男の視点が細かく書かれ、語り口も硬質。事実を並べればしょうもない男なんだけど、本人の語りで読むと、そんなこともあるか…と思わせてしまう描写力。一人の人間の中に存在する多面性、弱さ、人間くささがよく描かれている。
でも莉緒との関係は余計だ。気持ち悪い。
ところどころ光...続きを読むった表現がある。
「動物は着替えたりしない、という前衛アーティストの言葉そのままに、昔とまったく変わらぬ身なりで」
「人生の終焉の迎え方としてはね、今の日本がおかしいんですよ。リーダーシップを譲るべき時に次世代に譲らず、それどころか介護という形で何十年も負担をかけて、未来を紡ぐ芽をつぶしていく。そうやって生物的限界を超えて長生きしているのは、我々だけですよ」

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Posted by ブクログ 2023年08月06日

★3.5
救いようがないと思わせる運びでしたが、最後はタイトル通りの光が。
分かり合うために言葉にすればよかったのに…と知ったようなことも思ってしまいます。

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Posted by ブクログ 2023年04月07日

四国でのお遍路を終えたあと、フェリーから転落死した父親。
父の死の真相はなんだったのか

娘が四国に渡り、父の足跡をたどる

娘の視点。父親の視点。
家族とはいえ、決して分かり合うことはない。
哀しい結末でした。

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Posted by ブクログ 2022年03月06日

父親はお遍路巡りをして何故海に身を投げたか次女が休みを利用して父親の足跡を辿るところから父親の大学生からの話が始まる。
大学時代に付き合っていた人と数十年ぶりに再会して何度か会い家族にばれそれでも妻は離婚に踏み切らず彼女と金輪際会わない約束をさせられてそのままでいる。
そして成り行きで東北の大震災の...続きを読むボランティアに参加し彼女の死の真相を知る。自殺は一つの事でなくたくさん絡まり合って自殺してしまうが父親も彼女の死を知って、お遍路では慰めにならなかったのか。
と考えて読んでいるとありえない死の真相で家族にしてみれば自殺ではなかった救いがあるだろうが、帰ったら車をメンテナンスしようとお遍路途中で死を選んでいたやんといいたくなる気持ちが宙ぶらりんになる話だった。

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Posted by ブクログ 2021年11月21日

久々に篠田節子を読む。
うむ。むむ。むむむ。
でも、最終、優しい話ではあった。

人の死に様とか、その他も、生々しくて。この生々しくてグロテスクな感覚が、篠田節子だよな。と、改めて思いながら。。。
これに、中高時代、ひどく影響を受けたことを思い出す。

でも、ホラー、SFの篠田節子ではなく、宮本輝的...続きを読むな篠田節子でした。

登場人物の自分としては立ち上がって生きている様と、だからこその孤独と。

#篠田節子 #冬の光 #読書記録

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Posted by ブクログ 2021年10月24日


四国お遍路を終えた帰り道、フェリーから身投げした父。
高度成長期の企業戦士として、専業主婦の母に支えられ、幸せな人生を送っていたはずの父。
そんな父は、大学生の時の恋人と、20年余ずっと関係を持ち続けていた。

父親を恨む母。嫌悪感をあからさまにする長女。父の足跡を辿る次女、碧がたどりついた答えと...続きを読むは。



父、康弘。正直もっとうまく立ち回ればこんなことにはならなかっただろうと思ってしまう。その頑固なまでの素直さ、真っ直ぐさが仇になることもある。
大学生の時のままだ。

そこに性愛がなくても、確かに彼は紘子のことを愛していたのだと思う。それは罪なんだろうか。運命のように何度も巡り会う強い絆。

やっと帰るべき場所に気づけたはずなのに、あの終わり方はあまりにも寂しくて悲しすぎる。
ラストに向かうにつれて結末が分かってしまって、ページをめくるのが怖かった。
一番最後の描写が表題とリンクして、震えた。

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Posted by ブクログ 2021年05月05日

日本によくありそうな家族の物語。人と人は触れ合って前向きになったり後ろ向きになったりするんだと改めて感じた。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2021年03月10日

相変わらず文章は上手いし、持っていき方の技術が確かなのは間違いないんだけど、今作に関しては人物の造詣が空疎というか、端的に言うと薄い。
生身の人間というより、如何にも架空の人物が紙上で動き回っているに過ぎず、共感が抱けない。
遍路の途中で出会う秋宮梨緒の、物語における必然性、ましてや主人公の男が関係...続きを読むを持つ意味合いも解せぬまま。
巡礼を題材にちょろっと展開される宗教的な描写には、「ゴサインタン」や「弥勒」がちらりと想起され、オールドファンとしては少し嬉しくなったが、残念ながらそれぐらい。

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Posted by ブクログ 2021年03月08日

読み進め易い文章ではありましたが、う〜ん、登場人物に感情移入できず読み終えてしまった。人生綺麗ごとばかりではないし、他人には分からない葛藤もあるだろう。そうなんだけどねぇ〜、となんだかモヤモヤする作品でした。

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Posted by ブクログ 2019年08月30日

ザックリに言うと、団塊の世代に生きた男性の過去の恋愛や結婚、男の性を書いた1冊。
正直この手の話は少し苦手で。
学生運動だ、バブルだと言われても今一ピンとこない。
余り期待せず読んだのだけれど、意外にも楽しめた。

主人公の男性目線で読み進めると哀愁を伴う切なさがあるけれど、
妻、家族側にピントを合...続きを読むわせるとやはり男の身勝手さが目につく。

特に意識して選んでいる訳ではないのだけれど、ここの所
東日本大震災、お遍路にまつわる本が続いている気がする。

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Posted by ブクログ 2019年08月10日

8月-6。3.0点。
震災後、四国遍路をして、帰宅途中で自ら命を絶った父親。
長年の浮気の果て、家族からは放置される存在に。

本人の視点と、父親の足跡をたどる次女の視点で進む。
うーん、父親の行動にイマイチ共感できない。

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