【感想・ネタバレ】ロブスター【電子版特典付き】のレビュー

あらすじ

【電子版特典】として、創作の源泉に触れる「あとがきミニエッセイ」を巻末に収録

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おちこぼれの女性ジャーナリストが異国の砂漠の地で掴んだ、
自分しかできない仕事、そして、人間のほんとうの幸せとは

フリージャーナリストとしての活躍の道が拓けずくすぶっていた寿美佳(すみか)は、摂氏六十度を軽く超える砂漠の地で、鉱石を運ぶトラックに乗っていた。
ここはオーストラリアでも「デッドエンド」と呼ばれる地帯。この先の鉱山で、元引きこもりの日本人労働者や、海外の政治犯が強制労働に従事させられているという疑惑を聞きつけて、記事を書いて一山当てようと潜入取材に乗り込んだのだ。金がない寿美佳のスポンサーとなったのは、夫の研究者・クセナキス博士がここに閉じ込められていると訴える博士の夫人だった。
博士を救い出すという任務も帯びながら、命からがら苛酷な砂漠を越え現地にたどり着いた寿美佳だったが、そこで出会った博士をはじめとする3人の労働者が語ったのは、寿美佳が全く思いもよらない背景だった……。

ここは見捨てられた場所、そして、途方もなく自由な土地――
「他の場所では生きられなくても」、今、自分の身体が、能力が、拡張していく。

人生の本質や、生と死の尊厳を、外から判断できるのか。
ほんとうの幸せとは何かに迫る著者の真骨頂。

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Posted by ブクログ

ジャーナリズムの世界に飛び込んだ主人公の寿美佳は、素人が発信する大量の低俗な情報と競いながらもなんとかフリーのジャーナリストとして生き残って来た。
ある日、発生生物学分野のクセナキス博士の妻と名乗る女性から、主人を救い出して欲しいとの依頼があった。
当時の保守政権下のアメリカ大統領から、博士が訴追される事態に追い込まれ、その直前に博士はオーストラリアに逃れた。
しかしオーストラリア政府はアメリカに忖度したのか、政治犯として博士を逮捕し、摂氏60度に達する砂漠の真っ只中に存在している悪名高い精錬所を併設している鉱山で、博士は強制労働に充てられているとの噂があった。
その地から夫を救ってくれと云う依頼だった。
寿美佳は前受け金と成功報酬に加え、鉱山の実態を世界に報じると云うジャーナリストとしての魅力によって依頼を命懸けで受けることにした。
オーストラリアに降り立った寿美佳は、緊張しながら鉱山の本社を訪れて取材の許可を申請すると、なんとあっさりと単独での取材を認められ、当地までの足を融通してくれた。
そしてあっさりと鉱山の現場に行きつき、博士にもすんなりと逢うことができた。
そして博士にここから脱出して帰国しようと伝えるのだが、即座にノーと断られる。
寿美佳としては博士の帰国を説得するために、暫くは鉱山に滞在することを決めたのだが⋯。

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2025年11月30日

Posted by ブクログ

数十年先の世界を描いた作品。
環境破壊や貧富の格差がますます進み、「普通の暮らし」を送ること自体が難しい様子が描かれているが、たかが小説だと笑って済ませられない怖さを感じた。
この作品で描かれているような状況を回避するために、今やるべきことがあるんだろうけど、それが何なのか、私たちは理解できているんだろうか。 

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2025年04月06日

Posted by ブクログ

面白かった
ファンタジーだけど、リアル。
それぞれ行きやすい場所で生きた方がいい
博士の最後も認めてあげなくては。

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2025年03月12日

Posted by ブクログ

私も行ってみたい、この世界へ。今も、それに近い生活してるかもしれなけど、巨大なく機械を操作できる充実感。恐ろしく厳しい自然環境だけれど、広大な砂漠、白くけぶるほどの星空。
今より荒廃した日本なら、尚更、こういうところで最後をむかえたいと思うだろう。
主人公は、この後どうしたんだろう。

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2025年02月12日

Posted by ブクログ

初期から、ちょくちょく筆者はこういったメッセージ性の強い作品を書いてきた。
ずっと筆者が好きで追ってきた私の30年前は「合わない」・・どなたかも書いておられたように「だから、何を言いたいんだ」という様な思いが強かった。

最近、小説、映画、配信等などのメディアで右肩上がりに増えていることを感じる、斯様なメッセージ系。
強く思うのはネットフリックスのblack mirrorの中身。
ディストピアというのだろうか、ユートピアとはいえずとも現実到来の可能性をどんどん強く感じるようになっていった(トランプ大統領が行うであろう、パリ協定の脱退等)

落ちこぼれ記者を自負する寿美佳・・作中、幾度となく並み以下の困窮家庭であることを呟く。
「デッド・エンド」と呼ばれる砂漠鉱山へ救出と取材を兼ねて不安と勇実をないまぜにした思いで入るが。。

装丁はこれもどなたかがおっしゃるように「星の王子様風」・・緊迫、戦慄、飢餓、不安・・種々の感情が怒涛の様に起こるはざまで博士と過ごすくつろぎの時間をよく表している。
筆者の人間性の表れと思うこういった空気を他者からすると「何が言いたいんだか」となることも認識はする。

しかし、地球号は間違いなく、酷似の状況に進んで行っていることは間違いなく・・大陸、島々からあらゆる人間がシャッフルされる形で流れ込み、それが「鉱山」であることは的を得ているかも・・資源の奪い合いは新大陸発見のの歴史が証明している。

博士がかつて「新大陸」と呼ばれた国から逃げてきて・・と言うのもなにやら。。
新新大陸ともいうべき、この砂漠に「発達障碍児」を巡る社会問題、現象を揶揄っている個所は反論する理由は見つからない。

大人の絵本と思って読めば・・寿美佳の過剰に卓越した適応能力や神仙的な博士の最期の受容、ブロンド男の転変の人生は詰まらないと切り捨てられないとは思えるが。

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2024年11月15日

Posted by ブクログ

未来の世界と異国の物語り。過酷さと自由って比例するのか。一部の人の生き方で全世界を俯瞰することはできないけど、やっぱり今をどうするか、その都度最適な判断は何か、と考えながら生きていくしかない。

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2025年11月17日

Posted by ブクログ

超温暖化が進んだ世界で砂漠の鉱山で働く人たちの不思議なストーリー。砂漠で釣れるロブスターが印象に残る。

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2025年04月01日

Posted by ブクログ

こんな場所に長く留まろうとは思わないわ。やっていく自信がない。ただ、砂漠のロブスターは食べてみたい。

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2025年02月05日

Posted by ブクログ

温暖化の一層の進行でディストピアと化した未来の地球を舞台に展開される奇妙な物語。
主人公は“自称”ジャーナリストの寿美佳で、発生生物学のクセキナス博士の妻から「オーストラリアの鉱山から博士を救出してほしい」という依頼が届く。金のためにその依頼を受けた寿美佳は、オーストラリアに飛んだが……。
壮大なスケールの割にはこぢんまりした話である。圧巻は超巨大な掘削機の描写だ。本当はこれが主人公なんじゃないかと思うほど力が入っている。
この先、人類に未来はないのだろうが、それでも経済活動は続くという馬鹿らしさも感じた。

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2024年10月13日

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