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偶然出会った二人の旅は――。心躍る人間賛歌 とある事情で東京を目指す女性が、なぜか強面ヤンキーの運転する軽トラに乗るはめに。旅のスリルと人間ドラマの妙味あふれる中篇集。 ※この電子書籍は2021年10月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
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Posted by ブクログ
順風満帆とは言えない人生。その転機を迎えてロングドライブをすることになった人たちの踏ん切りとリスタートを描くロードノベル短編集。 ◇ 深夜3時。台風接近中ということだが空には半月がかかっている。 ここは灯りの消えたコンビニの駐車場。私は車を待っていた。ハイエースが迎えに来...続きを読むることになっている。 しばらくするとヘッドライトがコンビニを照らしながら入って来た。軽トラなのでコンビニ目当てかと思っていると、目の前で止まった。運転席の窓から手ぬぐいを被った男が顔を出す。 「どうも。増島さんですか?」 「あ、はい、増島ですが……」 その目つきの鋭さにひるみつつ答えるより早く、男が車から降りてきた。間近で仁王立ちする男を見て、私は思わず後ずさる。見上げるほどの大男ではないか。 男の全身を包むツナギは紫色だ。それもトラックの運転手やヤンキーがよく着ているヴァイオレットではなく、慶弔用の風呂敷のような真紫だ。おまけに手ぬぐいを取った頭はスキンヘッドに近い坊主頭ときている。 「瀬沼です。今日はよろしく」 キビキビした妙に礼儀正しい挨拶。頭を下げた胸元からは金の鎖が覗いている。素性を考えるのも恐ろしい。 まさか、この男と往復千㌔のドライブを一昼夜することになるのか。しかも軽トラで ⁉ 戸惑うものの私にはもう時間がなかった。 ( 第1話「田舎のポルシェ」) ※全3話。 * * * * * 久しぶりに読む篠田節子さん。軽めでさらっとしているのに読ませどころはしっかり読ませるという巧者ぶりはさすがでした。 描かれるのは、人生の岐路を迎えた2人の珍道中です。それも移動は自動車で、かなりの距離を走ります。パーソナルスペースなど取れないほど狭い車内。互いに距離感を計りつつやがて胸襟を開いていく、その過程が何ともおもしろい。3話とも満足度の高い物語でした。 個人的に最も印象深かったのは、やはり表題作でした。もう少し紹介しておきます。 第1話「田舎のポルシェ」 主人公の増島翠は、岐阜市内の郷土資料館に勤めるアラサー女性。東京郊外の農家出身で、いろいろあって実家とは疎遠だったのですが、祖父母や両親に続いて兄も急死したことで田畑屋敷の管理がのしかかります。 耕作放棄をすると固定資産税が跳ね上がるため隣家 ( と言っても家自体は離れているのですが ) の老夫婦が今年の米作りを引き受けてくれていました。 収穫できたので引き取りに来るよう連絡があり、翠は米の運搬を手伝ってくれるドライバーを友人に紹介してもらったのですが……。 ☆男尊女卑、家長第1主義、個人よりも家重視。嫁は従属物で忍従は当然。 吐き気がするほど硬直した田舎の価値観に耐えきれなくなった翠は、高校卒業と同時に家出同然に奈良の大学に進学します。 実家と決別した翠は寮生活をしながら奨学金とバイトで卒業まで頑張りました。 苦労は多かったものの実家にいるより楽しく充実していたというのはよくわかります。 そんな翠が台風接近の中、筋者かと見紛うような偉丈夫の瀬沼と繰り広げる珍道中が、もっとも刺激的でおもしろかった。20代後半の男女が狭い軽トラ車内で過ごすわりに、まったく色気のある展開にならないところもいい。 現代の農家が抱える問題や米作の実情もわかりやすく挿入されていて、勉強にもなりました。 その他、気づいたことを書き留めておきます。 人生のリスタートを図る若い2人を描いた第1話とは打って変わり、第2話「ボルボ」はビジネスの第一線を退いた熟年男性2人、第3話「ロケバスアリア」は夫の死後も介護士として働いてきた高齢女性とこれも高齢の音楽プロデューサーの2人と、どちらも人生の精算を図るストーリーで、少しもの悲しい味わいもありました。 そして本作が出色だったのは、各主人公たちの持つストーリーがよく考えられたものであったことはもちろんですが、主要舞台となった自動車に特異性があったことも大きいと思います。 第1話は軽トラ。第2話は廃車寸前の古びたボルボ。第3話は中古のロケバス。主人公たちの人生を語るにふさわしい舞台です。こんな見事な設定にも唸ってしまいます。 ところで、第1話と第3話は岐阜がホームグラウンドなのですが、篠田さんが作品の舞台に岐阜を選んだのはなぜなのか気になります。 しばらく離れていた篠田節子さん。とてもおもしろかったので、また読んでいこうと思いました。
初本。良い凄く良い 篠田節子さん、何故に出会わなかったのよ自分って。謝辞でお世話になる人を挙げてるけど、段取り踏んでしっかり屋台骨作るから嘘もなくて潔い。米360㌔を乗せて軽で高速走るとかね。27時間だけの出会いなのに内容が濃いし徐々に知られる事情だけでない瀬沼の生き様も全部乗せて走るまさにポルシェ...続きを読むですね。出だしの謎解きがほんと面白いし、あーやって実家は凋落していくのだな〜と、ラストで360㌔どうしようと声に出すのと瀬沼の性格そのもののどうにかなるっしょが締まるってこと。増島も心のモヤモヤ吐き出してスッキリしてるし。ポルシェの次のボルボでも雨と車と悪天候と岐阜県と出ていて、縛りあるのか?と思ってしまう。言い方悪いけど、あの年代の地位があった人は生活レベルを下げられない=年下の人とは相容れない=話が合わないから老人ホームに行くのだろうなと思う。斉藤さんを信じ切るまでも掛かってるし、ボルボへの執念に余計な首を突っ込まない生き方に、ため息。斉藤のストーカーの暴走やるなと思っていたが最後に収まるところに収まる。こんだけ書いたけど面白かったな〜伊能1人語りだけど、あと1か月くらい旅していいと思うよ。
車にまつわる3作品。篠田さんの描く女性って頼もしいよな…って再確認した。 軽トラ、ボルボにロケバス。取材で全部体験したらしいけどアクティブすぎないか!? 安易に恋愛関係に陥らない男女が大好物です。
星4.5 ロードノベル3編からなる。 わたしと年齢が近いからか、やはり篠田節子は面白い。どの作品も、平凡に終わったりはしないが、奇をてらうようなストーリーではない。続きが気になり、あっという間に読んでしまった。 若い人でもおもしろいと思ってくれそう。
「ポルシェ」「ボルボ」「アリア」と、車名を題名にしたロードノベル中編3作。 『田舎のポルシェ』は、軽トラックで岐阜から東京、そしてまた岐阜へと高速道路や田舎道をひたすら走る話。 実家で収穫した150キロの米を運ぶため、助力を依頼した主人公翠の前に現れたのは、坊主頭に紫色のツナギを着た巨漢の男。喉元か...続きを読むらは金の鎖が。 この男との千キロのドライブは、台風が接近し、警察の検問には引っ掛かりと、波瀾万丈の展開が。 他2作も、それぞれ面白く、読者の心を揺さぶる。
どこかでこの装丁を見かけたとき、「田舎のポルシェ」こと、スバルサンバー、に最近乗り始めた自分は思わず手にとらずにはいられなかった…、尤も、自分が乗っているのはこの絵のようなトラックではなくバンタイプではあるが、その小さなクセにせいいっぱいブルンブルンと走り回ってくれる姿にはいずれも変わらないものがあ...続きを読むると思う… …私自身の個人的なクルマへの思いはさておき汗、この書籍は表題作を含む3編からなる。いずれもクルマを主題としたロードムービー的な小品であり、いずれもどこかハラハラとさせてくれていずれも幸せな結末に至るものである。またいずれの作品の主題たるクルマも、決して高級車ではなく、さりとて欠陥車などではなく、運転者(必ずしも主人公ではない…)が深く愛情を注いでいるクルマたちである。また、さきにも書いたが表題作のサンバートラックのちょっとした挙動の描写も、私自身が日常的に感じていることでもあり、「うんうん」とうなずかされる場面が多かった。 中編作品としていずれも読みやすい、うがった見方をすればありがちな、情景の描写ではあるかもしれないが、私自身は楽しく読み終えることが出来たように思う。
「混迷する日本社会の今」を背景に「昭和の時代から懸命に生きてきた人たち」と「今の社会は生きづらく先は見えないけれど、少しだけ光明が見えるかもしれない」という微妙な情景を描き出した中編三作を集めた作品集。なかなか読み応えがありました。というか結構重かった。(決してホンワカする、ハラハラ・ドキドキすると...続きを読むかグラグラ感動するといった作品ではありません。でも、読み終えてから、シミジミと社会の有り様について思い巡らす様な作品も良いものです。) 一作目は表題作「田舎のポルシェ」 少子高齢化の波がどんどん押し寄せて来る日本。特に地方へ行くと老人ばかりが目立つのは事実です。作品の中では農業の衰退状況が背景に描かれていましたが、農業に限った話ではないでしょう。都会の商工業も同じことです。一体どうすれば解決できるのか?行き先が見つからないまま歩き続けている。 果たして打つ手はあるのか?などと考えながら読んでいましたが、ストーリーの中では田舎の「ポルシェ」ならぬ軽トラでのロングドライブを強いられてしまう男女二人が台風の最中で格闘する状況が描かれている。格闘の合間に二人の暗い過去が掘り起こされていく。今の、そしてこれからの日本社会の闇の部分をえぐり出している。 最後に少しだけ明かりは見えるのだけれど、何だか暗い気分に浸ってしまいました。 二作目は「ボルボ」 ボルボといえば一昔前にステーションワゴンが流行りました。崖から墜落しても車はびくともしない?(でも中の人は助からないかも?)と言われていたものです。 ストーリーは定年間際で会社が倒産し、今は年下の妻に養われている?男性。そして大企業に就職し部長まで勤め上げたものの、定年後再雇用の道を選ばず年金受給を待つ男性。その二人が廃車間際のボルボで北海道へ旅に出るというストーリー。還暦前後の雇用事情が垣間見られる。一体自分はどうなるんだろう?と、ついつい自分のことを考えてしまう。 非常によく出来た企業人であったが今は職のない二人が妻との葛藤を織り交ぜながらボルボで旅をする。そして北海道の山間部で野生のヒグマの襲撃を受けてしまう。二人の男性の妻の一人を含めて。 そういえば気候変動の影響で、クマの襲撃も昨今珍しくなくなりました。ボルボの運命やいかに? 三作目は「ロケバスアリア」 まさしく昭和、平成、令和の時代をしっかりと生きてきた古希を迎える女性。現在も介護施設(デイケア)で働いているが、コロナ禍で施設が休業するのに合わせて浜松の舞台で一人きりで舞台に立つ決心をする。歌うのがアリア。 東京から浜松のステージまで利用するのが「ロケバス」。まあ、経緯・背景はいろいろあるのですが、淡々とストーリーが進んでいく中で、この女性の昭和から令和にかけて懸命に生きてきた様子が語られています。シミジミとストーリーに浸ってしまいました。最後に一人で舞台に立つ決意の裏側が語られる。 三作品の全てに昭和・平成から令和にかけての時代の移ろいを感じさせるストーリー。描き出された人々の目を通して、そして経験を振り返りつつも、先の見えづらい未来に向けて現在進行形の日本社会を考えさせられます。 現代日本社会に対する篠田さんの深い洞察を感じてしまいました。
初めて読んだ作家さんだったのだが、直木賞作家だった。軽やか語り口ながらも、人と比べる必要なんてない、自分の人生を生きていけたらそれだけで幸せなんだ。私も頑張ろっと思わされる良い本だった。他の著書も読んでみようと思う。
どの話も読み口はスムーズ。読み進めるうちに登場人物の人生が浮かび上がる。 自分の好みは下記の通り。 田舎のポルシェ★★★ ボルボ★★ ロケバスアリア★★★★
さらさら読めて、車を軸にした旅の物語は3話ともそれぞれ個性があっておもしろかった。 「ロケバスアリア」が1番好きだった。春江さんのキャラも好きだし、春江さんのチャレンジも読みながらなんだか胸が熱くなった。コロナ禍の話でもあり、つい最近のことなのに「あぁそうだったよなぁ…」と少しばかりの懐かしさを感...続きを読むじたり、時代のうねりの中を、今まさに生きているのだと改めて感じさせられた(話の本筋とはちょっと外れた感想かもしれないけれど)。
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