あらすじ
コロナ禍がはじまり、終息に向かった。退職男たちの宴会と紙袋の骨壺、店の経営が破綻し夢中になった多肉植物、遺影に写った謎の手、自然通風の家で夫婦を悩ます音の正体とは? ふと目がくらんで見える、暮らしと隣り合わせ、現実と非現実の裂け目を描く日常奇譚集。
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Posted by ブクログ
ホラーの要素を持ち、奇妙だが、素材調べがしっかりされており、あり得ないこともないと感じる4つの短編
「屋根裏の散歩者」は、借家に引っ越してきた夫婦が夜になると聞こえる屋根裏からの物音に悩まされ、その意外な正体に驚く話。ワシントン条約や希少昆虫のブリーダーにも話が及び、よく調べられてるなと感じた。
「妻をめとらば才たけて」は、ある男が電車の中に骨壺を入れた紙袋を置き忘れ、それが警察に届けられたところから始まる。相思相愛だった妻と別れ、有名ピアニストと再婚した男だったが、自分はがんになり、再婚相手はコロナに罹患する。物悲しさと幸福感が共存する深みのある結末となる。
「多肉」は、コロナ禍によって父の代から続いてきたレストラン経営が破綻した男がアガベという多肉植物の栽培にのめり込んでいく話。妻に匙を投げられ、施設に入っていた認知症の母を見送り、多肉植物が異常に成長した家に引きこもりながら男は破滅していく。
「遺影」はコロナ収束下で親戚たちが集まり、義母の葬儀用の遺影写真をあわてて探している場面から始まる。
あれやこれや探しているうちに見つかった満面の笑みをたたえている写真には義母の肩に手をかけている男が写っていた。男が誰なのか、義母が何故笑みをたたえているのか、その謎を解くカギは義母が生前よく通っていた動物園にあった。
Posted by ブクログ
4つのありそうそれでいて不思議な話の短編集。
最初の亀の話が微笑ましい。変な霊とかでなくて亀でよかった。よく見ると表紙にも亀が。
4話目の義母が微笑んでいる相手がコーヘーという猿だったって言うのも、その人柄(猿柄?)がいいですね。
Posted by ブクログ
白昼夢って何だっけ?ああ、非現実的な体験のことなのか。確かに4つの短編いずれも、不思議な話だった。怖いような不思議なような印象を持った。
屋根裏で音がするので気になって調べたところ、音の発生源は意外にも亀という話は、どこか非現実的だがあり得なくもない。亀が歩くときはゆっくりだが地を這うような音がする。正体が分からないとこんなにも不気味なものなんだな。亀は昔から好きで可愛いし、人に懐くケースも知っている。飼っていた亀を手放したくない気持ちは分かるが、この先どうなるんだろう。親類とは言えほとんど他人の男が、自分たちの家の屋根裏に無断で入っているというだけで結構気味が悪い。ただ、私も主人公同様、すぐに亀を追い出す気にはならないと思う。
亡くなった義母の遺影に一緒に写っていた者の正体は…という話は、そんなことがあるのかと思う結末ではあるが、話としては好きだった。
人の思念が遺影の写真を作ったのか、それともニホンザルの思いが写り込んだのか。人間と動物の間には、人の理解を超えた情のようなものがあってほしい。