篠田節子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ本書を読んで『神の座-ゴサインタン』の淑子の不可解さが、ようやく理解出来た。
この作品に登場するロサも「生き神/処女神」だった経験があり、ロサが語る生き神の生に衝撃を受けた。
彼女らは「生き神/処女神」として選ばれると、幼い頃から、現実の世界と隔絶され、祭文を覚える等以外は、人としての教育は何一つ受けず、その期間をカミサマとして奉り上げられ、身分ある大人たちさえ額づく環境で過ごす。しかし、初経がくれば「生き神」の座を降ろされ、突然に現世に放り出されてしまう。
人とどう喋るかも知らず、会話が出来ないし、水汲みなど、日々の労働で直ぐに疲れてしまう。「人間として」生きる術を知らないのだ。
ロサは才気煥発な女性で、「自由になりたい」という意志を、手段を問わずに求めていくが、淑子は「生き神」だった時代で、人生が止まってしまったのだろうと思う。
篠田節子氏の世界に惹き込まれて、もはやシノダー(笑)になってしまったが、本作もスケールの大きな構成で、登場人物の味わいある描写、そしてインドという国の匂いをむんむんと立ち昇らせて進んでいくストーリーの鮮やかさに、読書の喜びを存分に味わった。
-
Posted by ブクログ
ネタバレパンデミックという語より、バイオ・ハザードという表現が、リアルに感じる世代です。
90年代に書かれた点よりも、驚いたのが、政府等の体制側、現場の対応が、現在の新型コロナ禍と殆ど変わっていないこと。SNSで情報が拡散する社会になっても、有益な対策は見い出せず、打ち出せず、医療現場は逼迫し、感染は拡大するばかり。
25年後の2021年現在、この状況で五輪開催をしようとしているなんて、小説と現実が逆転しているように感じる。
篠田節子氏のスリリングでリアルな構成と筆致が、物語を加速させ、一気に読ませる快作。ラストはタイムワープした現在なのでは……。 -
購入済み
リアルすぎて鳥肌がたった
まるで現在の状況を予言したかのような小説、と聞いて読んでみましたが、あまりにも現実とリンクしていて驚きました。だいぶ前に書かれたお話なのに古さはあまり感じられず、一気読みでした。少し専門用語が難しいところもありましたが、今こそ読むべき一冊だと思います。
-
購入済み
篠田節子の最高傑作
篠田節子は当たり外れが大きい(と思ってる)のですが、これは文句なしに大当たりです。
20年前の小説なのでもちろん色々と古いところはあるのですが、出てくるキャラクターが皆生き生きとしていて、古臭さを感じさせません。
何より読後感が素晴らしいです。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ介護問題は現在の日本の一番のホラーであると思う。
三作からなる本作の二話目の村に酷く共感した。
一、三話は我が家の状態(祖母(セコンド妹)vs母,私)に似ていて腹が立ち冷静には読めなかった。
年長者が若年者の重石になっているこの国は歪んでいる。
それをさも当然でそのために子供を作った、というようなことを豪語する年寄り達は心底気持ちが悪いと思います。
三作目の父息子の手術に対する台詞にも共感です。
とても気持ち悪く腹の立つ小説でした。
(それだけリアリティーがあり面白かったということです。)
ただ一話目に軽くファンタジーが絡んでいたのは好みではなかったです。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ篠田節子ブームの中で読んだ、たぶん初の長編。
長いけど、一気に読めます。
読んでから、だいぶ時間経ってるので、登場人物名とか
キレイさっぱり忘れちゃってますが。
地方の農村の旧家の跡取りが、発展途上国(ネパール?)から
嫁さんを「買って」くるところから始まる、
なんだろう、破壊と再生の物語なのかな。
この買われてきた嫁さんが、この旧家を滅ぼしていくんですよ、
なんか、神がかり的な力を得て。
「買った」はずの姑や旧家の次男(長男は海外在住で家督放棄)が
次第に従属する立場になり、ついに土地家屋財産全て擲って
帰国した嫁を追って、ネパール?に行っちゃう。
この文庫版の表紙の神の山に象徴されるような、なんというか
神々しい、祝福された再生のイメージで物語は終わります。
途中の旧家が滅ぼされていく過程や、主人公の跡取りが転落?
没落?していく様子、ネパールに入ってから辛酸をなめる様子、
なんか、「ざまあぁぁぁ!!!」ってかんじで、爽快でした。
私が女だからかな。
いろいろ社会的な問題点とか、提起されているのかもですが、
そんな構えなくても、ごく下世話に読んでも楽しかったです。
他人の不幸は蜜の味。
でも、これはハッピーエンドですよ。 -
Posted by ブクログ
50代の元エリートサラリーマンの半生。
エリート証券マンが、ニューヨーク在住中に離婚、その後会社は破綻し、損保会社に再就職するも、鬱を患い退職。仙台の無名私立大学の非常勤講師として再々就職。
何とも波乱万丈な主人公高澤。
それでも、誠実で仕事に対しても熱意があり、品行方正なため、周りからの評価は常に高く、好感が持てます。
大学での功績は高く、やる気のなかった学生達が、きちんとした大人になることが出来るよう、下地を作ったのは彼でした。
元妻、息子との距離感は、かなり近いもので、タイトルからもしかしてと想像しながら読み進めていました。
浪人して国立大学に進学した息子にひと安心するも、最後までそのままでは終わらせない展開に、思わずまたか…と。(笑)
この2人なら元サヤはありでしょう。
我が家は来年が銀婚式です。
-
Posted by ブクログ
ハルモニア。
それはまるで世界をすべる黄金率にも似た調べ。
神聖で崇高な侵しがたい神の旋律。
凡庸なチェリスト東野は音楽療法のスタッフとして通った高原の精神医療施設で、凄まじい才能を数奇な運命を秘めた一人の浅羽由希と出会う。
東野は彼女の秘めたる才能を引き出そうと悪戦苦闘の個人レッスンを開始するが……
超感覚ホラー。
サスペンス。
人間ドラマ。
この小説を飾る言葉はあまたあれど、一番しっくりくるのはやっぱり音楽小説だろう。
そう言うととかく高尚なものを思い浮かべがちだが、登場人物の苦悩や懊悩、葛藤が非常に生々しくリアルに迫ってくるせいで、どっぷりのめりこんでしまう。
血肉が通った饒舌でありながら流麗な描写は、とくに演奏シーンでその本領を発揮し、光の渦を巻いて読者をめくるめく翻弄する。
二十年間音楽に人生と情熱を注ぎ続けたチェリストでありながら、凡庸な秀才の域をでぬ東野は、重い障害を持ちながらけっして自分が叶いえぬ「天才」由希に激しい羨望と劣等感を抱く。
が。由希は紛れもなく音楽の天才でありながら、同時にコミュニケーション不全で、東野とも殆ど交流が成り立たない。
困惑する東野だが、一対一のレッスンを辛抱強く続けるうち、言葉よりも多弁な音楽を通して二人は次第に互いへの信頼を深めていく。
凄い、とにかく凄い。
音楽という神にして悪魔に魅入られ破滅した男女の物語にもとれるのですが、由希を背負って砂浜を歩く東野の姿には、「ハルモニア」を聞いた者だけが得る至福を感じられ、二人にとってどうするのが一番よかったのか、これでよかったのか、なにが幸せでなにがふしあわせだったのかわからなくなります……。
天才と凡才。
聖と俗。
虚構と真実。
さまざまに反発し対立する要素が絡み合って重層的な構造を生み出す物語の結末は、ぜひあなたの目で確かめて下さい。
願わくば砂浜を行く二人の耳に、今もハルモニアが聞こえんことを。