あらすじ
コロナ禍がはじまり、終息に向かった。退職男たちの宴会と紙袋の骨壺、店の経営が破綻し夢中になった多肉植物、遺影に写った謎の手、自然通風の家で夫婦を悩ます音の正体とは? ふと目がくらんで見える、暮らしと隣り合わせ、現実と非現実の裂け目を描く日常奇譚集。
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日常に起きた、白昼夢のような四つのお話。
不可思議な話のようで、蓋を開けてみれば意外な事実。
そう思って、安心して読んでいたら、最後の二つは不思議話と、バリエーションに富んでいて、でもさすがの文章力で読ませてくる。コロナもうまく絡めてあるところも、さすがとしかいいようがない。ベテランの筆致をみた。
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白昼夢みたいな物語ということかな。『屋根裏の散歩者』は疑問が解決したのでホッとしたが、残りの3編は不思議な気分になった。『遺影』はそうであったらいいなという感じ。
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4つのちょっと不思議なストーリーから成り立つ。コロナ禍に書かれたと思われるのがいくつかあった。先日読んだ絹の変容を思い出す多肉。最後の遺影はまさかのエピソードで驚いた。
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久しぶりに篠田作品を読んだ
日常に起こりそうな
不思議なストーリー
引っ越したお気に入りの一軒家で
不思議な音が聞こえる
なんと 隣のオタクの男性が
育てる亀だったワシントン条約違反のチチュウカイコハクガメ
人間に懐いている
動物園には相談したくない
結果的にはそのままになるが
その人間模様が面白い
他の作品も日常に起こりそうな
出来事で考えさせられる作品
離婚しピアノ奏者と再婚した男
コロナ禍で経営がうまくいかず
もらったサボテンに夢中になり
最後はサボテンに食べられる男
認知症の母と一緒に写っていた男性は
猿だったのではないかという推測
あっと言う間に読んでしまった
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コロナ禍の始まりから、終焉にかけての日本を舞台とした日常生活に見え隠れする別世界を描き出した4つの作品集
屋根裏の散歩者
妻をめとらば才たけて
多肉
遺影
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ホラーとファンタジーが無理なく日常に混じって練り上げられている。
他人から見たらホラーでも、本人にとっては、現実からの幸せな解放だったかもしれず、
あんな人とは釣り合わない、うまく行ってないに違いないと外野は勝手に思い込んでいるが、ちょっとやっかみが入っていないか、とか。
ほんとうはしあわせなおはなし。
『屋根裏の散歩者』
すぐに連想するのは、江戸川乱歩の同名の小説。
ボタニカル系の人気イラストレーター祥子は、生活の拠点を自然の中にある郊外の借家に移す。
庭に自然の植物が繁り、ナチュラル嗜好の祥子の趣味にぴったり。
ところが夜中に天井裏から、ずるずると何かを引きずる音や、ズシン、という響き。
5才年下のチェリストである夫の貴之は、ぽっちゃり系でおっとりしているが、いざという時に大胆な決断をする。彼の人柄が救い。
『妻をめとらば才たけて』
市役所の同僚だった三人の男は、定年退職後に一緒に呑むようになった。
浅羽は芸術的趣味があり、ヴァイオリンの名手。司書と学芸員の資格もあり、わざわざ公立コンサートホールに併設された資料室へ希望を出して転属、出世コースからは自ら外れた人。
一度は役所内のしっかり者の保健師と結婚したが、有名ピアニストと不倫をして再婚をした。
彼は、妻の骨壷を、故意に電車の中に置き去りにしたのか?
『多肉』
コロナ禍で飲食店の苦戦が続く中、多肉植物「アガベ(?)」に魅入られた、レストランオーナーの転落
『遺影』
義母が亡くなり、遺影に使う写真を探すが、難航していたところ、人見知りで警戒心の強かった義母が珍しく晴れやかに笑っている写真を夫が見つけてくる。
しかし、義母の肩には隣にいる初老の男の手が掛かっていた。
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「屋根裏の散歩者」
「妻をめとらば才たけて」
「多肉」
「遺影」
四話収録の短編集。
どの物語も死の空気を纏いつつ、可笑しみと恐怖を感じさせてくれた。
30代の夫婦が移り住んだ理想の家。
しかし天井からは、ずるずると何かを引きずるような異音が聞こえて来る。
その正体はまさかの…。
確かに『屋根裏の散歩者』だ。
最もインパクトがあったのは『多肉』。
多肉植物「アガベ」に魅せられた故に、仕事も家庭も失い堕ちていく男。
一度は復活の兆しを見せるも、衝撃のラストが待ち構える。
これはまさにホラー。
コロナ禍を背景に静謐な筆致で綴られた一冊。
Posted by ブクログ
『屋根裏の散歩者』『妻をめとらば才たけて』『多肉』『遺影』の四作からなる一冊。
ベースは世間でもよくあるお話しですが、白昼夢とあるようにどこか現実離れをしたところもありつつ、そのバランスがすごく良かったです。
『妻をめとらば才たけて』は、読み始めと読み終わりで登場人物への見え方が変わりました。一番好きな作品です。
篠田節子さんの作品は初めて読みましたが、他の作品も読んでみたいと思います。
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ちょっと怖いような不思議な四つの話。
いい大人が何かのきっかけで一つのことに心を絡め取られてしまい、深みにはまっていく。それが「白昼夢」なのか。
自分より長生きする亀と共に生きる人生、社会とも一線を引いて亀だけと生きる人生、恐ろしい。そしてその長寿の亀を自分のまだ形もない子どもに託そうとする大人にも空恐ろしくなる。
アガベに心を絡め取られて何もかも無くしてしまう男性、その堕ちていく様子は怖いのに目が離せず一気に読んでしまった。
のめり込めばのめり込むほど周りは離れていく。人が離れていけば、余計に目の前の自分を裏切らないだろう植物に傾倒していく。恐ろしい循環だ。
みんな、気がついた時にはもう元に戻れなくなっているのだ。
どれもこれもあのコロナ禍の時を経ている。
思い返せば本当に怖い一時期だった。人の心も異常にしてしまう状況だったのだ。
もう二度とあんな時代がやって来ないことを祈りたい。
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ホラーの要素を持ち、奇妙だが、素材調べがしっかりされており、あり得ないこともないと感じる4つの短編
「屋根裏の散歩者」は、借家に引っ越してきた夫婦が夜になると聞こえる屋根裏からの物音に悩まされ、その意外な正体に驚く話。ワシントン条約や希少昆虫のブリーダーにも話が及び、よく調べられてるなと感じた。
「妻をめとらば才たけて」は、ある男が電車の中に骨壺を入れた紙袋を置き忘れ、それが警察に届けられたところから始まる。相思相愛だった妻と別れ、有名ピアニストと再婚した男だったが、自分はがんになり、再婚相手はコロナに罹患する。物悲しさと幸福感が共存する深みのある結末となる。
「多肉」は、コロナ禍によって父の代から続いてきたレストラン経営が破綻した男がアガベという多肉植物の栽培にのめり込んでいく話。妻に匙を投げられ、施設に入っていた認知症の母を見送り、多肉植物が異常に成長した家に引きこもりながら男は破滅していく。
「遺影」はコロナ収束下で親戚たちが集まり、義母の葬儀用の遺影写真をあわてて探している場面から始まる。
あれやこれや探しているうちに見つかった満面の笑みをたたえている写真には義母の肩に手をかけている男が写っていた。男が誰なのか、義母が何故笑みをたたえているのか、その謎を解くカギは義母が生前よく通っていた動物園にあった。
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傾向が今一つで一年ほど、篠田さん作品を離れた時間があった。
今回、続けて読む作品はどれも面白く、起承転結の明確さ、そして筆致は唸るものがある。
よくここまでと思うほど、事の顛末が現実味を感じる(結構、荒唐無稽に走り、外連味たっぷりの脚色で終わらせるものが目に付くこともあって)
コロナ社会の初期、中期、終期のテイストを思い起こさせられる展開は、四遍ともナイス。
標題にある通り「白昼夢」だが後半二篇はその色彩が濃く、良かった。
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4つのありそうそれでいて不思議な話の短編集。
最初の亀の話が微笑ましい。変な霊とかでなくて亀でよかった。よく見ると表紙にも亀が。
4話目の義母が微笑んでいる相手がコーヘーという猿だったって言うのも、その人柄(猿柄?)がいいですね。
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4話の短編集
篠田節子の長編SFミステリーの様な緻密さや深さは有りませんでしたが、サクッと読めてまぁまぁ楽しめました。後半2話は篠田節子らしい不思議物語でした。
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四つの物語からなるお話。
そのうちの二つは植物についても詳しく描かれており、植物が好きな私はとても楽しめた。
『多肉』はアガベが主役(?)で、
確かにアガベってこのお話のような不気味さを感じます。うちの近くの国道沿いに巨大なアガベがあって、去年ぐーんと茎を伸ばして花を咲かせました。花が終わったあと、あっという間に枯死して、怖い感じがしたのを思い出しました。
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日常と隣り合わせの非現実とも言える世界を描く四つの物語。
理想の家屋根裏に潜む何かの正体‥‥「屋根裏の散歩者」
置き忘れた遺骨を巡る風景‥‥「妻をめとらば才たけて」
経営破綻したレストラン店主がはまった沼‥‥「多肉」
亡くなった義母と一緒に写った男の正体‥‥「遺影」
どれもちょっと非現実的な物語。
それでも「妻を‥‥」はいい話だった。人の幸不幸は側から見ている者にはわからないということ。他人は見えている風景から勝手な想像を働かせるけれど。
二人の遺骨はどうなったのかな?共に葬られたらいいなと思うけど、そうならなくても二人の魂は共にあるような気がする読後。
Posted by ブクログ
白昼夢って何だっけ?ああ、非現実的な体験のことなのか。確かに4つの短編いずれも、不思議な話だった。怖いような不思議なような印象を持った。
屋根裏で音がするので気になって調べたところ、音の発生源は意外にも亀という話は、どこか非現実的だがあり得なくもない。亀が歩くときはゆっくりだが地を這うような音がする。正体が分からないとこんなにも不気味なものなんだな。亀は昔から好きで可愛いし、人に懐くケースも知っている。飼っていた亀を手放したくない気持ちは分かるが、この先どうなるんだろう。親類とは言えほとんど他人の男が、自分たちの家の屋根裏に無断で入っているというだけで結構気味が悪い。ただ、私も主人公同様、すぐに亀を追い出す気にはならないと思う。
亡くなった義母の遺影に一緒に写っていた者の正体は…という話は、そんなことがあるのかと思う結末ではあるが、話としては好きだった。
人の思念が遺影の写真を作ったのか、それともニホンザルの思いが写り込んだのか。人間と動物の間には、人の理解を超えた情のようなものがあってほしい。
Posted by ブクログ
妻をめとらば…
は骨壷を電車の中に置いて帰ってしまった初老の男性に乗客の女性が駅員に届ける所から始まり、男性の過去が徐々に明らかになる。
思い込みで誤解が発生し、本人がしゃべらないと誤解が誤解を生むという説明の大切さと思い込みはいけないなぁと教訓
あと三つも面白く読めた。
Posted by ブクログ
世界がコロナ禍に飲み込まれた時代を背景にした4篇の短篇集。冒頭に置かれた「屋根裏の散歩者」にはそれらしき描写はないが、初出は2021年なので、作家がその影響下にあったことは間違いない。
それが原因か知らないが、今回の篠田さんはホラー寄りである。読んでいると背筋がぞくぞくする系だ。モダンホラーは平気だが、和風のどろどろは苦手なんだよな……。とはいえさほど怖い話ではなく、コロナで破壊された日常に生きる人々を描いた巧さが光る。
異常が当たり前なら、この暑さも普通になっていくのかな。そのうち“酷暑小説”も登場するのかもしれない。