篠田節子のレビュー一覧
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これは一人の男性が、自分の人生の責任を認識するということをテーマにした小説と捉えた。
この類の男性の通過儀礼をテーマにした小説は多々あるが、本作はそれらの作品とは一線を画した、ジェンダー問題への鋭い示唆に富んだ作品だ。
ある出来事が起きて、「俺は変わったんだ」という言葉と共に、何も変わることなく生きている男性は多い。
口だけではなく実際に新たな責任を背負うためにはとても困難な認識の変化が求められるが、それは革命的な転換ではなく、牛歩的なプロセスであることを本作は示している。
主人公の行動描写と内的描写が撚り合わさり、その遅々とした歩みを描き切っている点、本作は未来を先取りしていると感じた。 -
Posted by ブクログ
篠田節子さんの作品は女たちのジハードぶりの2作目で
夏だし、と思って表題で手に取りました。
パンデミックの話で、コロナの以前に描かれた本でしたが予防接種の薬の認可やみんな家に引き篭もり、閑散とした町や飲食店、まるで予言していたような本でびっくりしました。
作者の医療や行政についての知識にも感嘆しますし、この作品を描くにあたりさらに資料を集めたり様々な調べものや取材などされたであろう事にも思いを巡らせてしまいました。
さて、小説としては、医療や行政の話としても感慨深く読めますが、わたしとしては登場人物ひとりひとりが個性的に描かれていて読んでいて楽しかった。小西、普通のサラリーマン、よけいな波風立てず平和に暮らしたいタイプなのに、正義感出てきちゃうまでの心の動きは面白かった。一番興味ある青柳、一見ダメ男タイプなのに、適応能力めちゃすごい!インドネシア語とか話しちゃうし、本能的に強者を嗅ぎ分け仲良くなる。お金にはしっかりしてるし。本当にこういう人、いるんですよね。出会ったことあります。なので余計、面白くて篠田さんもこういう人間に出会ったことあるのかな?そうじゃなきゃ描けないよね?って聞きたいくらいですよ。まあとにかく、少しの間ですが舞台がインドネシアに飛んでいるところはまた別の小説を読んでるみたいに話に引き込まれました。
房代もすごくわかる。鵜川や辰巳もそれぞれ抱えている物語があるよね。。もう、、ひとりひとり感想書きたいけど書いてると疲れてきたのでこれくらいで、、
終わり方、、静かに怖いです。 -
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全てを理解するのが難しいと思えるほど、
インドは広い。
歴史、風習、宗教、経済、文化があまりにも違いすぎ、多種多様といった言葉では形容するにはあまりにもインドという国が抱えている闇が深い。
2025年現在世界一の人口を抱え、指定部族の数は600以上ある。インドという1つの国にまとまってはいるが、ここまで文化が違えば別な国と思ってしまうほどだ。
また、この物語を複雑化させているのは、
イギリスの植民地時代の名残り、馴染みのないカースト制度だろう。
古い慣習に囚われ、自由もなく、虐げられ、暴力によって支配された世界が少しずつだが、変わっていく希望の物語であると思うが、自分の目で確認できることができれば幸いだ。
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ネタバレカリスマ主婦、ノーベル文学賞作家、由緒ある名家の令嬢…北海道の片隅にある岬に引きよさせらた、彼らの謎を追うミステリー。
経済も国力も停滞し衰え、インフラ整備や外国の侵犯にも手をこまねく近未来の日本を舞台に、不老不死や若返りの妙薬の謎を追いかける話になっていく。
ミニマムとか断捨離とかにあこがれ、少しずつでも実践しているのだが、その極地である欲望を制御しきった先にある生き様を考えさせられた作品。不老不死の謎を解明したシーンには共感と同時にちょっと背筋が寒くなる気がした。
ギラギラした欲望を排除して灰汁の抜けきった生き方は平穏ではあるけれど、外から見れば不幸で無力に見えるのかもしれない。それは人間個人個人の話だけではなく、集団や国家もそうなのかもしれない。 -
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軍人の父と日本人の母を持つジョージは幼い頃から、父の休暇シーズンになると、太平洋上の小島で過ごし、その近隣の島「ミクロ・タタ」で出会った愛らしい両生類「ウアブ」に魅了されたことがきっかけで、二十代後半になった今では、「ウアブ」の研究者としてその世界では知られた存在になっていた。「ミクロ・タタ」の経済の発展のために、絶滅の危機に追い込まれたウアブの生育環境を守るために、外国人富裕層向けリゾートを建設し、他の島々より一足早く発展を遂げた「メガロ・タタ」にウアブを移動することになった。生態系の変化への懸念はあったにも関わらず――。
というのが、本作の導入です。『仮想儀礼』や『弥勒』で分かっていたはずなのですが、覚悟して読んではいても、容赦のない強烈な描写には心に重たい石が沈み込んでくるような感覚があります。環境の変化から生じる混乱、善意からはじめた行動に対する悔恨、愛らしかったはずの生き物が変貌していく恐怖、父子の間にある葛藤……様々な要素が絡み合う、先の読めないパニックホラー(パニックSF)になっています。大作も多い篠田作品の中では比較的短めですが、内容は濃密で、分かりやすい『正しさ』のようなものに流れないラストがとても好きでした。 -
Posted by ブクログ
首都圏大地震や出血性激症性感染症の大流行、経済混乱による物不足を受けて、家族主義を単位とする国家主義が復権し、国民能力別総分類制度、反体制派からは、「国家主義カースト制度」が導入された2075年の日本が舞台。30年近く前の作品なのに、物語のいたるところに、〈今〉を思わせて、読んでいてなんだかとても怖くなる作品です。
階級制度が敷かれた日本で、特A級の市民である最高裁の裁判官だった斎藤総一郎は職を追われ、国家からは家族共々、現在住んでいる場所の移転を命じられる。やがて移転先で目にする光景に総一郎は――。
ということで、後半は壮大な戦いの物語にもなっているのですが、特に魅力的だなと思ったのが、総一郎の覚悟や決意を周囲が必ずしも〈良いこと〉とは思ってはおらず、斎藤一家を含めた登場人物たちの様々な感情が入り乱れる状況がとても魅力的だなと思いました。