篠田節子のレビュー一覧
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首都圏大地震や出血性激症性感染症の大流行、経済混乱による物不足を受けて、家族主義を単位とする国家主義が復権し、国民能力別総分類制度、反体制派からは、「国家主義カースト制度」が導入された2075年の日本が舞台。30年近く前の作品なのに、物語のいたるところに、〈今〉を思わせて、読んでいてなんだかとても怖くなる作品です。
階級制度が敷かれた日本で、特A級の市民である最高裁の裁判官だった斎藤総一郎は職を追われ、国家からは家族共々、現在住んでいる場所の移転を命じられる。やがて移転先で目にする光景に総一郎は――。
ということで、後半は壮大な戦いの物語にもなっているのですが、特に魅力的だなと思った -
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順風満帆とは言えない人生。その転機を迎えてロングドライブをすることになった人たちの踏ん切りとリスタートを描くロードノベル短編集。
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深夜3時。台風接近中ということだが空には半月がかかっている。
ここは灯りの消えたコンビニの駐車場。私は車を待っていた。ハイエースが迎えに来ることになっている。
しばらくするとヘッドライトがコンビニを照らしながら入って来た。軽トラなのでコンビニ目当てかと思っていると、目の前で止まった。運転席の窓から手ぬぐいを被った男が顔を出す。
「どうも。増島さんですか?」
「あ、はい、増島ですが……」
その目つきの鋭さにひるみつつ答えるより早 -
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初本。良い凄く良い 篠田節子さん、何故に出会わなかったのよ自分って。謝辞でお世話になる人を挙げてるけど、段取り踏んでしっかり屋台骨作るから嘘もなくて潔い。米360㌔を乗せて軽で高速走るとかね。27時間だけの出会いなのに内容が濃いし徐々に知られる事情だけでない瀬沼の生き様も全部乗せて走るまさにポルシェですね。出だしの謎解きがほんと面白いし、あーやって実家は凋落していくのだな〜と、ラストで360㌔どうしようと声に出すのと瀬沼の性格そのもののどうにかなるっしょが締まるってこと。増島も心のモヤモヤ吐き出してスッキリしてるし。ポルシェの次のボルボでも雨と車と悪天候と岐阜県と出ていて、縛りあるのか?と思っ
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新興宗教の聖泉真法会の教祖、桐生慧海。ある意味では貧乏な教祖様である。あまり欲もない。
宗教的なカリスマ性もない。公務員的な生活規範とカウンセラー的であるとも言える。
桐生は教祖というものが、自分にはむいていないとも思っているが、信じたい人はやはり教祖様でないと宗教は成り立たない。信じる人によって、教祖は持ち上げられていく。
「すべての生命を尊び、すべての生命を愛する。我は神のうちにあり、神は我のうちにあり」
結局仏像なんていらないものであり、祈ることで自分の中に神をつくる。
ゲームブックの『グゲ王国の秘法』という大きなシナリオで、聖泉真法会は作られていった。
信者が、7000人になっ -
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タイトルからの勝手な想像で、ユーモアとかペーソスとかを期待していたが、読んでみると切実さとアイロニーに満ちていた。
本作における「長女キャラ」とはどういうものか。どうやら、真面目で有能だがあまり要領良く生きられない人たちらしい。我慢強いが、それが裏目に出てしまうことも度々。
それ故か本作の長女たちは皆三十代後半〜四十代後半で独身、そしておそらくは独身であるがために、近親者への献身と近親者からの搾取の境界線上で揺れている。認知症介護・独居老人・依存症・生活習慣病・臓器提供といった一筋縄ではいかない家族問題の「担当者」という役回りを周囲から期待され、圧力をかけられもする。
その背後にあるの -
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面白かった!
ロサが思ったより登場せず、水晶ビジネスにボリュームが割かれていたのが、ちょっと意外でした。
甲州商人、インドで大奮闘です。
インド人ののらりくらりとした交渉術、全くどうしたらいいやら読んでいるこっちまで頭抱えました(笑)
生き神として讃えられてきた少女ロサとインドとクリスタル。
科学では証明できない不思議な世界に誘われるのかと思いきや、海外で戦う日本のビジネスマンの苦労や、自然災害の影響で経営に四苦八苦する現実的な様が描かれていて、読んでいるものを飽きさせません。
最後は藤岡社長が、ただのウザイおじさんに見えてきたのですが、どうなんでしょうか。
表情が乏しく何を考えている